2000/04/13 - 2000/04/13
43位(同エリア71件中)
北風さん
「ボツワナ?どこ、それ?」
・・この大陸に上陸した時につぶやいていた気がする。
長期旅行者の俺の耳に何ら情報が入ってないという事は、ボツワナにはそれほど観るべき所がないことを意味する。
旅はおもしろい。
入国なんて夢想だにしなかった国に、俺は今向かっている。
別に新しい観光名所を聞いたからじゃない。
ただ単に次の目的地ジンバブエに行く為には、ここを通過しなければならなかったからだ。
当初ナミビア北部経由で行こうとした俺の旅の予定は、隣国アンゴラさんが内戦に突入した時点でもろくも崩れ去った。
ナミビア北部へのバスや列車が停止している現在、もはや選択の余地は無い。
地図上で見る限り、ボツワナに入国してから「マウン」なる街までの道は、非常に細い線で記されている。
つまりこのルート、かなり困難な移動になる気がする。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- ヒッチハイク
-
旅日記
『アフリカで一番長い日 Part.1』
ナミビア国境の街に列車で到着したのが早朝7時、それから5時間以上も遅れてバスが来た。そしてこのバス、あれほど待ったにもかかわらず、あっと言う間にナミビア〜ボツワナ国境にたどり着いた。ナミビア出国手続きまでは、午前中とは打って変わって、恐ろしいぐらいにスムーズだった。
ところが、ナミビア出国手続きを終えると、管理官が灼熱のサバンナを指差して「歩け」とのたまう。
この時間帯にあのサバンナの向こうのボツワナ国境までの500mは遠い!
熱波以外、何もさえぎる物がないサバンナの一本道、陽炎がひび割れたアスファルトから立ち昇っていた。
「暑い!」いや、「熱い!」。
たかが500mなのだが、頭上からフライングボディアタックをかましてくるアフリカの陽射しの下、地面にたたきつけられる俺の影は一歩一歩踏みしめるように動き続ける。
ミイラ化寸前でゴールインした時は、ボツワナ入国管理官の黒い剥げ頭にキスしたいぐらいに嬉しかった。
が、しかし、ここで俺を迎えてくれた台詞は、このエリアで最も冷たい事実。
「ボツワナの国境から一番近い街までどれぐらい?」
「8kmだ」
「バスは?」
「10分前に出た」
「じゃあ、次のバスは?」
「明日だ」
・・この野生王国アフリカで、灼熱の太陽を背負って歩く事は、次にマサイ族として生まれ変わった時にやろう。
今現在、俺に残された選択は「ヒッチ・ハイク」しかない!
どうもナミビア入国以来、少しずつ移動手段の選択が減ってきている気がする。 -
「ナミビアから夜行列車で国境まで行って、あとはバスを乗り継いで最寄のボツワナの村まで移動」
、言葉にすれば非常にシンプルで美しささえも感じられる俺の計画。
現実は、見知らぬサバンナのど真ん中で、いつ来るとも知れない、また誰が乗してくれるかもわからないヒッチハイクをしている俺がいた。
「熱い!」
もう何度口にしたかわからない言葉だった。
わずかな日陰に逃げ込もうとも、サバンナをかけぬける熱風が、貪欲な太陽が食べ残した水分のカケラさえ身体中から引っぺがしていく。
こんなマイナーな国に、一体何台の車が入ってくるんだろう?
おまけにその中の何台が、薄汚い黄色い旅行者を乗してくれる気になってくれるのか?
不安とともに頭をよぎる言葉は、「野宿」。
・・いかん!今朝、あの共食いするほど獰猛な便所コウロギの群れを見た一帯に寝る事は死を意味する。
2時間待っただろうか?
