1994/09/11 - 1994/09/15
422位(同エリア807件中)
北風さん
陽朔で中国観光のハイライトとも言われている「漓江下り」ツアーにも参加して、お腹一杯山水画の世界を味わった!
英語が通じる街、
非常に居心地のいいホテル、
見渡せば夢の様な水墨画の世界に囲まれて目覚める朝、
中国入国最初の街としては、この陽朔は申し分の無い所だった。
そう、この街から旅立とうとするまでは・・・
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 鉄道
-
昨日は河下りではしゃぎすぎたせいか、朝はなかなか眠りから覚めきれなかったが、突然、耳元でものすごい爆発音が響き渡った。
緩やかに動いていた心臓がギュッと縮まる。
あと少しで永遠の眠りにつきそうになる所だったが、身体は飛び起きる方を選んでくれた。
ものすごい騒音が飛び込んでくる窓から顔を出すと、通りが一面煙に包まれている。
過激派による爆弾テロと思われてもおかしくない光景だ。
男が一人、通りの向こうを足早に遠ざかっていた。
その手元から、なにやら紙で作ったムカデのような物が投げられる。
途端、もの凄い爆発音が辺りに弾け飛んだ。
赤ん坊や老人の心臓など容易にパンクさせそうな破裂音だが、あれは、多分「爆竹」ではないだろうか? -
早朝から小さな爆弾もどきの爆竹を通りにばらまいて何もないはずがない!
一体何が起こるのだろう?
薄紫の煙の中から、話し声が聞こえてくる。
繁華街へと続く通りの向こうから、パチンコ屋の新装開店のような花輪を持った一陣が現れてきた。
川風が煙を吹き去った後、通りには長い行列が出来ていた。 -
旅社の女の子に聞くと、これは葬式だと言う。
けたたましい爆発音が途切れなく響く中、行列は静かに静かに歩き続ける。 -
けたたましい爆竹の音で葬式が告げられた朝、もはや寝床にもどれる環境ではなかった。
空襲警報の中眠れぬ夜をすごしたばあちゃんの気持ちがわかる気がする。
寝不足でふらつく足を無理に動かして、街の繁華街へと向かう。
途端、またもや通りの向こうから爆発音が響き渡ってきた。
そして、またきゅっと胸の中心が縮まる。
今日は、心臓の強化訓練日だろうか?
今度の爆竹は、なんと開店祝いの為だそうだ。
とにかく、この国の人間は爆竹抜きで行事は行えないらしい。
男が走ってきた。
俺から5m程の所でしゃがみこむ。
嫌な予感がする。
今、男の背中越しに聞こえてきた音は、マッチを擦る音では?
男がいきなり耳を塞いで、一目散に駆け出した時、その場に残されていたのは、火花を散らすあの紙のムカデだった。
反射的に身体が後ろを向いて全力疾走に入ろうとする瞬間、鼓膜を突き破りそうな音の弾丸が浴びせられる。
これほど最前列にいたくないお祝い事は初めてだ。 -
「没有(メイヨー)」、中国を旅行する旅人が一番最初に覚える中国語だった。
ホテルの部屋、食べ物、全ての購入に関して浴びせかけられるこの言葉は、「ありません」「できません」を意味している。
この社会主義の国では、仕事に関するサービス精神などと言う単語は存在すらしていなかった。
いくらがんばっても変わらない給料ならば、やはり働きたくないのだろう。
そして、現在、桂林の駅からの帰り道、しみじみとその言葉の意味を考えている自分がいる。
北京行きの列車のチケットを買いに、桂林駅に行くのはこれで2日目だった。
「切符が買えない!」、正確には「売ってもらえない!」
小さな片手しか入らないぐらいの切符売り場の窓口に、暴動の様な殺気立った人々の群れが押し寄せる中、どうやって中国語も話せない俺が切符を買う事が出来るのだろうか?いや、あの窓口までどうやればたどり着けるのだろうか?
「没有カフェ」、お土産屋の通りに並んでいたレストランの名前は、否応無く中国そのものを象徴するネーミングだった。 -
旅日記
「中国の駅」
まるで、暴動だった。
昼なお薄暗い構内に充満する人の熱気と喧騒。
またもや誰かが俺の髪の毛を引っ張る。
肩を掴まれあっという間に押しのけられた。
隣では同じ様に生存競争に負けたおばちゃんが、人の波に爪を立てながら流されていった。
なんと説明したらいいんだろう?
俺はただ桂林駅に北京行きの切符を買いに来ただけなのに。
この桂林駅通いは既に4日目に突入していた。
何処の世界に4日も駅に通い続けて、その国の首都へ向かう切符が買えない国があるだろうか?
