1995/01/14 - 1995/01/31
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北風さん
地図で見るインドは逆三角形の形をしていた。
この国だけで、一つの大陸に相当する程の面積と人口をかかえている。
そして、その都市の多くは三角形の縁(つまり海岸線)に沿って発達していた。
インド観光に関する情報を総合すると、
「短期ならば、デリー〜カルカッタ間の北部インド横断ルート」
「長期ならば、北部+デリー〜カニャークマリ間のインド西海岸ルート」
「超長期ならば、入国都市を基点とした右周りか左周遊ルート」
超長期旅行者で、北部インドの中央の都市に入国した自分が選択したのは、インド右回り周遊ルートだった。
(このルートならば周遊後に次の旅行予定国パキスタンが近い)
と、いう事で、ブッダガヤ経由でカルカッタを目指す事にした。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 鉄道
-
さて、ベナレスを拠点にカジュラホで勉強もしたし、12年に一度のクンバメーラも観た!
再びベナレスに帰ってきた時には、既に以前の移動型へと旅のスタイルを取り戻している自分がいた。
この勢いでインド周遊を開始する為に、東に向かう列車のチケットを昨日のうちに購入完了!
意気揚々と、ベナレスと決別する朝を迎えたが・・・ -
旅日記
『リクシャーワーラー』
俺は焦っていた。
何故なら、列車の時間に遅れそうだったからだ。
はやる気持ちは既に50m程先を走っているのだが、現実の風景は競歩と同じくらいのスピードでしか流れていかない。
人力車「リクシャーワーラー」に乗っているのだから、当たり前と言えばそれまでかもしれないが、ちょっと遅すぎないだろうか?
慌てていた為、よく人選もせず、ホテルの前に座っていたリクシャーワーラーを選んだのは失敗だったかもしれない。
調子の良くないエンジンで走るF1レーサーもこういう気持ちになるのだろうか?
落ち着く為に、煙草を吸う事にした。
「シュボッ」というライターの音に、リクシャーマンが振り返る。
完全な余所見運転で直進する人力車ほど怖い物はない。
なにしろ、ブレーキがついていないのだから。
仕方がないので、煙草を2,3本、リクシャーマンに手渡した。
途端、「サンキュー」の言葉と共にスピードがグンと上がる。
すごい!
たかが人力車でここまでスピードが出るものかと思う程の速さだ!
このリクシャーワーラーにとって、煙草はターボを意味していたらしい。
あっという間に、駅の近くにたどり着いた。
多分、あの角を曲がれば駅前に出るはずだった。
ただし、このスピードで曲がれればな話だが・・
迫り来る路地の石壁!
必死に舵をとろうと小刻みに足を動かすリクシャーマン!
しかし、いくら不思議の国インドでも、慣性の法則は存在したらしい。
全然スピードが落ちずに壁が迫ってくる!
と、その時、リクシャーマンが、道端に寝ている牛のどてっぱらを蹴りこんだ!
牛が悲痛の叫びをあげる中、反動でわずかに進路が変わり速度が落ちる。
喜んだのもつかの間、今度の進路上には乞食軍団がたむろしていた。
リクシャーマンは、なんのためらいも見せず、今度は乞食に体当たりをかましに行っていた。
辺りが静かになった。
どうにか俺は振り落とされずに済んだらしい。
牛と人間のクッションのおかげで、このF1マシンも無事だ。
肝心のエンジンの方は、なんと、乞食に向かって怒鳴り散らしている。
何処から見てもこちらの落ち度だと思うのだが、カースト制度の世界では相反する出来事みたいだ。
とにかく俺は、リクシャーに乗る時に、煙草をプレゼントする事だけはやめようと心に誓った。 -
旅日記
『インドの列車』
俺は別に天災による避難場所にいるわけではなかった。
ただ、夜11:00発の夜行列車が、「12時間」ほど遅れただけの駅構内にいるだけだった。
インドの鉄道は、なんとコンピューターを使った予約システムを導入していた。
俺が今持っているチケットも、昨日、モダンなプリンターがカタカタと弾き出した物だ。
あの時、総ガラス張りの近代的な予約センターの中で、牛が寝ているのを見かけた時、確かに嫌な予感はしていた。
そして今夜、予感は電光掲示板のくるくる変わる発車時刻となって現実へと移り変わっていた。
電光掲示板が最後にたどり着いた数字は、列車の発車が12時間も遅れる事を意味している。
しかし、非現実的なニュースにショックを受けている者は、どうやら俺一人らしい。
他の乗客は、いそいそと床に寝る場所を確保始めている。
「おい、皆、12時間だぞ!12時間!」と叫びだしたい気持ちを沈める内に、昼間あれほど人が行き交い、息もできないほどの賑わいを見せた駅構内は、色とりどりの毛布で敷き詰められた。
インドの寒さをしのぐ為、身体にごわごわの毛布を巻きつける人々、静まり返った空間に赤ん坊の泣き声が響き渡る。
これほど不条理な現実を、平然と受け止めるインド人に、この国に来て初めて畏怖を抱く。
ガンジーの唱える「無抵抗主義」とは、こういうものだろうか?
