ザルツカンマーグート周辺旅行記(ブログ) 一覧に戻る
ザルツブルク音楽祭のティーレマン指揮のウィーンフィルの演奏会は11時に始まり、12時半ころ終わった。芳醇な響きに包まれて、知人と共に近くのカフェで音楽談義に花を咲かせながら、軽い昼食をとった。この日は2時発の「サウンド・オブ・ミュージック」ツアーバスを予約していた。ザルツカンマーグートの世界遺産巡りのバスを探していたが、午後発のバスの中ではこのツアーしか選択肢はなかった。恥ずかしながら「サウンド・オブ・ミュージック」は見たことがなく、帰国後急いでiTune Storeでレンタル(2日間で400円)し、初めてこのミュージカル映画を見た。<br /><br />この名作は1965年公開、1938年のドイツによるオーストリア併合(アンシュルス)及び第二次世界大戦の前夜のザルツブルクを舞台とする。実在のオーストリア出身のマリア・フォン・トラップによる自叙伝「トラップ・ファミリー合唱団物語」を原作としたミュージカル作品である。ブロードウェイでヒットし、英語圏では人気を博したが、この日のバスガイドによれば、地元ザルツブルクなどドイツ語圏ではほとんど人気はないと言う。<br /><br />なかなか愉快な男性バスガイドで、自身はオーストリアとアメリカのハーフだと言う。道理でアメリカンアクセントの英語を話す。色々と楽しませてくれたが、ドライバーを紹介する中で、「彼の好きな映画は何でしょうか?」という質問に対し、しばらく間をおいて、「正解は「サウンド・オブ・ミュージック」ではなく「スピード」(バスドライバーが暴走を続ける映画)です」には爆笑してしまった。またガイドがツアー客に国籍を尋ねたところ、多くがアメリカ人、残りの半分はイギリス人とオーストラリア人、その他はインド人、中国人など、日本人は私一人だった。料金は40ユーロ、約4時間のツアーだ。皆とはすぐに親しくなって会話を楽しんだ。<br /><br />ツアーバスはミラベル宮殿前のバスターミナルを出発し、まずトラップ邸として使われたレオポルツクロン城に立ち寄り、続いてヘルンブルン宮殿内に移築されたガラスの家を経てザルツカンマーグートに向かい、ザンクトギルケンを見下ろす丘、結婚式が行われたモントゼーの教会で自由行動となる。確かに映像と同じ美しい景色と建築を写真に収めることができる。行きと同じミラベル宮殿に帰還し解散、その後徒歩でマリアが子供達と過ごしたミラベル庭園、モーツァルト小橋を散策した。なおコーラスのコンクールが行われたフェルゼンライトシューレは翌日ラットル指揮のエル・システマ・ジュニアオーケストラの演奏会場であり、ザルツブルク音楽祭の旅行記を参照いただければ幸いである。<br /><br />この映画はうがって見れば矛盾が多い。7人の子供達(実際には連れ子は4人)、リーズル16歳、フリードリッヒ14歳、ルイーザ13歳、クルト13歳、ブリギッタ10歳、マルタ6歳、グレーテル5歳の父親にしてはトラップ大佐は若過ぎる。アメリカでの初公開の1965年当時、トラップ大佐役のクリストファー・プラマーは35歳、マリア役のジュリー・アンドリュースは29歳、実際にはトラップ大佐(実は少佐)はマリアより25歳年上であった。史実はともかく、どの子達も名演で、グレーテルやマルタなどの愛らしい演技は秀逸で、特にグレーテルがマリアが投げたリンゴを受け損なって思わず涙ぐむ場面など忘れ難い。<br /><br />大佐と男爵夫人との婚約披露のパーティで、マリアが大佐と恋に落ちるという設定も少々考えにくい。極め付けは最後の場面で、一家は徒歩でオーストリア国境を越えて中立国スイスに向かうが、地図を見れば明らかにザルツブルクからスイスの国境ははるか彼方であり、途中ドイツ領に入ってしまう(ヒットラーの別荘が近くにある)。史実では列車と車を乗り継いでチロル州の山奥に逃げ、警備が比較的甘かったイタリアとの国境をアルプス越えして脱出したそうである。視覚演出としての効果は大きいので、ここは目をつむっておこう。<br /><br />ミュージカル映画なんて、、、という先入観を持っていたが、この映画は文句無しに楽しめる。そしてこのツアーはどなたにもお勧めできる。

ザルツカンマーグート: 「サウンド・オブ・ミュージック」ツアーバスの旅

22いいね!

