2015/12/02 - 2016/01/06
2952位(同エリア3770件中)
ぞろめさん
フィレンツェの旅行記です。約1ヶ月かけてイタリアを縦断しましたが、いちばん印象深かったフィレンツェのホテル・ビジューでの出来事を書き残そうと思います。
* * *
ホテル・ビジューの朝はとにかく早い。
まだ誰もいないガランとした食堂でティナが1人、忙しなく動き回っている。この娘は本当によく働く。朝食もサーブすればフロント業務もこなす。年老いた宿泊客にインターネットの使い方を説明したりもする。
「ボンジョルノ」と声をかけてボクはいつもの席に座る。生ハムにサラミにチーズの盛り合わせ。それにクロワッサンなど数種類のパン。さらにミルクとオレンジジュース。どこのホテルでも代わり映えしないこんなメニューが、イタリアでは何故か美味くてたまらない。
朝食が終わる頃に、ティナがカプチーノを運んでくる。彼女は時には立ったまま、時にはテーブルの向かいの椅子に腰掛けて話してくる。
「今日はどこに行くのか」と聞くので「川に行く」と答える。「また川か」と言うので「そうだ」と答える。
「明日はクリスマスでショップもレストランも美術館も休みだから、今日中にウッフィツィ美術館には行っておけ」と言うので、「分かった」と答える。
ティナの言ったことは本当で、翌日の12月25日、街中がゴーストタウンのように静かだった。やることのないボクはフィレンツェ・サンタマリア・ノヴェッラ駅の側のバールで赤ワインを2本買い、ホテル・ビジューの屋上で飲んだ。ワインオープナーがなかったので、ティナに借りた。彼女はワインオープナーと一緒に小さなグラスを1つ持ってきたので、「ありがとう、でも要らないよ」と言うと、「これは私のだ」と笑った。
凍えるようなホテルの屋上で、2人でワインを2本空けた。ドゥオーモ(大聖堂)からの眺めが絵葉書の世界ならば、ティナのホテルの屋上からは市井の生活が見える。中庭に干された洗濯物、ベランダに転がるシャンパンのコルク。そんなものを眺めながら、よく知らない女性と互いの出自や趣味、仕事のことを話しつつ、寒さに震えて過ごすクリスマスは悪くなかった。
フィレンツェには結局、2週間ほど滞在した。最後の日も、朝食後の日課になったアルノ川への散歩に向った。川下の方向からジョガーがやってきたので、すれ違いざまに「ボンジョルノ」と声をかけてみた。するとジョガーは黙って右手を挙げて応えてくれた。その数秒後、ベッキオ橋を真っ黒く染めて、遥か向こうから穏やかな冬の太陽が昇ってきた。
* * *
フィレンツェは花の都と言われている、と最近になって知りました。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- ホテル
- 5.0
- グルメ
- 5.0
- ショッピング
- 4.0
- 交通
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 100万円以上
- 交通手段
- 鉄道
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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