ミデｲ・ピレネー地方のド田舎での怠惰な日々

2010/07/10 - 2010/07/13

一番好きな旅行は、静かな田舎でなにもしない、
どこにもいかない日々をすごすこと、と最近とみに思うようになる。

おなじみカオール近くのちいさな村ですごした数日間は、思い出す度に
エネルギーをもらえる。

退屈な日々の退屈な旅行記で、ぜひたのしく退屈してください。

エリア フランス

• 旅行の満足度: 5.0
• 観光: 5.0

• 同行者: 家族旅行
• 一人あたり費用: 1万円 - 3万円

ボルドーから高速にのってツールーズ方面に向かう。カオールに近づいてくるとひまわり畑がどんどん増える。

黄金の畑。

高速を下りて県道に入ったところで、車をとめて、ひまわりを撮る。ひまわりは夏のシンボルでは問題なくいちばん。

あとは〜〜巨大な入道雲も夏には欠かせない。

お世話になる親戚の家につく。庭にはさまざまな花が咲き乱れていた。夏の世界は
にぎやかでいい。

ラベンダーのまわりには蜂がいっぱい。

そう、この景色が見たかった。毎年この時期に訪れるのだけれど、ぶどう畑の整然とした美しさは、神々しくて頭がさがる。農家の人達が冬も春も丹誠を込めてつくった。

ぶどう畑へと続く親戚の家の庭もきれいに手が入れられていた。彼らは自分たちの庭から果実、野菜、メインのものは自給している。

7月10日だったから、ぶどうもこんな小さな状態だった。でも今はもうすぐ収穫が始める頃だから、充分熟しているんだろうと思う。

庭の片隅に大輪のピンクの花が咲いている。ダチュラという花。
猛毒で有名らしい。とくに葉が。
しかし、このダチュラ(Datura)、甘く繊細な香りがしてうっとり
させる危険な花だ。

なんでもこの大葉がたばこの葉っぱに似ているので、近くの若者達がいたづら心でたばこのようにくるくる巻いて、火を付け、吸引した途端、ほぼ即死状態になったという話をきいた。

恐ろしいダチュラの花とは対照的に、ぶどう畑のぶどうの根っこにピンクの小さな素朴な花々が咲いている。これは野生の花で、ラバテール（Lavatere）といって、食用花。

その花を採って、ひっくりかえして花弁の先を吸うのだ。散歩途中に２〜３の花をとって、甘い汁を吸う。

花弁の先の部分の甘い汁を吸う。

定年退職したご夫婦が住んでいるのだが、年がら年中、友人や家族とか誰か泊まりに来ている。居心地がいいから。

今年は珍妙なゲストがいた。それは「かけす」

聞いてみると、ほとんど死んだような状態で舞い込んできたという。奥さんが
可哀想におもって、大きめの籠にいれて、水、食物(生の小さいみみずみたいな虫)
をかかさずに与えている。

籠の中だけですごしていると、本来野生のかけす、ストレス状態になるので、
家の中をヨチヨチ歩かせたり、あるいは夕方になると庭に放ってあげる。

家の中だとあたりかまわず緑色の糞を床にちりばめる（！）ので、ご主人は
「いい加減にしなはれ！」とカオール弁で奥さんに不平をいう。

病気の時に羽はほとんど落ちてしまったが、やっとちいさな羽がはえてきた。
しかし、まだ、飛べない。

ずっと人間に育てられたようなもんだから、人なんか怖がらない。だからこどもたちのいい遊び相手だ。子供達にとって、すてきな夏休みの思い出になることだろう。

生き物といえば、ブルドックのチトフ。もう年をとってしまったせいもあり、「角のとれた」優しくて愛嬌のある犬。
奥さんは鳥の散歩のあと、こんどはチトフの散歩につきあうのだ。

