2020/09/01 - 2020/09/29
693位(同エリア16347件中)
ばねおさん
9月に入った途端、パリの街は一変した。
バカンスに出かけた多くの市民が戻り、学校を始め新しい年度が始まったからだ。
通りには人と車があふれ、交通を巡って時には怒号が飛び交う光景もみられる。
夏のパリに居残ってガランとした街の情景を見慣れてしまった身からすると、まるでフィルムのコマがいくつも飛んでしまった映画を見ているような気持になる。
戻ってきた喧噪、これが都会の日常というものだろう。
だが、戻ってきたのは人々だけではない。
バカンス明けのコロナウイルス感染者数は増加する一方で、ついには一日で16000人以上という日も発生した。
人びとの行動をみていると、こうした事態はさもありなんと思うのだが、他人事で済ませられる問題でもなく、ウイルス自衛に気を抜けない日々はまだまだ続きそうだ。
秋の気配はあっても、8月以来の暑さはあいかわらず続き、夏スタイルで油断していたら、ある日突然寒さがやってきた。
季節の移り変わりというものは、もう少し穏やかであっていいじゃありませんか、とつい日本の四季を引き合いに出したくなるのだが、寒さに身震いして慌てて上着を探す羽目になった。
もちろん再び温かくもなったのだが、下旬からは雨が続き、空はどんよりとした雲が垂れ下がっている。
いかにもパリの秋だ、という人もいるが、今となるとつい先ごろまでのあの夏の青空がちょっと懐かしく思えてくる。
- 同行者
- カップル・夫婦(シニア)
- 交通手段
- 高速・路線バス 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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-
パリとその周辺地域では数年前からあちらこちらで様々な工事に出くわすので、本来の姿がどうであったのかが分からないことさえある。
2024年のパリオリンピックを睨んでのことかと思っていたが、必ずしもそればかりではなくパリ圏は大規模な改造計画が進行中なのだという。
ここのところ行っていないが、大がかりな工事を終えたバスティーユの広場もだいぶ変わったという。 -
各所の工事だけでなくパリは道路の利用に大きな変更が加えられつつある。
再選されたパリ市長が自転車の利用促進を図り、車道の一レーンを自転車通行帯に変えているのだ -
例えばこのヴォジラール通り
四車線であったものが左側歩道寄りの車道が自転車用車線となった。
隣は駐車区域で、次が一般車線、それからバス・タクシー専用レーンである。
新たに区分を示す黄色線が引かれ、いやでも守らざるを得ないが、結局、一般車両には一レーンしか割り当てられないので渋滞に拍車がかかること必至である。 -
エコという観点からの施策なのだが、既存の道路の利用変更ということでいろいろ無理が目につく。
バスが歩道に直接横付けできない停留所では、乗り降りするには自転車道をまたいでいくことになる。 -
ほら、こんな具合
自転車は停止したが危ない危ない。
信号のない交差点の右左折時も大変だ。
左右から来る自転車を確認するのに一旦停止して見極める時間が長くかかる。
一車線しか割り当てのない道路で右左折車がでるとたちまち渋滞発生
今のところドライバーには極めて不評なようだ。 -
9月は新たなスタートの月だけど、早々と中止になったイベントも数多い。
毎年慣例のグランパレやシャンゼリゼの美術展も開催が取り止めが決まった。
美術館の名作鑑賞も良いけれど、現在進行形の作品発表を見るのは楽しみなのでとても残念だ。
今はバーチャルやオンラインでの鑑賞という方法もあるが、いかに優れた技術をもってしても実物を前にした感動、質感、匂いというものは感じることはできない。 -
街路樹はすっかり秋色だ
-
歩いていたら頭の上からこんなものが落ちてきた
頭には当たらなかったが、このイガイガが直撃したらかなり痛いだろう
こうやってみると何やら表情があるようにも思える -
中身の正体はこれ
マロニエの実
この時期、マロニエの木の周りには落下した実が散乱している。
花が咲くと初夏、実が落ちると秋
マロニエにはそんな季節感がある -
しばしば訪れたジョルジュ・ブラッサンス公園にあるブドウ畠もそろそろ収穫期を迎え、ネットが被せられた。
モンマルトルのブドウはワインに仕立てられるが、こちらのはどうなるのだろう -
ついでに気になるのが隣にある大量のミツバチの巣箱
さぞかし美味しい蜂蜜がとれるだろうに、これはどうするのかな? -
ジョルジュ・ブラッサンス公園のブドウ畠入り口に咲くコスモス
たしか秋桜と書くのだから秋の花 -
花屋の店頭のアジサイ
