1998/09/06 - 1998/09/16
5901位(同エリア6133件中)
さらさん
サラとおばあちゃん、再びギリシャへ
トラブルだらけのギリシャ旅行記第2弾。
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朝の4時半、飛行機はアテネ・エリニコン国際空港へ到着した。そこから9時半の便のプロペラ機でサントリーニ島へ。宿に到着した頃にはお昼近くになっていた。
「まあ、あなた達!たしか1年半前に来たわよね!?」
マリアはサラとおばあちゃんのことを覚えていた。おばあちゃんは喜びのあまり、マリアの背中を、日本人のおばちゃんがよくやる親愛の表現(?)でバンバン叩いた。サラはこれってどこの国でも通じるものなのだろうかと少々慌てたがマリアは嫌な顔せず笑っていた。
夕方、サラはおばあちゃんとフィラへ夕日を見に行った。フィラの夕日もイアに負けないくらいきれいで切なかった。
すごく長い一日だった。サントリーニの空港に到着して出てきた旅行カバンからはタンタンのキーホルダーが取られていたし、会いたい人には会えなかった。サラには辛いことだらけの一日だった。
「今日、わたしの誕生日なんだよ」
彼女はポツリとつぶやいた。
「知ってるよ」
おばあちゃんはそっけなく答えた。
なんだ、覚えてたんだ。サラは黙って夕日を見つめた。フィラタウンは黄金色から茜色に変わりやがて色が失せていった。 -
ビーチからの帰り、二人はピルゴスで途中下車してワインを買いに行った。去年買ったワインの味が忘れられなかったからだ。
サラは去年のと同じ品名を探したが見つからなかった。
何種類か試飲したが、今年のはどれも薬草のような薬っぽい味がする。でもせっかくだから1本くらいは買って帰ろうと思い、一番飲みやすいのを手に取った。しかしそれは3000Drもした。現金は2000Drしか持っていなかった。
「今、わたしは2000Drしか持っていません。だから、明日来ます」と、知っている限りのギリシア語を駆使して店のおにいさんに言ってみた。
彼は、彼女が話し終えると、消え入りそうな小さな声で早口に返した。サラは、彼がしゃべった内容をよく理解できなかった。少し困った顔で、「わかんない」と言うと、彼も困った顔をして小動物のような目で彼女を見ながら、オドオドして引き気味に笑った。 -
サラはどうして言いか分からず、もう1度同じことを繰り返して言った。おにいさんにはちゃんと通じているようだが、彼女にはおにいさんがなんて言ってるのか分からなかった。途方にくれて同じ言葉を繰り返すサラ。なんだか自分が哀れな貧乏人っぽく思えてきた。おにいさんも、とにかく同じ言葉を繰り返していた。そして彼女は、やっぱり理解できず、お互いヘラヘラ笑う。
サラは何度も同じ台詞を聞いているうちに、おにいさんが、
「今日、その2000Drでこのワインを持っていって、明日1000Dr払いに来るの?」と言っているのではないかと気付いた。
常連客でもないのにツケがきくのか?でも、彼女はそうしたいわけではなかったし、かといって、何も言わず何も買わずに店を出たら飲み逃げみたいで嫌なので何とか自分の気持ちを伝えたかった。そこで
「明日(ギリシア語)Come here, O.K?」と言うと、おにいさんはうなずいたので店を出た。
どうやらサラは“明日また来るから”と言いたかったようだが“明日ここにこいよ”と命令してしまったらしい。
とにかく明日、3000Dr持ってワインを買いに行けば一件落着と彼女は思っていた。しかし次の日、店に行くと彼の姿はなく、いたのは女性二人だけだった。 -
ピルゴス散策中、道案内をしてくれた犬。
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サントリーニは西側は写真でよく見る断崖絶壁だが、東側はなだらか。
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朝、6時半にピレウス港に到着した。東の空にはオリオン座が輝いていた。24時間営業の店で朝食をとった後、ナフプリオン行きのバスが出ているキフィスーバスターミナルへ行くためにタクシーをつかまえた。バスや地下鉄を使うことも考えたが、疲れていたし重い荷物を引きずって歩くのがしんどかった。
タクシーの運転手は7000Drだと言った。バスだと700Drもかからない。高いとは思ったが、サラは早く落ち着きたかったので6000Drにまけてもらい(それでも高いが)、トランクに荷物を積みこんで後部座席に座った。運転手は1人のおじさんに声をかけ、助手席に相乗りさせるとようやく車を走らせた。まず、そのおじさんの目的地に行ってからバスターミナルへ向かった。
ターミナルに着いてお金を払い、荷物を下ろしてもらおうと外に出た。運転手はしばらくたって出てきてトランクからカバンを下ろした。そのカバンを持っていこうとするサラを、
「ちょっと待った。あんたがさっき払ったのは1500Drだったよ。500Dr札と5000Dr札を間違えたんだろ。5000Dr払ってくれ」と、運転手は引き止めた。
サラはなんとなくイヤな予感はしていたし、払うとき確かめたのでひるむことなく対抗した。
