1986/10 - 1986/10
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night-train298さん
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私たちの乗った船はもはやパロスに向うものではなく、予定を変更して、アテネに戻る便でした。 待ちあわせまでにはあと一日あったのですが、パロスは遠回りになるし、アテネからも遠いのです。それならば一日早くアテネに入ってあとの三人を待っていたほうが安心なので、泣く泣くパロス行きはあきらめました。 その船は、数日前ヒロくんが乗ったものと同じ航路でシロス島に立ち寄りました。二つの山の上にびっしり家が立ち並び、その頂上にはそれぞれカテドラルがそびえているのが船から見えます。
シロスを出ると、次はまたアンドロスという島に止まると船内アナウンスが言っていました。
そこで急に私の頭に閃いた!事は、残った一日を、この名も耳慣れない島で過ごすことでした。 船内のフロントに行き、翌日もそこからアテネ行きの船が出る事を確認しました。距離的にもアテネから遠くはないはずです。るみこさんともすぐに意見がまとまり、急いで身支度をととのえ、とうとうアンドロス島で降りてしまったのでした。
この島で下船する人は当然のように少なかったです。 そのわずかな人達も、迎えにきていたバスに乗り、あっという間に消えて二人きり、取り残されてしまいました。
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先のミコノス島とは違い、客引きのおじさん、おばさんどころか人通りもありませんでした。 まずは落ち着くホテルを探そうにも、インフォメーション(観光案内所)すらないのです。 たまたま立っていたお巡りさんに聞いてみましたが、英語が通じません。でも、ホテルという言葉は理解してくれ、港の広場に面 したこざっぱりした気持ちの良いホテルを紹介してくれたのでした。
たった一日の滞在だから、荷をほどくやいなや、さっそく海の方向を目指して散歩を始めた。ホテルのある通 りがメインストリートで、あとは羊や山羊がいる牧草地だけ。道伝いに歩いて行くと、下方に延々と続く砂浜が見えてきました。 海の色は濃いコバルトブルー。
そしてこの広〜い砂浜に私たちだけでした。
壮大な海を独占できるなんてすごい!
陽が沈み、あたりが暗くなる前にそこを引き上げ、再び港のメインストリートに戻ってきました。
道行く人々はあからさまに好奇の目でこちらを見ています。そして、あちこちのおじさんから思いがけず、日本語で挨拶されたのでした。夜だというのに『オハヨウデゴザイマス!』なんて言われたり・・・。 こんな日本から遠い地で日本語を聞くとは・・・。おじさんたちは若いころ、船員をしていて、日本の港に立ち寄ったのでしょう。
通りで唯一のおみやげ屋さんは、オーナー兼店番兼アーティストのおじさん手作りの陶器や布製の小物たちを並べ、どれもセンスが良くて素敵なものばかりでした。
そこで私たちがゆっくりおしゃべりしていると、おじさんは裏のガソリンスタンドの、元船員で、日本を訪れたことのあるおにいさん(ほんの数年前まで船員をしていたらしい。)を連れてきました。
よっぽど日本人が珍しかったようで、おじさんは私たちの事を
『まるで空から舞い降りた天使のようだ!』
なんて今どき誰も言ってくれないようなセリフでなごませてくれました。
なんかエーゲ海にぽつんと残されたようなこの島は、まだ何かが残っている宝の島のように思われました。偶然に来ただけの場所でしたが、この島に出会えたことを大事にしたい。ここは私たちが天使になれる、唯一の島だから。 -
アテネに戻り、待ちあわせ先のホテルにチェックインし、二時間もしないうちに、あとの三人がクレタ島から帰ってきました。
夕食の時間まで間があったので、シャワーを浴びたりのんびりしていると、そこに現れたのは、すでに日本に着いているハズのヒロくんでありました。 -
わけを聞けば、ひどい目にあったらしいのでした。
私たちが見送ったヒロくんの乗ったアテネ行きの船は途中、シロスに寄りました。船は強風のためそこに停泊したまま4日間ストップしてしまい、やっとアテネの空港に着いた時に飛行機はタッチの差で日本へ飛んで行ってしまったのでした。
それで、次の便まであと二日延長されてしまい、今日に至っているということでした。
船中で船出を待っている時の条件は悪く、いつ出港するかわからないのでシロス島にいても船から離れられず、船室でトランプばかりしていたそうです。 私たちはミコノスでヒロくんの乗った船に乗っていれば、島から出る事が出来たのに・・・と、後悔していたので、どちらも大変だったと知って、どの運命も受け止めて楽しく過ごすことが大切なんだという事を学びました。
