ロストフ・ヴェーリキー旅行記を「ロシアの世界遺産番外編」としたのには訳がある。ロシアにはユネスコ世界遺産が25ヶ所登録されている。世界一広い広大な国土だけにシベリアなど地方を訪れることは難しいので、せめてサンクトペテルブルクとモスクワの周辺の９ヵ所は全て巡ってみたいと思っている。ヤロスラーヴリで８ヶ所になるが、その内容、規模にはかなりの差がある。また今回訪れた世界遺産には登録されていないロストフ・ヴェーリキーは同じく「黄金の環」であるヤロスラーヴリ、セルギエフ･パッサートと比較しても遜色ないし、ウラジーミル、スーズダリやカローメンスコエの教会よりも建築芸術的にはるかに優れていると思う。<br /><br />ロストフ・ヴェーリキー行きのバスが出るヤロスラーヴリのバスターミナルは駅からかなり離れている。何人か片言のロシア語で道を聞いたがほとんど要領を得ず、英語のできる人は非常に少ない。７人目にやっとバスターミナル行きのバスを教えてくれる人をつかまえることができた。ヤロスラーヴリで英語の先生をしているという若い女性で、偶然これから実家のあるロストフ・ヴェーリキーに帰るところだそうだ。そして私が頼んでもいないのに一緒にクロムリンを案内してくれると言う。アジアに興味を持っており、インドや中国人のメールをやり取りしているが、日本人と話すのは初めてで日本のことを色々と知りたい、と言う。日本人代表として責任重大だ。<br /><br />ロストフ・ヴェーリキーはヤロスラーヴリの南西53キロ、ネロ湖の横にある人口約３万人の小都市である。年代記では862年に記録に登場する、ノヴゴロドと並ぶロシア最古の都市だ。ヤロスラーヴリのバスターミナルを２時に出発し、約１時間でロストフ・ヴェーリキー中央駅に到着する。この１時間に英語の先生とロシア、日本とアジア諸国について実に色々なことを話した。なお料金は91ルーブル（約250円）。<br /><br />ロストフ・ヴェーリキー（偉大なるロストフ）は、12〜13世紀にかけてロストフ公家の祖であるウラジーミル大公コンスタンチンの時代に強国「ロストフ公国」の中心地となる。やがてロストフ公国は「ロストフ・スーズダリ公国」、「ウラジーミル・スーズダリ大公国」となり、中心はより新しいスーズダリやウラジーミルに移っていく。13世紀にはモンゴル帝国により略奪・破壊され、15世紀ににはウラジーミル・スーズダリ大公国もモスクワ公国に吸収された。18世紀に府主教がヤロスラヴリに移転すると、ロストフは静かな田舎町となった。<br /><br />政治的重要性は失ったが、宗教的重要性は残る。10世紀にはロシア最初期の主教座があり、14世紀にロストフ主教が大主教に格上げされ、16世紀にはロストフ府主教に格上げされた。17世紀の府主教イオナ・シソエヴィチが築かせた現在もロストフのランドマークとなっているクレムリンの規模、芸術的価値は際立っており、モスクワを除けばロシア随一と言われる所以となっている。<br /><br />ヤロスラーヴリには列車で戻ることにした。英語の先生というこの上ないガイドと別れ、ロストフの駅までの道を歩くことにした。たまたま通りかかった片言の英語が通じる高校生の女子が案内してくれると言うので、30分ほど歩いた。それにしても親切な人達に会えて楽しかった。ロストフからヤロスラーヴリ行きの列車は間もなくやってきた。硬い座席のエレクトリーチカに１時間半も乗るとお尻が痛くなる。サンクトペテルブルクに戻る夜行列車の出発は11時過ぎなので時間は十分ある。ヤロスラーヴリ駅前で軽く夕食をとって、少し夜食と飲み物を買って寝台列車に乗り込んだ。疲れもたまっていたので、あっという間に眠り込んだ。

