1955/04 - 1955/04
25467位(同エリア26318件中)
ソフィさん
昭和10年(1935年)ごろ 5歳
阪急電車桜井駅に近く、西国街道の幅が広がって「桜井一番町」となっている街に面して、カフェが出来た。
このあたりは、交番、火の見やぐらなどが並んで、もともと町の中心らしい場所だったが、アイスキャンデー屋と同じころに、カフェが開店したのだった。
このころのカフェは、外から見ると中は薄暗くて、中には何か見てはならぬものがあるように思われ、子供心にはうす気味悪く感じられた。
日中から流行歌を流していて、直ぐその裏にある私の家には、ひっきりなしに歌が流れてきて、自然に覚えてしまう。
「月が鏡であったなら、恋しあのこの面影を、日ごと映して見せよもの…」
私は何のことかまったくわからないが、自然に口をついて歌が出てくる。
このころ歌に対する関心が、世の中も私も深くなっていて、「婦人倶楽部」の付録に日本歌謡・童謡全集が付いてきたのがきっかけで、流行歌から民謡までいろいろな歌を姉と一緒によく歌ったものだった。
このカフェの騒音がひとつのきっかけで、子供の成長とともに手狭だった我が家の引越しが決まった。
新しい住居は、少し駅から離れた五番通りだった。
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