桂林旅行記(ブログ) 一覧に戻る
これは旅行当時に書いたものです。<br />今回(2013年4月)一番驚いたのは、このお話の一番最後に書いてある旅行社のHPへのリンク(宣伝してあげる義理はないので非掲載にはしますが)が当時桂林のローカルな旅行社でひどい日本語のHPだったのに、今では中国全土を取り扱うHPもなんだか立派なところになっていたこと。<br />我々にしごかれた新米君もあれから8年半。ここで立派に成長しているのか、それとも他に転身しているのか、それとももうガイドはしてないのか、少し興味のあるところです。<br /><br />6 oct. 2004 Tokyo to GuangZhou via HongKong<br />「こんなこと滅多になくて、大抵は残ってるもんなんすけどねー」<br /> 東京駅の地下切符売り場の駅員さんがぼやく。<br /> 6:30 7:00と満席で、取れたのが7:15東京発という臨時便ぽい成田エクスプレスのグリーン車。<br /> これさえもあと数席という状況で普通車はすでに満席らしい。<br /> だいたい、出発二時間前を目指して、六時前にうちを出発した俺って何、って感じです。<br /> 東京駅で降りるか、日暮里まで行って京成線の特急で行くかを随分迷ったのに、えいとばかりに京浜東北線を降りたのが間違いだった。<br /> 一時間近い東京駅でのロスタイムのせいで、成田空港到着は八時二十分頃になってしまった。<br /> まあだいたいにおいて国際線は二時間前に来いというのが無茶だと思うんですけどね。<br /> もちろん一時間半を切って着いたとて、発券に影響なし。<br /> 途中千葉駅あたりで、同行の爺(おきな)氏(仮名 以下敬称略)から、「出国しました〜」というメールが来ていたので、とっととチェックインして、出国ゲートも人が大勢並ぶと係員が出てきて窓口を増やすといういつものケースを想定してクローズしているところのそばにいると、思惑通りにすっと抜けて、爺と合流。<br /> JLの「さくらラウンジ」で九時半に株の取引を終えると、ジャンボ機搭乗。<br /> いやはやみなさんどこへ行くのか、って言っても飛行機は「香港行き」だからへそ曲がりの我々を除いて大半の人は香港に行くんだろうけども、ほぼ満席〜。<br /> ここしばらく海外へはビジネスクラスを使っていたので、エコノミーは狭い〜。<br /> 背が高いことのマイナス面がこういう時にいっぺんに出ます。<br /> 大抵はあまり損することはないし、三十年近くこの身長やってると、滅多に障害物にぶつかるということもないし(それでもふた月に一回くらいはどっかこっかで頭ぶつけてますけど)、満員電車とかでも空気は人様よりは新鮮だし、高いところのものを取るのにも便利だし、サングラスするとそれなりに威圧感も出て交渉に有利なこともあるし(をいをい)、と利点の方が多いのですが、飛行機の狭い座席に押し込められる時だけはもう大変です。<br /> だいたいそういう苦しさを知らない小ささをこういう時に生かしてるやつに「ビジネスクラスは贅沢」だの「グリーン車なんてもったいない」だの言われたくない。<br /><br /> 爺とは席は前後の窓側にしてあって、まぁ電車だと座席を回転させて向かい合わせで行きましょうみたいな位置関係なんですが、飛行機の座席は回らないことが多いので、今回もヒソヒソとシート越しにお話ししながら行きました。<br />「遠くに併走している飛行機が見えます」<br />というので見るとはるか彼方しかもだいぶ高度の低い地点にしっぽの赤い小さい飛行機が見える。<br /> まああれだけ遠いとほんとにその飛行機が小さいかどうかは不明ですが、速度はこちらよりも若干遅いらしくて、少〜しずつ後方に下がっていくように見える。<br /> 割とヒマに任せてずっと目で追っていたその時、いきなり斜め前方から猛スピードでこちらに向かって上昇してくるジェット機が。飛行機雲を曳きながらほぼ同じ高さまで来たところで左旋回して後方へとあっという間に飛び去った。<br />「いゃあぶつかるかと思いました」<br /> JAL77回目、ANA1回にCX(キャセイパシフィック)8回、これがこのフライトまでに今年一月から飛行機に乗った回数で、それなりに窓の外も見てたりするけど、これだけ近くまで一気に接近してきた飛行機見たのは初めてだった。<br /> しかも高度もまるで同じ高さ。いやはや実はちょっぴりヤバっと思ったです。<br /> 本当に一瞬の出来事でした。<br /><br /> 香港に着くといつもは大抵エアポートエクスプレスに乗るのですが、今回は目的地が紅磡(Hung Hom)駅というエアポート電車の駅からは少し離れた場所で、そこから乗る列車については行き当たりばったりと特に時間に縛られていなかったのと、なんといっても香港ドルの持ち合わせがあまりなかったので、<br />「バスで行こうバスで」<br />と、すたすたバスの切符売り場へ。<br />「ひとり33香港ドルです」<br /> 安っ。<br /> ひとり100ドル取る電車の三分の一じゃん。<br /> しかも、<br />「21番のバスで終点で降りてくださいねー」<br />と、なかなか親切。<br /> 路線図のついた冊子までくれた。<br /> 二階建てバスはエアコン効き過ぎを除いてはななかなか快適。<br /> もともと「涼しいのが清潔」と考えている民族ですから、こっちもそれなりの防備はしております。<br /> 街中は相変わらずあちらこちらでビルを建てているけど、古い建物のその無茶苦茶な古さと道路に突き出した派手な看板は昔から変わらんわなぁなどと思いながら、モンコック、チムシャーツイと街並みを通り過ぎて紅磡駅へ到着。<br /> まずは「切符の確保」。<br /> さすがに一度上海行きの「国際線(香港とマカオは中国に返還されたが、今でも電車・飛行機ともに国際線扱い)」に乗っているので、駅は勝手知ったるなんたら、国際線の切符売場で広州行きの特急券げっと。この際だからいいの(?!)に乗ろうということで、一本飛ばして二時間後の新時速にした。<br /><br /> 香港から中国本土へ陸路乗り入れるのはこれで二回目。<br /> 前回はあまりに色々あったなぁ…。<br /> 今回も、香港島内はのろのろ。<br /> 前回と違いシンセンで止まって、ぞろぞろ国境警備隊が乗り込んで来ることもなく、中国本土に入った途端いきなりスピードを上げた。<br /> それまではちょうど車窓から見える夕日をうっとり見てたりしたのに、いきなり揺れる揺れる。<br /> 地球の歩き方によれば「新時速」は時速200キロ出すと書いてある。<br /> ほんまかいな、と思ってたけど結構それに近いスピードは出てる気も…。<br /><br /> 終点の広州東駅には、ホテル案内のカウンターに案内の人がぞろぞろ、客はゼロ。<br /> それでもホテル白雲賓館までは自力で行くはずだったが、カウンターの兄ちゃんににっこりしてみたらちゃんと送り届けてくれた。送迎車を待たされている間に、隣のカウンターのホテルのパンフレットを手に取った途端、大人しくこっちに来て座って待ってて、となんとカウンターの中に幽閉されてしまったけど(笑)。<br /> ホテルへの送迎はありがたかったが、ホテルに着いてみるとなんと我々は、団体カウンターに案内された。<br /> 立派なホテルなんだけど、立派なフロントは我々とは無縁だったわけだ。 <br /> というわけでなんだかなあという団体カウンターでチェックイン。<br /> まぁ考えてみたら、そこそこちゃんとしたホテルに一人3000円で泊まるんだからな。<br /> 香港で泊まるのと中国で泊まるのとではあまりに値段が違うからとこうしたのだからしゃあないわな、二人なのに団体でも…。<br /><br /> 荷物を置いて街をぶらついてみたが、入りたいと思うほどの店もなく、中国元の持ち合わせも充分とは言えなかったことから、ホテルの前の「トレードセンター」というビルの中にある台湾料理屋に入って、つらつらと適当に頼んで食べた。<br /> 後で思ったことであるが、実はこの旅行でこの食事が一番豪華でかつ美味しかった。まぁふたりで3000円くらいだったかな。酒も飲んでさ。<br /><br />7.oct.2004 GuangZhou to GuiLin<br /> 知らない街でタクシーに乗るのが、結構キライじゃない。<br /> シドニーでは、例えこちらがひとりでも「まあいいじゃないか、隣に乗れよ。楽しく行こうぜ」みたいな感じだし、上海やここ広州のように運転席をセルのようなもので覆って、完全防備のところもある。運転手の対応どころか運転もまちまち。<br />「 to airport ?」<br /> ホテルの前に停めて客待ちをしていた二台のうち後ろの運転手から声をかけられる。<br />「yes airport」<br /> その後ろのドライバーが、「おーー、やったなお前」とばかりに前の運転手の背中を叩き、前の運転手もさも嬉しそうに「おーーありがとうよ」と仲間に礼を言いつつ、我々の荷物をひょいと持ってトランクへと積む。<br /> しかし、自転車とバイクが多い。<br /> しかも、もっともひどいのでは反対車線を向かい側から集団で走ってくる。