ただ日常的におこりうる事だから、慣れているだけかもしれないが・・・
そう言えば、昼間、列車がホーム突入寸前に、アナウンスされたホームの隣に滑り込んでいた。
それを見ていた乗客達が、山ほどの荷物を背負って、隣のホームへ駆け上がる。
どう見てもドリフのコントにしか見えない光景だ。
以前、俺が予約した列車には、俺のチケットに記入された車両自体が連結されてなかった。
誰かが言っていた言葉がある。
「インドは変わらない。インドは焦らない」 -
旅日記
『寝台車にて』
ブッダ・ガヤ行きの寝台車は、いつもの様にギネスに挑戦するかのような混雑ぶりだった。
今回の車両は、なんと3段ベッド仕立てらしく、まるで鶏小屋みたいに天井までベッドが並んでいる。
自分の座席番号が書かれたチケットを握り締めて、薄暗い車両の中を探し回る。
空いている席から、自分の座席番号にあたりをつけるなんて無駄な事はしない。
インドで自分の座席に他人が座っている事など、当たり前の事だった。
頼れるのはチケットの番号だけだ。
案の定、俺の座席には先客がいた。
竹で編んだ籠に頭を突っ込んでいる男だ。
カースト制度の範囲外で生きている俺にとって、一番手っ取り早い立ち退かせ方は、強気に出る事だった。
男の肩を掴み、頭を上げさせる。
その瞬間、籠の中身が目に飛び込んできた。
妙に平べったい頭部、ぬめるようなうろこ、何処を探しても見当たらない手足、
・・・これは、「コブラ」という生き物ではないだろうか?
男の口からマシンガンの様に言葉が飛び出す。
「俺のパートナーが、ぐったりして元気がないんだ」
・・・こいつは「レッドスネークカモン!」でおなじみの蛇使いなのか?
こんなに寒いインドの冬で、元気一杯の変温動物の蛇がいたらお目にかかりたいものだが、そういう事を問題にしている場合じゃない。
だいたい、なんでコブラが列車に乗れるんだ?
いや、そんな事より、俺の席からその爬虫類をどけてくれ!
・・・何故こんな信じられない事が起きるんだろうと考えるのはやめよう。
答えは決まっている。
「何故なら、ここはインドだから」 -
旅日記
『カメラは・・?』
「ガタン、ゴトン」と列車の旅特有の振動が身体をシェイクする。
先程まで、車窓から降り注いでいた月明かりも、カーテンでさえぎられ、寝台車はその本来の機能を発揮しようとしていた。
蛇使いも、インド人特有の質問攻めも、物売りも、もういない。
やっと、落ち着いて寝る事ができる。
早朝、枕もとの目覚ましが鳴り響いた。
もし、時間通り列車が進んでいたならば、もうすぐブッダガヤに到着する頃だ。
驚くべき事に周りのインド人達は既に起きていた。
寝ぼけまなこで、洗面道具を探す。
しかし、バッグに突っ込んだ俺の手は、空を切るだけで、それらしき小物入れに触れる事ができなかった。
ふと、悪い予感がして、真面目にバッグの中を覗いてみた。
・・・ない。
それどころか、カメラもない!
やられたと気がつくのには、少々時間がかかった。
バッグの中身を探られて、中身だけを盗られるなんて!