ちなみに、何故今日このホテルに私たちが滞在しているかがわかったかというのは、勘だったそうです。何はともあれ、私たちは全員の再会を祝ってレストランに繰り出しました。 -
アテネでは一番のお目当てであった、考古学博物館が休館で見学できず残念だったが、パルテノン神殿をはじめ、古代オリンピック場などをまわり夕暮れには近代のオリンピックスタジアムの階段の一番上まで昇り、真っ赤な夕日をこころゆくまで眺めていました。
みんな、それぞれの思いだったと思いますが、幸せな気分でした。 -
あれはギリシャに入って三日目の、まだ丈夫な胃を自慢していたころ、島で美味しいと評判のレストランに、五人プラスヒロくんの六人で、ミコノス島での最後の食事(実際は前記の通 り最後ではなかった)をしました。
メインディッシュはそれぞれ魚やステーキを食べおおいに盛り上がっていたが、デザートをする注文する段になったとき、ウエイターがギリシャ語で書かれた(英語でも、ギリシャ語の発音のまま表記されていた)わけのわからないメニューを持ってきました。英語やラテン語のヨーロッパ語を総動員して勘を頼りに想像します。
ヒロくんは迷わず、即、「僕はメロン!」とか言っちゃって、私はひそかにそんな彼を見下していました。(?)私たちはもっと面 白くて、ギリシャでしか食べられないものが欲しいのです。例えば、ギリシャ風ケーキ、ギリシャ風プリン、ギリシャ風あんみつなどの類いに挑戦したいのです。 -
随分時間をかけて悩んだ末、そんな 挑戦者向きのメニューが五種類並んでいて、五人がそれぞれ違うものを頼んでみようということになったハズだでしたが、実際ウエイターが注文を取りに来たとき、メニューの一番上に書かれていた『バクラバ』に関してだけ、気まぐれにこれは何かと尋ねてみたら、ウエイターは興奮気味に身振り手振りのギリシャ語で説明してくれました。ちっともわからなかったのですが、彼の熱意で、おいしそうなことだけは察しがつきました。(何を根拠に?) 私はバクラバという名前の響きから、ババロアを想像していて、これしかない!と心の中で叫んでいました。
「じゃあ、このバクラバにしたい人は手を挙げて!」 と言うやいなやサッと素早く五人の手が挙がったのでした。いいかげんなものです。
まもなくヒロくんのメロンが運ばれてきて美味しそうに食べはじめました。私たちはこれを横目に、これからもっと美味しいものを食べるんだ!という気持ちで冷ややかにそれを見ていました。
五人はこれからどんなモノが来るのだろうか。不安と大きな期待のなか、それぞれに頭に描いていた『バクラバ』とは・・・。
私はギリシャのババロアとはいかなるものか。フルーツなんかも入っているのかな、などとすっかりババロアを食べる準備をして待っていました。
待ちきれなくて、つい、料理が出てくるカウンターの方に目がいってしまう私たちでした。
すると、カウンターの上にウエイターが運ぶのを待っている物体が目に入ってきました。モノは五つあります。確かに五つです。
でも私たちの『バクラバ』のハズはない・・・。 まさか・・・と思う間もなく俊敏なウエイターはそれを見つけ、その物体を私たちのテーブルに運んだのでした。 やってきたのは案外平凡な形のケーキで、そのケーキの上にフォークが一つずつ垂直に突き刺さった形でサービスされたのでした。その異様さに思わず皆で笑ってしまいます。 -
私の胃はババロアをたべる用意をしていたので、不本意でしたが文句は言えません。ケーキの色は薄茶で、パイのような感じ。そして一口食べてみると、とてつもなく甘くて、その上油っぽい。こってりというよりはべったりと油漬けなっているみたい。 一口食べてやめればいいものを、なぜかみんな黙々と食べています。途中で休んだら食べられないとでも言うように。それぞれの心の中では『メロン』にしておけば良かったと思っていたに違いないのですが、誰もそんな事は口にせず、その代わり、さっきまでのおしゃべりも止まって静寂の中、とうとう全部たいらげてしまいました。
その『バクラバ』のせいか翌日、まずムラやんの気分が悪くなりました。そしてそのあと、夜から私も世にも気持ち悪い思いをして、一晩苦しみ、眠れぬ 程だったのです。
それ以来、ギリシャ滞在中、私の胃はミートソースをかけないスパゲティ、つまりゆでただけのパスタにパルメザンチーズだけをふった、特別 メニュー以外受け付けなかったのでした。
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