ロシアの世界遺産番外編：「黄金の環」最大のクレムリンを擁するロストフ・ヴェーリキー

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2012/07/28 - 2012/07/29

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#世界遺産

ハンクさん

ロストフ・ヴェーリキー旅行記を「ロシアの世界遺産番外編」としたのには訳がある。ロシアにはユネスコ世界遺産が25ヶ所登録されている。世界一広い広大な国土だけにシベリアなど地方を訪れることは難しいので、せめてサンクトペテルブルクとモスクワの周辺の９ヵ所は全て巡ってみたいと思っている。ヤロスラーヴリで８ヶ所になるが、その内容、規模にはかなりの差がある。また今回訪れた世界遺産には登録されていないロストフ・ヴェーリキーは同じく「黄金の環」であるヤロスラーヴリ、セルギエフ･パッサートと比較しても遜色ないし、ウラジーミル、スーズダリやカローメンスコエの教会よりも建築芸術的にはるかに優れていると思う。

ロストフ・ヴェーリキー行きのバスが出るヤロスラーヴリのバスターミナルは駅からかなり離れている。何人か片言のロシア語で道を聞いたがほとんど要領を得ず、英語のできる人は非常に少ない。７人目にやっとバスターミナル行きのバスを教えてくれる人をつかまえることができた。ヤロスラーヴリで英語の先生をしているという若い女性で、偶然これから実家のあるロストフ・ヴェーリキーに帰るところだそうだ。そして私が頼んでもいないのに一緒にクロムリンを案内してくれると言う。アジアに興味を持っており、インドや中国人のメールをやり取りしているが、日本人と話すのは初めてで日本のことを色々と知りたい、と言う。日本人代表として責任重大だ。

ロストフ・ヴェーリキーはヤロスラーヴリの南西53キロ、ネロ湖の横にある人口約３万人の小都市である。年代記では862年に記録に登場する、ノヴゴロドと並ぶロシア最古の都市だ。ヤロスラーヴリのバスターミナルを２時に出発し、約１時間でロストフ・ヴェーリキー中央駅に到着する。この１時間に英語の先生とロシア、日本とアジア諸国について実に色々なことを話した。なお料金は91ルーブル（約250円）。

ロストフ・ヴェーリキー（偉大なるロストフ）は、12〜13世紀にかけてロストフ公家の祖であるウラジーミル大公コンスタンチンの時代に強国「ロストフ公国」の中心地となる。やがてロストフ公国は「ロストフ・スーズダリ公国」、「ウラジーミル・スーズダリ大公国」となり、中心はより新しいスーズダリやウラジーミルに移っていく。13世紀にはモンゴル帝国により略奪・破壊され、15世紀ににはウラジーミル・スーズダリ大公国もモスクワ公国に吸収された。18世紀に府主教がヤロスラヴリに移転すると、ロストフは静かな田舎町となった。

政治的重要性は失ったが、宗教的重要性は残る。10世紀にはロシア最初期の主教座があり、14世紀にロストフ主教が大主教に格上げされ、16世紀にはロストフ府主教に格上げされた。17世紀の府主教イオナ・シソエヴィチが築かせた現在もロストフのランドマークとなっているクレムリンの規模、芸術的価値は際立っており、モスクワを除けばロシア随一と言われる所以となっている。

ヤロスラーヴリには列車で戻ることにした。英語の先生というこの上ないガイドと別れ、ロストフの駅までの道を歩くことにした。たまたま通りかかった片言の英語が通じる高校生の女子が案内してくれると言うので、30分ほど歩いた。それにしても親切な人達に会えて楽しかった。ロストフからヤロスラーヴリ行きの列車は間もなくやってきた。硬い座席のエレクトリーチカに１時間半も乗るとお尻が痛くなる。サンクトペテルブルクに戻る夜行列車の出発は11時過ぎなので時間は十分ある。ヤロスラーヴリ駅前で軽く夕食をとって、少し夜食と飲み物を買って寝台列車に乗り込んだ。疲れもたまっていたので、あっという間に眠り込んだ。