たかだか切符を買うだけで、体中にあざが出来る所なんて生まれてこのかた考えた事も無かった。
駅の中は30人以上の人間が1つの窓口に殺到していた。
確か歴史上、この国は礼を重んじる国民性となっているはずなのだが、きちんと列を作って並ぼうとしている人間なんて誰一人見当たらない。
こうして列を離れるとプロレスの場外乱闘のような状況がよく見える。
4日前からこのバトルロイヤルに参加しているのだが、俺はことごとく負け組にまわっていた。
何度か窓口にたどり着いた事はあった。
最初は偶然にも人波に押されて窓口にたどり着いた。
左手で片手がようやく入るほどの窓の端を掴み、大声で「北京行き」と叫ぶ。
次の瞬間、右から強烈なタックルをくらったと思ったら、あっという間に集団から弾き出されていた。
3日目、次のチャンスが訪れた。
必死に両手で窓口にしがみつき、「北京」と叫ぶ。
今度はおばちゃんの答えが聞こえた。
が、しかし、早口の中国語なんてわかるはずも無い。思わず英語が口に出た。
「WHAT?」(しまった!)
・・・ここは中国だった。
わずらわしい事が死ぬほど嫌いな方々が暮らす国。
おばちゃん、一言「没有」と叫ぶと、いきなり窓口のシャッターを力まかせに降ろしやがった。
おもいっきり両手がはさまれた。
力が抜ける。
途端、背後から何人もの手がシャツを掴み、窓口から引き剥がされた。
そして、4日目の今日、
俺はこの国が嫌になってきた。 -
旅日記
「広州行きの寝台バス」
1994年9月14日、またもや、北京行きの切符は買えなかった。
なんてこった!ここまであまりにもスムーズに移動できたのは
奇跡だったんだろうか?
それとも、陽朔であまりにも幸運を使い果たしてしまった為なのか?
とにかく、北京行き一時中止を決意!
広州から香港へと一時引き上げる事にした。
このルートなら、中国3大都市の一つ、広州から北京行きの列車に乗る事が出来る。
(大都市と首都を結ぶ路線なら、さすがに席に余裕があるだろう。いや、あって欲しい)
1994年9月15日、広州行きの寝台バスがバスターミナルに現れた。
予想に反して、なんと2階建てだ。
ドライバーが窓から顔を出して、自慢げに片言の英語で話し掛けてきた。
「お前たちはツイている。このバス、NEWなんだぞ。まだ6年しか使われてない」
・・・不安が陽炎の如く立ち昇ってきた。 -
外見は、窓が上下に並んで2階建てに見えるこのバス、何故か車体のサイズは普通のバスと同じだった。
そして、中身は・・
中は、カプセルホテルだった。
なんと座席が初めからリクライニングしている。
これはシートではなく、座椅子と呼んだ方がいい気もするが、確かにその名の通り、寝台だった。
しかし、こんな形の寝台バスは乗った事が無かった。
長距離の移動に備えて買い貯めたパン、ジュース等を枕もとに置き、寝そべりながらフロントガラス越しに流れる景色を見つめる。
まるで、自宅でリラックスして映画を見ている感じだ。
これほど快適なバスは乗った事が無い。
さすが中国4000年!快適を求める気質は半端なもんじゃない。
・・ただし、最初の40kmの舗装路に関してだが・・ -
旅日記
『広州の盲流』
スーパー寝台バスは、朝焼けに染まる広州駅前に滑り込んだ。
さすが、中国で1,2を争う経済地区だけある。
この大きさと豪華さは、東京駅など目じゃない。
人の流れに身を任せて、駅の玄関口にたどり着こうとした時、異様な景色に足が止まった。
小学校の校庭ぐらいの広さがあるだろう、広州駅前の広場は、ボロボロの服を身にまとった人々で埋め尽くされていた。
そこら中に粗末なテントが張られて、なかには火を焚いて食事をしている家族もいる。
まるで災害時の避難所だ。
(後日、これが「盲流」と呼ばれる、北部の貧しい村からやってきた人々の群れだと知った)
18歳ぐらいの女の子がフラフラと行く手に現れてきた。
小さな花柄のワンピースがよく似合う中国美人だ。
少女が千鳥足のようにふらつく足を、もつれさせながら俺の方に近づいてくる。
もう、手をのばせばその長い髪に手が届きそうな距離だった。
きれいに整った顔と両手が、ゆっくりと持ち上げられる。(何故か彼女の瞳は閉じていた)
見えない十字架にはりつけにされたかの様に、広げられた両手の指先がピンと伸ばされる。
彼女の身体がビクンと弾む。
瞬間、かわいらしい口元から鮮血が飛び散った!
溢れ出る液体が、見る見る間にワンピースの花柄を赤く染める。
少女がスローモーションのように、ゆっくりと倒れていくのを、目は追っていた。
が、しかし、俺の身体は今年一番のホラーショックに動く事を拒否していた。
何がどうなっているのか誰か説明してくれ!
若い男が一人、駆け寄ってきた。
どうやら、少女の親族らしい。完全にひきつけをおこしている少女を、助け起こそうとしている。
が、警官姿の男が背後に現れた瞬間、今度は若い男が、少女に追いかぶさるように倒れこんだ。
ハリウッド映画のように次々と激変していく。
盲流の病気の少女が血を吐き、それを助けようとした男の子が、けんかと勘違いされて、警官に警棒で殴り倒されたというストーリーがわかるまで俺は何分ぐらいそこに留まっていたんだろう?
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