BUNGY JUMP（バンジー・ジャンプ）発祥の地 QUEENS TOWN （クィーンズ・タウン）で一歩前へ！

1993/08/08 - 1993/08/08

BUNGY JUMP（バンジー・ジャンプ）！
日本にいた頃は、その言葉も、それがスポーツ・アクティビティの一種だという事も知らなかった。
しかし、この南半球の、そのまた南の発しっこの島国で旅行者をする身となれば、この言葉は日常的な単語になっていた。

最初は、「何を好き好んで高所恐怖症気味の人間が、100ドルもの大金を払ってまで、飛び降り自殺のシュミレーションをしなけりゃいけないんだ？」と思っていた。

しかし、観光とは、不思議な「ハズミ」が無料で付与されるらしい。
いざ、バンジージャンプの発祥の地まで来ると・・・

エリア クイーンズタウン(ニュージーランド)

• 旅行の満足度: 4.0
• 観光: 4.0

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 観光バス ヒッチハイク
• 旅行の手配内容: 個別手配

クライストチャーチから、クイーンズタウンに向かう田舎道でヒッチ・ハイクをする事にした。
（自転車は、ブレナムで売ってしまった）

待つ事3時間、やっと1台の車が止まってくれた。

満面の笑顔で乗り込んだ車内は・・・
なんと、シートからハンドルまで全て羊毛カバー！
さすがニュージーランドという所か。

旅日記
『オポッサム』

俺はヒッチが苦手だ。
当てもなく他力本願で、ひたすら車を待って、やっと止まってくれたら、今度はドライバーとの会話が待っている。
話し好きの人間なら楽しい時間になるだろうが、知らない人間と、２時間も３時間も密室に閉じ込められる状態で、弾むような会話を俺は持っていなかった。

今回も人のよさそうなドライバーの横に座っていても、なんか気まずい。
ほとほとブレナムで自転車を売った事を後悔し出した時、ドライバーがいきなりアクセルを全開にした。

ものすごい勢いで流れ始めた景色の先に、なにか小さい動物がいる。
干からびたアスファルトの上で、のそのそと道を横切ろうとしている
そいつは、オポッサムというねずみではないだろうか？

ドライバーが言い切った。
「We must to kill oposam！」
直訳すると、「オポッサムは殺さなければならない」となる。
どうやらこの動物、この国の畑荒らしの主人公らしく、農夫からは目の敵
にされているらしい。

車はますますスピードを上げた。

坂道を駆け上がった車は、軽くバウンドしながらボンネットを上下させた。
フロント・ガラス越しには、大きな川？いや、湖が映っている。

これが、クイーンズタウン？

ニュージーランドで、最もメルヘンチックな観光名所として知られている「クィーンズタウン」は、美しい湖のほとりに位置していた。

うーん美しい！
しかし、この震えは心が揺さぶられているわけではない気がする。

気温5℃、遠くの山々が雪を頂くこの状況、明日向かうバンジージャンプの峡谷には流氷が流れているそうな・・・

バンジージャンプ・ツアー・バスに揺られて、寒々しい山間部へと向かうと、遠くに古びた吊り橋が見えてきた。

あの真ん中に垂れ下がっている白いヒモがもしかして・・・

谷底までは３０mもあるらしかった。
ビルにすればどれぐらいだろう？

しかし、橋の高さより、老朽化した吊り橋の中央まで行くのが怖い。

途中で橋が崩壊したら、無料でバンジーができるかもしれないが・・・
（ヒモ無しで・・・）

旅日記
『３・２・１・バンジー！』

下を見るのに勇気がいる場所に、両足を縛られて立った経験なぞ、あるはずもなかった。
足首に手際よくゴムを巻きつけていた係りのおじちゃんが、「OK？」と聞いてくる。
OKのはずはないのだが、周りの観客の視線が集中するこの瞬間に、「やめる！実は高所恐怖症なんだ」と言い訳するわけにもいかない。

おじちゃんが、細かい説明を終えた後、「手紙は書いたか？」とポツリと尋ねる。
・・・それは、「遺書は書いたのか？」とでも訳せばいいんだろうか？

吊り橋を渡り始めた時から、心臓は16ビートを奏で、既にアイドリングしすぎの感はあったが、足が飛び込み台の縁にかかり、下を見下ろした瞬間、ターボがかかった。
「心臓がのどから飛び出る」とは、こういう状況かもしれない。

立ちすくむ俺の背後で、観光客が声高らかにカウントダウンを始める。
「３・２・１・・・」
「バンジー！」
との掛け声に答えたのは、以外にも俺の脚のほうだった。
気持ちとは裏腹に、条件反射で身体が宙に投げ出される。

・・・なんて言ったらいいんだろう？
この感じは、そう、深酒をしてエレベーターに乗った時みたいだ。
違いは、目の前の景色が、すごいスピードで迫ってくる事ぐらいだろうか？

１９９３年8月、俺はこの日、飛び込み自殺者の気持ちを理解できた。

下まで降り立ったと思った瞬間、ゴムの収縮でビヨーンと、また引き上げられた。

まるで、ヨーヨーだ。
この上下はいつになったら収まるんだろう？
ジェットコースターに乗っているみたいで、非常に気分が悪いのだが・・・