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*民族服に着替えるアフガン人(タジク国境)<br />*砂漠、峡谷そしてサムライ達の国<br />*消えたフタコブラクダの謎<br />*壊れた橋、崩落したトンネルの乗り越え方<br />*この夜道を120kmh、死を恐れぬドライバー<br />*遊牧民テントでの真っ暗な夜<br />*マスードの人気、カルザイの人気<br />*消えることない民族間のしこり<br />*アフガン式チャイハナの存在と機能<br />*なんちゃって松葉杖の少年<br />*カルザイ帽子を探して<br />*昔はヒッピー天国、チキンストリート<br />*「俺はタリバン、アルカイダではない」<br />*アルカイダの潜む(?)谷<br />*カブールのハザラ人地区で見たもの<br />*中央アジア、マサラ文化の終焉<br />*まるで時代劇、任侠の世界(アフガンに見る客の守り方)<br />*窓ガラスなし「二階建て」バス<br />*ジャララバードの代筆屋<br />*放置された戦車と落書き<br />*アレクサンダー、玄奘、チンギスKの仲間入り(カイバル峠)<br />*武器はMade in Japan<br /><br />*消えたフタコブラクダ/アフガニスタン <br />ラクダにはヒトコブ(Dromedary)のものとフタコブのものがある。フタコブのものは英語でBactrianCamelという。バクトリアとは、マザリシャリフ近郊のバクトラを中心とするアフガニスタン北西部をさし、そこでよく見られた品種だからであろう。 <br /><br />私はそれまでヒトコブラクダしか見たことがなかったので、アフガニスタンの地でフタコブラクダに遭遇できることを当然期待していた。ヒトコブラクダよりコブとコブの間に座れても乗りやすそうだし、足が太くて安定感がありそうだし、毛深くて絨毯みたいだし、なによりどんな顔してるのかみてみたい・・・私の好奇心は膨らんでいた。 <br /><br />しかし、タジキスタンから川を越えてすぐに広がる砂漠で見たラクダはヒトコブだった。ジャララバードからパキスタン国境のカイバル峠までの街道沿いで見た隊商のラクダは荷物を積んでいてコブが見えなかったけれどその脚の細さや体毛の薄さから考えてヒトコブのものだと判断した。 <br /><br />アフガニスタンに生息していたヒトコブラクダはどこへいってしまったのだろう。 <br /><br />わたしはいくつか仮説を立ててみた。1)私が見たサンプル個数が少ないだけで、実際にはフタコブラクダもアフガニスタンにいる。2)そもそもアフガニスタンにはフタコブラクダは生息していなかった。3)フタコブラクダは、昔はアフガニスタンに生息していたが、その後消滅(絶滅?)してしまった。 <br /><br />以下これらの仮説を検証してみたい。 <br /><br />1)私の見過ごし? <br />地元のアフガン人に聞いてみたところ、彼もアフガンでフタコブラクダは見たことがないという。帰国後Wikiで調べてみると、フタコブラクダが現在絶滅に瀕しており、モンゴル・中国でしか見られないことが書いてある。すると、現在アフガニスタンにはフタコブラクダは生息していないということになり、私の見過ごしではない、すなわち仮説の1)は間違いということになる。 <br /><br />2)そもそもアフガンには生息していなかった? <br />次に、そもそもアフガンにはフタコブラクダなどいなかったのではないか。もともとモンゴルなどに生息していたフタコブラクダが、西に運ばれ、バクトリアの市場を経由してペルシャなどに運ばれていったと。つまり、バクトリアはヒトコブラクダの生息地ではなく、単に交易地だったのではないか。たとえば南米原産の唐辛子は中国(唐)を経由して日本に伝わっため、「唐」からしといわれていたように、からならずしも原産地を示していたわけではないのではないか。 <br /><br />これは考えすぎのようだ。なぜなら、紀元前3世紀のアリストテレスが、バクトリア地方にはアラブ種と異なる2コブラクダが生息することを言及しているようだし、ペルセポリスのレリーフにも、バクトリア・パルチアなどからフタコブラクダを連れてペルシャに朝貢する様子が描かれているからだ。「ペルセポリスのフタコブラクダ」参照http://www4.synapse.ne.jp/tabata98/Y-silk/Y-camel.htm <br />よって、仮説2も消えることになる。 <br /><br />3)アフガンから消滅? <br />仮説1、2も間違いだとすると、残るは仮説3)だ。本当にフタコブラクダは消えてしまったのだろうか。消滅を裏付ける要因を検討する必要がある。 <br /><br />私は考えた。寒さに強い毛深いフタコブラクダは暑さに弱く、そのためモンゴルなど比較的寒い地を求めて東に移動していったのだと。そして地球温暖化の影響もあいまって、暑さに弱いフタコブラクダの生息域が次第に狭まっていったのだろうと(気象学的要因)。これに関する文献はみつからなかった。 <br />次に、フタコブラクダが遺伝的にヒトコブラクダに劣るため、個体数が減少してしまったのだと(遺伝学的要因)。なぜかというと、次のような話を聞いたことがあるからだ。トルコのラクダ相撲などでは、ヒトコブのオスとフタコブの雌を掛け合わせてできたラクダが強いということでもてはやされるらしいが、掛け合わせて誕生するラクダは、見た目はほとんどヒトコブになるそうだ。このたび調べたところ、交配種は「間伸びしたヒトコブになる」と書いてあるものを見つけた。 <br />http://www1.ocn.ne.jp/~tekitoni/zuihitu4.html#5 <br /><br />さらに、別の記事も見つけた。つまり、ヒトコブラクダの生息するアラブの地からヒトコブラクダとともにアラブがの東進してきたため中央アジアからフタコブラクダが駆逐されたのではないかというのだ(歴史的要因)。もっともアラブの東進は8c-12cくらいだと思われフタコブラクダが一時的に東に駆逐されても、のちの13cモンゴルの西進によりフタコブが中央アジアに戻ってこなかったことを説明できないので、決定的な理由にならないのではないか。 <br /><br />また、Wikiによるとヒトコブラクダのほうが、3-4倍早く走ることができるようだ。だとするとヒトコブのほうがフタコブよりも性能の点で顧客のニーズにより適合していたということもいえそうだ。放牧・牧畜により生計を立てる者は市場で人気があって売れるヒトコブラクダを育てる、そのためアフガンでは次第にフタコブ種にヒトコブ種が取って代わっていったというのが合理的だからだ。(マーケティング的要因)。 <br /><br />きっとこのような複合的要因、とくに遺伝学的要因およびマーケティング的要因でアフガンの地からフタコブラクダが次第にいなくなっていったのであろう。十分に立証できているとは思わないが、仮説3)が正しいという蓋然性は認められそうだ。 <br /> <br />*稚拙な文章ですが、皆さんから広く意見を頂戴するべく、この度公開することにしました。アフガニスタンからフタコブラクダが消えた理由につきご存知のかた、是非ご連絡を。