嘘だろ、とこっちは思うものの、運転手はいつものことだよとばかり、すいすいとそれをよけて、スピードをたいして落とすでもない。<br /> まあ以前上海のホテルから浦東国際空港に行く時に、ぼろぼろのタクシーを時速130キロから150キロでぶっ飛ばされて、ぶつかるとかなんとかよりも、車そのものが持たないんじゃないか、我々はせっかく楽しい旅行したけれど、もう日本には帰れないのではないかと恐怖の40分間を味わったことがあるので、中国人の少々の乱暴な運転では大して驚かないのだが、相手は人だけにぶつかったらひとたまりもないではないかとかなり不安な気持ちにはなった。<br /> 何はともあれ無事高速に上がって三十分とちょっと。その高速道路の料金込みで120元、約1800円はやはり日本と比べるとだいぶん安い。<br /> 空港はこの8月に移転オープンしたばかりで、恐ろしく大きくてそしてきれい。<br /> 国内線でも一時間半前に来い、という理由のひとつがこの広すぎるエアポートターミナルビルにあるのは間違いないだろう。なにしろチェックインカウンターから搭乗口まで二十分くらいかかったかもしれない。それくらい遠い。<br /> しかし、そうは言ってもみんな一時間半前に来てるわけだし、搭乗の受付の締切が三十分以上前なのか、なんと飛行機は出発時間の9:50よりはるかに早い9:25にはドアクローズ。そして何事もなかったかのように定刻より二十五分も前に出発してしまった。日本の国内線だとまだ搭乗すらはじまってないだろうな。まあおおざっぱなとこは相変わらずの中国時間である。<br /> フライトは約50分。<br /> 桂林空港にランディングしはじめると、すでにあの山水画のような独特の山々が機窓から見え、その美しい佇まいに息をのむ。<br /> 出迎えに来たガイドはまだ二十五歳、ガイド歴二ヶ月の新米君だった。<br />「日本語しゃべる方はまずまずですが、ヒアリングがまだまだなので、もし聞き取れなくてもあまり気にしないでくださいね」と予め念を押された。<br /> 空港から約三十分走り、まずはホテルへチェックイン。<br />「えーー、やっぱりですか」<br /> 爺が叫ぶ。<br /> 昨日の広州のホテルもそうだったのだが、500元預からせてくれと言われる。<br /> 500元あれば、町で結構いろんなことができるので、それを常時押さえられるというのは大変痛い。だいたい最終日は朝そのお金を返して貰ってももう使うチャンスがないのだから免税店以外では。<br /> まあ余ったところで、爺はまた大好きな北京に行くだろうから、いいような気もしないでないが。<br /> 荷物を置いて、まずは昼食に。<br /> どこぞのホテルのレストランで四川料理。<br /> ちなみに、この桂林空港から二泊三日でまた桂林空港へ戻るまでのツアー料金26100円には、計八回の食事付きだ。<br /> 四川料理と言われて、わりとふたりとも辛いモノ好きなので楽しみに食べたが、残念ながらほとんど辛くなかった。というよりも、テーブルの上に置かれた唐辛子の薬味で「自分で辛くしてね」というスタンスのようだ。なんかつまらん。<br /> 食事の後の観光は鍾乳洞「蘆笛岩」と象山公園。<br /> スケールの大きさにはやはり圧倒される。<br /> 街を走ると見える遠くの薄墨の絵のような山々の美しさは、山が多い日本で育っていてもそれとはまるで違う景色である。<br /> だが、観光地ごとに日本人に群がってくるモノ売りには、うんざりはするなやはり。<br /> 鍾乳洞の入口では、100円玉10枚持ったおばさんにつかまり、申し訳ないけど1000円札と替えてくれと拝み倒される。しゃあねえなぁと思って替えてやったら、すかさず次のおばさんに、絵はがきのセットを2セット100円で売りつけられて、一枚回収された。<br /> 鍾乳洞を見るために階段を何段も上がらされて、「疲れたでしょう、ちょっとここで休んでいてください。私ちょっと用事してきます」と言われて座らされた場所では、見事な日本語をあやつるちょっとかわいい中国娘に、爺は偽物(?!)の瑪瑙を売りつけられた。<br />「2万円に負けておきます」<br />と最初言ってたのが、「なんと3500円まで値切ることができました」<br /> それって、それって…偽物ってことじゃん(笑)。<br /> 爺は中国語を習っていて、結構場面によっては見事に操っているのだが、いかんせん中国娘の日本語の方が一枚も二枚も上手だったようだ。<br /> しかも、帰る日にガイドに聞いたら「私、会社から四カ所買い物に連れて行くよう指令受けています」ということで、どうもこの場所もそのうちの一軒だったらしく、まあ日本人のなんと与しやすいことか。<br /> この日の夕食は、「大きくていいお母さんという名前のお店」。<br /> ようは大衆食堂。<br /> こういう地では大衆食堂も決してキライなわけではないが、日本円で200円とか300円といった値段で並ぶ料理に改めてツアーの格安ぶりを再認識。<br /> 食事の後、昨日からの「エコノミー症候群」の解消のためマッサージを受けたい、というと100元でやってくれる全身マッサージに連れて行ってくれたのだが、ガイドには結構しつこくあと400元、つまり500元で「セックスつきのマッサージはどうか」と勧められる。<br /> 私が潔癖だったからとか、貞操観念が強かったからとかはたまたエイズが怖かったからとかではなく(怖いけど)、マッサージとは名ばかりでろくなサービスもしないぞあいつらはと聞き知っていたため「そんな疲れるとこ連れて行くならこっちが金もらいたいくらいだわ、だから行かないよ」と言ったのだが、新米ガイド君には通じなかったらしく、100元のマッサージを終えてホテルに戻る際にも500元のマッサージには行かなくていいのかいいのかとしつこい。<br /> 通常マッサージで充分満足していたので、「桂林の金閣銀閣」の写真を撮ったところで、ガイドはさっさとお役後免にして、ホテルのすぐ近くの屋台街を見て歩いた。<br /> わりとかわいい中国娘が、やはりあやしい日本語で「安い安い」というので、200元ほどの買い物をした(笑)。<br /> <br />8.oct.2004 GuiLin to YangShuo<br /> 桂林から陽朔。<br /> 4時間半かけての川下りがこのツアーのメインイベントらしい。<br /> 9:30出発の船には、ドイツ語をしゃべる集団、スペイン語かポルトガル語かを話ながらよく働くガイドのついた陽気なおばちゃんたちの集団、それに日本人の団体さん、それに二人連れが我々も含めて数組。<br /> 日本人の団体さんについていた若い娘さんもでかいVHSのビデオカメラにキャノンのフィルムカメラをかついでよく働いていたが、このふたりのガイドを除いては、のへーーっと一階のソファで終始寝そべっているなど、何のために付いてきてるんかという感じだった。<br /> ちなみにうちの新米君は…、船まで我々を送ったところで「さようなら」。<br /> 下船地点で再合流ということのようだった。<br /> 格安ツアーの悲哀か、おかげで、ちょうど昼ご飯時にぶつかったこともあるが、20元札にもなっているという最も美しい景色の場所を特定できなかった。<br /> それでも、ここ以外では絶対に見ることはできないんだろうなぁというすばらしい景観が次々に現れ、忘れることのできない船下りだった。<br /> それにしても、…あまりにすばらしいことはかえって文章にしにくいなぁ。<br /> まあ単に文章力が乏しいだけか(笑)。足りないところは写真で(笑)。<br /> ともかく、景色に圧倒され魅了され続けた四時間。<br /> 旅は、街かリゾートかが好きだが、こういう絶景というのもすばらしいと改めて思い、中国大陸に魅了され続けている爺に感謝。<br /> 爺が中国中国と言わなければ、三回も一緒に中国旅行はしなかったであろうから。<br /> <br /> 陽朔という町は、西洋人にはとても人気があるところらしい。<br /> 西洋人向けのカフェが「西街」というストリートにたくさんある。<br /> 歩いていて日本語で「5冊で1000円」とすがりついてくる絵葉書売りにも「ぷーよぷーよ。桂林でこんなにどっさりを500円で買ったから絵葉書もうたくさん」と追い払う術も身に付いてきた。<br /> むしろ敵は「筏で川下りどうですか、250元」としきりに勧めてくる我がガイドの方かもしれぬ。<br /> いま、さんざん川下って堪能してきたんだからほっといてくれ、と夕食までヒマを出した。<br /> 爺とふたりでストリートのお店を冷やかして歩き、爺は家族へのお土産の特産品ぽい袋を買い、私は巨大な扇子を買った。相手が最初に言う値段は全くもってべらぼうな利益を含む金額で、向こうも値切られるの承知で言ってるということもよぉくわかってきた。<br /> 爺は同じ店に二回行って二回も買い物したのだが「ああ儲かった」と中国娘に日本語で言われる始末。<br /> かわいいものには棘があるというのは万国共通らしい。<br /> 晩ご飯はやはりカフェのような店で、もともとのプランでは「川魚のビール煮」だったところを爺の「鯉はもういらない、あんな骨だらけの魚二回も食べればもう充分」の一言で、豚肉と牛肉の料理二品がメインの「コース」になった。