2021/03/13 - 2021/03/13
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かっちんさん
今回の旅行は、日高本線で廃止される鵡川~様似間の25駅を4日間かけてお別れします。
最終日は、6年前(2015年1月)に発生した低気圧に伴う高波により土砂流失、護岸浸食等が発生した大狩部(おおかりべ)~厚賀間を訪れます。
新冠町の大狩部駅から海岸段丘の下の海沿いに敷設された線路を厚賀に向かって歩くと、道床が流されレールがグニャグニャに曲がり、宙に浮いた状態の無残な光景が目に入ります。
さらに5年前(2016年8月)の台風による高波で橋梁が流された日高町清畠(きよはた)の「慶能舞川(けのまいがわ)橋梁」を訪れます。
鉄道を海岸線ではなく海岸段丘の内陸部に敷設していれば、廃止の運命にはならなかったのでは思ってしまいます。
しかし、その推測は間違いだったことが後日わかりました。
この区間が開通した大正15年、当時の海岸線は線路から離れていたのですが、昭和10年(1935)頃から海岸線の浸食が急速に進みました。
浸食が最も著しい場所では、昭和21年(1946)から昭和34年(1959)までの13年間に97mも内陸側に後退しました。
静内~鵡川の西部日高海岸は、海岸線に沿って段丘や砂浜が分布し、浸食にはきわめて弱い地層のところです。
浸食は季節により変わる沿岸流や、台風による高波、漁港の防波堤などに影響していました。
日高本線は海岸線の徐々に進む浸食と海岸段丘斜面の土砂崩れの対策に常に追われてきた鉄道だったのです。
なお、旅行記は下記資料を参考にしました。
・JR北海道車内誌、2021年3月
・JR北海道資料「2021.3.13ダイヤ改正」
・JR連合 政策News第273号「JR北海道日高本線の被災状況視察を実施!」、2015年11月24日
・東洋経済オンライン、梅原淳著「こんなに?地図と「ズレてしまった」鉄道路線、JR北海道・日高線厚賀―節婦(せっぷ)間」、2019年8月8日
・レイルシナリー「惜別、日高本線:鵡川~様似 (1)」
・北海道の交通「日高線廃線区間全踏切に行ってまいりました」:鳧舞本桐線踏切、漁場通り踏切、厚賀~清畠間の旧線
・IEEEJ Trans 松本雅行著「鉄道運転におけるセンサ技術の動向」
・J-Stage、海岸工学講演会論文集(1970)、鴻上著「北海道太平洋岸にお ける海岸浸食の特徴」
・こひつじの家、鉄道用語「停車場接近標」
・北海道の今を読み解く地域経済ニュースサイトリアルエコノミー「廃止決定「日高本線」の凍てつく冬の鉄橋を点描」:慶能舞川橋梁
・かっちん旅行記
『馬が見ている日高本線と新冠お花畑の旅(北海道)』、2014年5月30日
『日高本線列車代行バスの旅(苫小牧-本桐)2020~海沿いを走るローカル線と牧場~(北海道)』、2020年9月9日
・ウィキペディア「日高本線」「大狩部駅」「清畠駅」
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 交通
- 5.0
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- JRローカル 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
PR
-
日高本線の訪れる駅(JR北海道車内誌の路線図より)
出発した日高幌別駅と、訪れる大狩部、清畠の駅を赤枠で表示します。 -
静内行き代行バス(日高幌別駅)
9:15発の代行バスに乗り、静内へ向かいます。 -
横断幕「ありがとう日高線」のかかる「浦河駅」(バス車窓)
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太平洋の波が押し寄せる「絵笛海岸」(バス車窓)
鉄道は海岸線と離れ内陸部を通っています。 -
雄大な日高山脈(荻伏付近のバス車窓)
ソエマツ岳(左側)から南に続く山並みです。 -
列車交換設備のある「本桐駅」(バス車窓)
