2010/04 - 2010/04
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彷徨人MUさん
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1).旅の始めに
行く春や 西施晴のち 雨に遇う
この旅に出かけようと、僕を、後ろから強く推してくれたのは、高校時代に知った、『象潟や 雨に西施が ねぶの花』という芭蕉の俳句である。此の俳句で、「中国四大美人」の一人の「西施」の名前を、初めて知ったのだ。その後、「西湖」に蘇堤を造った蘇東坡の、『湖上に飲む。始め晴れ、のち雨』の中で、『西湖をとりて西施に比べんとすれば、淡粧、濃抹、すべてあいよろし』や、陸游の『湖中微雨、戯れに作る』の中で、『言うなかれ老子一人の振り向く無しと、なお得たり西施が淡粧をなせるを』等を、読み進んでいくうちに、西施の容貌の美しさが、より具体的に、分かってきた様に思えてきた。
2).浙江省杭州、「西湖」へ
「北山路」に沿う「西湖」湖畔は、「三評西湖十景」の一つで、その情景は、『北街夢尋』と、描かれている。西湖の北側は、山が連なり、南側では、「白堤」を挟み、「北里湖」に接している。その日は、生憎と、「北里湖」一帯には、靄が罹り、「白堤」も、鈍色の世界の中にあった。(表題写真参照)
「西湖」湖畔沿いの「新新飯店」の前を通り、「北山路」沿いのシャングリラホテルの前から「白堤」に入り、「西冷橋」を渡り終えた右手に、唐代、「銭塘の名妓」と言われた「蘇小小」の、土饅頭に漆喰をかけた墓があった。「秋風秋雨愁殺人」の詞を詠み、革命に殉じた「鑑湖・秋瑾」女史の、右手に刀を持つ立像が、その脇に、置かれたていた。
3).「宝石山」に登る
「新新飯店」の近くへ戻り、「西湖新十景」の一つで、『宝石流霞』とイメージされる、「宝石山」に登ろうと、麓に、自転車を置き、小糠雨に降られながら石段を上がって行った。登るに連れ、樹々の間から「西湖」が、見え隠れしてきた。山上の『宝石流霞』の石碑のその先には、「保俶塔」(1933年再建)が、細身の姿を誇示するかのように、婉然と建っていた。山頂から「西湖」を望むと、薄絹で覆われたような薄明かりの中に、「白堤」が微かに見えてはいたが、やがて、「断橋」も「錦帯橋」も、そして「雷峰塔」も、霞の中へ、消えて行った。
4).白堤の『楼外楼』で夕食
北山路から、「白堤」に入り、「断橋」を通り、「錦帯橋」に出た丁度その時、目の前に広がる「宝石山」が、ライトアップがされるや、辺りの風景は、『平湖秋月』の景色へと、変わって行った。
湖畔沿いの老舗料理屋『楼外楼』の前は、ごった返していたが、幸い、2階のテラス席が確保でき、早速老酒の「宋嫂特醸」を注文した。老酒を飲みながら、もち米を詰めて蒸した甘いレンコンの「西湖蜜藕」、蘇東坡の愛した「東坡肉」、スープは「宋嫂魚羹」、今が旬のタケノコ料理の「雪菜春筍」等の料理を楽しんだ。この日のメインデイシュは、西湖の淡水蝦に、銘茶「龍仁茶」を加え、炒めた「龍井蝦仁」を、そして、食後のデザートには、蘇東坡の好きな「東坡酥」を、堪能した。
5). 「西湖」一周へ、
次の朝、再び「西湖」へ出掛けた。「西湖十景」の一つの「蘇堤」は、暁を楽しむ場所で、『蘇堤春暁』と、言われている。白や紅色、そして八重の桃の花が満開であり、早朝の散歩を楽しむ人や、走る人、おしゃべりに夢中になる人等も見られ、早朝から、とても賑やかである。左に「西湖」、右に「西里湖」があり、「蘇堤」の「望山橋」の下を、舟が行き来していた。
「望山橋」の左手に、「三潭印月」が見えていた。その橋近くで、隋の煬帝が愛した「瓊花」(けいか)の花を見つけた。この花を見たいがため、煬帝は「京杭大運河」を築造させたとも、言われた花である。
やがて、左斜め前方に「雷峰塔」が見えてきた。17世紀初頭、この西湖も日本の倭寇に攻められたと、案内書には、書いてあった。当時、「雷峰塔」は見張台でもあり、倭寇がこの塔を破壊しようと、火を点けた結果、赤レンガ製造が始まる前に、赤レンガ製の塔になったそうだ。柳の木々が、風に揺れ始めるや、辺りは、『柳浪聞鶯』への風景へと、移って行った。
6).旅の終わりに
白楽天が、3年の任期を終え、「長安」に戻る時に詠んだ七言絶句『西湖留別』では、「処処、頭を廻らせば、ことごとく恋うるに堪えたり、就中、別れ難きは是れ湖辺」と、別れが辛いのは、「西湖」との別れだと、詠っている。僅かな時間、西湖湖畔にいたに過ぎない僕も、何故か別れ難き思いに、陥っていたのである。(完)
* Coordinator: Gu Hong
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 鉄道 高速・路線バス 自転車 タクシー 徒歩
- 航空会社
- JAL
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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-
【平湖秋月】
鈍色に染まる「北里湖」の、その先に、微かに「白堤」が見えていた。 -
【断橋残雪】