まぁコースといっても日本円に換算すると、ひとり500円か600円くらいか。格安ツアーですから格安(笑)。<br /> 食後また新米君が寄ってくる。<br />「この後、どうしますか。筏に行きましょう」<br /> うっ…。 <br />「なんだ、それに乗るとなんかきれいなライトアップしてる景色でも見れるの」<br />「鵜飼いの様子が見られる筈です」<br />「暗いところでそんなん見るのあまり興味ない。それより爺の片言の中国語で娘さんとお話ししながらお酒でも飲めるような店がいい」<br />「ああ陽朔、桂林よりも安いです。それに女の子部屋に入れて平気です。350元です」<br />「だから、それはいらんちゅうとるやろ。しかも部屋で爺と並んでやれっちゅうのかい」<br /> だいぶ切れてきている私の様子はわからぬらしく、<br />「だったら、とりあえず見るだけでもイイですから、筏の乗り場へ行ってみましょう」<br /> あまりのしつこさについに爺が折れて、<br />「まぁ、見るだけでいいって言ってるんだから行ってみましょうよ、どうせすぐそこらみたいだし」<br /> すぐですからとガイドは確かに言ったしと、しぶしぶ腰をあげると、なんと車に乗せられて15分も先まで連れて行かれて、「さあどうです、乗ってください」についにぶち切れた。<br /> まっ暗じゃないかよ、冗談よせ。<br /> というわけで、ホテルまで送り届けさせてまたしてもお役後免に。<br />「ではおやすみなさい」<br /> 今回のこのツアーで二番目にぶち切れたのは、このガイドと運転手が我々と同じホテルに泊まったことである。彼らの住む桂林まで車で走ればたった一時間ですよ。帰れよ、そのくらいの距離なら。その上、我々の部屋は夜中でも車(それも日本で むかしむかし走っていた耕運機みたいなうるさいやつが4台に1台はいる)が、がんがん走っているというむちゃくちゃうるさい道路に面した部屋で、やつらの部屋は静かな内側。ここでは四つ星のホテルといえども大した値段でもないんだろうが、少なくとも晩飯数品分くらいにはなんだろうよ。格安ツアーで2泊のホテル代と思っていたらそれが実は3泊分だったとすりゃあいったい何を削ってるんだその分さ。<br /> ああ、ちなみに一番目にぶち切れるのは実はまだこれからです、念のため。<br /><br />9.oct.2004 YangShuo to GuangZhou via GuiLin<br /> 翌朝は、目が覚めるとちょうど爺が散歩から帰ってきたところ。<br />「いやはや昨日歩いたのと反対側に完全に現地の人の町があります」<br /> と、肉まんを一個差し出される。<br />「一個5カクでした」<br /> カクというのは中国元の10分の1の単位である。<br /> 日本ではすでに円の100分の1である銭という単位は概念としてしか存在していないが、中国のカクはちゃんとお札があるしコインもあった筈。<br />「面白そうだからぜひ行きましょう」<br /> というわけでごそごそと起き出して、朝の町の探索に。<br /> ようするに現地の人のための市場ですね。<br /> お魚やら解体したばかり(爺はそのシーンを見たらしい)の豚の部位が並べられて売っている。<br />「出てきたついでにお粥でも食べようよ」<br />と、お粥屋を探すが、香港や上海ほどは存在しておらず、結局ホテルのすぐ近くまで戻ってからようやく「粥」もあると書いた店を見つけて入った。<br /> 店といってもほとんど路上に屋根つけただけで、家族でやってるようだが、男の子はぐうたらで女の子がよく働くという感じ。お父さんはちゃんと働いてたけど。<br /> お粥は一個がゆうに二人分はあって(現に厨房からお父さんがわざわざ出てきてほんとに二個いるのか確認しにきたがこちらはよくわからなくて対処できず結局ふたつ頼んだままだった)、ホテルのモーニングではジュースだけを飲ん だ。<br /> 9時半にロビーで新米君たちと合流。<br /> ちなみに運転手のおぢさんはなかなか愛嬌があってよい。こちらはかなりベテランの様子。<br /> 公園のようなところに連れて行かれて園内お散歩。<br /> その園内には現地の人の住んでる家とかもあって、中が覗けたりしたのだが、古いおうちに普通に立派なテレビとステレオセットがでーんと置かれていたのにはちょっと笑えた。<br /> ここではデジカメを持ったおばさんに何度か写真撮らせてくれと言われるが、「おばはんのその古くさいデジカメより俺のソニーが立派だから、ぷーよぷーよ」と日本語と中国を混じえて撃退。<br /> テントの中にパソコンとプリンター(エプソンのインクジェット)が置いてあって、おばさんの撮った写真はそこですぐ商品化されて何十元かにはなるのだろう。<br /> 民族衣装を着た娘さんと爺はバンブーダンスをやったり記念撮影をしてさらにはお土産までもらったりした。バンブーダンス見学費用として払っただけの10元だかは随分元が取れたような気になったのは言うまでもないだろう。<br /> ここでまた陽朔の西街へ戻って昼食。<br /> ここの食事がこの26100円のツアー8食の中では一番印象深いというか美味しかったかも。<br /> 特に麻婆豆腐の辛さは強烈だった。やっとまともに辛くてうまみのある麻婆に出会えた。<br /> それにしても豆腐もよく出てくる。<br /> 食事の都度ビールも大瓶一本くらいはコースの内として出て来るが、よく見ると新米君たちにも出てるし、なんといってもその夜広州のセブンイレブンで見たら、その「純生」というビールは缶で買うと2.5元。単なる水のボルピックは9元もするのだから、かなり安いもののようである。それでも激辛麻婆を食べるためには一本ではとても足りずに追加。<br /> 爺は得意の「にゅーない」、牛乳である。<br /> 午後から「少数民族の見学」というなんとも趣味の悪い名前のついたツアー内容で、うんざりしていたが、これは意外と悪くなかった。<br /> 陽朔市内の道の悪さといったらそれはそれはひどいものだったが、さすがに桂林に向かう道で少しマシになって、一時間すやすやとお昼寝。<br />「これから二カ所お買い物に行きます」とガイド君。<br /> 一昨日お茶屋に連れて行かれてちゃんと付き合いで買ってるので、まぁ今日は何も買わんでもよかろうと思ってたけど、一軒目のいかにも「日本人向け」のお店のおばちゃんたちのうるさいことうるさいこと。さすがに路上の物売りのようには追い払うことも出来ないし、なんと言っても日本人専門店であるが故に全員が日本語ぺらぺら。民芸品からブランドバックと節操のない品揃えも不快。どれを勧められても「いらん」と言う私をおばちゃんが連れて行ったのは「男性はやっぱりこれね」って「バイアグラ」。ますますいらんわい。<br /> 爺はまた瑪瑙を買った。<br /> 今度は一万円くらいしたので本物らしい。<br />「もう一軒行きます、今度は病院です」<br /> ん?!というか「むっ」としたが、陽朔から走ってくる途中で車のエアコンが壊れたか、蒸し暑い車内を避けるためもあってとりあえず外に。<br /> どうぞどうぞと連れて行かれたのは本当に病院だった。<br /> ちゃんと診察に来ている患者さんらしき人ともすれ違うし、漢方を売りつける目的であろうことは察しがついたが、おいおい冗談よせよという感じ。<br />「こちらへどうぞどうぞ、お茶、健康にとてもいいお茶ですからぜひお飲みください」<br /> 検尿カップのちょっと小さいようなカップにふたつずつ液体が出される。<br /> 爺は素直に飲んだが私は無視。<br />「私は漢方の権威××といいます」という白衣を着たおばさんが病院の説明を始める。<br /> 日本の熊本にあるなんとかという病院のなんとかという偉い先生も何度も訪れているくらいすぐれた病院であるとかなんとか、講釈はいいから早くここから出せ、とむっとした態度のサングラスをかけたままの私はおよそその権威あるおばさんの目には不愉快に映ったことだろうが、それでもわりと愛想よく相槌を打つ爺に救われたかのようにくどくどと喋る。<br />「それではマッサージの専門医の先生をお呼びします。どうぞ」<br /> 白衣を着た若い男がふたり入ってきた。<br />「さあ拍手でお迎えください」<br /> 一番ぶち切れたシーンとは言うが、本当に切れたわけではない。<br /> 例えて言うなら、黄門様が「スケさんカクさん、もういいでしょう」という感じかな。一定時間相手に与えてやったからこれ以上は付き合う必要なしと判断したので、<br />「拍手だぁ? もういい、俺は帰るわ」<br /> と、席を立つ。<br /> たいして怒っていたわけでもないのだが、こういう時に相手より背が高くて、しかもサングラスをして相手に目が見えていないというのは有利ではある。<br /> とりなす隙を与えずに病院を出て車に戻ると、運転手氏は車の一部を分解してエアコンを修理していた。実際、なおっていたから凄い。<br /> 本来なら旅行社に直接文句を言うところであるが、とりあえず新米君を説教。<br />「日本人はね、今中国特に中国の南の方に来ることを警戒するとしたら病気なの。SARSやら鳥インフルエンザが怖くて、去年中国旅行激減しただろう。