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旅の終盤は韓国人の知人や、そのまた知人の日本人の方と慶尚北道の金泉や星州を歩きました。 <br />韓国人の知人は大邱で瞑想教室のインストラクターや英語教師をしていいたので、テグやその近郊の外国人や知識人に知り合いが多いそうです。 <br />その瞑想教室のお客さんに星州出身の画家がいて、今回はその画家の方の尽力で星州郡庁文化体育課が役所の車を運転手つきで貸してくださるなど何かと便宜をはかっていただきました。 <br /><br />郡内の観光には専用のガイドさんもついていました。 <br />なんでもソウルの大学で経済学を専攻したけれど、生まれ故郷の歴史や文化を発掘して広報する仕事がしたいということでUターンしたといいます。 <br />愛郷心にあふれた熱血漢でした。 <br /><br />まさか旅の最後になってVIPのような待遇を受けるとは思っても見ませんでした。 <br />郡庁からお土産に青磁の水差しまでいただきましたが、我々は手ブラで来てしまったために、ちょっと恥ずかしい思いをしました。 <br /><br />深源寺の朝は早く、4時から読経が始まります。 <br />申し訳ないことですが我々一行は朝のお勤めは遠慮させていただきました。 <br />朝食は6時から。料理はもちろん精進料理です。 <br />白いご飯に大根や豆腐のみそ汁、キムチ、各種山菜のナムルや醤油浸けなどのおかずが付きます。 <br />おかゆに沢庵、梅干し以上といったメニューに比べるとはるかに豪華です。 <br />精進料理ですから肉魚の類いはもちろん、だしに使う煮干しやキムチに入れる塩辛、ナムルに混ぜるニンニクは用いられていません。それでも唐辛子はOKでした。 <br />全体に塩味も控え目で、素材そのものの味を楽しむようになっているのは、日本の精進料理と同じといえるしょう。 <br />デザートに梨とパイナップルが出てきましたが、お供えのお下がりなのかもしれません。<br /><br />星州では伽耶山の深源寺に2泊しました。 <br />深源寺は新羅時代に創建された古刹ですが、長らく廃寺となっていたようで、再興なったのは今世紀に入ってからのことだといいます。 <br />テンプルステイ用の宿坊も清潔で設備が整っていて快適に滞在することができました。 <br />テンプルステイというのは、お寺に滞在して礼拝や座禅など僧院の生活を体験するプログラムです。 <br />ご住職の応観師の好意により、我々は特に宗教行事に参加することもなく無料で泊めていただきました。 <br /><br />それどころか朝食後にお茶に招いていただくことになりました。 <br />全羅南道の尼さんが自ら植えたという貴重な緑茶を、応観師が韓国式の作法にのっとった見事なてさばきでいれてくださいました。 <br /><br />韓国ではお茶を飲む習慣は一般的でないのですが、これはお茶が仏教と深い関係を持っていたために、李朝時代の仏教排斥政策によって抑圧された結果だと聞きます。 <br />その一方でお茶を飲む習慣はお寺に伝えられたようで、ボランティアガイドの石田さんも直指寺のお坊さんは皆さんお茶の心得があると言ってました。 <br /><br />応観さんは若いながらも深源寺を任され、復興事業を着実に成し遂げられているなかなかの傑僧とみました。 <br />それでいて偉そうにすることのない春の陽射しのような穏やかなお坊さんです。 <br /><br />お茶をいただきながら韓国のお寺とお墓の関係に及びました。 <br />韓国のお寺では死者の供養は行うことはありますが、お墓は信者であっても儒教式にお寺の外に設けられます。 <br />これは儒教が国教化された李朝以降のことで、応観さんによると仏教が盛んだった高麗時代には現在とは異なる人生の終わり方をしていたといいます。 <br />当時、死期を悟った老人は家を離れ、山中に庵を結んで最期の時を迎えたのだそうです。 <br />人の魂は山からあの世へと帰っていくものだという信仰が背景にあったのだとか。 <br />韓国人の知人もこの話は初耳だったらしく大いに感銘を受けていました。 <br /><br />深源寺 <br />http://www.simwonsa.kr/ <br /><br />星州郡はガイドブックにはまず載らないような田舎町です。 <br />名産はマクワウリで、見渡す限りビニールハウスが連なっています。 <br />高台から見下ろすと、ビニールハウスが陽の光に輝いてまるで海のようです。 <br /><br />とても観光地とはいえない星州ですが、そこかしこに史跡が残っていて、郡庁差し回しのワゴン車でそれらを見て回りました。 <br />そのうちのひとつ檜淵書院は李朝時代の学校です。 <br />見上げるようなクスノキがあって、涼しげな木陰をつくっていました。 <br />昔は少年たちが泊り込みで儒学を学んだところです。 <br /><br />こんなマイナーな史跡にもボランティアガイドの方がおられたのには驚きました。 <br />そのガイドのおじいさんは我々のところに近寄ってくると、カタコトの日本語の単語を交えながら話しかけてこられました。 <br /><br />「あれはなんでしたっけ?拝む・・・」 <br />「カミですか?」 <br />「そうカミ!」 <br /><br />おじいさんは終戦時に6歳、その頃はシンジくんという名前だったそうです。 <br /><br />天に指差しながら「空、パタパタ、魚」 <br />「ああコイノボリですね!」 <br />「そうコイノボリ!」 <br /><br />「兵隊さん、クレヨン、絵の具・・・」 <br />と途切れ途切れに思い出がよみがえるおじいさん。 <br /><br />どうやら日本兵からクレヨンや絵の具をもらって絵を描いたことがあったようです。 <br />その兵士が日本人なのか朝鮮人なのかはわかりませんが。 <br /><br />次の予定もあったので長居はできませんでしたが、蝉がうるさく鳴いている1945年の夏にひととき戻ったかのような思いがしました。<br /><br />昼食後、星州の町を車で通り抜けようとしたらちょうど五日市をやっていたので、下車して市を見て歩くことになりました。 <br />もともと史跡めぐりを中心に組まれたツアーでしたが、こうした心遣いはありがたいものです。 <br />案内の方としてもきれいに整備されたところだけではなく庶民の暮らしにも外国人にふれてもらいたいということなのでしょう。 <br /><br />五日市というのは五日ごとに市が立つという韓国独特のシステムです。 <br />星州では2と7のつく日に市が立つようです。 <br />もともと近郊の農民のために開かれた市ということもあり、農機具や種などの露店が目立ちます。 <br />もちろんふつうの野菜や魚も売っています。 <br />市のはずれででは生きた鶏や兎も売っていました。 <br />さすがに食用の犬は売っていませんでしたが。 <br /><br />市の真ん中には簡易食堂が何軒か並んでいるエリアがあって、大きな釜から白い湯気が上っていました。 <br />日差しの強い初夏の昼下がり、お年寄りたちがスンデ(腸詰)でも肴にマッコルリをひっかけているのでしょう。 <br />さきほどご馳走になった豪華な韓定食に比べたら、いたって素朴なものですが、心ひかれる食堂でした。 <br /><br />星州最大の見どころは伝統的な民家が数多く残るハンゲ村でしょう。 <br />土塀に囲まれた重厚な瓦屋根の屋敷が続いています。 <br />ここは多くの官僚を輩出してきた両班の村だと聞きました。 <br />ここの村の特徴は家の形式がばらばらでバラエティーに富んでいることにあるそうです。 <br />小さな集落でありながら両班たちは南人やら西人やらいろんな党派に分かれていたそうです。 <br />王朝時代の党派は互いに激しい権力闘争に明け暮れていたといいます。 <br />自民党と大阪維新の会と民主党と公明党と共産党の議員がそれぞれ隣同士で住んでいる、いやそれ以上の感じでしょうか。 <br />昔はそうとう険悪な空気が流れていたと思います。 <br />今となってはさまざまなタイプの古民家が見られるので、観光客にとっては興味深いのですが。 <br /><br />小道の傍らにどう見ても人為的に破壊された岩がありました。 <br />ガイドの方の説明によると、もともと村の伝承に基づいて大切にされていたものですが、セマウル運動が盛んだったころに村の若者たちによって因習打破の名目で破壊されたということでした。 <br />セマウル運動は藁屋根の民家を瓦葺に変えたりするなど農村の近代化をはかる運動だと聞いていたのですが、ここまで血の気の多いムーヴメントだとは思ってもいませんでした。 <br /><br />セマウル運動の宣伝映画 <br />http://ehistory.korea.kr/pop/movie_pop.jsp?srcgbn=KV&amp;mediaid=12250&amp;mediadtl=28652&amp;gbn=MH&amp;quality=W&amp;page=1<br />