フランスのアジサイの最盛期はいつなのだろう?と思うほど常に必ずどこかで見かける
もともとは日本原産の花と聞いているが、これほどフランスで好まれるのは理由があるのだろう -
夏から秋にかけて店頭にたくさん並ぶミラベルだが、9月半ばを過ぎるとあまり見かけなくなった。今年のミラベルさんは早仕舞いなのか。
生食が一番だと思うけれど、ジャムにしたりタルトにしたりずいぶん楽しめる。
ミラベルの存在を初めて知ったのは、ナンシーに旅行した時だが、それ以来すっかりこの果物のファンになった
パン屋でミラベルのタルトが置いてあると必ず買って帰ったが、中で飛びぬけておいしかったのがヴォジラール通り沿いにあったAntoineというパン屋
わざわざ目当てに買いに行ったことも何度かある。 -
パリには有名シェフのスイーツ店がたくさんけれど
普段、口にするのはパン&パティスリーの店のケーキだ
パン屋さんのケーキと言っても良いかもしれない。
だいたいが味も形も大ぶりで、繊細さはないが
中にはスイーツ専門店と並べても決して引けをとらないものもあり
なかなか侮れない
例えていえば、中国料理と町中華の違いと言ったらいいのかも -
この店はパン屋さんだけどケーキ類も美味しく、店頭に掲げられたオリーブ模様の受賞が5つもある。
まだ新しい店なのに2018年~2020年の3年間に5つの受賞歴がある。
オペラ、フラン、エクレア、ガレット、クロワッサン
こうしたガイドブックににも載っていない(多分)ような店を発見し、満足する品に出会えた時はちょっと得した気分になる
L'Artisan Des Gourmands -
モンパルナスのパン屋さんのショーケースで見つけたのがこのケーキ
何と上に載っているのはホオズキ
ホオズキが食べられるとは知らなかった
調べたらホオズキには観賞用と食用があり、ヨーロッパでは食用ホオズキが盛んに栽培されているそうな -
ちょうど花屋さんの店頭に出ていたほおずきを発見
PHYSALIS Chinese Lampion と書かれてあった。
PHYSALISはホオズキのこと。
こちらはアジア原産で食用ではない -
さて、パリで暮らし始めて2年が過ぎ(といっても自分は日本に行くことも多いので実質2/3位しか居ないのだが)3年目に入った9月に3度目の引っ越しをおこなった。
2年間で3回の転居とはいかにも多いのだが、これには小冊子ができるほどの経緯があって、おかげでパリのアパルトマン事情にはすっかり精通するようになった(と思っている)。
今までの住居には広いルーフバルコニーがあって、とても開放感があり、特に外出禁止期間中は気分的に大いに助けられたのだが、少々狭くて不自由なため、しばらく前から転居先探しを始め、運よく見つかったという次第。
とにかくパリは住宅難で、最初に入居したアパルトマンは渡航前に半年以上かけてようやく見つけたほどであった。
しかも大外れ -
アパルトマンは長期用と短期用の2種類に分けて考えられる。
短期用は3か月以内の滞在者向けで、主に観光や出張で利用されることが多く、自分もここ10数年の間ずいぶんと利用してきた。
生活用品一式が備わっていて、電気水道、ネット等の厄介な契約を自分でせずとも、スーツケースひとつで生活が始められる。
但し、料金は年々高くなっており、今はホテル並みである。
これに対し長期用は家具付き、家具なしがあるが通年滞在用で月額家賃で年間契約である。
問題はこの長期用物件が年々減少していることで、良い物件はあっという間に早い者勝ちで決まってしまう。
理由は長期物件が短期用に転用されてしまっているからで、もともと市内に新規に建てられることはないので、キャパは限られてしまっている。
短期用は空室リスクや委託管理費などの経費を差し引いても、ホテル並みの料金設定になってきているため収益が大きいことが、長期用を短期貸し出しに転用にする理由だろう。
ところがコロナウイルス以来、海外からの観光客がなくなり、こうした短期物件の借り手が激減しているようで、自分が今回入居したアパルトマンもこれまでは短期貸しであったという。 -
歩いて25分ほどの転居先には、徒歩とバスで小物類をピストン輸送し、最後に依頼した車で運ぶという段取りでおこなった。
運搬手段はこの大型買い物カートと日本から持参したキャリーカート。
パリでは単身やカップル世帯は自分たちで引っ越しするのがフツー
以前に見かけたのだが、若い女性2人が大きなソファーをバスの後部扉から入れさせてもらって運んでいた。
その大きさには驚いたが、日本であれば車内への搬入も不可だろうし、そもそも奇異な目で見られるに違いない。 -
バスを利用する場合には、混雑する時間帯を避けて乗ったのだが、座席に着席禁止のシールのあるバスとそうでない車両があって、いったい何が正しいルールなのか?分からなくなってくる。
