日本人墓地 Japanese Cemetery

建造物

ブルームの日本人墓地

5.0
旅行時期：2000/11（約25年前）

by yeppoon_loverさん（男性）

ブルームクチコミ：1件

オーストラリア大陸北西部の町ブルーム(Broome)は、東京からパースを経由してたどり着くまで、丸一日を要する場所で、僕は「最果ての地」のような印象を抱いていた。
1998年、実際に丸一日を費やして訪れた。
赤茶けた大地、影をまといながらジッとこちらを警戒の目で見つめるアボリジニの人たち、声を失うほど美しいビーチ…「最果ての地」には、それまでの人生で築き上げてきた価値観が一気に崩れ落ちてしまう、そんな衝撃の連続が待ち受けていた。
これら数々の衝撃を受けたときの感覚を、今でも僕はよく覚えているが、同時に、実際に丸一日を費やして訪れるだけの価値は、そこには絶対にあるという確信も持っている。

そんな衝撃の一つに、日本人墓地(Japanese Cemetery)がある。

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ブルームの町の様々な場所を訪れてみると、遙か遠い日本と深い関わりを持っていることが分かってくる。

第二次大戦中、オーストラリアは枢軸国の日本と相対し、この町は、ダーウィンと共に、日本軍の空襲を受けた。
このツラい出来事は、町の歴史博物館で、様々な展示物から確認できる。

更に遡って1880年代、ブルームでは真珠養殖が始まり、潜水に弱い白人に代わり、中国などのアジア人に混ざり、日本からも何十人、いや何百人もの潜水夫がこの地に渡り、真珠採りに従事していた。真珠採りは、長時間、海に潜る過酷な労働であるため、たくさんの人が、日本に帰ることなく、この地で命を落とした。
ブルームの日本人墓地には、そんな日本の人たちが眠っているのである。

僕は、日本から遥か彼方の地にこのような場所があることに、衝撃を受けた。
当時、人生を30年も生きていない、世の中を分かったようで何も分かっていなかった僕にとっては、何度も書くが、本当に大きな衝撃だった。
「日本に帰りたい」
そう願っていただろうにも関わらず、この地で眠ることになった日本の先人たちに対し、無念の気持ちでいっぱいにり、ジリジリと焼きつく日差しの中、ただただ、立ち尽くしていた。

21世紀に入り、悲しい出来事が起きる。
2009年、ブルームと姉妹都市の関係にある和歌山県太地町が反捕鯨を旗印に掲げる団体による様々なバッシングにさらされる中、ブルームにも姉妹都市関係を解消する圧力がかかり、あろうことか、時期を同じくして、この日本人墓地の多くが何者かの手によって壊されてしまった。

その後の選挙で、姉妹都市解消に賛成を表明した市会議員は落選、ブルームは太地町との姉妹関係の道を続けることを改めて表明する形となり、壊された日本人墓地について今後どうするのか、市側と現地の日本人との間で検討しているところまでは、ＴＶのドキュメンタリーで確認している。
壊された日本人墓地が今後どうなるのか、その後の動静が聞こえこなく、大変気になるところである。

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日本人墓地を後にするとき、遠い地で眠る日本の人たちに対し、僕は頭を下げた。
次に訪れるとき、この墓地がどうなっていようとも、ここで僕は、遠い地で眠る先人たちのために、再び頭を下げるつもりだ。
しかしながら、できることならば、この墓地に眠る人たちが心無い暴力から解放されるように修復されることを、切に願う。