2013/07/30 - 2013/08/11

69位(同エリア366件中)

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30

ハンク

ハンクさん

ザルツブルク音楽祭のティーレマン指揮のウィーンフィルの演奏会は11時に始まり、12時半ころ終わった。芳醇な響きに包まれて、知人と共に近くのカフェで音楽談義に花を咲かせながら、軽い昼食をとった。この日は2時発の「サウンド・オブ・ミュージック」ツアーバスを予約していた。ザルツカンマーグートの世界遺産巡りのバスを探していたが、午後発のバスの中ではこのツアーしか選択肢はなかった。恥ずかしながら「サウンド・オブ・ミュージック」は見たことがなく、帰国後急いでiTune Storeでレンタル(2日間で400円)し、初めてこのミュージカル映画を見た。

この名作は1965年公開、1938年のドイツによるオーストリア併合(アンシュルス)及び第二次世界大戦の前夜のザルツブルクを舞台とする。実在のオーストリア出身のマリア・フォン・トラップによる自叙伝「トラップ・ファミリー合唱団物語」を原作としたミュージカル作品である。ブロードウェイでヒットし、英語圏では人気を博したが、この日のバスガイドによれば、地元ザルツブルクなどドイツ語圏ではほとんど人気はないと言う。

なかなか愉快な男性バスガイドで、自身はオーストリアとアメリカのハーフだと言う。道理でアメリカンアクセントの英語を話す。色々と楽しませてくれたが、ドライバーを紹介する中で、「彼の好きな映画は何でしょうか?」という質問に対し、しばらく間をおいて、「正解は「サウンド・オブ・ミュージック」ではなく「スピード」(バスドライバーが暴走を続ける映画)です」には爆笑してしまった。またガイドがツアー客に国籍を尋ねたところ、多くがアメリカ人、残りの半分はイギリス人とオーストラリア人、その他はインド人、中国人など、日本人は私一人だった。料金は40ユーロ、約4時間のツアーだ。皆とはすぐに親しくなって会話を楽しんだ。

ツアーバスはミラベル宮殿前のバスターミナルを出発し、まずトラップ邸として使われたレオポルツクロン城に立ち寄り、続いてヘルンブルン宮殿内に移築されたガラスの家を経てザルツカンマーグートに向かい、ザンクトギルケンを見下ろす丘、結婚式が行われたモントゼーの教会で自由行動となる。確かに映像と同じ美しい景色と建築を写真に収めることができる。行きと同じミラベル宮殿に帰還し解散、その後徒歩でマリアが子供達と過ごしたミラベル庭園、モーツァルト小橋を散策した。なおコーラスのコンクールが行われたフェルゼンライトシューレは翌日ラットル指揮のエル・システマ・ジュニアオーケストラの演奏会場であり、ザルツブルク音楽祭の旅行記を参照いただければ幸いである。

この映画はうがって見れば矛盾が多い。7人の子供達(実際には連れ子は4人)、リーズル16歳、フリードリッヒ14歳、ルイーザ13歳、クルト13歳、ブリギッタ10歳、マルタ6歳、グレーテル5歳の父親にしてはトラップ大佐は若過ぎる。アメリカでの初公開の1965年当時、トラップ大佐役のクリストファー・プラマーは35歳、マリア役のジュリー・アンドリュースは29歳、実際にはトラップ大佐(実は少佐)はマリアより25歳年上であった。史実はともかく、どの子達も名演で、グレーテルやマルタなどの愛らしい演技は秀逸で、特にグレーテルがマリアが投げたリンゴを受け損なって思わず涙ぐむ場面など忘れ難い。

大佐と男爵夫人との婚約披露のパーティで、マリアが大佐と恋に落ちるという設定も少々考えにくい。極め付けは最後の場面で、一家は徒歩でオーストリア国境を越えて中立国スイスに向かうが、地図を見れば明らかにザルツブルクからスイスの国境ははるか彼方であり、途中ドイツ領に入ってしまう(ヒットラーの別荘が近くにある)。史実では列車と車を乗り継いでチロル州の山奥に逃げ、警備が比較的甘かったイタリアとの国境をアルプス越えして脱出したそうである。視覚演出としての効果は大きいので、ここは目をつむっておこう。

