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1).旅の始めに                                                                                                                                        <br /><br />                                                                                               転寝と 旅を続ける 春炬燵<br />  <br />  芥川龍之介の「長江游記」や、松本重冶の「上海時代」には、彼らが旅した1930年代の「廬山」での出来事等が、あれこれと書かれている。当時、国民党の蒋介石は、「廬山」で、侵略を拡大する「対日問題」と、解放区を拡大しつつある「対共問題」に関する、重要会議を開いている。その結果、1937年6月から8月に掛け、共産党の周恩来との間で、国共合作のための本格的な交渉が、行われていた。<br /><br />2).廬山へ <br /><br />  「廬山」と言えば、『枕草子』の中で、清少納言が書いている「廬山」を、僕は思い出した。中宮に、「香炉峰の雪は?」と尋ねられ、「直ぐに御簾を挙げた」と、清少納言は、如何にも得意気に、書いている。<br />  「白楽天」が、「九江」に左遷され、住んでいた草堂から「廬山」を眺め詠んだ詩に、「香爐峯雪撥簾看」(香炉峰の雪は簾を撥ねて看る)という件(くだり)があるが、その詩を、自分は既に知っていたのだと、言わんばかりの、清少納言の得意満面な様子が、そこには、描かれていた。<br />  「白楽天」の、この地での無聊な日々を辿ろうと、僕は、「廬山」へ来たのだが、生憎と、冬への逆戻りの寒さの中で、朝を迎えた。国民党時代、蒋介石夫人「宋美齢」の名が付けられていた『美廬別荘』が、「廬山会議」のメイン会場であった。共産党による解放後は、「廬山」では、毛沢東主席出席のダンスパーティが、夜な夜な開かれていたようだが、毛沢東夫人江青女史を、ヤキモキさせていたと言う、噂もあったようである。<br />    <br />3).「香炉峰の雪は?」を尋ねて<br /><br />  翌日、「香炉峰」を、麓から眺めようと、「廬山」北面の「九江」側に下り、麓にある「鉄仏寺」と「東林寺」に出かけ、「香炉峰」について尋ねたが、生憎の曇り空の所為もあり、「廬山」の山影さえも、見えなかった。<br />  「廬山」で、「香炉峰」と呼ばれる峯は、北と南の二峰があり、いずれも雲気の立ち上る姿が、「香炉」に似ていることから、「香炉峯」と呼ばれた。白楽天が、「香炉峰の雪は簾を撥ねて看る」と、詠んだのは、どうやら、「北香炉峰」のようである。<br /><br />4).旅の終わりに<br />  <br />  「廬山」からの帰り、「長江」の調整湖である「翻陽湖」近くで、「胡耀邦」(注1)の墓に、偶然出合った。墓地とは言え、大きな公園であるが、生憎の雨降りの所為か、僕以外、訪問者は見当たらなかった。<br />  「山崎豊子」が、ある日本人残留孤児の半生を追い駆け、書き上げた『大地の子』の創作活動を、何かと配慮し、バックアップしたのは、「胡耀邦」であった。この墓の前で、泣き崩れる「山崎豊子」の写真を、僕は思い出していた。<br />  旅の終わりは、何時もの事だが、次第に現実へと引き戻されて行くのである。(完)<br /><br />(注1)胡耀邦:1987年1月、学生運動の責任を問われ、共産党「総書記」を解任される。<br /><br />    * Coordinator:  H. Gu

【江西省】 廬山 * 清少納言の 得意満面な笑みを思い浮かべ 「香爐峰」を 旅する

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2003/03/20 - 2003/03/25

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彷徨人MU

彷徨人MUさん

1).旅の始めに         

                 転寝と 旅を続ける 春炬燵
  
  芥川龍之介の「長江游記」や、松本重冶の「上海時代」には、彼らが旅した1930年代の「廬山」での出来事等が、あれこれと書かれている。当時、国民党の蒋介石は、「廬山」で、侵略を拡大する「対日問題」と、解放区を拡大しつつある「対共問題」に関する、重要会議を開いている。その結果、1937年6月から8月に掛け、共産党の周恩来との間で、国共合作のための本格的な交渉が、行われていた。