星州郡文化体育課招待旅行~韓国&ウラジオストク船の旅⑨

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2011/05/07 - 2011/05/07

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池彼方

池彼方さん

旅の終盤は韓国人の知人や、そのまた知人の日本人の方と慶尚北道の金泉や星州を歩きました。
韓国人の知人は大邱で瞑想教室のインストラクターや英語教師をしていいたので、テグやその近郊の外国人や知識人に知り合いが多いそうです。
その瞑想教室のお客さんに星州出身の画家がいて、今回はその画家の方の尽力で星州郡庁文化体育課が役所の車を運転手つきで貸してくださるなど何かと便宜をはかっていただきました。

郡内の観光には専用のガイドさんもついていました。
なんでもソウルの大学で経済学を専攻したけれど、生まれ故郷の歴史や文化を発掘して広報する仕事がしたいということでUターンしたといいます。
愛郷心にあふれた熱血漢でした。

まさか旅の最後になってVIPのような待遇を受けるとは思っても見ませんでした。
郡庁からお土産に青磁の水差しまでいただきましたが、我々は手ブラで来てしまったために、ちょっと恥ずかしい思いをしました。

深源寺の朝は早く、4時から読経が始まります。
申し訳ないことですが我々一行は朝のお勤めは遠慮させていただきました。
朝食は6時から。料理はもちろん精進料理です。
白いご飯に大根や豆腐のみそ汁、キムチ、各種山菜のナムルや醤油浸けなどのおかずが付きます。
おかゆに沢庵、梅干し以上といったメニューに比べるとはるかに豪華です。
精進料理ですから肉魚の類いはもちろん、だしに使う煮干しやキムチに入れる塩辛、ナムルに混ぜるニンニクは用いられていません。それでも唐辛子はOKでした。
全体に塩味も控え目で、素材そのものの味を楽しむようになっているのは、日本の精進料理と同じといえるしょう。
デザートに梨とパイナップルが出てきましたが、お供えのお下がりなのかもしれません。

星州では伽耶山の深源寺に2泊しました。
深源寺は新羅時代に創建された古刹ですが、長らく廃寺となっていたようで、再興なったのは今世紀に入ってからのことだといいます。
テンプルステイ用の宿坊も清潔で設備が整っていて快適に滞在することができました。
テンプルステイというのは、お寺に滞在して礼拝や座禅など僧院の生活を体験するプログラムです。
ご住職の応観師の好意により、我々は特に宗教行事に参加することもなく無料で泊めていただきました。

それどころか朝食後にお茶に招いていただくことになりました。
全羅南道の尼さんが自ら植えたという貴重な緑茶を、応観師が韓国式の作法にのっとった見事なてさばきでいれてくださいました。

韓国ではお茶を飲む習慣は一般的でないのですが、これはお茶が仏教と深い関係を持っていたために、李朝時代の仏教排斥政策によって抑圧された結果だと聞きます。
その一方でお茶を飲む習慣はお寺に伝えられたようで、ボランティアガイドの石田さんも直指寺のお坊さんは皆さんお茶の心得があると言ってました。

応観さんは若いながらも深源寺を任され、復興事業を着実に成し遂げられているなかなかの傑僧とみました。
それでいて偉そうにすることのない春の陽射しのような穏やかなお坊さんです。

お茶をいただきながら韓国のお寺とお墓の関係に及びました。
韓国のお寺では死者の供養は行うことはありますが、お墓は信者であっても儒教式にお寺の外に設けられます。
これは儒教が国教化された李朝以降のことで、応観さんによると仏教が盛んだった高麗時代には現在とは異なる人生の終わり方をしていたといいます。
当時、死期を悟った老人は家を離れ、山中に庵を結んで最期の時を迎えたのだそうです。
人の魂は山からあの世へと帰っていくものだという信仰が背景にあったのだとか。
韓国人の知人もこの話は初耳だったらしく大いに感銘を受けていました。

深源寺
http://www.simwonsa.kr/

星州郡はガイドブックにはまず載らないような田舎町です。
名産はマクワウリで、見渡す限りビニールハウスが連なっています。
高台から見下ろすと、ビニールハウスが陽の光に輝いてまるで海のようです。

とても観光地とはいえない星州ですが、そこかしこに史跡が残っていて、郡庁差し回しのワゴン車でそれらを見て回りました。
そのうちのひとつ檜淵書院は李朝時代の学校です。
見上げるようなクスノキがあって、涼しげな木陰をつくっていました。
昔は少年たちが泊り込みで儒学を学んだところです。

こんなマイナーな史跡にもボランティアガイドの方がおられたのには驚きました。
そのガイドのおじいさんは我々のところに近寄ってくると、カタコトの日本語の単語を交えながら話しかけてこられました。