一台のワゴンが、便所コオロギ3匹を踏み潰しながら俺の前に止まった。
ラジエター・グリルが跳ね飛ばした便所コオロギでデコレートされている所を見ると、このドライバー、かなりの飛ばし屋だ。
まぁ、俺をこの場所から拾ってくれる車だったら、飛ばし屋でも象牙の密猟者でも構わない。
俺は、今までの旅で最高のジャパニーズ・スマイルを顔に貼り付けて、ドライバーに歩み寄った。 -
旅日記
『アフリカで一番長い日 Part.2』
男は駆け寄る俺に向かって、そこだけピンク色の手の平を差し出した。
「US$30!」
これがアメリカン・ブラックなら、二カッと笑うとこだろう。
疲労しきった俺の脳みそが、瞬間、機能し始める。
バスで確かUS$20ぐらいの行程だ。
車が貴重なアフリカでは、有料ヒッチは当たり前だし、この金額で手を打つのが賢い選択かもしれない。
ところが、俺の口から出た言葉は
「US$10!」
・・馬鹿か?俺は?この状況的にも体力的にも追い詰められている場面で、習慣的に値切り交渉を始めてしまうなんて!
しかし、アフリカの神様は俺を見捨てなかったらしい。男の指がワゴンの荷台を指差した。
アスファルトに集う便所コウロギに別れを告げ、埃だらけのバックパックと汗まみれの身体を荷台に押し込んだ次の瞬間、男はアクセルペダルを床まで踏んづけていた!
すさまじい加速に転がる俺の横を、バックパックが後部ドアへと吹っ飛んでいく!
この急発進、急加速は、もしかしてこのワゴン離陸でもするつもりなのか?
どうやらこのドライバー、黒いアイルトン・セナらしかった。
少なくとも10年以上は使いたおしているワゴンからは、エンジン、ミッション、ボディの至る所から「もっといたわれ!」との悲鳴が聞こえてくる。
男の視線は、陽炎ゆらめくサバンナと、140kmを指して動かないスピードメーターの間でせわしなく移動している。
あっと言う間に国境が小さい点になっていく。
目指すは「マウン」、距離にしておよそ500km、
このスピードなら今日中に行ける。
だが、この運転ならその前に
天国に行けそうな気がする。 -
旅日記
『アフリカで一番長い日 Part.3』
「グギャ、ギャ、ギャ、ギャッ」、このワゴンでブレーキ音を聞くのは3回目だった。
・・国境でヒッチしてから6時間の間で!
一体何が我らがスピード・ジャンキー・ドライバーにブレーキを思い出させたのだろうか?
黒サイぐらいならチキン・レースをやってもおかしくない奴なのだが?
フロント・ウィンドウ越しにヘッド・ライトに浮かぶ「New Power Station」のサイン・ボード!
これは目的地マウンにあるという安宿の名前と同じだが・・
ひょっとして着いたのだろうか?五体満足で!
時刻は夜の7時半、ヒッチ代US$10を払い、フラフラの身体を引きずりながら安宿の前にやって来ると、人間、動物、昆虫全てが物騒なこの国にふさわしく、安宿のくせに高いフェンスに囲まれたゲートにはガードマンが立ちふさがっていた。
ここは刑務所だろうか?
しかし、手にしたガイドブックの地図は、ここに安宿がある事を示している。
試しにガードマンに「ホテルか?」と聞いてみた。
こっくりうなずく。
恐る恐るゲートをくぐると、そこは・・BARが!
左の建物は映画館のサインまで出ている。
回れ右してガードマンに聞いた所、「New Power Station」とはその名の通り、昔発電所だった所をこの国のアーティスト達が買い取って居酒屋にしている場所らしい。
ハンバーガー1個でも注文すると、裏庭の荒地にテントが張れるとの事。
・・つまり、テントを持っていない俺にとって、ここは単なる居酒屋にしかすぎないわけだ。
夜9時、俺は閉館となった映画館の座席に身を横たえていた。
オーナーと交渉した結果、今夜の宿として使える事になった。
どこでもいい!
雨、つゆ、砂、虫、動物、人間に邪魔されない所なら、本当にどこでもよかった。
この長い長い一日を終わらせられるならば。
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