2).廬山へ 

  「廬山」と言えば、『枕草子』の中で、清少納言が書いている「廬山」を、僕は思い出した。中宮に、「香炉峰の雪は?」と尋ねられ、「直ぐに御簾を挙げた」と、清少納言は、如何にも得意気に、書いている。
  「白楽天」が、「九江」に左遷され、住んでいた草堂から「廬山」を眺め詠んだ詩に、「香爐峯雪撥簾看」(香炉峰の雪は簾を撥ねて看る)という件(くだり)があるが、その詩を、自分は既に知っていたのだと、言わんばかりの、清少納言の得意満面な様子が、そこには、描かれていた。
  「白楽天」の、この地での無聊な日々を辿ろうと、僕は、「廬山」へ来たのだが、生憎と、冬への逆戻りの寒さの中で、朝を迎えた。国民党時代、蒋介石夫人「宋美齢」の名が付けられていた『美廬別荘』が、「廬山会議」のメイン会場であった。共産党による解放後は、「廬山」では、毛沢東主席出席のダンスパーティが、夜な夜な開かれていたようだが、毛沢東夫人江青女史を、ヤキモキさせていたと言う、噂もあったようである。
    
3).「香炉峰の雪は?」を尋ねて

  翌日、「香炉峰」を、麓から眺めようと、「廬山」北面の「九江」側に下り、麓にある「鉄仏寺」と「東林寺」に出かけ、「香炉峰」について尋ねたが、生憎の曇り空の所為もあり、「廬山」の山影さえも、見えなかった。
  「廬山」で、「香炉峰」と呼ばれる峯は、北と南の二峰があり、いずれも雲気の立ち上る姿が、「香炉」に似ていることから、「香炉峯」と呼ばれた。白楽天が、「香炉峰の雪は簾を撥ねて看る」と、詠んだのは、どうやら、「北香炉峰」のようである。

4).旅の終わりに
  
  「廬山」からの帰り、「長江」の調整湖である「翻陽湖」近くで、「胡耀邦」(注1)の墓に、偶然出合った。墓地とは言え、大きな公園であるが、生憎の雨降りの所為か、僕以外、訪問者は見当たらなかった。
  「山崎豊子」が、ある日本人残留孤児の半生を追い駆け、書き上げた『大地の子』の創作活動を、何かと配慮し、バックアップしたのは、「胡耀邦」であった。この墓の前で、泣き崩れる「山崎豊子」の写真を、僕は思い出していた。
  旅の終わりは、何時もの事だが、次第に現実へと引き戻されて行くのである。(完)

(注1)胡耀邦:1987年1月、学生運動の責任を問われ、共産党「総書記」を解任される。

* Coordinator:  H. Gu

同行者
一人旅
交通手段
鉄道 タクシー 飛行機

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  • 「廬山」の滝<br /><br />『香炉峰の雪は?』と尋ねられ、清少納言は、簾を撥ね、山を眺めた。

    「廬山」の滝

    『香炉峰の雪は?』と尋ねられ、清少納言は、簾を撥ね、山を眺めた。

  • 「廬山」にある19世紀末のイギリス風別荘で、「蒋介石」夫人「宋美齢」の名が付いた『美廬別荘』の入り口に置かれている案内看板。<br />

    「廬山」にある19世紀末のイギリス風別荘で、「蒋介石」夫人「宋美齢」の名が付いた『美廬別荘』の入り口に置かれている案内看板。

  • 「廬山」の日の出<br /><br />この写真を撮った、極近くに置かれた案内看板には、「奥に見える山の峰は、毛沢東主席の横顔にそっくり」と、書かれてあった。

    「廬山」の日の出

    この写真を撮った、極近くに置かれた案内看板には、「奥に見える山の峰は、毛沢東主席の横顔にそっくり」と、書かれてあった。

  • 「廬山」の風景

    「廬山」の風景

  • 「廬山」の風景

    「廬山」の風景

  • 「廬山」 仙人洞<br />

    「廬山」 仙人洞

  • 「廬山」 仙人洞<br />

    「廬山」 仙人洞

  • 「九江」

    「九江」

  • 「九江」

    「九江」

  • 「九江」<br /><br /> たまたま、入ったレストランの生簀で泳いでいる、「長江」で獲れる大鯰(ナマズ)

    「九江」

     たまたま、入ったレストランの生簀で泳いでいる、「長江」で獲れる大鯰(ナマズ)

  • 九江市を流れる「長江」に掛かる橋

    九江市を流れる「長江」に掛かる橋

  • 九江市から「南京」へ向かう列車の最後尾から撮った、沿線風景。

    九江市から「南京」へ向かう列車の最後尾から撮った、沿線風景。

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