2016/09/12 - 2016/09/12
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ペコちゃんさん
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埼玉県入間市にある「旧石川組製糸西洋館」は、年に数回の限定公開でしか内部を見られない国登録有形文化財です。
狭山市から入間市方面に車で16号線を走っていると見えるこの建物は、何なんだろうと興味を持っていましたが、狭山市民大学の授業の一環で内部見学の機会に恵まれました。
重厚な外観の西洋館に入ると、内部は細部にまで繊細な意匠が施され、建築された大正時代の技とロマンを感じる建物で、ドラマの撮影などに使われる事もあるそうです。
写真は、広々とした豪華な食堂。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 同行者
- その他
- 交通手段
- 高速・路線バス
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西洋館は、西武池袋線・入間市駅(北口)から徒歩7分で行けます。
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人口約15万人の入間市は、狭山茶の主産地として知られていますが、明治から昭和初期にかけては製糸業でも栄えました。
「旧石川組製糸西洋館」は往時の繁栄ぶりを現在に伝える歴史的な建物で、大正12(1923)年、石川組製糸の創業者である石川幾太郎(いくたろう)によって会社の迎賓館として建てられました。 -
木造2階建ての西洋館は、化粧煉瓦の外壁と変化のある屋根窓が印象的な西洋風建造物です。
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これは、玄関と反対側の南側から見た西洋館・・・2階大広間から出っ張ったベランダが印象的です。
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東側から見た西洋館・・・手前の平屋の建物は、厨房などを備えている別館。
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別館と煙突。
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石川幾太郎(1855~1934)は、入間の出身。
明治の初めはお茶の輸出が盛んだったので、農家だった幾太郎は茶業に進出しますが、その後、 “ 贋製茶の輸出 ” が各地でおこり、ついに米国や豪州から日本茶の輸入禁止の措置がとられました。
茶業家としては成功出来なかった幾太郎でしたが、徐々に生糸売買や製造(糸挽き)に関心を高め、明治26(1893)年に石川組製糸の操業を始めます。
日清・日露戦争の戦時景気によって瞬く間に経営規模を拡大し、最盛期の大正期には、現在の入間市に3工場、狭山市に2工場、川越市に1工場と、埼玉県内だけでも6工場を配置したほか、福島県、愛知県、三重県にも工場を持ち、昭和の初めには生糸の出荷高で全国6位を記録する国内有数の製糸会社に成長しました。 -
さらに海外とも盛んに取引し、ニューヨークの五番街にも事務所を設置。
また幾太郎の弟が熱心なカトリック信者だった影響で、自らもカトリックに改宗し、その影響もあってか、幾太郎は女工たちの雇用形態の改善を考え夜学校や日曜学校を開設するなど、慈善的な事業も行いました。
これは、昭和3年に西洋館玄関前で撮られたた写真・・・中央の和服姿が石川幾太郎、左はアメリカの貿易商・チェニー氏。 -
しかし、関東大震災で横浜の倉庫が全焼し、更に生糸に代わるレーヨンなどの化学繊維が出現したことや、昭和恐慌の影響もあって深刻な経営不振に陥り、昭和12年には解散を余儀なくされました。
石川家が所有していた西洋館は、戦後はGHQに接収され、手を加えられてしまった箇所もありますが、全体的には建築当時からの様子をとどめています。
昭和33年に石川家へ返還され、平成15年に入間市に寄贈されました。 -
建物の見取り図・・・2階にある二間続きの和室以外は全て洋室になっており、部屋ごとに天井と照明器具、床周りの模様が異なる点が特徴です。
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玄関から館内に入ると、大きな玄関ホール。
組木の床模様が凝っています。
西洋館は外観も重厚ですが、その内部も大正期の作品とは思えないほど重厚な作りになっており、室内のアールヌーヴォー調の調度品なども素晴らしい。 -
入口正面にある、大理石製の飾り暖炉。
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玄関ホールの天井の細かな模様は、鉄板を叩き出して作られたもので、漆喰のように見せています。
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ホール天井の優雅なシャンデリアは破損したため、付け替えられたものです。
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外国人との商談場所だった1階の応接室は、和風を強く意識した造りで、各部屋の中でも、ひと際凝った造りになっています。
天井は折上小組格天井でまとめられ、壁には創建当時の絹縁壁紙が貼られ、床のペルシャ絨毯と共に当時の雰囲気が感じられます。 -
3人掛けソファの後ろにある調度品・・・梅などの彫刻が見事です。
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応接室に置かれた桐の本棚の調度品・・・本棚の文字は、中国の『書経』にある「八音克諧」「夢想奪倫」「神人以和」(物事がよく調和し、互いに関係を乱さなければ、自然と人は一つになれる)。
左側には本棚の由来が記され、「大正15年11月下旬、69歳の記念に制作され、文字は東京の儒家・亀田英(あずさ)の筆による」とあります。 -
寄木造の床は周囲に組細工の模様があり、中央部を一段高くしてペルシャ絨毯を敷いています。
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この部屋は玄関の右側にある客室・・・天井は鏡天井(棹縁や格縁などを用いず、板を鏡のように平滑に張って仕上げた天井)になっています。
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天井の照明はステンドグラス。
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応接室と食堂の間にある寝室は、他の部屋に比べてシンプルな造りになっており、壁に付けられた木枠には「雷電文」が施されています。
「雷文」ともいうこの文様は、古代中国で愛好された土器の渦巻き状の文様。 -
照明はシンプル。
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1階の広い食堂。