ミデイピレネー地方は海から離れているので夏はとても暑い。だからプールの存在は貴重だ。こどもたちは一日中プールですごすといっていい位、水とたわむれる。

ぶどう畑の中のプール。ターコイズ色の水が輝いている。

ニョキ！！

蝉がはげしく鳴いているのがきこえるのだが、それがかえってあたりの静けさを強調しているよう。シンカ〜ンとしているばかり。

夕飯には、庭の畑でとれたジャガイモのソテーと子羊がだされる。

（ついでながら、翌日私はぎょうざをつくって喜ばれた！のである。）

デザートはアイスクリームとやはり庭でとれたミラベル。プラム類に属しているがずっと小粒で、すっぱさがないのでとてもあまい。

夜、奥さんは製パン器で翌日の朝食用にブリオッシュの準備をする。写真は翌朝にできあがった芳ばしいかおりのブリオッシュ。

田舎の一主婦にすぎないのに、彼女の料理の腕はプロ級だ。とにかく、鶏だって、飼育している鶏を殺すことからローストチキンを切ることまで、すべて彼女がやってしまう。

それにしても、忙しい彼女が不平不満をいうのを聞いたことがない。

夕食がすんでも、まだまだ明るい。ブルドックのチトフを散歩させるために、みんなで畑と畑の間の石ころ道をとおって、散歩する。犬は嬉しくて走り回る！

昨年、奥さんはこの場所で、イノシシ一家とでっくわす。私だったら、おびえて、そおっとあとづさりしながら逃げ出すのに、彼女は「そうだ、カメラをもってこよう」といそいで自宅に戻ってカメラをもってきて、写真をとったのだ。

あたりは徐々に暗くなってくる。日没が近づく。周囲の風景をあかね色に染めながら。

明日もきっとたのしい1日になることだろう。夏休みだもの！

この旅行記へのコメント （6）

• kioさん 2012/05/23 23:30:36

  いいですねええ

  幾何学模様のような畑の画像
  
  
  夏の南フランス、、　私のフランスの田舎のイメージ通りの画像の数々、、
  
  なんだか溜息で出てしまうような、、
  そして空気感が伝わるような画像ですよ
  
  いいなあ　素晴らしい！
  
  時がゆったりと過ぎて行くのが　画像を見ているだけで
  
  伝わってきます。

  yukibxさん からの返信 2012/06/01 16:06:37

  RE: いいですねええ

  
  
  KIOさん
  
  お返事おそくなってすみません。
  
  有難うございます。
  ど田舎でなにもないところのリッチな( 精神的に ) 時間でした。
  原発なんてない訳で。
  
  この旅行記は、実は自分でも気に入っているものなのです。手前味噌ですが。
  
  夏がきました。どうぞいい旅行をなさってください。また面白く、「変な」人
  との出会いを語って楽しませてください。
  
  yukibx
  
  
  
  
  
  > 幾何学模様のような畑の画像
  >
  >
  > 夏の南フランス、、　私のフランスの田舎のイメージ通りの画像の数々、、
  >
  > なんだか溜息で出てしまうような、、
  > そして空気感が伝わるような画像ですよ
  >
  > いいなあ　素晴らしい！
  >
  > 時がゆったりと過ぎて行くのが　画像を見ているだけで
  >
  > 伝わってきます。

• おでぶねこさん 2010/08/31 21:51:29

  夏休み。

  yukibxさん、こんばんは。
  
  なんとも幸せな気持ちでいっぱいになりました。
  ちゃんと生きてる。。。
  誠実で人間らしく。
  
  にぎやかなセミのいる静かな空間。
  そんな場所に飛んでいきたくなりました。
  
  素敵な夏休みをありがとうございます。
  
  　おでぶねこ

  yukibxさん からの返信 2010/09/01 02:14:42

  RE: 夏休み。

  おでぶねこさん、メッセージをありがとうございました。
  
  たしかに、なにもしなかったのですが、充実感に満たされた
  時間がもてました。
  それを感じてくださって、嬉しいです。
  
  ではカンペールの旅行記、楽しみにしています！
  
  お元気で！
  
  yukibx
  
  

• georgeさん 2010/08/31 10:47:57

  かわゆいです

  角のとれたてはよいですね。

  yukibxさん からの返信 2010/08/31 17:41:18

  RE: かわゆいです

  georgeさま
  
  
  > 角のとれたてはよいですね。
  
  　ハッ？！おいしいんですか？角のとれたて。今度いちど
  　味わってみます。
  　かくいう自分も、こういっちゃあ何ですが、角のとれたて、で
  　ございます。犬だけではございません。
  
  　お元気でお過ごしですか？日本はいまだに猛暑とききます。こちらは
  　なんだか、秋の気配さえしてきました。急がないと冬になってしまいそう
  　なので、旅行鞄を準備なされたほうが。。
  
  　yukibx