病院ってどういうところと日本人が思うかわかる? 少なくとも病原菌が街の中で一番集まっているところと思うんだよ。何も旅行に来て病院に連れていくことはないだろう。漢方売りたければもっと方法があるだろうよ。中にはさ、年寄りとかで病院好きの日本人も居るから喜ばれることもあろうさ。だったらせめて、強制的に連れて行かないで、8軒のお買い物店リストから4軒選ばせるとかやれよ。俺は少なくとも旅行社が出してきた行程表に病院に連れて行くと書かれていたら絶対にお前さんとこは使わなかったぞ」<br />「日本人の旅行者を買い物に連れて行く中国人の旅行会社のやり方は何度も経験してるから別に多少の付き合いはするけど、ついでに昨日だ一昨日のことも言うけど、君もこれから日本人ツアーのガイドで食っていくなら、もう少し相手の様子を見ろよ。10元や20元のバックマージン稼ごうとして失敗して、ガイドとして一番美味しいチップを貰い損ねたり、減額されたら元も子もないだろうよ」<br /> 日本人が本当にそんな気前よくチップをあげてるかどうかわからんわりには偉そうだ(笑)。<br /> 聞くと、我々で日本人のツアーはまだ7組目だそうである。もちろん団体などの依頼はまだなく、夫婦とかカップルとかばかりで、本来たいていの場所ではガイドなんかいらんわいと思っている我々のような相手は初めてだったようだ。<br /> 昨日の段階では、愛嬌のある運転手氏には1000円札をチップであげて、ガイドはゼロと思っていたのだが、最後はまだ新米だし、若い彼との金銭感覚の違いもわかったし、なんといっても桂林旅行の本来の目的である景色そのものには何の不満もなくいい旅であったことには違いないので、自分たちの自己満足のために、つまり後味悪い思いしたくないので、彼の愛煙するタバコ1カートンと日本円にして3000円ほどをチップであげた。 足して5000円というところか。<br /> まあここで、日本人並みに本気で遠慮したところが新米さんの新米さんたる所以かな。<br /> でも、もうちょっと日本人が何を見たくて桂林まで来るかこれ見てご覧よ、と桂林に関する二冊の本も進呈したのだが、車の中でしばらく見ていた後、「宝にします」と言ってくれたのが、不慣れな日本語で女だ筏だ病院だとこっちの不要なものばかりを押しつけようとした彼にしては上出来のひと言だった。<br /><br /> 広州空港に着いたのは20時過ぎ。<br /> タクシー乗り場へ行くと、案内のようなおばさんが「どちらまで」と聞いてきた(らしい)ので、「バイヤン・ホテル」と答える。初日と同じホテルだ。後ろにいた運転手らしき兄ちゃんが「バイヤンホテルOKカモン」いきなりカートから我々の荷物を持って歩き出す。それも案内のおばちゃんも含めて3人がかりで。<br /> やばいこれは白タクにでも乗せられる、と思ってこういう時に中国語も出来て頼りになる爺を見ると、携帯メールに夢中。<br />「ストップストップ。ハウマッチ、イーシャオ銭〜」と叫ぶと、一番前の男が立ち止まって携帯に数字を打って見せる。<br />【250】<br />「冗談、荷物返せ」とおばちゃんからひとつ荷物を奪う。<br />【220】<br />「いらんよ、タクシーに乗る」<br />「タクシー・タクシー・ノープロブレム」<br /> タクシーだから心配ないと言っているが信用できたもんではない。<br /> それに一度乗ってるのだから金額も120元とわかっている。100元も多く取られてたまるか。<br />【180】<br />「180で行くって行ってますけどどうします」<br /> 意外とのんびりな爺。<br /> 冗談よせとさらに荷物を取り返そうと手を伸ばす。<br /> すでに本当に普通のタクシーがどこからか出てきたか目の前に停まる。<br />「いくらなら行くんだって聞いていますよ」<br />「120だろ、そりゃあ」<br /> 爺交渉。<br />「OKですって」<br /> 100と言えないところが小心なところだ(笑)。<br />「まあ降りる時にも一悶着あるかもしれんけど行くか面倒くさいし」<br />と乗り込むと、タクシーのその運ちゃん、普通にメーターを上げた。<br /> あれれ、と思っていると高速に乗ったところで「空車」。<br /> なんとなくカラクリがわかってきた。<br /> 空港まで客を乗せてきたタクシーが空で戻るのは嫌だわ、客待ちに並ぶのも時間がもったいないわで、闇商売してるんだと推測。だったらこっちも足もと見るんだった(爆)。<br /> 広州市内に入ったところでまたメーターを上げる。<br /> やはりか。<br /> そうこうするうちにホテルが見えてきてひと安心。<br /> タクシーの免許番号は車内に表示しているので、こっちもそれをメモしたりと警戒はしていたが、とりあえず無事送り届けてくれたので約束だから120元渡す。<br /> 運転手にっこり。<br /> メーターは8元だったわけで、ここでホテルのドアマンを巻き込んで一悶着起こしてみるのも旅の一興かとも思ったけれどやめておいた。<br /> 降りるとすかさずホテルのドアマンからメモを渡される。<br /> 見るとタクシーのナンバーの控え。ここらはなかなかやるもんだと感心しきり。<br /> そんなわけで、今夜は一般フロントには未練を残さずだまって団体カウンターへ行ってチェックインした(笑)。<br /> <br />10.oct.2004 GuangZhou to tokyo via HongKong<br /> 空港へ向かうタクシーのメーターをふたりでジッと見ていた時、突然1キロあたり2.6というデジタルの数字が3.9に変わった。<br /> なんでふたりしてまたその時メーターを見ていたかは定かではないのだが、変わった瞬間顔を見合わせて首をかしげた。<br /> 位置的にも、<br />「ちょうど広州市街を出たあたりだし、市内中心部から出たら料金変わるんだじゃないでしょうか」<br /> 確かにメーターが上がる速度が速くなっているから、間違いなく単位が変化している。<br />「いやぁでも、そんなにハイテクな仕組みがあるとは思えないけど」と、ふとドアを見ると何やら料金の説明が。どうも走り出して50キロを超えると車の帰りの料金を半分上乗せするぞ、と書いてあるっぽい。中国語が少しわかる爺がそれを読んで、<br />「あ、間違いありません。長距離乗ると帰りの料金上乗せなんだ。だからひょっとすると公的には空港は空港から行くタクシー専門で、街から空港へ行ったタクシーは元々客拾っちゃ行けないのかもしれませんね。何しろ帰りの料金もこうして取ってることだし」<br /> 真偽は定かではないが、<br />「ということはますます昨日のやつらにはしてやられたということですね」<br /> 爺ちょっぴり憤慨。<br /> さて、三たびやってきた広州白雲空港。<br /> ところが国際線は遊べないことが判明。チェックインするためには、完全に隔離された場所に入らなければならないのだ。<br /> まぁ二時間あっても広い空港いろいろ見るとこもあるさ、という思いはあっさりと打ち砕かれた。<br /> 退屈な二時間をどうにかやり過ごして、一路香港へ。<br /> 1時間前の8:30の香港行きは見た目にもかなり小さい飛行機にどっさり客を乗せて行ったが、我々はボーイング757という少し大きいやつにすかすかの客。ふたりして非常口座席(手前のシートがないので広々)で足を伸ばして乗ってきた。<br /> 広州から香港の間は上空から見てるとほとんどビルの建ち並ぶ風景だった。と、いっても飛行時間は50分ほど。うち前後10分ずつは空港のまわりを周回した時間なので、実質は30分以下なんだろう。そりゃそうだわな、電車で2時間の距離だもんな。<br /><br /> 香港では空港で帰りのJALをチェックインした後、またバスで街へ出て飲茶。<br /> 帰りは時間の心配もあったので、エアポートエクスプレスに今回はじめて乗った。<br /> ひとり100$と思っていたが、ふたりで買うとセット割引があって180$。<br /> たまたま500$札しかなくて有人のところでチケット買ったからわかったし、きっとどこかには書いてあるのだと思うが、知らなければ、別々に100$ずつチケット買ってしまうところ。<br /> 香港はこの一年でトランジットを含めると5回目だが、だいたいなんとかなるわと最近はもうガイドブックすら手にしないというのは、新しい情報を持っていないということで、それもちょっぴり問題か。まぁそれもまた町歩きの醍醐味と納得すりゃすむことではあるが。<br /> 日本の台風の影響で飛行機は出発に若干の遅れ。<br /> JALのラウンジでやっとこさこの五日間のメールを読み込んだところで、時間が来て搭乗。<br /> 帰りは二階席だったし、真ん中の席は空いていたので、来る時ほど窮屈ではなかったが(二階席の窓側は窓と席の間に荷物入れがあるのでそれなりにスペースがある)、それでもやはり四時間はきついかな。<br /> まぁそれでも今回はものをなくしたりもせずよしとしよう。<br /> 成田で夜行バスに乗る爺とお別れ。<br /> いやいや今回もありがとうございました〜。<br /> <br />今回利用した現地旅行社 桂林中国国際旅行社