バッグは俺の枕もとに置いてあったのだが、何一つそんな気配など感じなかった。
あまりの手際のよさに、怒りが湧いてくる前に感心してしまった。
列車が、ブッダガヤに滑り込んだみたいだ。
俺が最初にする事は、駅長室で盗難届を出す事になった。 -
<Mahabodhi Templeにて>
仏陀が悟りを開いた地には、高さ52mの塔が立っていた。
アショーカ王が紀元前3世紀に建てた寺院が起源らしい。 -
寺院の裏にある仏陀が座したと言われる「金剛座」は、大きな菩提樹の根元にあった。
-
この金剛座では、日本人は離れて見る様にと言われてしまう。
理由は、あのオームの松本おじさんが、昔々無断でここに座った為との事。 -
旅日記
『CALCUTTA(カルカッタ)到着!』
「世界で最も汚い町」と言われる、カルカッタ。
現在も増え続けるハウラー駅裏のスラム街。
半日で鼻の穴が真っ黒になる、汚れた空気。
等々、何を聞いても観光には向かない街の噂だったが・・・
汚さはインドの普通の街レベルで、意外と拍子抜けするものだった。
それどころか、町の中心部には整然としたビル街と高層ビルが立ち並び、さすがインド屈指の大都市の威厳さえ見せている。
あくまでも、噂の話が一つあった。
2〜3年前、ここカルカッタで、国際会議が開かれたと言う。
インド政府は、日常が被災地の様なこの街の現状では、とても国際的な催しなど開けないと考え、大規模なクリーン作戦を実行したらしい。
初期の段階で、インドの路地裏の主「野良牛」が、街角から姿を消した。
そして次に、深夜の街角で軍隊のトラックが、乞食を集め始めたらしい。
数週間後、この街からは、インドの2大シンボルが忽然といなくなった。
それから数ヶ月経ち、一人の乞食がこの街に現れ、事情を明かす事になる。
彼は以前、軍隊のトラックに仲間と共に寿司詰め状態にされて、とてつもなく広大な何も無い高原に連れて行かれ、置き去りにされたと語りだした。
そこには、以前見かけたこの街の牛も、数え切れないぐらいに放たれていたとの事。
彼は、なんと、その場所から歩いて帰って来たと言う。
高原は「デカン高原」らしかった。
つまり、インド政府は、牛と乞食を、デカン高原に捨てに行ったとの物語だった。
この噂を、他の国で耳にしたなら、一笑に付したかもしれない。
しかし、この国の地面に立った者なら、その可能性を否定できない。 -
旅日記
『インドのカーペット屋』
ある日、俺はカルカッタの街角で通りがかりの珍しくスーツを着込んだビジネスマン風の男に道を聞いていた。
そして、気がつくとカーペット屋でお茶を飲んでいる俺がいた。
「全ての道はローマに通ず」と言う言葉があるが、この国では全ての道はカーペット屋に通じているみたいだ。
インドでは、旅行者がカーペット屋に呼び込まれる事は日常的な出来事だった。
道端に溢れる物売りから言葉巧みに連れ込まれるか、軒先で「まぁ、お茶でも飲んでいかないか」と親切そうに誘われる事がほとんどのパターンだが、今回のように、一見普通そうな地元民から「友人が地図を持っているからそいつの所に行ってみよう」と誘われるパターンもありらしい。
・・・全く、この国の人間はまともな奴なんていやしない。
よく、眠り薬が入っていたと噂されるカーペット屋のお茶だが、今回、俺は金を持っていないので熟睡しても構わない。
まぁ、まだいつもの押し売りトークも始まっていないので最初の一杯は大丈夫だろう。
なかなか美味いチャイを飲み干した瞬間から、友人と名乗るカーペット屋が本領を発揮しだした。
道を尋ねてここまで来た俺の手前、ほんの3分程、地図を広げる。
そして5分ほどの世間話。
(インドに来た当初は、ここら辺で帰ろうとしたが、ここで帰ったら、逆にうんざりするほどの引止め工作が始まる事が最近わかってきた)
「今度、日本にカーペットを売りたいんだが、日本人ウケするデザインを選んでくれ」と話が進む。
20枚ほどのカーペットの中から5枚程を選び出すと、「お前なら、いくらで買う?」とおいでなすった。
話のすすめ方といい、このカーペット屋はなかなかうまい部類に入る。
ここで、実際の値段を言うと、「それじゃだめだ」「じゃあ、これぐらいなら」「よし、じゃあその値段でお前に売ってやる」と、いつしか自分が、買う、買わないの話にすりかわってくる。
俺は、お茶をもう一杯と、お菓子をリクエストした。
ここから先、話に付き合うには、それなりに接待をしてもらわなければ。
のらりくらりとかわす俺の横で、なんと、俺を連れてきたスーツ男が今日の新聞を広げた。
「見ろ、新聞にも載っているように、今日はカーペットのセール日だぞ!こんな値段で買えるのは、今日だけだ!」
もちろん、旅行者の俺にヒンズー後が読めるわけも無く、ただ絨毯の絵の広告にしか見えないが、このトークは初めてのパターンだった。
もう少し、付き合う気力が湧いてくる。
インドを旅する以上、あからさまにボッてくる人間に会わない日は無い。
要は、うんざりする会話の中に楽しみを見つける事が大事だと思うこの頃だった。 -
旅日記
『インドを一時出国した理由』
ブッダガヤで盗まれたカメラの代わりを探して、カルカッタの街中を3日間歩き回った。
昔懐かしいポラロイド・カメラの新品や、3年前の日本製一眼レフの新品がとてつもない金額でショーウインドゥを飾っている現実を受け入れるのに、3日かかったと言った方がいいかもしれない。
そんな中、安宿の近くの旅行代理店の張り紙が目を引いた。
「カルカッタ〜シンガポール片道13500円!」
そう、この時、カルカッタが西アジア圏で格安航空券を入手できる数少ない場所でもある事を思い出した。
シンガポールと言えば、日本製の最新一眼レフが秋葉価格より安く手に入る国だ。
もしかして、飛行機代を入れても、ここで化石カメラを買うのとトントンでは?
気がつくと、俺は久々に銀翼の上で下界を眺めていた。
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コルカタ (カルカッタ)(インド) の旅行記
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