2008/08 - 2008/08
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shikiさん
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ホームで待っている一両編成の名松線に後ろから乗り込んだ。
車内はガラガラだったので、前の方のボックス席に座った。
二つほど後ろのボックス席にいたギャルの存在には気づいていた。
しばらくして、背後から男女の会話が聞こえてくる。
「あたし子供めっちゃ好きやねん」
先ほどのギャルだろう。内容からして、会話を始めてから結構時間が経っているようだ。
彼女は一人で座っていたので、乗り込んだ時には会話の相手に気づかなかった。
「へえ。じゃあ保母さんとかになりたいん?」
若い男の声。なんか嫌だ。なぜ嫌かというと身に覚えがあるからである。夜の都会で。
こっちが高いカネを払ってるってのに媚びた感じ。でも自分勝手には喋れない小心ぶり。
せっかく現実から一時だけ逃げ出してきたのに、急激に引き戻されるのを感じる。
「ううん、そんなんちゃうねんけどな。あたしの夢、お嫁さんになることやねん」
「へえ、かわいいなあ」
こんな会話がしばらく続いた。なんでこっちが気ィ遣わなきゃいけねーんだ、というあの気持ちが蘇る。この男の心境も同じに違いない。いやでも彼は別にカネ払ってないか。
「あ、そろそろ時間や。仕事仕事」
そろそろ発車という時刻になって男が言い、私の横を通り過ぎた。
さっき駅で見たのと同じ制服を着て同じ制帽を被った彼は、車両の一番前に陣取った。
フリーダム名松線、出発進行。
後に車内で流れた彼のアナウンスに先ほどの面影はどこにもない。プロそのものであった。
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もう、松阪から出てどこにも合流しない時点で近畿屈指のローカル線なのは間違いないが、最初はこんな感じの田園風景が続く。無人の車両が夜更けに坂をバックしたという武勇伝を持つ名松線の割には平坦である。
しかし、やはり見どころは後半にあった。特に終点の2つ手前である伊勢八知駅に到着する少し前、トンネルを抜けると突如として廃遊園地が現れる。およそ、一時でも運営していたことさえ信じ難いような場所である。打ち捨てられたメリーゴーランドやウォータースライダーと、周囲の長閑な風景とのギャップがショッキングであろ、あまりの不意討ちに写真を撮り逃してしまった。今回の旅行における一番の心残り。 -
終点の伊勢奥津駅に到着。意外と立派な駅。
ちなみに、明らかに地元民でない「仲間」は自分の他に一人だけだった。ちなみに地元民も最後まで乗っていたのは一人だけ。かなり危機的状況。 -
ひいて見るとやっぱりナイスローカルっぷり。
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駅から続く道。この独りぼっち感が最高である。
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カメラの設定をいじって遊んでいたらこんな感じに写ってしまったが、実際はひとつ前の写真くらいの明るさだった。
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この薬局は、近隣住民にとっては命を救う存在に違いない。
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今回の旅では宿場町にも訪れたが、自分が生まれる前と思しき昭和の町並みは、江戸の町並みと同じくらいに歴史を感じる。
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ここには紛れもなく「駐在さん」がいる。
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この日は本当に伊勢奥津に似合う(と勝手に思っている)空模様だった。
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完全に日が暮れるまで散歩したい場所だったが、終電が18時台というファンキーダイヤなので、諦めて引き返す。
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名残惜しいなあ。
ちなみに帰りも三人+あの名運転士。 -
この電気屋は、近隣住民にとっての希望の灯りに違いない。
もしもう一度名松線に乗りたくなったら、次は絶対に伊勢八知駅で降りるだろう。あんな景色は反則だ。
でも廃線が先かもしれない。そうならないように踏ん張れ。
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