代行バスは海岸線から内陸部に入り、日高本線「本桐駅」から再び鉄道と並行します。
写真は「鳧舞(けりまい)本桐線踏切」を渡っているところで「本桐駅」が見えます。 -
山水画のような蓬莱山(蓬栄付近のバス車窓)
-
のんびり草を食む馬たち(蓬栄・日高三石間のバス車窓)
広い放牧場が続きます。 -
イチオシ
小さなカラスとお喋りしている馬(日高東別付近のバス車窓)
「最近、ハエやアブが体にたかってね~」
なので、大きな体に水色の「虫除け馬着」を付けています。
鉄道は牧場の横を通り、線路脇に「ハエたたき」(通信用電信柱)が連なっています。
「ハエたたき」は鉄道に通票を使っていた時代の証です。 -
優しいお母さん馬(日高東別付近のバス車窓)
お母さんはひざまずき、子どもと同じ目線で話しかけています。 -
小さな岩が並ぶ海岸(東静内付近のバス車窓)
バスは再び海岸線を走ります。
このあたりは両端を岬や岩礁に挟まれた凹形の海岸が多いところ。
沿岸100~200mの間は波食を受けた岩質の岸が平行し、海岸線における浸食は起こらず安定しています。 -
静内駅に到着
静内駅に到着し、鵡川駅行きに乗り換えます。
バスの発車まで28分あるので、駅の売店で買物をします。 -
日高本線駅舎一覧(静内駅構内の展示)
日高本線の29駅です。 -
新冠レ・コード館の建物(バス車窓)
バスは静内を出発し隣の新冠へ。 -
海岸段丘の「大狩部」(節婦から眺めるバス車窓)
静内から北西部の門別まで海岸段丘が続きます。
大狩部地区の海岸段丘(写真)は、丘の上に集落や牧場があり、海岸線に鉄道が通っています。
「大狩部駅」は丘から国道を下りたところにあります。
海沿いを通る日高本線は、6年前の冬に高波による土砂流失、護岸浸食など甚大な被害を受けました。 -
海沿いの線路の先が大狩部(バス車窓)
「節婦築港踏切」を渡ります。
節婦~大狩部間は海岸段丘下がやや広いため国道も設置されています。 -
「大狩部駅」の乗降場に到着
「大狩部駅」は国道を挟んだ先の海沿いにあるため、国道下のトンネルを抜けて行きます。 -
トンネル内から眺める乗降場(大狩部駅)
乗ってきた代行バスが停車しています。 -
イチオシ
大狩部駅にお別れに来た二人(大狩部駅)
ホームが見えませんが、海側に階段を下りたところにあります。 -
ゆがんだ線路(大狩部駅)
ホームから節婦方面を眺めると「大狩部川橋梁」の線路がゆがんでいます。 -
落ち込む線路(大狩部川橋梁)
橋から地面に移ったところの線路が落ち込んでいます。 -
宙に浮く線路(大狩部川橋梁)
道床が流され、枕木とレールが浮いています。
では、駅に戻ります。 -
コンクリートブロック造りの待合所(大狩部駅)
出入口の扉がありませんが、風雨を凌げます。 -
イチオシ
駅名標(大狩部駅)
大正15年(1926)厚賀~静内間が開業し、昭和33年(1958)国鉄「大狩部駅」が新設されました。
ホームは待合所よりも低い位置にあります。 -
在りし日の「大狩部駅」(2014年5月8日車窓から)
日高本線が不通になる8ヶ月前に、列車で通りました。
駅名標は海風をもろに受けるので、錆びが出て腐食し、倒れないように補強されています。
海路線の厳しさを感じます。 -
海沿いにあるホーム(大狩部駅)
鉄道は海岸段丘の下を、国道は海岸段丘の上へと分かれます。 -
海風を防ぐ板塀(大狩部駅)
海が間近にあります。
暴風雨や高波に影響されやすい環境です。
では、線路の先(厚賀方面)を歩いて視察します。 -
被災した線路(大狩部~厚賀)
大狩部駅を出てすぐのところです。
線路より海側にある工事用らしき道を歩いて行きます。 -
イチオシ
グニャグニャに曲がる線路(大狩部~厚賀)
自然災害の脅威をあらためて認識します。 -
斜めに耐える線路(大狩部~厚賀)
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犬釘が抜けてしまった枕木(大狩部~厚賀)