まさに、これぞフランス。 -
密になりがちなメトロの利用を避けるようになってから、定期券の更新を止めてしまった。
どこへ行くにしても5ゾーンまでの定期をフルに使ってきたのだが、コロナウイルス以来、近郊への小旅行も取り止め、もっぱら徒歩+バスが移動手段となった。
バスの利用も定期券を必要とするほど多くはないので、昨年から登場したICカード navigo easy を新たに購入し、チャージしながら使っている。
2021年には紙の切符は廃止となるとされているので、これからは旅行者も多くがこれを利用することになるのだろうと思う。
初めにこの無記名のICカードを2ユーロで購入し、あとは必要に応じてチャージすればよいのだが、使い勝手はまだまだである。
10枚券をチャージすると14.9ユーロなので、切符一枚1.9ユーロと比較するとお得だが有効範囲はゾーン1しかないので、使えるのは実質パリ市内のみ。
もうひとつ Navigo Liberté という記名式ICカードも新たに加わり、こちらは乗り継ぎ等で切符が2枚必要な場合でも1枚分で精算してくれて、利用した分は翌月銀行引き落としとなる。
一見、便利に思えるのだが、やはり使えるのはゾーン1だけ。
それでも乗り継ぎ精算機能があれば navigo easy より便利でお得かなと思い、申し込もうと思っていた矢先に ICカードのシステム不具合で口座から二重引き落としされたというニュースが入ってきた。
こりゃまだまだだな、もう少し様子見にすることにした。 -
さて、これまでは広いバルコニーを利用してせっせと家庭菜園や干物づくりに励んできたのだが引っ越し先にはベランダもバルコニーもない。
困ったのは植物たちの行き先だ。
特にシソは種がこぼれて増殖する一方で、プランターでは足りずにペットボトルを切ってポット仕立てにしておいたのだが、数えてみたら50本近くになっていた。
在住歴の長い知人たちに相談したところ、いずれも欲しいという。
そこまではよかったのだがあとからあとから希望者が増え、話を聞いた不動産業者も家主も欲しいと言い出して慌ててしまった。
フランス人がシソを欲しがるとは思わなかったが、食用であることは知っていたのでサラダにでも入れるのだろう。
植木たちの嫁入り先は決まり、転居先でも手摺にプランターをセットして多少は置けることが分かったので、安堵した。
いずれ自分の名が、フランスにシソを広げた人物として歴史に残るかも知れない。 -
今まで朝に夕に眺めていたシトロエン公園の気球。
-
沈む夕日と並んで降りていく気球。
ふたつの丸をいつまでも飽きずに眺めていたこともあった。
これもいよいよ見納め。 -
さて、転居先はモンパルナス駅に近い場所で近くには郵便博物館やブールデル美術館がある。
ターミナル駅に近いので、騒がしさがあるかと覚悟していたが意外や静かなところで驚いている。
今までは周囲がアパルトマンの連なる住宅街の一画だったのだが、毎日のようにどこかでパーティやら何かの集会の騒がしさが聞こえてきたのに対し、今のところここでは週末も静かなままで不思議にすら思ってしまう。 -
モンパルナス駅は、今までモンパルナスタワー側の存在しか知らなかったが、三つの駅で成り立っているそうな。
こちらはパスツール通りに面したモンパルナス駅で、モンパルナス2あるいはパスツール駅とも呼ばれている。
この辺りは高台になっていて、通りの先にはエッフェル塔が顔をのぞかせている。 -
パスツール駅も5分くらいの距離にある。
モンパルナス駅構内を歩くことを考えれば、メトロを利用するにはこちらのほうが便利なはずだ。 -
契約の日、家主夫妻にいろいろな説明を受けたあと、家主夫人がわざわざ窓辺まで案内してエッフェル塔が眺められることを教えてくれた。
実は下見の際にこのことは知っていたのだが、この眺望を物件の売りにしているらしい家主に、とても嬉しいことを伝えると大いに満足気であった。 -
たしかにこれは思いがけないおまけをつけてもらったようで、率直に嬉しい。
今までシトロエン公園の気球を眺めていた代わりにビックプレゼントをもらったというべきか。
気球は夜には上がらないが、エッフェル塔は常にそこに在り、これからは色々な演出も楽しめそうだ。 -
そして北東方向にはモンマルトルの丘とサクレクールが良く見える。
今までこんなにサクレクールを眺めたことはなく、時間や天候によって色調が変化する様子を初めて知った。
朝日にピンク色
曇りの日は濃いグレー
晴れの日は白亜
夜はライトアップされるので、つい大船の観音様を連想してしまう。
以前、20区のガンベッタのアパルトマンを借りていた時にエッフェル塔とモンパルナスタワーが同時に見えて喜んでいたことを思い出すが、今度はずっと近景だ。
