「本物」の温泉
- 5.0
- 旅行時期:2015/04(約11年前)
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by 猿田彦さん(男性)
元箱根・芦ノ湖周辺 クチコミ:1件
温泉好きの間では言わずと知れた湯治場。
近年オーナーが変わり、現在は日帰り温泉として運営されている。
貸し部屋が基本だが、15時以降は入浴のみの利用も可能なのだそう。
秀明館には特筆すべき点がいくつかある。
まずは建物。
大正期のものというその建物は、かつての湯治場の雰囲気を偲ばせ、味わい深い。
オーナーの交代に際して改築がなされたが、手の入れどころ、入れ(あるいは抜き)具合も良い。
雰囲気を壊すことなく、むしろ良い具合に洗練させている。
風呂、トイレなどの要所も清潔に保たれていて、気持ちがいい。
次に場所。
姥子温泉はその名の通り、坂田金時と山姥の伝説が伝わる古の場所であり、秀明館が建つ森には霊場のような厳かな空気が漂っている。
そういえば、姥子に縁のある人物として夏目漱石があげられることが多いが、もうひとり縁の深い人物に国文学者・民俗学者の折口信夫がいる。折口は姥子の何に惹かれたのか。
最後に温泉。
泉質は単純泉であるが、箱根では他にない自然湧出であり、剥き出しの岩盤から湯が染み出す光景は、どこか神秘的ですらある。
もちろん、加水、消毒なしの源泉かけ流し。
温度はやや高めのため、最初は多少難儀するが、慣れてくると意識が遠のくような心地よさが感じられてくる。
声高に宣伝していないので少々書くのが憚られるのだが、ここを運営しているのは箱根湯本の温泉施設「天山湯治郷」。
そう聞いて見てみると、秀明館には天山湯治郷に通じる透徹した美意識がある。
何かを口うるさく謳うのではなく、むしろ運営者が黒子に徹する「引き」の美学、そして自然にあることへの意志だ。
その意志の端的なあらわれとして、ここの運営者は自身のことをあくまで「湯守」と名乗る(「支配人」という言葉と比べると、そう名乗ることが何を意味するのかがわかるはず)。
温泉施設において「本物」と「偽物」を分けるのは、そういう意志や理念の有無だろう。
客に執拗に媚び、ニーズを満たすことだけが、温泉施設の価値を決めるわけではない。
温泉地においても平気で塩素をぶち込む施設が人気を博するなかで、本物の温泉のあり方を教えてくれる稀有な施設。
文句なしの星5つ。
- 施設の満足度
-
5.0
- 利用した際の同行者:
- カップル・夫婦
- アクセス:
- 2.5
- 車が必要(バス、ロープウェイなどでもアクセス可能だとは思うけれど……)
- 泉質:
- 5.0
- 雰囲気:
- 5.0
クチコミ投稿日:2015/04/13
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