ミシュラン納得のクオリティー
- 5.0
- 旅行時期:2019/06(約7年前)
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by サバ~イ@元ツアコン上から目線さん(女性)
麻布 クチコミ:8件
店のドアを開ける直前まで、わずかに緊張が走っていた。
ミシュラン一つ星店という若干の敷居の高さは、非日常とはかけ離れたことの始まりを意味する心地よい緊張でもある。
しかし、ドアを開けた瞬間からその緊張は解き放される。
目の前に広がるのは、和とオリエンタルをミックスさせた落ち感のあるこぢんまりとした空間。
東南アジアのリゾートホテルのようでもあり、純和風高級旅館のようでもある。
鉄板焼き店にありがちなバブルの香が残る、ぎらついた雰囲気ではない。
着物姿のスタッフ、店主のにこやかな対応も良い意味で格の高さを感じさせないのがいい。
石垣島きたうち牧場のプレミアムビーフがいただける同店。
着席すると、この牛の血統書を拝見させていただける。
金の額縁に入ったそれは、これからいただくビーフへの期待感が一気に高まる。
予約していたのは、おまかせコース。
このコースに、シャンパンとワインをペアリング。
ブルーノ パイヤールのシャンパーニュとともに、素焼きのミックスナッツをいただく。
香ばしさと旨味が1粒に凝縮されているナッツは温かく、カリッとした食感を引き上げる。
カウンター越しに1皿目の黒鮑を見せていただく。
幅15センチほどあるだろうか?
みずみずしい艶を放った巨大とも言えるそれは、調理されることに喜びを感じ、身悶えしているかのようだ。
素材から芸術的な1皿に仕上がるまで、ライブで見られるのは、やはり鉄板焼きの醍醐味だ。
サーブされる1皿目。
・佐渡の海洋水でコンディションを整えた極上黒鮑肝ソース 追い鱧パスタ
やや深めの和食器の中央に、たっぷりの肝ソース。
大きめにカットされた黒鮑。
主役を引き立てるかのように散らされている花びらは穂紫蘇か。
弾力のありすぎる黒鮑と、ほんのりとした苦味と甘味の混ざりやった滑らかな肝ソース。
たっぷりとソースを鮑につけても残るのは、後のパスタのためである。
このソースに、鱧を練りこんだパスタを入れていただくという、斬新さと贅沢さ。
アルデンテとも違う、鱧独特の食感が舌を楽しませてくれるパスタだ。
しかもグルテンフリーと、今時の流行も取り入れているあたりが、さすが抜かりない。
パスタに散らされた海苔が、磯の風味を引き立てる。
このパスタをいただいている頃から、低温調理にこだわるプレミアムビーフが焼き始められる。
・青鮫のフカヒレ 毛蟹本葛餡かけ
底深な器の蓋を開けると、ダイレクトに毛蟹の香りがこちらに漂う。
肉厚とは、この蟹のことを言うのであろう。
たっぷりとかけられたフカヒレ餡かけの飴のような艶、芽ねぎの鮮やかな緑色と、目を楽しませてくれるあたり割烹料理と交差する。
フカヒレは、すっぽんで炊いている。
フカヒレの押し返すような弾力ある噛み応えと、これまた毛蟹の弾力をも味わえる贅沢すぎる逸品。
ほんのりとした生姜の風味が、2つの素材の旨味を引き出す。
・雲丹スクランブルエッグ キャビアベルーガ
フライパンでじっくりと時間をかなりかけながら、スクランブルエッグが出来上がっていく様子を眺める。
雲丹の入ったスクランブルエッグは、もともとの卵の質が相まって、鮮やかな橙色を放つ。
フレンチのように盛り付けられたスクランブルエッグの上に雲丹がかけられ、さらにはたっぷりのベルーガキャビアがかけられ、金箔のアクセント。
スクランブルエッグと言っていいものか、いや、これは別の次元のものである。
なめらかすぎるコクのある食感は、卵だけでは到底出せないものではなかろうか?