「わたしは6000Drをあなたに払いました」
「でも現にここにあるのは500Dr札じゃないか」
「そんなこと言われたってわたしが払ったのは5000Dr札だったもん」
「本当か?ちゃんと覚えているのか?」
「ぜーーったい本当」
こんなやり取りを30分以上繰り返していただろうか。そのうち附近の店の人達が数人表へ出てきた。すると運転手は突然態度を変えて、
「問題ないよ、気にするな。ナフプリオン行きのバスはあれだよ。行きな」と言って走り去った。
バスに乗ってからもしばらくサラの怒りは収まらなかった。しかし折角の旅なのにタクシードライバー一人のためにムカついている自分にも腹が立った。
サラのイライラはナフプリオンに着くなり収まった。旧市街地はのんびりとした穏やかな空気が流れている。島より大人びた印象だ。
写真はアクロナフプリオンの近くから見渡した旧市街地。 -
海岸沿いのレストラン
バックに見えるのはパラミディの要塞 -
ホテルの部屋から見たブルジイ島
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ダフニには世界遺産に登録されているダフニ修道院がある。9月中旬までワインフェスティバルが開催されているらしいので、まだ終わってなかったらいいな、とサラは思った。
ダフニ行きのバスは、ガイドブックによるとエレフテリアス広場のPireos Tsaldari通り沿いのバス停から出ているらしい。
ようやくそれらしきバス停について、サラは近くに立っていたおじさんにダフニ行きのバスを聞いた。
「それだよ」。おじさんは目の前のバスを指差した。
サラとおばあちゃんがそのバスに乗ろうとすると、別のおじさんが飛んできて、必死で彼女に何か伝えようとした。
「ダフニへ行きたいんです」と、サラが言うと、
「あ、ならそれでいいよ」と、何事もなかったかのように去っていった。
二人がバスに乗り発車を待っていると、またおじさんがやって来て、運転席を指しながら何か言っている。サラは、“ははぁ、最初に運転手に行き先を告げておけと言ってるんだな”と思い、運転席に向かおうとしたら、おじさんが手を振って止めた。“なんだ、おじさんが運転手に言っておいてくれたのか!”と思い、おじさんにお礼を言うと再び彼は去っていった。
とんだ勘違いだった。40分ほどで着くはずなのにもう1時間は乗っている。そうしているうち、座れないくらいたくさんの人が乗っていたのに、あるバス停でみんな降りてしまった。ここはずいぶんと人気のある場所なんだなとサラが思っていたら、バスに乗りこんできたおばちゃんが驚きの表情で二人を見た。そして早口で何か言った。サラはイヤな予感がした。
想像ではこんな感じ・・・
「あら〜、あんたたち、終点なのに降りないのかい!?」
「わたしたち、ダフニへ行きたいんです」
「あれまー!!なんてこった!ちょいと、運転手さーん!運転手さーーん!!あの人たちダフニへ行くつもりだったらしいよ!」
外で休憩していた運転手が戻ってきた。
「ダフニは15分前に通り過ぎたよ。でもまたアテネに戻るから、その時また通るから、あと5分ほどで発車するからそのまま乗っときな。ところであんたたち、日本人かい?」
サラとおばあちゃんは、今まで何度も船乗りや元船乗りのおじさんに会った。そして彼らは決まってこう言った。
「オレは昔日本に行ったことがあるんだ。トーキョ、ヨコハマ、オーサカ!」
彼もまた然り。
エレフテリアス広場でサラに何かを伝えようとしたおじさんは、やはり、運転手に行き先を告げておけと言ったのだ。ただ、サラが行こうとした時にはまだ運転席にいなかったので止めたに過ぎなかったのだ。
ようやくダフニに着いた。ワインフェスティバルは終わっていた。修道院の中は、息をするのも躊躇われるほど静かだ。以前、サントリーニの教会に入って以来の静けさ。教会のように静寂が耳を圧迫するほどではなかったが、この後ろめたさは自分がクリスチャンではないから感じるのだろうか、とサラは思った。 -
ちょこっと夕食に出るだけだからと小さなバッグにお財布とハンカチだけを入れてサラはおばあちゃんとホテルを出た。
プラカ地区は5月に訪れた時と比べ、とても賑やかだ。ジャグラーのおにいさんの前で見物している子どもたちに交ざって、サラもパフォーマンスに見入っていた。おにいさんはジャグリングしながらニコッと笑った。彼女はハッと我に返り、恥ずかしくなってニコリとした後急いでおばあちゃんの後を追った。
すぐに行けるはずだったタベルナが見つからない。気がつくと南側に見えていなければならないはずのパルテノン神殿が北側に見える。サラは血の気が引いた。どんな時でも地図を手放しちゃいけないんだと今更後悔しても遅い。とにかくこの神殿が南側に見えるところに行かなくてはと、ひたすら歩いた。暗い夜道、見知らぬ人々、ドキドキしながら歩きに歩いた。そしてようやく見覚えのある界隈に戻った時には心底ホッとした。
アクロポリスというランドマークがあってよかった。この夜、パルテノン神殿に一番感謝していたのはサラだったに違いない。
写真はミトロポレオス大聖堂
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