中国人新米ツアーガイドと行く桂林周辺の旅+広州への陸空往復

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2004/10/06 - 2004/10/10

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飛龍

飛龍さん

これは旅行当時に書いたものです。
今回(2013年4月)一番驚いたのは、このお話の一番最後に書いてある旅行社のHPへのリンク(宣伝してあげる義理はないので非掲載にはしますが)が当時桂林のローカルな旅行社でひどい日本語のHPだったのに、今では中国全土を取り扱うHPもなんだか立派なところになっていたこと。
我々にしごかれた新米君もあれから8年半。ここで立派に成長しているのか、それとも他に転身しているのか、それとももうガイドはしてないのか、少し興味のあるところです。

6 oct. 2004 Tokyo to GuangZhou via HongKong
「こんなこと滅多になくて、大抵は残ってるもんなんすけどねー」
 東京駅の地下切符売り場の駅員さんがぼやく。
 6:30 7:00と満席で、取れたのが7:15東京発という臨時便ぽい成田エクスプレスのグリーン車。
 これさえもあと数席という状況で普通車はすでに満席らしい。
 だいたい、出発二時間前を目指して、六時前にうちを出発した俺って何、って感じです。
 東京駅で降りるか、日暮里まで行って京成線の特急で行くかを随分迷ったのに、えいとばかりに京浜東北線を降りたのが間違いだった。
 一時間近い東京駅でのロスタイムのせいで、成田空港到着は八時二十分頃になってしまった。
 まあだいたいにおいて国際線は二時間前に来いというのが無茶だと思うんですけどね。
 もちろん一時間半を切って着いたとて、発券に影響なし。
 途中千葉駅あたりで、同行の爺(おきな)氏(仮名 以下敬称略)から、「出国しました〜」というメールが来ていたので、とっととチェックインして、出国ゲートも人が大勢並ぶと係員が出てきて窓口を増やすといういつものケースを想定してクローズしているところのそばにいると、思惑通りにすっと抜けて、爺と合流。
 JLの「さくらラウンジ」で九時半に株の取引を終えると、ジャンボ機搭乗。
 いやはやみなさんどこへ行くのか、って言っても飛行機は「香港行き」だからへそ曲がりの我々を除いて大半の人は香港に行くんだろうけども、ほぼ満席〜。
 ここしばらく海外へはビジネスクラスを使っていたので、エコノミーは狭い〜。
 背が高いことのマイナス面がこういう時にいっぺんに出ます。
 大抵はあまり損することはないし、三十年近くこの身長やってると、滅多に障害物にぶつかるということもないし(それでもふた月に一回くらいはどっかこっかで頭ぶつけてますけど)、満員電車とかでも空気は人様よりは新鮮だし、高いところのものを取るのにも便利だし、サングラスするとそれなりに威圧感も出て交渉に有利なこともあるし(をいをい)、と利点の方が多いのですが、飛行機の狭い座席に押し込められる時だけはもう大変です。
 だいたいそういう苦しさを知らない小ささをこういう時に生かしてるやつに「ビジネスクラスは贅沢」だの「グリーン車なんてもったいない」だの言われたくない。

 爺とは席は前後の窓側にしてあって、まぁ電車だと座席を回転させて向かい合わせで行きましょうみたいな位置関係なんですが、飛行機の座席は回らないことが多いので、今回もヒソヒソとシート越しにお話ししながら行きました。
「遠くに併走している飛行機が見えます」
というので見るとはるか彼方しかもだいぶ高度の低い地点にしっぽの赤い小さい飛行機が見える。
 まああれだけ遠いとほんとにその飛行機が小さいかどうかは不明ですが、速度はこちらよりも若干遅いらしくて、少〜しずつ後方に下がっていくように見える。
 割とヒマに任せてずっと目で追っていたその時、いきなり斜め前方から猛スピードでこちらに向かって上昇してくるジェット機が。飛行機雲を曳きながらほぼ同じ高さまで来たところで左旋回して後方へとあっという間に飛び去った。
「いゃあぶつかるかと思いました」
 JAL77回目、ANA1回にCX(キャセイパシフィック)8回、これがこのフライトまでに今年一月から飛行機に乗った回数で、それなりに窓の外も見てたりするけど、これだけ近くまで一気に接近してきた飛行機見たのは初めてだった。
 しかも高度もまるで同じ高さ。いやはや実はちょっぴりヤバっと思ったです。
 本当に一瞬の出来事でした。

 香港に着くといつもは大抵エアポートエクスプレスに乗るのですが、今回は目的地が紅磡(Hung Hom)駅というエアポート電車の駅からは少し離れた場所で、そこから乗る列車については行き当たりばったりと特に時間に縛られていなかったのと、なんといっても香港ドルの持ち合わせがあまりなかったので、
「バスで行こうバスで」
と、すたすたバスの切符売り場へ。
「ひとり33香港ドルです」
 安っ。
 ひとり100ドル取る電車の三分の一じゃん。
 しかも、
「21番のバスで終点で降りてくださいねー」
と、なかなか親切。
 路線図のついた冊子までくれた。
 二階建てバスはエアコン効き過ぎを除いてはななかなか快適。
 もともと「涼しいのが清潔」と考えている民族ですから、こっちもそれなりの防備はしております。
 街中は相変わらずあちらこちらでビルを建てているけど、古い建物のその無茶苦茶な古さと道路に突き出した派手な看板は昔から変わらんわなぁなどと思いながら、モンコック、チムシャーツイと街並みを通り過ぎて紅磡駅へ到着。
 まずは「切符の確保」。
 さすがに一度上海行きの「国際線(香港とマカオは中国に返還されたが、今でも電車・飛行機ともに国際線扱い)」に乗っているので、駅は勝手知ったるなんたら、国際線の切符売場で広州行きの特急券げっと。この際だからいいの(?!)に乗ろうということで、一本飛ばして二時間後の新時速にした。

 香港から中国本土へ陸路乗り入れるのはこれで二回目。
 前回はあまりに色々あったなぁ…。
 今回も、香港島内はのろのろ。
 前回と違いシンセンで止まって、ぞろぞろ国境警備隊が乗り込んで来ることもなく、中国本土に入った途端いきなりスピードを上げた。
 それまではちょうど車窓から見える夕日をうっとり見てたりしたのに、いきなり揺れる揺れる。
 地球の歩き方によれば「新時速」は時速200キロ出すと書いてある。
 ほんまかいな、と思ってたけど結構それに近いスピードは出てる気も…。

 終点の広州東駅には、ホテル案内のカウンターに案内の人がぞろぞろ、客はゼロ。
 それでもホテル白雲賓館までは自力で行くはずだったが、カウンターの兄ちゃんににっこりしてみたらちゃんと送り届けてくれた。送迎車を待たされている間に、隣のカウンターのホテルのパンフレットを手に取った途端、大人しくこっちに来て座って待ってて、となんとカウンターの中に幽閉されてしまったけど(笑)。
 ホテルへの送迎はありがたかったが、ホテルに着いてみるとなんと我々は、団体カウンターに案内された。
 立派なホテルなんだけど、立派なフロントは我々とは無縁だったわけだ。 
 というわけでなんだかなあという団体カウンターでチェックイン。
 まぁ考えてみたら、そこそこちゃんとしたホテルに一人3000円で泊まるんだからな。
 香港で泊まるのと中国で泊まるのとではあまりに値段が違うからとこうしたのだからしゃあないわな、二人なのに団体でも…。

 荷物を置いて街をぶらついてみたが、入りたいと思うほどの店もなく、中国元の持ち合わせも充分とは言えなかったことから、ホテルの前の「トレードセンター」というビルの中にある台湾料理屋に入って、つらつらと適当に頼んで食べた。
 後で思ったことであるが、実はこの旅行でこの食事が一番豪華でかつ美味しかった。まぁふたりで3000円くらいだったかな。酒も飲んでさ。

