1970/07/02 - 1970/07/02
2362位(同エリア3615件中)
片瀬貴文さん
同じ会社の若い技師T君からも、生き方について考えさせられた。
「この会社に入ったのは、思う存分仕事ができるからさ」
名門チューリッヒ工科大学を卒業し、社会人3年目の彼は、私より4つ若い26才である。
シュッツさんと同じ「技師」だが、月給は3千フラン(約22万円)と、私の6倍。
この額は初任給で、それ以上もらうには、まだ腕が不十分ということらしい。
日本の初任給と比べれば、ほぼ20倍。
独身の彼は、バカンスのテーマに、フランスからネパールまで、往復4万キロの冒険ドライブを選んだ。
あえて冒険と称するのは、ただ単なるドライブでなく、シトロエンの2cv(ドゥーシュヴォー)を使って、独りで行ったからである。
この車はフランス自慢のミニカーで、ボディもメカも限界近くまで切り詰めてあるが、それでいて時速100キロは軽い。
当時わが国でも360ccの「軽自動車」が開発され、デモンストレーションにユーラシア大陸横断ドライブが行われた。
無事大陸横断は達成できたのだが、最終目的地のロンドンを目前に、アムステルダムでドライバーの一人が自殺した。
「ちゃちな車で、精神的に無理があったのだろう」と噂されていた。
こちらの方は自動車メーカーの企画であり、5人のチームが組まれている。
それに対し彼は自費。しかも単独である。
「愛車ドゥーシュヴォーの能力を確かめたかった」
「フランスの技術力がアピールできればと、小さな話題性ある車を選んだ」
このテーマを選んだ動機をたずねた私へ、彼の答である。
その旅行の写真集を出版すべく、編集の最終段階に入っていた。
この会社から400ドル(約14万円)で、私にも声がかかった。
私の給費150ドルや給料100ドルと比べれば、大金である。
パリで食事をともにした十河総裁からも、
「一年は短すぎる。せっかくの機会だから、三年くらいがんばって来いよ」
と、言われている。
乗り気になったが、パリに住む先輩から、
「日本人として一家を構えるならば、600ドルは必要だろう」
と反対され、この話しは沙汰止みとなった。
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