Afghanistan

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1970/07 - 1970/08

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km777

km777さん

*民族服に着替えるアフガン人(タジク国境)
*砂漠、峡谷そしてサムライ達の国
*消えたフタコブラクダの謎
*壊れた橋、崩落したトンネルの乗り越え方
*この夜道を120kmh、死を恐れぬドライバー
*遊牧民テントでの真っ暗な夜
*マスードの人気、カルザイの人気
*消えることない民族間のしこり
*アフガン式チャイハナの存在と機能
*なんちゃって松葉杖の少年
*カルザイ帽子を探して
*昔はヒッピー天国、チキンストリート
*「俺はタリバン、アルカイダではない」
*アルカイダの潜む(?)谷
*カブールのハザラ人地区で見たもの
*中央アジア、マサラ文化の終焉
*まるで時代劇、任侠の世界(アフガンに見る客の守り方)
*窓ガラスなし「二階建て」バス
*ジャララバードの代筆屋
*放置された戦車と落書き
*アレクサンダー、玄奘、チンギスKの仲間入り(カイバル峠)
*武器はMade in Japan

*消えたフタコブラクダ/アフガニスタン
ラクダにはヒトコブ(Dromedary)のものとフタコブのものがある。フタコブのものは英語でBactrianCamelという。バクトリアとは、マザリシャリフ近郊のバクトラを中心とするアフガニスタン北西部をさし、そこでよく見られた品種だからであろう。

私はそれまでヒトコブラクダしか見たことがなかったので、アフガニスタンの地でフタコブラクダに遭遇できることを当然期待していた。ヒトコブラクダよりコブとコブの間に座れても乗りやすそうだし、足が太くて安定感がありそうだし、毛深くて絨毯みたいだし、なによりどんな顔してるのかみてみたい・・・私の好奇心は膨らんでいた。

しかし、タジキスタンから川を越えてすぐに広がる砂漠で見たラクダはヒトコブだった。ジャララバードからパキスタン国境のカイバル峠までの街道沿いで見た隊商のラクダは荷物を積んでいてコブが見えなかったけれどその脚の細さや体毛の薄さから考えてヒトコブのものだと判断した。