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どこまでも続く変形したレール(大狩部~厚賀)
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イチオシ
駅方向に振り返った眺め(大狩部~厚賀)
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被災前の線路(2014年5月8日車窓から)
前の写真とほぼ同じ位置から。
線路は海面から3mほどの高さがあり、しかも工事用道路と高波防止の杭を経たところにあります。 -
土砂崩壊検知装置(大狩部~厚賀)
海と反対側にある海岸段丘には、斜面の土砂崩れが検知できるようになっています。 -
枯草に覆われる線路(大狩部~厚賀)
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海から流れてきた綺麗な石(大狩部~厚賀)
線路の道床には角張った同じ形状の砕石が使われているのですが、丸くてカラフルな石が目立ちます。
この石は海から高波で流されてきたものです。 -
道床が流された別の場所(大狩部~厚賀)
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被災前の同じ場所(2014年5月8日車窓から)
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道床が流され、傾く線路(大狩部~厚賀)
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護岸工事の形跡(大狩部~厚賀)
大正15年開通当時は海岸線が線路から離れていたのですが、次第に浸食されて現在のように接近するとは想像できなかったと思います。 -
被災前の同じ場所(2014年5月8日車窓から)
荒々しい波が護岸にぶつかり、波しぶきを立てています。
駅名標「大狩部」と黄色地に黒斜め線の「停車場接近標」が、「大狩部駅」から約500m手前に設置されています。 -
斜面の土砂崩れ止め(大狩部~厚賀)
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崩れやすい斜面(大狩部~厚賀)
「落石擁壁工事、昭和42年3月30日竣功」と工事記録の表示がありました。 -
平穏な海を進む漁船(大狩部~厚賀)
お昼なので、海面がギラギラと光っています。 -
テトラポッド(大狩部~厚賀)
消波ブロックが波打ち際に置かれています。 -
まだまだ続く線路(大狩部~厚賀)
このあたりから先は高波の被害が少なかったようです。 -
海岸に降りる梯子(大狩部~厚賀)
-
枯草に覆われた線路(大狩部~厚賀)
大狩部~次の駅厚賀までは 5.5km。
このまま歩いて行けそうですが、地図を確認すると厚別川橋梁を渡る必要があるのでここで引き返します。 -
厚別川橋梁を渡る人(2020年9月9日代行バスの車窓から)
半年前に日高本線を訪れた時、大狩部から歩いて来たと思われる人が橋を渡っていました。
海沿いの工事用道路は海岸段丘へ上がる横道がなく、厚別川まで来ると橋を渡るしかないのでしょう。 -
ここで引き返します(大狩部~厚賀)
このあたりの工事用道路は舗装されています。 -
被災前の同じ場所(2014年5月8日車窓から)
海岸に降りる梯子が見えます。 -
イチオシ
綺麗な石(大狩部~厚賀)
線路に落ちていた石を並べています。
変成岩のようです。 -
綺麗な石(大狩部~厚賀)
-
時刻表には掲載してない「大狩部駅(高台)」(バス車窓)
大狩部駅に戻り、次の代行バスで清畠駅へ向かいます。
バスは海岸段丘に上がり、大狩部の集落中心のバス停に停車します。
地元の人にとっては便利な臨時バス停です。 -
厚別川橋梁(バス車窓)
今日は人が渡っていません。 -
日高本線旧線に残る賀張川の橋脚(厚賀~清畠間のバス車窓)
厚賀駅を過ぎると、海沿いの線路が道路を挟み内陸部に移動します。