ミュージカル映画なんて、、、という先入観を持っていたが、この映画は文句無しに楽しめる。そしてこのツアーはどなたにもお勧めできる。

旅行の満足度
4.5
観光
4.5
ホテル
4.0
グルメ
4.5
ショッピング
4.0
交通
4.0
同行者
友人
一人あたり費用
5万円 - 10万円
交通手段
鉄道 徒歩 飛行機
航空会社
ANA
旅行の手配内容
個別手配

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  • ホーエンザルツブルク城は映像の中にもたびたび登場する

    ホーエンザルツブルク城は映像の中にもたびたび登場する

  • ツアーバスにはサウンド・オブ・ミュージックのイメージ

    ツアーバスにはサウンド・オブ・ミュージックのイメージ

  • トラップ邸として使われたレオポルツクロン城に面する湖で釣りをする人々

    トラップ邸として使われたレオポルツクロン城に面する湖で釣りをする人々

  • トラップ邸として使われたレオポルツクロン城

    トラップ邸として使われたレオポルツクロン城

  • ヘルンブルン宮殿の入り口

    ヘルンブルン宮殿の入り口

  • ヘルンブルン宮殿内に移築されたガラスの家

    ヘルンブルン宮殿内に移築されたガラスの家

  • ヘルンブルン宮殿内に移築されたガラスの家

    ヘルンブルン宮殿内に移築されたガラスの家

  • ヘルンブルン宮殿の庭園に咲く花

    ヘルンブルン宮殿の庭園に咲く花

  • ザンクトギルケンに向かうバスからの眺め

    ザンクトギルケンに向かうバスからの眺め

  • ザンクトギルケンを見下ろす丘

    ザンクトギルケンを見下ろす丘

  • 丘の上からのヴォルフガンク湖を眺め

    丘の上からのヴォルフガンク湖を眺め

  • 結婚式が行われたモントゼーの教会前で自由行動

    結婚式が行われたモントゼーの教会前で自由行動

  • 結婚式が行われたモントゼーの教区教会のファサード

    結婚式が行われたモントゼーの教区教会のファサード

  • モントゼーの教会前のモニュメント

    モントゼーの教会前のモニュメント

  • モントゼーの教区教会の内部

    モントゼーの教区教会の内部

  • モントゼーの教区教会の内部

    モントゼーの教区教会の内部

  • モントゼーの教区教会の内部

    モントゼーの教区教会の内部

  • モントゼーの教区教会の内部

    モントゼーの教区教会の内部

  • モントゼーの教会で自由行動

    モントゼーの教会で自由行動

  • ミラベル宮殿前のザンクト・アンドレー教会

    ミラベル宮殿前のザンクト・アンドレー教会

  • マリアが子供達と過ごしたミラベル庭園のペガサスの泉

    マリアが子供達と過ごしたミラベル庭園のペガサスの泉

  • マリアが子供達と過ごしたミラベル庭園

    マリアが子供達と過ごしたミラベル庭園

  • マリアが子供達と過ごしたミラベル庭園

    マリアが子供達と過ごしたミラベル庭園

  • マリアが子供達と過ごしたミラベル庭園からのホーエンザルツブルク城を眺め

    イチオシ

    マリアが子供達と過ごしたミラベル庭園からのホーエンザルツブルク城を眺め

  • マリアが子供達と過ごしたミラベル庭園

    マリアが子供達と過ごしたミラベル庭園

  • マリアが子供達と渡ったモーツァルト小橋

    マリアが子供達と渡ったモーツァルト小橋

  • マリアが子供達と渡ったモーツァルト小橋

    マリアが子供達と渡ったモーツァルト小橋

  • モーツァルト小橋からホーエンザルツブルク城の眺め

    モーツァルト小橋からホーエンザルツブルク城の眺め

  • コーラスのコンクールが行われたフェルゼンライトシューレ

    コーラスのコンクールが行われたフェルゼンライトシューレ

  • 可動式の天井を開いたフェルゼンライトシューレ

    可動式の天井を開いたフェルゼンライトシューレ

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