7.oct.2004 GuangZhou to GuiLin
 知らない街でタクシーに乗るのが、結構キライじゃない。
 シドニーでは、例えこちらがひとりでも「まあいいじゃないか、隣に乗れよ。楽しく行こうぜ」みたいな感じだし、上海やここ広州のように運転席をセルのようなもので覆って、完全防備のところもある。運転手の対応どころか運転もまちまち。
「 to airport ?」
 ホテルの前に停めて客待ちをしていた二台のうち後ろの運転手から声をかけられる。
「yes airport」
 その後ろのドライバーが、「おーー、やったなお前」とばかりに前の運転手の背中を叩き、前の運転手もさも嬉しそうに「おーーありがとうよ」と仲間に礼を言いつつ、我々の荷物をひょいと持ってトランクへと積む。
 しかし、自転車とバイクが多い。
 しかも、もっともひどいのでは反対車線を向かい側から集団で走ってくる。嘘だろ、とこっちは思うものの、運転手はいつものことだよとばかり、すいすいとそれをよけて、スピードをたいして落とすでもない。
 まあ以前上海のホテルから浦東国際空港に行く時に、ぼろぼろのタクシーを時速130キロから150キロでぶっ飛ばされて、ぶつかるとかなんとかよりも、車そのものが持たないんじゃないか、我々はせっかく楽しい旅行したけれど、もう日本には帰れないのではないかと恐怖の40分間を味わったことがあるので、中国人の少々の乱暴な運転では大して驚かないのだが、相手は人だけにぶつかったらひとたまりもないではないかとかなり不安な気持ちにはなった。
 何はともあれ無事高速に上がって三十分とちょっと。その高速道路の料金込みで120元、約1800円はやはり日本と比べるとだいぶん安い。
 空港はこの8月に移転オープンしたばかりで、恐ろしく大きくてそしてきれい。
 国内線でも一時間半前に来い、という理由のひとつがこの広すぎるエアポートターミナルビルにあるのは間違いないだろう。なにしろチェックインカウンターから搭乗口まで二十分くらいかかったかもしれない。それくらい遠い。
 しかし、そうは言ってもみんな一時間半前に来てるわけだし、搭乗の受付の締切が三十分以上前なのか、なんと飛行機は出発時間の9:50よりはるかに早い9:25にはドアクローズ。そして何事もなかったかのように定刻より二十五分も前に出発してしまった。日本の国内線だとまだ搭乗すらはじまってないだろうな。まあおおざっぱなとこは相変わらずの中国時間である。
 フライトは約50分。
 桂林空港にランディングしはじめると、すでにあの山水画のような独特の山々が機窓から見え、その美しい佇まいに息をのむ。
 出迎えに来たガイドはまだ二十五歳、ガイド歴二ヶ月の新米君だった。
「日本語しゃべる方はまずまずですが、ヒアリングがまだまだなので、もし聞き取れなくてもあまり気にしないでくださいね」と予め念を押された。
 空港から約三十分走り、まずはホテルへチェックイン。
「えーー、やっぱりですか」
 爺が叫ぶ。
 昨日の広州のホテルもそうだったのだが、500元預からせてくれと言われる。
 500元あれば、町で結構いろんなことができるので、それを常時押さえられるというのは大変痛い。だいたい最終日は朝そのお金を返して貰ってももう使うチャンスがないのだから免税店以外では。
 まあ余ったところで、爺はまた大好きな北京に行くだろうから、いいような気もしないでないが。
 荷物を置いて、まずは昼食に。
 どこぞのホテルのレストランで四川料理。
 ちなみに、この桂林空港から二泊三日でまた桂林空港へ戻るまでのツアー料金26100円には、計八回の食事付きだ。
 四川料理と言われて、わりとふたりとも辛いモノ好きなので楽しみに食べたが、残念ながらほとんど辛くなかった。というよりも、テーブルの上に置かれた唐辛子の薬味で「自分で辛くしてね」というスタンスのようだ。なんかつまらん。
 食事の後の観光は鍾乳洞「蘆笛岩」と象山公園。
 スケールの大きさにはやはり圧倒される。
 街を走ると見える遠くの薄墨の絵のような山々の美しさは、山が多い日本で育っていてもそれとはまるで違う景色である。
 だが、観光地ごとに日本人に群がってくるモノ売りには、うんざりはするなやはり。
 鍾乳洞の入口では、100円玉10枚持ったおばさんにつかまり、申し訳ないけど1000円札と替えてくれと拝み倒される。しゃあねえなぁと思って替えてやったら、すかさず次のおばさんに、絵はがきのセットを2セット100円で売りつけられて、一枚回収された。
 鍾乳洞を見るために階段を何段も上がらされて、「疲れたでしょう、ちょっとここで休んでいてください。私ちょっと用事してきます」と言われて座らされた場所では、見事な日本語をあやつるちょっとかわいい中国娘に、爺は偽物(?!)の瑪瑙を売りつけられた。
「2万円に負けておきます」
と最初言ってたのが、「なんと3500円まで値切ることができました」
 それって、それって…偽物ってことじゃん(笑)。
 爺は中国語を習っていて、結構場面によっては見事に操っているのだが、いかんせん中国娘の日本語の方が一枚も二枚も上手だったようだ。
 しかも、帰る日にガイドに聞いたら「私、会社から四カ所買い物に連れて行くよう指令受けています」ということで、どうもこの場所もそのうちの一軒だったらしく、まあ日本人のなんと与しやすいことか。
 この日の夕食は、「大きくていいお母さんという名前のお店」。
 ようは大衆食堂。
 こういう地では大衆食堂も決してキライなわけではないが、日本円で200円とか300円といった値段で並ぶ料理に改めてツアーの格安ぶりを再認識。
 食事の後、昨日からの「エコノミー症候群」の解消のためマッサージを受けたい、というと100元でやってくれる全身マッサージに連れて行ってくれたのだが、ガイドには結構しつこくあと400元、つまり500元で「セックスつきのマッサージはどうか」と勧められる。
 私が潔癖だったからとか、貞操観念が強かったからとかはたまたエイズが怖かったからとかではなく(怖いけど)、マッサージとは名ばかりでろくなサービスもしないぞあいつらはと聞き知っていたため「そんな疲れるとこ連れて行くならこっちが金もらいたいくらいだわ、だから行かないよ」と言ったのだが、新米ガイド君には通じなかったらしく、100元のマッサージを終えてホテルに戻る際にも500元のマッサージには行かなくていいのかいいのかとしつこい。
 通常マッサージで充分満足していたので、「桂林の金閣銀閣」の写真を撮ったところで、ガイドはさっさとお役後免にして、ホテルのすぐ近くの屋台街を見て歩いた。
 わりとかわいい中国娘が、やはりあやしい日本語で「安い安い」というので、200元ほどの買い物をした(笑)。

8.oct.2004 GuiLin to YangShuo
 桂林から陽朔。
 4時間半かけての川下りがこのツアーのメインイベントらしい。
 9:30出発の船には、ドイツ語をしゃべる集団、スペイン語かポルトガル語かを話ながらよく働くガイドのついた陽気なおばちゃんたちの集団、それに日本人の団体さん、それに二人連れが我々も含めて数組。
 日本人の団体さんについていた若い娘さんもでかいVHSのビデオカメラにキャノンのフィルムカメラをかついでよく働いていたが、このふたりのガイドを除いては、のへーーっと一階のソファで終始寝そべっているなど、何のために付いてきてるんかという感じだった。
 ちなみにうちの新米君は…、船まで我々を送ったところで「さようなら」。
 下船地点で再合流ということのようだった。
 格安ツアーの悲哀か、おかげで、ちょうど昼ご飯時にぶつかったこともあるが、20元札にもなっているという最も美しい景色の場所を特定できなかった。
 それでも、ここ以外では絶対に見ることはできないんだろうなぁというすばらしい景観が次々に現れ、忘れることのできない船下りだった。
 それにしても、…あまりにすばらしいことはかえって文章にしにくいなぁ。
 まあ単に文章力が乏しいだけか(笑)。足りないところは写真で(笑)。
 ともかく、景色に圧倒され魅了され続けた四時間。
 旅は、街かリゾートかが好きだが、こういう絶景というのもすばらしいと改めて思い、中国大陸に魅了され続けている爺に感謝。
 爺が中国中国と言わなければ、三回も一緒に中国旅行はしなかったであろうから。