朝霞が消え去ると、西湖の「白堤」に架かる、「断橋」が、はっきりと見えてきた。 -
【断橋残雪】
西湖の「白堤」に架かる朝霞の「断橋」の橋の上に、軍人だろうか、朝のランニング中の隊列が見えていた。 -
【平湖秋月】
西湖の「白堤」に架かる「錦帯橋」の背後には、杭州の市街地のビル群が、見えてきた。 -
【平湖秋月】
西湖の白堤に架かる「錦帯橋」 -
【北街夢尋】
北山路の南側にある「北里湖」。 -
【北街夢尋】
北山路の南側にある「北里湖」は、水面に蓮の葉が見え隠れする。初夏には、蓮の花が満開となろう。 -
【北街夢尋】
北山路の南側にある「北里湖」は、水面に蓮の葉が浮かんできた。その間を鴛鴦の番が、仲良く泳いでいるのを、しばし眺めていたのだが。 -
【北街夢尋】
北山路から、「北里湖」(白堤と北山路に囲まれた湖)を望む。左手に「孤山」、中央先に「西冷橋」を眺める。 -
【北街夢尋】
芥川龍之介が泊まった「新新飯店」(「江南游記」には、「新新旅館」と記述されている。) -
【北街夢尋】
1920年代の中西様式の建築 「抱青別墅」(北山街38~40号) -
【北街夢尋】
「西冷橋」から北山路を望む。山の背に立つ中央の塔は、「保俶塔」、その下の建物は、「新新飯店」。 -
【北街夢尋】
西湖白堤から、ライトアップされた北山路を眺める。 -
【北街夢尋】
「西湖」白堤から、ライトアップの北山路を眺める。
中央は、芥川龍之介が1921年に宿泊した「新新飯店」である。 -
【北街夢尋】
白堤から、ライトアップされた「保俶塔」を望む。 -
【北街夢尋】
「西湖」白堤から、ライトアップの北山路と、その背後の市街地を眺める。 -
【宝石流霞】
竹やぶに囲まれた石段を登り、「新新飯店」の裏山の「宝石山」に登ったが、あいにくと小雨が降っていた。
東屋には、この写真の【宝石流霞】の石碑が、置かれていた。 -
【宝石流霞】
「宝石山」から,「西湖」の「白堤」に掛かる「錦帯橋」が、霞んで見えていた。 -
【宝石流霞】
「宝石山」の山上の風景。背後の細身の塔が「保俶塔」(1933年再建)。 -
【宝石流霞】
「西湖」白堤から、ライトアップの「保俶塔」(1933年再建)を眺める。 -
【岳墓栖霞】
「岳廟」正門 -
「西冷橋」から名妓「蘇小小」の墓を眺める。湖畔は、紅と白の桃の花が、満開であった。
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唐代に銭塘の名妓と言われた、「蘇小小」の、土饅頭に漆喰をかけた墓。 -
「北山路」に接面する「シャングリラホテル」の前あたりから「白堤」に入り、「西冷橋」を越えた左手に、「秋風秋雨愁殺人」の詞と共に、革命に殉じた「鑑湖・秋瑾」女史の、右手で刀を持った立像が、置かれていた。
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【曲院風荷】
「蘇堤」の北入り口付近にある「跨虹橋」あたりから、「岳湖」を眺めると、南側に架かる「玉帯橋」が見えた。季節が変われば、此処「岳湖」は、見事な蓮の花が咲く池となる。 -
【蘇堤春暁】
「西湖」を南北に貫く、「蘇堤」の早朝。蘇東坡が知事であった1090年に築かれたものである。
春霞がかかる朝が美しいと言われている。 -
【蘇堤春曉】
堤の途中、紅色の桃の花が咲いていた。 -
【蘇堤春曉】
「蘇堤」の「望山橋」から、「西湖」を眺めたら、目の前を通り過ぎていく小船の向こうに、「三潭印月」が、見えていた。 -
【蘇堤春曉】
「蘇堤」の「望山橋」付近から、「西湖」を望むと、小舟三艘が、間隔を取り、並んで進んでいた。この光景を、暫し眺めていたが、久しぶりに、この長閑な雰囲気を楽しんでいた。 -
【蘇堤春曉】
隋の煬帝が、愛した花と言われている「瓊花」(けいか、中国名qiong hua)が、「蘇堤」に咲いていた。揚州の市の花でもある。この花を見たいがために、「京杭大運河」を築造させたと、言われた花である。 -
【三潭印月】
「西湖」白堤から南方を望む。ライトアップの「雷峰塔 」、「三潭印月」。 -
【三潭印月】
「西湖」白堤から南方を望む。ライトアップの、「三潭印月」と、その背後には「雷峰塔」が見える。 -
【三潭印月】
ライトアップされた「三潭印月」 -
【呉山天風】
高さ95メートルの「呉山」の山上に建てられた「城隍閣」 -
【雷峰夕照】
「雷峰塔」は、1924年倒壊したため、2000年に再建された。高さ71.96メートルである。芥川龍之介は、古い塔を見ている。 -
【柳浪聞鶯】
この季節、やはり柳の新芽であろう。風に揺れる柳を、暫し眺めていた。 -
【湖浜晴雨】
水滸伝にでてくる、梁山泊の豪傑の一人、浪里白条・張順。水軍の副都督で、「西湖」のここ「涌金門」で亡くなっている。 -
【湖浜晴雨】
「西湖」湖畔は、今は、花がその美しさを、競い合う季節でもあるようだ。手前の花は、「桃花」である。 -
【湖浜晴雨】
柳の前の池では、一瞬、水牛が、戯れているかの様な光景であったが、この水牛は、造り物であった。
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