線路が海に面している厚賀~清畠間は災害が多かったことから、昭和35年(1960)に一部内陸部に線路を付け替えたのです。
旧線区間には、「賀張川(かばりがわ)」河口に当時の橋脚が残っています。 -
「漁場通り踏切」(厚賀~清畠間のバス車窓)
線路は再び海沿いに戻り、しばらくして「漁場通り踏切」が見えます。
踏切の名前がいいですね。 -
清畠駅に到着
ここから豊郷方面 900m先にある慶能舞川(けのまいがわ)橋梁へ向かいます。 -
「慶能舞川橋梁」(清畠~豊郷)
あれっ、橋が途中でなくなっている。 -
イチオシ
橋脚が残る「慶能舞川橋梁」(清畠~豊郷)
平成28年(2016)8月の台風による高波で、橋桁の半分ほどが流されました。 -
残されたコンクリートの橋脚(慶能舞川橋梁)
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橋の両側にある橋台(慶能舞川橋梁)
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流された橋桁(慶能舞川橋梁)
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橋桁の銘板(慶能舞川橋梁)
昭和五年 横河橋梁製作所東京工場製作 鐵道省と表示されています。 -
軽種馬牧場案内(清畠)
清畠地区ではサラブレッドの生産・育成する牧場が数多くあります。 -
日高線(鵡川・様似間)営業終了のお知らせ(清畠駅)
令和3年3月31日をもって営業終了となります。 -
鵡川行き列車代行バス(清畠駅)
最後に乗車する代行バスです。
営業終了の19日前ですが、別れを惜しむ人たちで満員でした。
これで廃止される日高本線25駅、4日間の旅を終わります。
日高の町の発展に貢献してきた鉄道と、海岸線特有の数多くの災害に立ち向かってきた鉄道に「長い間、お疲れ様」とねぎらいの言葉をかけました。
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この旅行記へのコメント (4)
-
- 機乗の空論さん 2021/06/25 08:04:29
- お久しぶりです!
- 拝見しました、行かれたんですね~、線路があんなにもぐにゃぐにゃに曲がるもんですね…、改めて波の脅威を感じます。
しかし、寂しい光景で放置されてることに切なさも込み上げます…、何とか復興出来な方のでしょうか?。日高本線の車窓は北海道らしい海と牧草と馬の三位一体だったのですが惜しい、悔やまれます。道内の鉄路はすこしづつ消えていくのでしょうか?。
- かっちんさん からの返信 2021/06/25 15:59:43
- RE: お久しぶりです!
- 機乗の空論さん
こんにちは。
日高本線の車窓は北海道らしい海と牧草と馬の三位一体だったのですが惜しい
私も同感です。
今の土木技術では危ないところをトンネルで抜けることができたのでしょうね。
自然の脅威は想像をはるかに越えています。
かっちん
-
- エヌエヌさん 2021/06/13 19:27:41
- 心が痛みます。
- かっちん様
若かりし頃、好きだった競走馬を見に日高本線を2往復しました。
初回は静内、二度目は新冠
眼下に広がる太平洋の車窓は今でも忘れられません。
今も良き思い出として残っております。
ぐにゃりとしたレールを見ると切ないですね。
しかし復旧への試算や今後の運賃収入とのバランスを考えると仕方ないと理解できます。
静内でレンタサイクルを借り、牧場巡り
新冠はオグリキャップを見に・・・自分も若かったです。(#^.^#)
- かっちんさん からの返信 2021/06/14 08:54:15
- RE: 心が痛みます。
- エヌエヌさん
こんにちは。
日高本線の思い出は競走馬がきっかけだったのですね。
ぐにゃりとしたレールを見ていると自然の脅威と復旧が難しいことを感じます。
若い時の思い出はいつまでも続いていますね。
かっちん
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