 陽朔という町は、西洋人にはとても人気があるところらしい。
 西洋人向けのカフェが「西街」というストリートにたくさんある。
 歩いていて日本語で「5冊で1000円」とすがりついてくる絵葉書売りにも「ぷーよぷーよ。桂林でこんなにどっさりを500円で買ったから絵葉書もうたくさん」と追い払う術も身に付いてきた。
 むしろ敵は「筏で川下りどうですか、250元」としきりに勧めてくる我がガイドの方かもしれぬ。
 いま、さんざん川下って堪能してきたんだからほっといてくれ、と夕食までヒマを出した。
 爺とふたりでストリートのお店を冷やかして歩き、爺は家族へのお土産の特産品ぽい袋を買い、私は巨大な扇子を買った。相手が最初に言う値段は全くもってべらぼうな利益を含む金額で、向こうも値切られるの承知で言ってるということもよぉくわかってきた。
 爺は同じ店に二回行って二回も買い物したのだが「ああ儲かった」と中国娘に日本語で言われる始末。
 かわいいものには棘があるというのは万国共通らしい。
 晩ご飯はやはりカフェのような店で、もともとのプランでは「川魚のビール煮」だったところを爺の「鯉はもういらない、あんな骨だらけの魚二回も食べればもう充分」の一言で、豚肉と牛肉の料理二品がメインの「コース」になった。まぁコースといっても日本円に換算すると、ひとり500円か600円くらいか。格安ツアーですから格安(笑)。
 食後また新米君が寄ってくる。
「この後、どうしますか。筏に行きましょう」
 うっ…。 
「なんだ、それに乗るとなんかきれいなライトアップしてる景色でも見れるの」
「鵜飼いの様子が見られる筈です」
「暗いところでそんなん見るのあまり興味ない。それより爺の片言の中国語で娘さんとお話ししながらお酒でも飲めるような店がいい」
「ああ陽朔、桂林よりも安いです。それに女の子部屋に入れて平気です。350元です」
「だから、それはいらんちゅうとるやろ。しかも部屋で爺と並んでやれっちゅうのかい」
 だいぶ切れてきている私の様子はわからぬらしく、
「だったら、とりあえず見るだけでもイイですから、筏の乗り場へ行ってみましょう」
 あまりのしつこさについに爺が折れて、
「まぁ、見るだけでいいって言ってるんだから行ってみましょうよ、どうせすぐそこらみたいだし」
 すぐですからとガイドは確かに言ったしと、しぶしぶ腰をあげると、なんと車に乗せられて15分も先まで連れて行かれて、「さあどうです、乗ってください」についにぶち切れた。
 まっ暗じゃないかよ、冗談よせ。
 というわけで、ホテルまで送り届けさせてまたしてもお役後免に。
「ではおやすみなさい」
 今回のこのツアーで二番目にぶち切れたのは、このガイドと運転手が我々と同じホテルに泊まったことである。彼らの住む桂林まで車で走ればたった一時間ですよ。帰れよ、そのくらいの距離なら。その上、我々の部屋は夜中でも車(それも日本で むかしむかし走っていた耕運機みたいなうるさいやつが4台に1台はいる)が、がんがん走っているというむちゃくちゃうるさい道路に面した部屋で、やつらの部屋は静かな内側。ここでは四つ星のホテルといえども大した値段でもないんだろうが、少なくとも晩飯数品分くらいにはなんだろうよ。格安ツアーで2泊のホテル代と思っていたらそれが実は3泊分だったとすりゃあいったい何を削ってるんだその分さ。
 ああ、ちなみに一番目にぶち切れるのは実はまだこれからです、念のため。

9.oct.2004 YangShuo to GuangZhou via GuiLin
 翌朝は、目が覚めるとちょうど爺が散歩から帰ってきたところ。
「いやはや昨日歩いたのと反対側に完全に現地の人の町があります」
 と、肉まんを一個差し出される。
「一個5カクでした」
 カクというのは中国元の10分の1の単位である。
 日本ではすでに円の100分の1である銭という単位は概念としてしか存在していないが、中国のカクはちゃんとお札があるしコインもあった筈。
「面白そうだからぜひ行きましょう」
 というわけでごそごそと起き出して、朝の町の探索に。
 ようするに現地の人のための市場ですね。
 お魚やら解体したばかり(爺はそのシーンを見たらしい)の豚の部位が並べられて売っている。
「出てきたついでにお粥でも食べようよ」
と、お粥屋を探すが、香港や上海ほどは存在しておらず、結局ホテルのすぐ近くまで戻ってからようやく「粥」もあると書いた店を見つけて入った。
 店といってもほとんど路上に屋根つけただけで、家族でやってるようだが、男の子はぐうたらで女の子がよく働くという感じ。お父さんはちゃんと働いてたけど。
 お粥は一個がゆうに二人分はあって(現に厨房からお父さんがわざわざ出てきてほんとに二個いるのか確認しにきたがこちらはよくわからなくて対処できず結局ふたつ頼んだままだった)、ホテルのモーニングではジュースだけを飲ん だ。
 9時半にロビーで新米君たちと合流。
 ちなみに運転手のおぢさんはなかなか愛嬌があってよい。こちらはかなりベテランの様子。
 公園のようなところに連れて行かれて園内お散歩。
 その園内には現地の人の住んでる家とかもあって、中が覗けたりしたのだが、古いおうちに普通に立派なテレビとステレオセットがでーんと置かれていたのにはちょっと笑えた。
 ここではデジカメを持ったおばさんに何度か写真撮らせてくれと言われるが、「おばはんのその古くさいデジカメより俺のソニーが立派だから、ぷーよぷーよ」と日本語と中国を混じえて撃退。
 テントの中にパソコンとプリンター(エプソンのインクジェット)が置いてあって、おばさんの撮った写真はそこですぐ商品化されて何十元かにはなるのだろう。
 民族衣装を着た娘さんと爺はバンブーダンスをやったり記念撮影をしてさらにはお土産までもらったりした。バンブーダンス見学費用として払っただけの10元だかは随分元が取れたような気になったのは言うまでもないだろう。
 ここでまた陽朔の西街へ戻って昼食。
 ここの食事がこの26100円のツアー8食の中では一番印象深いというか美味しかったかも。
 特に麻婆豆腐の辛さは強烈だった。やっとまともに辛くてうまみのある麻婆に出会えた。
 それにしても豆腐もよく出てくる。
 食事の都度ビールも大瓶一本くらいはコースの内として出て来るが、よく見ると新米君たちにも出てるし、なんといってもその夜広州のセブンイレブンで見たら、その「純生」というビールは缶で買うと2.5元。単なる水のボルピックは9元もするのだから、かなり安いもののようである。それでも激辛麻婆を食べるためには一本ではとても足りずに追加。
 爺は得意の「にゅーない」、牛乳である。
 午後から「少数民族の見学」というなんとも趣味の悪い名前のついたツアー内容で、うんざりしていたが、これは意外と悪くなかった。
 陽朔市内の道の悪さといったらそれはそれはひどいものだったが、さすがに桂林に向かう道で少しマシになって、一時間すやすやとお昼寝。
「これから二カ所お買い物に行きます」とガイド君。
 一昨日お茶屋に連れて行かれてちゃんと付き合いで買ってるので、まぁ今日は何も買わんでもよかろうと思ってたけど、一軒目のいかにも「日本人向け」のお店のおばちゃんたちのうるさいことうるさいこと。さすがに路上の物売りのようには追い払うことも出来ないし、なんと言っても日本人専門店であるが故に全員が日本語ぺらぺら。民芸品からブランドバックと節操のない品揃えも不快。どれを勧められても「いらん」と言う私をおばちゃんが連れて行ったのは「男性はやっぱりこれね」って「バイアグラ」。ますますいらんわい。
 爺はまた瑪瑙を買った。
 今度は一万円くらいしたので本物らしい。
「もう一軒行きます、今度は病院です」
 ん?!というか「むっ」としたが、陽朔から走ってくる途中で車のエアコンが壊れたか、蒸し暑い車内を避けるためもあってとりあえず外に。
 どうぞどうぞと連れて行かれたのは本当に病院だった。
 ちゃんと診察に来ている患者さんらしき人ともすれ違うし、漢方を売りつける目的であろうことは察しがついたが、おいおい冗談よせよという感じ。
「こちらへどうぞどうぞ、お茶、健康にとてもいいお茶ですからぜひお飲みください」
 検尿カップのちょっと小さいようなカップにふたつずつ液体が出される。
 爺は素直に飲んだが私は無視。
「私は漢方の権威××といいます」という白衣を着たおばさんが病院の説明を始める。
 日本の熊本にあるなんとかという病院のなんとかという偉い先生も何度も訪れているくらいすぐれた病院であるとかなんとか、講釈はいいから早くここから出せ、とむっとした態度のサングラスをかけたままの私はおよそその権威あるおばさんの目には不愉快に映ったことだろうが、それでもわりと愛想よく相槌を打つ爺に救われたかのようにくどくどと喋る。
「それではマッサージの専門医の先生をお呼びします。どうぞ」
 白衣を着た若い男がふたり入ってきた。
「さあ拍手でお迎えください」
 一番ぶち切れたシーンとは言うが、本当に切れたわけではない。
 例えて言うなら、黄門様が「スケさんカクさん、もういいでしょう」という感じかな。一定時間相手に与えてやったからこれ以上は付き合う必要なしと判断したので、
「拍手だぁ? もういい、俺は帰るわ」
 と、席を立つ。
 たいして怒っていたわけでもないのだが、こういう時に相手より背が高くて、しかもサングラスをして相手に目が見えていないというのは有利ではある。
 とりなす隙を与えずに病院を出て車に戻ると、運転手氏は車の一部を分解してエアコンを修理していた。実際、なおっていたから凄い。
 本来なら旅行社に直接文句を言うところであるが、とりあえず新米君を説教。
「日本人はね、今中国特に中国の南の方に来ることを警戒するとしたら病気なの。SARSやら鳥インフルエンザが怖くて、去年中国旅行激減しただろう。病院ってどういうところと日本人が思うかわかる? 少なくとも病原菌が街の中で一番集まっているところと思うんだよ。何も旅行に来て病院に連れていくことはないだろう。漢方売りたければもっと方法があるだろうよ。中にはさ、年寄りとかで病院好きの日本人も居るから喜ばれることもあろうさ。だったらせめて、強制的に連れて行かないで、8軒のお買い物店リストから4軒選ばせるとかやれよ。俺は少なくとも旅行社が出してきた行程表に病院に連れて行くと書かれていたら絶対にお前さんとこは使わなかったぞ」
「日本人の旅行者を買い物に連れて行く中国人の旅行会社のやり方は何度も経験してるから別に多少の付き合いはするけど、ついでに昨日だ一昨日のことも言うけど、君もこれから日本人ツアーのガイドで食っていくなら、もう少し相手の様子を見ろよ。10元や20元のバックマージン稼ごうとして失敗して、ガイドとして一番美味しいチップを貰い損ねたり、減額されたら元も子もないだろうよ」
 日本人が本当にそんな気前よくチップをあげてるかどうかわからんわりには偉そうだ(笑)。
 聞くと、我々で日本人のツアーはまだ7組目だそうである。もちろん団体などの依頼はまだなく、夫婦とかカップルとかばかりで、本来たいていの場所ではガイドなんかいらんわいと思っている我々のような相手は初めてだったようだ。
 昨日の段階では、愛嬌のある運転手氏には1000円札をチップであげて、ガイドはゼロと思っていたのだが、最後はまだ新米だし、若い彼との金銭感覚の違いもわかったし、なんといっても桂林旅行の本来の目的である景色そのものには何の不満もなくいい旅であったことには違いないので、自分たちの自己満足のために、つまり後味悪い思いしたくないので、彼の愛煙するタバコ1カートンと日本円にして3000円ほどをチップであげた。 足して5000円というところか。
 まあここで、日本人並みに本気で遠慮したところが新米さんの新米さんたる所以かな。
 でも、もうちょっと日本人が何を見たくて桂林まで来るかこれ見てご覧よ、と桂林に関する二冊の本も進呈したのだが、車の中でしばらく見ていた後、「宝にします」と言ってくれたのが、不慣れな日本語で女だ筏だ病院だとこっちの不要なものばかりを押しつけようとした彼にしては上出来のひと言だった。