ついでに言えばモンパルナスタワーの先端部も南東方向に見えるのだが、近くの建物が邪魔してほとんどは隠れている。これはむしろ幸いというべきだろう。
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この旅行記へのコメント (2)
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- frau.himmelさん 2020/10/17 14:52:55
- 徒然ならぬ世界・・・
- ばねおさん、こんにちは。
上質なパリの紀行文、徒然草を拝見いたしました。
私もパリにいるような、一緒にパリを散策しているような感覚を楽しませていただきました。
いつぞやはミラベルのことでコメントをいただきありがとうございました。今回ミラベルも登場していますね。本当にフランスではこのミラベルは身近な果物なのですね。
またパリの真ん中でシソを育てていらっしゃった・・。
それを欲しがるパリの方が大勢いるなんて驚きました。
冷ややっこではないし、何に使うのでしょうね。おっしゃったようにサラダに。そう言えば私もモッツァレラとトマトのサラダに、バジルがない時はシソを使ったっけ・・と思い出しました。
世界中、コロナ禍で苦しんでいても、ちゃんと季節のうつろいはあるのですね。
エッフェル塔が見える、それどころかサクレクール寺院の夜景も見える素敵なところにお引越しなさったとか。きっと今頃は毎日窓から眺めていらっしゃるでしょうね、羨ましいです。
昨年、夫と二人で訪れたパリでしたが、時々あの時の楽しかった話題が出ます。もう一度もう少しのんびり滞在したいね~と。
夫も私も齢ですから、そんな機会がまだあるのか・・。あと数年はコロナで無理だと言われていますので。
今回ばねおさんの素敵なつれづれなるままに・・(いえ、つれづれならぬ世界ですね)を拝見して、ますますその思いを強くいたしました。
パリの方でもコロナがまた増えてきたとか、どうかお身体にお気を付けください。
himmel
- ばねおさん からの返信 2020/10/18 04:25:53
- RE: 徒然ならぬ世界・・・
- himmmelさん、こんにちは
長文のメッセージをお寄せいただきありがとうございます。
himmmelさんが店頭のミラベルを見つけたときの喜びを書かれていたことを思い出します。
季節になると市中に豊富に出回り、値段も高くはないので身近な果物ですね。
以前にはその存在すら知らなかったことを考えると、今では立派なミラベルファンになりました。
> またパリの真ん中でシソを育てていらっしゃった・・。
> それを欲しがるパリの方が大勢いるなんて驚きました。
> 冷ややっこではないし、何に使うのでしょうね。おっしゃったようにサラダに。そう言えば私もモッツァレラとトマトのサラダに、バジルがない時はシソを使ったっけ・・と思い出しました。
生育環境がよほど合っていたとみえて、こぼれ種から次々と増えていったのには驚きました。 シソは万能野菜ですね。
サラダはもちろんですが、こちらでは手巻きに具と一緒に巻いてみたり、刻んでパスタのトッピングにしたり、納豆に入れたりで大活躍です。
> エッフェル塔が見える、それどころかサクレクール寺院の夜景も見える素敵なところにお引越しなさったとか。きっと今頃は毎日窓から眺めていらっしゃるでしょうね、羨ましいです。
なにやら自慢げに書いてしまったかもしれませんが、転居先の物件に付いてきた予想外のおまけのようなものです。もちろん大いに喜んでいますが
> 昨年、夫と二人で訪れたパリでしたが、時々あの時の楽しかった話題が出ます。もう一度もう少しのんびり滞在したいね?と。
> 夫も私も齢ですから、そんな機会がまだあるのか・・。あと数年はコロナで無理だと言われていますので。
コロナウイルスによる影響は計り知れませんが、又の機会は必ずやってくると思います。
渡仏して30年、40年あるいは半世紀近くも滞在して日本に帰る方々を多く知っています。
若い時の思いはあるとしても、高齢となり最後は故国に向かう心情はとても理解できます。
自分はまさにその正反対で、故国に戻る方々と同年代でフランスに渡ってきました。
その点、驚かれたり、興味を持たれたりされてはいますが・・・
齢のことは、料金に割引があるかどうかぐらいのことで良いかと思っています。
8月以来、パリはウイルス感染者が記録的に増大し、とうとう夜間外出禁止になりました。
日本はフランスの百分の一くらいの感染者だと思いますが、どうか用心を重ねご自愛ください。
ばねお
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