「あれはなんでしたっけ?拝む・・・」
「カミですか?」
「そうカミ!」

おじいさんは終戦時に6歳、その頃はシンジくんという名前だったそうです。

天に指差しながら「空、パタパタ、魚」
「ああコイノボリですね!」
「そうコイノボリ!」

「兵隊さん、クレヨン、絵の具・・・」
と途切れ途切れに思い出がよみがえるおじいさん。

どうやら日本兵からクレヨンや絵の具をもらって絵を描いたことがあったようです。
その兵士が日本人なのか朝鮮人なのかはわかりませんが。

次の予定もあったので長居はできませんでしたが、蝉がうるさく鳴いている1945年の夏にひととき戻ったかのような思いがしました。

昼食後、星州の町を車で通り抜けようとしたらちょうど五日市をやっていたので、下車して市を見て歩くことになりました。
もともと史跡めぐりを中心に組まれたツアーでしたが、こうした心遣いはありがたいものです。
案内の方としてもきれいに整備されたところだけではなく庶民の暮らしにも外国人にふれてもらいたいということなのでしょう。

五日市というのは五日ごとに市が立つという韓国独特のシステムです。
星州では2と7のつく日に市が立つようです。
もともと近郊の農民のために開かれた市ということもあり、農機具や種などの露店が目立ちます。
もちろんふつうの野菜や魚も売っています。
市のはずれででは生きた鶏や兎も売っていました。
さすがに食用の犬は売っていませんでしたが。

市の真ん中には簡易食堂が何軒か並んでいるエリアがあって、大きな釜から白い湯気が上っていました。
日差しの強い初夏の昼下がり、お年寄りたちがスンデ(腸詰)でも肴にマッコルリをひっかけているのでしょう。
さきほどご馳走になった豪華な韓定食に比べたら、いたって素朴なものですが、心ひかれる食堂でした。

星州最大の見どころは伝統的な民家が数多く残るハンゲ村でしょう。
土塀に囲まれた重厚な瓦屋根の屋敷が続いています。
ここは多くの官僚を輩出してきた両班の村だと聞きました。
ここの村の特徴は家の形式がばらばらでバラエティーに富んでいることにあるそうです。
小さな集落でありながら両班たちは南人やら西人やらいろんな党派に分かれていたそうです。
王朝時代の党派は互いに激しい権力闘争に明け暮れていたといいます。
自民党と大阪維新の会と民主党と公明党と共産党の議員がそれぞれ隣同士で住んでいる、いやそれ以上の感じでしょうか。
昔はそうとう険悪な空気が流れていたと思います。
今となってはさまざまなタイプの古民家が見られるので、観光客にとっては興味深いのですが。

小道の傍らにどう見ても人為的に破壊された岩がありました。
ガイドの方の説明によると、もともと村の伝承に基づいて大切にされていたものですが、セマウル運動が盛んだったころに村の若者たちによって因習打破の名目で破壊されたということでした。
セマウル運動は藁屋根の民家を瓦葺に変えたりするなど農村の近代化をはかる運動だと聞いていたのですが、ここまで血の気の多いムーヴメントだとは思ってもいませんでした。

セマウル運動の宣伝映画
http://ehistory.korea.kr/pop/movie_pop.jsp?srcgbn=KV&mediaid=12250&mediadtl=28652&gbn=MH&quality=W&page=1

旅行の満足度
4.0
観光
4.0
ホテル
3.0
グルメ
4.0
ショッピング
4.0
交通
4.0
同行者
一人旅
一人あたり費用
10万円 - 15万円
交通手段
鉄道 高速・路線バス
航空会社
アシアナ航空
旅行の手配内容
個別手配
  • 深源寺のご住職から韓国式茶道のお手前を受けました。<br />

    深源寺のご住職から韓国式茶道のお手前を受けました。

  • 檜淵書院。<br />ここで日本時代の思い出を語るボランティアガイドのおじいさんに出会いました。

    檜淵書院。
    ここで日本時代の思い出を語るボランティアガイドのおじいさんに出会いました。

  • マクワウリの競りの光景にたまたま出くわしました。

    マクワウリの競りの光景にたまたま出くわしました。

  • ランチは文化体育課のご招待で見事な韓定食をいただきました。<br />テーブルいっぱいにご馳走がならびます。

    ランチは文化体育課のご招待で見事な韓定食をいただきました。
    テーブルいっぱいにご馳走がならびます。

  • 星州の町はたまたま五日市の日に当たっていました。<br />写真はポン菓子を作っているところです。<br />昔懐かしいと思う方も少なくないことでしょう。

    星州の町はたまたま五日市の日に当たっていました。
    写真はポン菓子を作っているところです。
    昔懐かしいと思う方も少なくないことでしょう。

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