ルチャリブレを見たよ！

2003/02 - 2003/02

プエブラの町外れに寂しく建つアレーナプエブラ。壁に貼られたポスターの日付は確かに今日。こんなさみしい所にはたして本当に人が集まるのかな？硬く閉ざされた入り口。車さえ通らないそんなルチャリブレ会場へ半信半疑のまま夜の９時に来て見ると・・・

エリア その他の都市(メキシコ)

これまたびっくりだ！会場前は昼間とうってかわって活気にあふれていて、いろんな食べ物屋台やレスラーの仮面を売るあやしげな屋台などが出ていました。ほっとした私はここはいっちょう奮発と、一番高い席のチケットを購入。ところが正面玄関は開いていて、隣のチケット売り場で簡単に購入できるのに、誰もそこから入場する人はいません。どうも正面は一番高い席の入り口で、安い席は会場の側面から入るみたいですね。

席は３種類あって、
?アレーナ席　１００ペソ
?その後ろの階段席１階　５０ペソ
?階段席２階　３０ペソ
この写真でわかるように、?と?は金網で仕切られています。だいたいは?はオトナシメの客、??となるごとに熱狂的なファンとなるみたいですね。

じつはここへ来るちょっと前に　ＮＨＫでルチャリブレのドキュメンタリーをやっていて、普段は孤児院をやってるやさしい牧師さんが孤児達を養うために夜はルチャドールに、とか、普段は高級住宅街に住む歯科医、その実態はルチャドールで、子供には父親がルチャドールであることを学校でしゃべらないように硬く口止めしてある、とか、なんだか昔の梶原一騎の漫画のような話のオンパレードで、その番組の中でひときわ注目を集めていたのがこのおじいちゃんのレフリー。実際にお目にかかれるなんて感激です。なんたってレスラーがフォールしてからカウントを数えるまでが５秒ほど。これは寄る歳月のせいか、ラテンタイムなのか？

私たちの席は前から２列目。これで１０００円は安い！ルチャリブレの魅力は、レスラーと観客との距離の近さにありますね。意味のない場外乱闘はお客さんへのサービスで、時にはレスラーが試合中に空いてる席へ座ってサインしてまわったり、それでチップもらったりと、もちろん彼らと話だってできます。

ところで、試合は９時頃から前座がはじまり、１試合３０分ほどで、夜の１２時近くまで続きます。だいたいがタッグマッチで、時には６人タッグマッチまであります。それにしても当たり前のことですが、前座の試合は太ったおっさん達の能か狂言をみているようなスローモーな技の連続で、その間にお客さんに向かって牙をむくというストーリー仕立てとなっています。

ほとんどのレスラーは仮面をかぶっていますが、中にはこういうイケメンも。彼らはぴったりした黒タイツを履いていて、トップロープから相手めがけて飛び掛る前に、意味のない腰ふりダンスを披露し、女性ファンからの黄色い声援を浴びていました。そして勝利のポーズもいやらしい！

こちらは奥さんの瑞穂ちゃん。彼女は会場では注目の的であり、会場に入場直後から悪役レスラーの格好の標的にされます。「ナンダオマエノテノタタキカタハ！ソレジャマルデコドモダゼ！」などとおちょくられ、場内の大爆笑を買っていました。

おいおい、一体誰がこんな所に新宿の月光仮面を呼んだんだ、と言いたくなりますが、れっきとした人気レスラーですよ。マスカラ・サグラダさん。

さて、試合も終盤にさしかかると、おっちゃん達のドタバタ試合から、ちゃんと練習されたプロレスへとなります。この青い仮面の彼はかっこよかった。

今日のメインイベンターは「メキシコの馬場」ことラージョ・デ・ハリスコ・ジュニア。こちらもＮＨＫで予習済みでした。でもこの日はいいところなく敗れ、悪役のボスの方が人気も高かったような・・・

ラージョ危うし！

「おいおい、さっきはちょっとやりすぎじゃないか。」
「悪かった悪かった。ところで知ってる？」
「何を？」
「今、日本じゃ大変なんだってさ。」
「何が？」
「耐震強度を偽装したマンションを販売してたのがバレちゃったんだって。」
「そりゃ大変だ。投資目的でマンション買わなくってよかった。」
「それに来年からは定率減税もなくなっちゃうし、再来年には消費税アップだってさ。」
「そいつは金持ちに優しく、貧乏人には厳しいな。」
「そうだよな、どんな階層にも一律に負担してもらうなんて言っても、貧乏人の家でも金持ちの家でも、醤油は月に１本程度だからな。金持ちだから月に醤油３本も買うなんてことないからな。」
「日本じゃ信じられることが少ないなあ。」
「ああそうだとも。俺たちはメキシコ人でよかった。」
「全くその通りだよ。」
（２人で）「ビバメヒコ！」

よく映ってはいませんが、悪役レスラーのあまりにひどい攻撃に、果敢に向かう１人の女性のお客さん。でもお前、奥さんによるヤラセじゃないのか？

めでたく悪役チームの勝利で無事全取り組みが終了しました。この後、リングの上ではサイン会がもようされ、子供たちはノートとペンを差し出すのです。しかし、無常にも場内の電気は消され、我々は会場を追われるように後にしました。

外に出ると家路を急ぐ人の波と、車の列で、さながら花火大会の後という風情。私も往年の名レスラー、ミル・マスカラスの仮面を買いました。始まる前は４０ペソだったのに、帰る時には１０ペソも高くなっていました。見知らぬ子供と記念撮影を済まし、こんな所でぼったくりタクシーに乗るくらいなら、と、明るい所を足早にホテルへと帰る私たちでした。

これが例のポスター。青インクのレトロなデザイン。上からメインイベントが多きな字で、下に行くほどちいさくなり、前座が一番下に小さな字でかかれています。そういえば、相撲の番付表と同じシステムですね。