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8月13日(土曜日)その2<br />土砂崩れ。濁流に流されて道路がない!<br /><br /> 中国語の標識には、どうやら「道路閉鎖」といった意味のことが書かれているようだったが、僕らはそれを無視して進むことにした。ジグザグ道の角を曲がるたびに、いつ道をふさぐ瓦礫の山が出現するかと思っていたが、一向にその気配がない。だが急カーブを曲がった瞬間、現れた光景に僕らは目を疑った。山の側面が完全に崩れて、道路そのものが、濁流となったふもとの川に押し流されていたのだ。先週、このあたりは豪雨に見舞われていたが、その結果がこの土砂崩れだった。高さ100メートル×幅100メートルの土と木と葉っぱの塊が崩れ落ち、その場にすさまじい破壊をもたらしていた。<br /><br /> 下のほうの道路に車の列が見えた。いったい何を待っているのだろう? どうやったって、今日中はもちろん、2、3日中にもこの道を抜けられるわけがないのに。一方、僕らはこの土砂崩れをどうにか越えて進むつもりだということを身振りで伝えたが、人々はいっせいに頭を振り、うろたえた表情を浮かべて反対の意を示した。頑丈な4WDならかろうじて通れそうな、ブルドーザーによって造られたデコボコのわだちが出来ていた。人々に向かって、「僕らにはほかに選択肢がない」「今来た道を戻るぐらいなら、危険を冒してでも進む」という話をしていたまさにそのとき、背後でガラガラという音が聞こえたかと思うと、大きな岩が斜面を転がりながら川に落ちていった。さすがに僕らも息をのみ、しばし黙り込んだ。

ジェイミー&ベン 自転車で南極へ17 土砂崩れ。濁流に流されて道路がない!

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2005/08/13 - 2005/08/13

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2

ジェイミー&ベン

ジェイミー&ベンさん

8月13日(土曜日)その2
土砂崩れ。濁流に流されて道路がない!

 中国語の標識には、どうやら「道路閉鎖」といった意味のことが書かれているようだったが、僕らはそれを無視して進むことにした。ジグザグ道の角を曲がるたびに、いつ道をふさぐ瓦礫の山が出現するかと思っていたが、一向にその気配がない。だが急カーブを曲がった瞬間、現れた光景に僕らは目を疑った。山の側面が完全に崩れて、道路そのものが、濁流となったふもとの川に押し流されていたのだ。先週、このあたりは豪雨に見舞われていたが、その結果がこの土砂崩れだった。高さ100メートル×幅100メートルの土と木と葉っぱの塊が崩れ落ち、その場にすさまじい破壊をもたらしていた。

 下のほうの道路に車の列が見えた。いったい何を待っているのだろう? どうやったって、今日中はもちろん、2、3日中にもこの道を抜けられるわけがないのに。一方、僕らはこの土砂崩れをどうにか越えて進むつもりだということを身振りで伝えたが、人々はいっせいに頭を振り、うろたえた表情を浮かべて反対の意を示した。頑丈な4WDならかろうじて通れそうな、ブルドーザーによって造られたデコボコのわだちが出来ていた。人々に向かって、「僕らにはほかに選択肢がない」「今来た道を戻るぐらいなら、危険を冒してでも進む」という話をしていたまさにそのとき、背後でガラガラという音が聞こえたかと思うと、大きな岩が斜面を転がりながら川に落ちていった。さすがに僕らも息をのみ、しばし黙り込んだ。

同行者
その他
交通手段
自転車

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  •  だが、そうも言っていられない。態勢を立て直し、土砂崩れの端に近づいた。そしてハイギアに入れ、頭を下げた状態で、猛スピードで荒れたわだちに突っ込んだ。地面は想像していたよりもぐずぐずで、車輪があっという間に泥にとられていく。土砂が崩れた道の真ん中あたりで、自転車の動きが止まった。「早く! 降りて押すんだ」ジェイミーが恐怖で目を丸くしながら、ベンに向かって叫ぶ。僕らは自転車を降りると、残された力を振り絞って自転車を抱えながら前進した。<br /><br />「サンダルが泥にとられて脱げた!」ベンがうわずった声で叫んだ。<br /><br /> まるで、ホラー映画のワンシーンを見ているようだった。恐ろしいモンスターから必死に逃げようとする主人公が、あと少しというところでつまずいて転倒するのだ。「サンダルなんてどうでもいい! 急げ!」ジェイミーの叫びを無視して、ベンが右手を伸ばして泥のなかからサンダルをつかんだ。あと50メートルだ。助かった。振り返ると、さっきまで僕らがいた場所に岩が落ちてきたところだった。まさに危機一髪だ。心臓が喉から飛び出しそうにドキドキしていた。浮き出た血管を通って、アドレナリンが奔流しているのがわかった。

     だが、そうも言っていられない。態勢を立て直し、土砂崩れの端に近づいた。そしてハイギアに入れ、頭を下げた状態で、猛スピードで荒れたわだちに突っ込んだ。地面は想像していたよりもぐずぐずで、車輪があっという間に泥にとられていく。土砂が崩れた道の真ん中あたりで、自転車の動きが止まった。「早く! 降りて押すんだ」ジェイミーが恐怖で目を丸くしながら、ベンに向かって叫ぶ。僕らは自転車を降りると、残された力を振り絞って自転車を抱えながら前進した。

    「サンダルが泥にとられて脱げた!」ベンがうわずった声で叫んだ。

     まるで、ホラー映画のワンシーンを見ているようだった。恐ろしいモンスターから必死に逃げようとする主人公が、あと少しというところでつまずいて転倒するのだ。「サンダルなんてどうでもいい! 急げ!」ジェイミーの叫びを無視して、ベンが右手を伸ばして泥のなかからサンダルをつかんだ。あと50メートルだ。助かった。振り返ると、さっきまで僕らがいた場所に岩が落ちてきたところだった。まさに危機一髪だ。心臓が喉から飛び出しそうにドキドキしていた。浮き出た血管を通って、アドレナリンが奔流しているのがわかった。

  •  本当なら、バルカムまでのんびりとした自転車の旅を楽しむはずだったが、とんでもないことになってしまった。結局バルカムまでずっと、増水して荒れ狂う川沿いを走りながら、どんどんと険しくなる峡谷を進んだ。断崖絶壁と、道路や川に覆いかぶさらんばかりの木々。頭上の尖った岩肌すれすれに走り抜けることもしばしばだった。<br /><br /> とにかく、ひたすら南を目指した。土砂崩れに殺人ミツバチ、狂犬や激しい雷雨に遭遇しながら。昆明に着いたのは、8月の最終週だった。

     本当なら、バルカムまでのんびりとした自転車の旅を楽しむはずだったが、とんでもないことになってしまった。結局バルカムまでずっと、増水して荒れ狂う川沿いを走りながら、どんどんと険しくなる峡谷を進んだ。断崖絶壁と、道路や川に覆いかぶさらんばかりの木々。頭上の尖った岩肌すれすれに走り抜けることもしばしばだった。

     とにかく、ひたすら南を目指した。土砂崩れに殺人ミツバチ、狂犬や激しい雷雨に遭遇しながら。昆明に着いたのは、8月の最終週だった。

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