濃厚な卵の風味だけにとどまらず、濃厚な雲丹の見事なマリアージュ。
そこへ良い塩気のキャビアときているのだから、美味しくないはずがない。
口の中全体が、海の香りで満たされたよう。
ゆっくりと時間をかけていただく、贅沢すぎるスクランブルエッグ。
ふと見ると、横に炭が置いてある。
これは何であろうかと不思議であったが、炭を混ぜ込んだスティック状のパン。
これにスクランブルエッグをたっぷりと乗せていただくのだ。
口に入れるとウエハースのごとく、すっと溶けてなくなるパン自体もいい。
ピュリニー・モンラッシェをペアリングしたが、このペアリングは感動的であった。
スクランブルエッグをいだだき、ワインを口に含む。
するとどうだろう、同じワインとは思えないほど味が変化するのだ。
ワインの甘みがうまく引きだされる、最高のペアリング。
これまでペアリングは何度もし、かつてミシュラン三つ星フレンチを本国フランスでいただきペアリングをしたが、ここまで感動的なペアリングには出会ったことがなかった。
これはミシュラン三つ星でもなかなか敵わない実力派であろう。
そうこうしている間に、メインであるプレミアムビーフが焼きあがってきた。
・石垣島きたうち牧場プレミアムビーフ
究極のクリスピー焼き
黒いプレートに鮮やかな赤色を放つ120グラムのプレミアムビーフ。
付け合わせの焼き野菜は、ナス、レッドパプリカ。
赤い小さな器には、トマト。
ビーフの部位はサーロイン。
期待を込めてナイフを入れると、力は要することなくスーッとあっけなくカットできる。
肉好きなら、この時点で肉質の良さはよくわかるであろう。
1口ほおばると、究極のクリスピーの意が十分すぎるほど納得できる。
肉の表面はカリカリとして香ばしいのだ。
ここまでカリカリとしていながら、肉自体は程良いレア。
究極の焼き方で旨味が閉じ込められたプレミアムビーフは、噛むという動作さえ忘れてしまうほどやわらかい。
2種類のソースが用意され、こちらも美味ではあるが、個人的には肉の旨味が十分に堪能できる塩とわさびが好みだ。
良い肉はシンプルに、少しの塩気があればいい。
・のどぐろ土鍋ご飯
お食事は、贅沢に土鍋でのどぐろ炊き込んだご飯。
のどぐろから、いい感じの脂が米に染み出し、たっぷりのネギの薬味で締まりのある味わいに。
吸い物、温玉もサーブされる。
さっきのスクランブルエッグに使われた卵の温玉だろう。
トロリと濃厚で鮮やかなオレンジ色の卵黄が、とても美味だ。
・葛切り
・シャインマスカット レモングラスのかき氷
デザートは2種類。
つるつると喉越しが良く、弾力のあるふとめの葛切りは、透き通る美しさ。
イカ刺しのようでもあり、讃岐うどんのようなコシもある。
初めていただくレモングラスのかき氷。
店内のオリエンタルな雰囲気は、このレモングラスのかき氷のためにあったのだろうか?
レモングラスの風味は、かき氷をさらにさっぱりさせてくれる。
これに黒蜜をかけていただくと、濃い味わいに。
なかなか、かなり斬新な発想の水菓子は、やはりミシュランの星を取るだけあるというものだろう。
食後のホットコーヒーも、食事の〆にふさわしく美味であった。
気負いがちなミシュランであるが、アットホームな雰囲気の中で、さほどマナーにとらわれることなく楽しく食事がいただける石垣吉田。
鉄板焼きと言う枠だけにとらわれない食事が出来るのもまた、ミシュランの 納得であった。
頻繁にとはいかないが、何かの節目に利用するのも良いのではなかろうか。
- 施設の満足度
-
5.0
- 利用した際の同行者:
- 友人
- 一人当たり予算:
- 10,000円以上
- 利用形態:
- ディナー
- アクセス:
- 4.0
- コストパフォーマンス:
- 3.5
- サービス:
- 4.5
- 雰囲気:
- 4.0
- 料理・味:
- 5.0
- バリアフリー:
- 3.0
- 観光客向け度:
- 3.0
クチコミ投稿日:2020/02/22
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