 広州空港に着いたのは20時過ぎ。
 タクシー乗り場へ行くと、案内のようなおばさんが「どちらまで」と聞いてきた(らしい)ので、「バイヤン・ホテル」と答える。初日と同じホテルだ。後ろにいた運転手らしき兄ちゃんが「バイヤンホテルOKカモン」いきなりカートから我々の荷物を持って歩き出す。それも案内のおばちゃんも含めて3人がかりで。
 やばいこれは白タクにでも乗せられる、と思ってこういう時に中国語も出来て頼りになる爺を見ると、携帯メールに夢中。
「ストップストップ。ハウマッチ、イーシャオ銭〜」と叫ぶと、一番前の男が立ち止まって携帯に数字を打って見せる。
【250】
「冗談、荷物返せ」とおばちゃんからひとつ荷物を奪う。
【220】
「いらんよ、タクシーに乗る」
「タクシー・タクシー・ノープロブレム」
 タクシーだから心配ないと言っているが信用できたもんではない。
 それに一度乗ってるのだから金額も120元とわかっている。100元も多く取られてたまるか。
【180】
「180で行くって行ってますけどどうします」
 意外とのんびりな爺。
 冗談よせとさらに荷物を取り返そうと手を伸ばす。
 すでに本当に普通のタクシーがどこからか出てきたか目の前に停まる。
「いくらなら行くんだって聞いていますよ」
「120だろ、そりゃあ」
 爺交渉。
「OKですって」
 100と言えないところが小心なところだ(笑)。
「まあ降りる時にも一悶着あるかもしれんけど行くか面倒くさいし」
と乗り込むと、タクシーのその運ちゃん、普通にメーターを上げた。
 あれれ、と思っていると高速に乗ったところで「空車」。
 なんとなくカラクリがわかってきた。
 空港まで客を乗せてきたタクシーが空で戻るのは嫌だわ、客待ちに並ぶのも時間がもったいないわで、闇商売してるんだと推測。だったらこっちも足もと見るんだった(爆)。
 広州市内に入ったところでまたメーターを上げる。
 やはりか。
 そうこうするうちにホテルが見えてきてひと安心。
 タクシーの免許番号は車内に表示しているので、こっちもそれをメモしたりと警戒はしていたが、とりあえず無事送り届けてくれたので約束だから120元渡す。
 運転手にっこり。
 メーターは8元だったわけで、ここでホテルのドアマンを巻き込んで一悶着起こしてみるのも旅の一興かとも思ったけれどやめておいた。
 降りるとすかさずホテルのドアマンからメモを渡される。
 見るとタクシーのナンバーの控え。ここらはなかなかやるもんだと感心しきり。
 そんなわけで、今夜は一般フロントには未練を残さずだまって団体カウンターへ行ってチェックインした(笑)。
 
10.oct.2004 GuangZhou to tokyo via HongKong
 空港へ向かうタクシーのメーターをふたりでジッと見ていた時、突然1キロあたり2.6というデジタルの数字が3.9に変わった。
 なんでふたりしてまたその時メーターを見ていたかは定かではないのだが、変わった瞬間顔を見合わせて首をかしげた。
 位置的にも、
「ちょうど広州市街を出たあたりだし、市内中心部から出たら料金変わるんだじゃないでしょうか」
 確かにメーターが上がる速度が速くなっているから、間違いなく単位が変化している。
「いやぁでも、そんなにハイテクな仕組みがあるとは思えないけど」と、ふとドアを見ると何やら料金の説明が。どうも走り出して50キロを超えると車の帰りの料金を半分上乗せするぞ、と書いてあるっぽい。中国語が少しわかる爺がそれを読んで、
「あ、間違いありません。長距離乗ると帰りの料金上乗せなんだ。だからひょっとすると公的には空港は空港から行くタクシー専門で、街から空港へ行ったタクシーは元々客拾っちゃ行けないのかもしれませんね。何しろ帰りの料金もこうして取ってることだし」
 真偽は定かではないが、
「ということはますます昨日のやつらにはしてやられたということですね」
 爺ちょっぴり憤慨。
 さて、三たびやってきた広州白雲空港。
 ところが国際線は遊べないことが判明。チェックインするためには、完全に隔離された場所に入らなければならないのだ。
 まぁ二時間あっても広い空港いろいろ見るとこもあるさ、という思いはあっさりと打ち砕かれた。
 退屈な二時間をどうにかやり過ごして、一路香港へ。
 1時間前の8:30の香港行きは見た目にもかなり小さい飛行機にどっさり客を乗せて行ったが、我々はボーイング757という少し大きいやつにすかすかの客。ふたりして非常口座席(手前のシートがないので広々)で足を伸ばして乗ってきた。
 広州から香港の間は上空から見てるとほとんどビルの建ち並ぶ風景だった。と、いっても飛行時間は50分ほど。うち前後10分ずつは空港のまわりを周回した時間なので、実質は30分以下なんだろう。そりゃそうだわな、電車で2時間の距離だもんな。

 香港では空港で帰りのJALをチェックインした後、またバスで街へ出て飲茶。
 帰りは時間の心配もあったので、エアポートエクスプレスに今回はじめて乗った。
 ひとり100$と思っていたが、ふたりで買うとセット割引があって180$。
 たまたま500$札しかなくて有人のところでチケット買ったからわかったし、きっとどこかには書いてあるのだと思うが、知らなければ、別々に100$ずつチケット買ってしまうところ。
 香港はこの一年でトランジットを含めると5回目だが、だいたいなんとかなるわと最近はもうガイドブックすら手にしないというのは、新しい情報を持っていないということで、それもちょっぴり問題か。まぁそれもまた町歩きの醍醐味と納得すりゃすむことではあるが。
 日本の台風の影響で飛行機は出発に若干の遅れ。
 JALのラウンジでやっとこさこの五日間のメールを読み込んだところで、時間が来て搭乗。
 帰りは二階席だったし、真ん中の席は空いていたので、来る時ほど窮屈ではなかったが(二階席の窓側は窓と席の間に荷物入れがあるのでそれなりにスペースがある)、それでもやはり四時間はきついかな。
 まぁそれでも今回はものをなくしたりもせずよしとしよう。
 成田で夜行バスに乗る爺とお別れ。
 いやいや今回もありがとうございました〜。
 
今回利用した現地旅行社 桂林中国国際旅行社

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