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天井は洋風というより和風建築を彷彿させる折上天井(段差差を付けた天井)で、幾何学的な意匠で飾られています。
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折上天井には、透かし彫りが施され・・・
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照明器具にも同じ模様があります。
創建当時の照明に照らされたレトロな室内は、大正時代の雰囲気。 -
床周囲には組細工の模様があります。
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カーテンレールはシンプルなデザイン。
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創建当時の家具は、アーチ状の鏡が付いた重厚なもの。
その上に、石川幾太郎と妻・せいの写真が飾られています。
下部の扉には葡萄のモチーフが浮き上がっていますが、ワインでも保管してあったのでしょうか。 -
食堂での講義風景。
テーマは「石川組製糸と石川家の人々」で、講師は「石川家の人々」を読む会・会長の染井佳夫さん・・・西洋館を理解する上で、とても参考になりました。 -
玄関ホールから2階へ・・・階段下にあるコーナーも素敵ですね。
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階段の柱や手摺は、一本の木を削りだして作り上げたもの・・・手摺の模様は糸巻になっており、宮大工の職人技が窺えます。
階段の造形美に見惚れながら、ゆっくり2階へ上がります。 -
牛の皮を敷いた2階ホールは、シャンデリアの淡い光と大きな窓から差し込む光で、清々しい空間になっています。
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2階ホールのシャンデリアは創建当時のもの。
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ホールの右側にある貴賓室は招待客の宿泊用の部屋で、西洋館の中で最も贅を尽くした作りになっています。
天井は周囲に小組の各天井を巡らし、中央には金泥で雲を描いた絹布が張られています。
壁紙は、今日では珍しくなった絹の布団張り(綿を挟んだ壁紙)ですが、残念ながら破損が著しい・・・本格的な改修が終わり、広く公開される日が来るのが待ち遠しいものです。 -
天井の照明は、点燈すると落ち着いた風情を醸し出します。
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2階大広間は西洋館で一番広い部屋で、絨毯の下はコルク材の床になっています。
大正時代には舞踏会が開かれたのでしょうか? -
大広間の照明はシンプルなデザイン。
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床の模様。
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大広間の重厚なカーテンボックス・・・布には意匠の違う花のデザインが織り込まれています。
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三崎彌三郎(1886~1962)の作品と言われる大広間のステンドグラス・・・華やかな彩りを添えていました。
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ステンドグラスの図柄は、中国の東洋画の画材とされる四君子(蘭・竹・梅・菊)がデザインされています。
左から「蘭」。 -
「梅」。
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「竹」。
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右端は「菊」ではなく、入間市の特産品・狭山茶の「茶の花と実」をイメージしたものに替えて作られています。
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大広間の窓から平屋の別館の屋根を見ると、石川家の家紋『笹竜胆』の鬼瓦が飾られています。
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そして、高~い煙突。
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大広間から和室へ。
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2階ホールの右手にある和室・・・この部屋は戦後、進駐軍によって西洋館が接収された際に洋室に改造され、その後、返還を受けた後に和室に戻された、という経緯があります。
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入ってすぐの東和室・・・右側は進駐軍によりクローゼットとなった押入れ。
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東西の和室の間にある欄間は、川越の名工・野本民之助義明(明治25年~昭和3年)の作。
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奥の西和室・・・床の間の右側のドアも、進駐軍によって洋間に改築された名残だそうです。
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大正十年七月七日の上棟式の木札・・・設計者:室岡惣七、棟梁:関根平蔵、その他、大工・左官など、建築に携わった人たちの名前が記されています。
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西洋館は、東京帝国大学で建築を学んだ狭山市出身の室岡惣七に設計を依頼し、宮大工の関根平蔵が施工を担当しました。
設計者・室岡惣七の代表作には、埼玉県川島町の「旧遠山邸(遠山記念館)」などがあります。
建築・宮大工の関根平蔵は、神社建築から町屋建築まで幅広く手掛け、父親の松五郎は川越の「時の鐘」等の建築に棟梁として携わっています。 -
木札の裏側には、石川幾太郎の願いや思いが書かれています。
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西洋館の見学は通常は出来ませんが、入間市では修復・改修をした上で一般公開を行なう予定です。
それ迄は、期日を限って特別公開していますので、皆さんも大正時代のロマンが漂う西洋館に、足を運んでみて下さい。
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