アフガニスタンに生息していたヒトコブラクダはどこへいってしまったのだろう。

わたしはいくつか仮説を立ててみた。1)私が見たサンプル個数が少ないだけで、実際にはフタコブラクダもアフガニスタンにいる。2)そもそもアフガニスタンにはフタコブラクダは生息していなかった。3)フタコブラクダは、昔はアフガニスタンに生息していたが、その後消滅(絶滅?)してしまった。

以下これらの仮説を検証してみたい。

1)私の見過ごし?
地元のアフガン人に聞いてみたところ、彼もアフガンでフタコブラクダは見たことがないという。帰国後Wikiで調べてみると、フタコブラクダが現在絶滅に瀕しており、モンゴル・中国でしか見られないことが書いてある。すると、現在アフガニスタンにはフタコブラクダは生息していないということになり、私の見過ごしではない、すなわち仮説の1)は間違いということになる。

2)そもそもアフガンには生息していなかった?
次に、そもそもアフガンにはフタコブラクダなどいなかったのではないか。もともとモンゴルなどに生息していたフタコブラクダが、西に運ばれ、バクトリアの市場を経由してペルシャなどに運ばれていったと。つまり、バクトリアはヒトコブラクダの生息地ではなく、単に交易地だったのではないか。たとえば南米原産の唐辛子は中国(唐)を経由して日本に伝わっため、「唐」からしといわれていたように、からならずしも原産地を示していたわけではないのではないか。

これは考えすぎのようだ。なぜなら、紀元前3世紀のアリストテレスが、バクトリア地方にはアラブ種と異なる2コブラクダが生息することを言及しているようだし、ペルセポリスのレリーフにも、バクトリア・パルチアなどからフタコブラクダを連れてペルシャに朝貢する様子が描かれているからだ。「ペルセポリスのフタコブラクダ」参照http://www4.synapse.ne.jp/tabata98/Y-silk/Y-camel.htm
よって、仮説2も消えることになる。

3)アフガンから消滅?
仮説1、2も間違いだとすると、残るは仮説3)だ。本当にフタコブラクダは消えてしまったのだろうか。消滅を裏付ける要因を検討する必要がある。

私は考えた。寒さに強い毛深いフタコブラクダは暑さに弱く、そのためモンゴルなど比較的寒い地を求めて東に移動していったのだと。そして地球温暖化の影響もあいまって、暑さに弱いフタコブラクダの生息域が次第に狭まっていったのだろうと(気象学的要因)。これに関する文献はみつからなかった。
次に、フタコブラクダが遺伝的にヒトコブラクダに劣るため、個体数が減少してしまったのだと(遺伝学的要因)。なぜかというと、次のような話を聞いたことがあるからだ。トルコのラクダ相撲などでは、ヒトコブのオスとフタコブの雌を掛け合わせてできたラクダが強いということでもてはやされるらしいが、掛け合わせて誕生するラクダは、見た目はほとんどヒトコブになるそうだ。このたび調べたところ、交配種は「間伸びしたヒトコブになる」と書いてあるものを見つけた。
http://www1.ocn.ne.jp/~tekitoni/zuihitu4.html#5

さらに、別の記事も見つけた。つまり、ヒトコブラクダの生息するアラブの地からヒトコブラクダとともにアラブがの東進してきたため中央アジアからフタコブラクダが駆逐されたのではないかというのだ(歴史的要因)。もっともアラブの東進は8c-12cくらいだと思われフタコブラクダが一時的に東に駆逐されても、のちの13cモンゴルの西進によりフタコブが中央アジアに戻ってこなかったことを説明できないので、決定的な理由にならないのではないか。

また、Wikiによるとヒトコブラクダのほうが、3-4倍早く走ることができるようだ。だとするとヒトコブのほうがフタコブよりも性能の点で顧客のニーズにより適合していたということもいえそうだ。放牧・牧畜により生計を立てる者は市場で人気があって売れるヒトコブラクダを育てる、そのためアフガンでは次第にフタコブ種にヒトコブ種が取って代わっていったというのが合理的だからだ。(マーケティング的要因)。

きっとこのような複合的要因、とくに遺伝学的要因およびマーケティング的要因でアフガンの地からフタコブラクダが次第にいなくなっていったのであろう。十分に立証できているとは思わないが、仮説3)が正しいという蓋然性は認められそうだ。

*稚拙な文章ですが、皆さんから広く意見を頂戴するべく、この度公開することにしました。アフガニスタンからフタコブラクダが消えた理由につきご存知のかた、是非ご連絡を。

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