1994/12/30 - 1995/01/03
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北風さん
時は、12月30日、とうとう激動の1994年も師走を迎えていた。
師走は「僧侶が(年末の)仏事で走り回る」事を意味するらしいが、インドでも、いつもは怠惰を貪っている乞食坊主「サドゥ」が、妙にフットワークよく歩き廻り、ガンガーのほとりに集まり出していた。
(何だ?初日の出集会でも開くのだろうか?)
そして、
どこの国でも変わらない年末の慌しさの中、ガンジス川に1995年が顔を出した。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 鉄道
-
毎日、信じられない数の人々がひしめくベナレスの街とは対照的に、ガンガーの向こう岸は建物など一つもない不毛の大地が広がっていた。
「不浄の地」と呼ばれている場所だった。 -
年末押し迫るある日、前から気になっていた「不毛の地」へと行く事にした。
さて、どこから船が出るのだろう? -
旅日記
『不浄の地へ』
突然だが、俺はフランス人が嫌いだった。
子供みたいなわがままを言うし、そのくせ間が抜けている。
そして、そのカップルが俺の泊まっているホテルにいた。
しかもパリ出身らしかった。
(フランスの中でもパリの人間は、特別鼻が高くて嫌いだった)
ある日不浄の地へ渡ろうと、ホテルで朝食を食べていた俺の所へ彼らがやって来た。
どこで聞いたのか、不浄の地へ行くなら、俺がためになる話をしてやると言う。
こちらの返答も聞かずに話が始まった。
「とにかく、不浄の地に行くには、渡し船を雇わなくてはならない。俺達はインドが長いから値段交渉でUS$18(1800円)で乗った。いいか、絶対US$20以上払ったらだめだぞ!」
俺は、いつもの様にガート沿いをふらついて、適当な所で小船の先頭に声をかけた。
それ程気合を入れなくても、値段は折り合い、俺は船上の人となった。
その日、俺が渡し船に払った金額は、50円だった。 -
<不浄の地にて>
あっという間に小船はガンガーを渡って目的地に到着! -
見渡すかぎり何もない砂浜には、対岸の怖いぐらいの喧騒が嘘のように静寂だけが支配していた。
-
「誰もいない」と言われた不毛の地に掘っ建て小屋らしきものがあった。
意外と身奇麗な少女が一人、食事の支度らしき事をしている。
聞けば、漁師の小屋らしかった。 -
旅日記
『サドゥ』
川沿いのガートは、どこまでも続いているようだった。
そして、どこまでも人が溢れている。
三叉の槍を持った乞食が、ガンガーに向かって吼えていた。
腰には虎模様の腰みのを巻いている。
澄み切った青空を背景に、浮かび上がるシルエットは、アニメの「虫歯菌」にそっくりだが、どのように解釈してみても、のどかな光景には見えない。
他の国なら、3分で警察が飛んで来るシーンだろう。 -
この虫歯菌のコスプレを身にまとった乞食は「サドゥ」と呼ばれる乞食坊主だった。
インドのカースト制度では、俗世の煩悩を振り切った悟りの境地の人間として最も高い位に属する坊主だ。
サドゥには、傾倒しているインドの神によって「ビシュヌ派」と「シバ派」があるらしく、シバ派が圧倒的に多いらしい。
シバ派のサドゥは、シバ神の装飾品である「三叉の槍」と
「虎皮のパンツ」を着用しているとの事。
つまり、この目の前の虫歯菌は「シバ派」らしかった。
身体に何千本もの針を突き刺したり、尺取虫のように地面を這ったり、とにかく自分流の難行、苦行をその身にかして、悟りを得ようと修行し続けるサドゥ。
しかし真実と虚実を、生存というシェイカーで常にかき回されているこの国では、本物の傍には何千人ものコピーがぶら下がっている。
以前出会った、片手に半壊したラジカセをぶら下げたサドゥは、こうのたまわった、
「ボブ・マーリー、最高!」 -
<フルムーンの夜>
満月の夜は、ヒンドゥー教の世界では、特別な意味をもつらしい。
夕暮れから人々がガートに集まりだした。 -
いつもはインド中から沐浴に来る人々で一杯のこの場所が、今夜は地元の人々で足の踏み場もないくらいだ。
-
フルボリュームで甲高いインドミュージックが流れる中、ドンドコドンドコ、太鼓をたたく奴、どこからか聞こえる笛の音、日常が混沌とした世界なのに、今夜はそれに輪をかけた世界だった。
この人ごみ、浮かれよう、どう見てもこれはフルムーンの儀式じゃなく、ただの縁日にしか見えない。 -
おおぉっ、サドゥの一人が、股間の一物でやかんをぶら下げ出した!
これは、万国びっくりショーなのか?
もう何がなにやらわからない。 -
旅日記
『元旦』
1994年12月31日は、除夜の鐘の代わりに、拝火教の相変わらずのドンちゃん儀式の響きで幕を閉じた。
早朝6:00、俺はガンガーのほとりで、バング・クッキー(マリファナ入りクッキー)をポリポリかじりながら、座っている。
川面に波紋が広げているのは、、淡水イルカだろうか?
薄明かりの中で、ゆっくりと流れる白い包みは、いつもの死体だろうか?
インドに来て、もう半月が過ぎようとしている。
そして、旅に出てからは2年が過ぎていた。
一瞬、あの死体と自分の旅がダブって見える。
わけもなく流されていた自分が嫌で、日本を後にしたはずだったが、現在もただ流されるままに漂っているのかもしれない。
俺は何を探しているんだろう? -
珍しく感慨にふける俺の目を覚ますように、サドゥの雄叫びがガンガーに響き渡った。
静寂を保っていた川面が赤く染まり出す。
1995年が、ガンガーの向こうから昇ってきた。 -
新年を迎えたある日、バラナスィの大通りには象がいた。
しかも、インド象だ。
さらに化粧までしている。
どんな路地裏でも、うろつき回る牛、ガンガーを爆走する淡水イルカ、流れる死体にたかるハゲタカ、
日常的に、インド版むつごろう王国を演じているこの街に、さらに化粧したインド象が追加されたとて、もはやそれほど驚くには値しない。 -
最近、バラナスィの子供を持った親達の間では、「モンキーキング」なる大猿が噂されてもいた。
遊んでいる子供の背後から忍び寄り、思いっきり右フックを食らわして逃走するらしい。
大人の腰ほどもある大きい猿らしく、襲われた子供はただではすまないらしかった。
インドの日常は、次に何が起こるかわからないスリリングさの裏に必ず笑いが含まれている。
インド、楽しいかもしれない。
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