2004/08/13 - 2004/08/15
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8月13日 TRIACASTELAまで (25,3km)
村を出ても、相変わらずの登り道。
しかし段々景色が開けてきた。朝焼けの山々。
こんな景色はこんな時間に歩いていなければ、味わえないものだろう。
ここで、パキとアンヘルは、朝日を見ている後ろ姿を写真に撮ってほしい
と言う。
さすがになかなかキマッテいる。私も真似して、パキに撮ってもらった。
大きな石の碑が見えてきた。ガリシアに入った道しるべだった。
いよいよガリシアまで来たのだ。
セブレイロの村は、どこもかわいい藁葺きの屋根で、形もユニーク。
この藁葺き屋根は、ローマ侵入以前のケルト文化の名残だと、言われている。
バルでゆっくり朝食を取り、隣の土産物屋を見ていたら、マリア(オーストリア)
に会った。彼女はオーストリアチームのオリジナルメンバーの一人だった。
彼女のお兄さん二人を含む構成で、6人いたメンバーは、少しづつ仕事などの
都合で帰っていったので、今や一人残って頑張って歩いているのである。
教会に行ってみると、そこでグリちゃんとあけみさんに会う。
ミサは、イタリア人巡礼者による、おごそかでありながらも、明るい楽しいものだった。
朝は開いていなかった、別の土産物屋も開店し、ここでケルト文字が刻まれて
いる陶器で出来たペンダントをみつけ、その意味の説明を聞き、パキに訳して
もらう。
朝からゆっくりしてしまった。
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ここからいよいよガリシア地方に入ります。
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セブレイロの村には独特の家が。
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朝ご飯。ツナが入っていました。
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タルタ・デ・サンティアゴ。
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今日は小さな村を、いくつも越える。
ガリシアの伝統的な靴は木靴で、今もそれを履いている人に会えるかもしれ
ないとパキが言う。
なかなか木靴を履いた人には会えなかったが、玄関先に、木靴が脱ぎ捨てられて
いるのを目撃した。
ガリシアに入って、何かわからないが、確かに今までとは空気が違う。
人の感じも違う。
村で休んでいると、地元のおじいさんが話かけてきた。
おじさんは、通りすがりの私たちに、いろいろな話をしてくれる。
穏やかな話し方、物腰である。
このあたりの村は以前は人口が100人くらいだったが、今は30人。
マフィア(エタのことらしい)の隠れ家になっていて、安く土地を売らなくては
ならなかったり、作物を搾取されているということだった。
こんな静かな村にも、そんな一面があるのだ。
おじいさんは、私が日本人だとわかると、以前に日本の大使に村を案内した
ことがあると言っていた。 -
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地元のおじさんのお話を聞く。
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道をふさぐ牛。
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今日はマリア(マラガ)の誕生日で、トリアカステーリャへ全員集合の
号令がかかる。携帯でラウラから回ってきたのだった。
スペインでも我々と同じように、ほとんどの人が携帯を持って旅をしている。
これって大きな革命に違いない。
どこを歩いていようが、電波さえ入れば連絡がつくのだ。巡礼者同士も
しばしば連絡をとりあっていた。
私は逆に、パソコンのメールチェックもできない状態で、もちろん携帯は
持っていかなかった。
確かに便利だが、俗世がいつもつきまとう。仕事や日常からも抜けられない
のではないだろうか。
携帯がない時代は、すぐそばにいても、二度と会えないような、ロマンチックな
こともあっただろうに、今はそれを自分自身で操作できるのだ。
そして、今回も携帯の恩恵に預かった。
ラウラからの連絡で、私営のアルベルゲなら、今夜の予約が出来るという。
パキが電話を入れ、ベッドを確保したので、また今日ものんびりバルに寄りながら
道で果物を摘みながら歩くことができる。
農家の軒先に、1ユーロでベリー類の詰め合わせを売っていた。
レッドカラントや、始めて食べる葡萄のような甘いベリーも入っている。
それを一つづつ買って食べる。
また、草の間から、天然の水が湧き出ているようなおいしい水をペットボトル
に詰めこんだ。甘くておいしい天然水だった。 -
ガリシア地方の木の靴。
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今日もバルに何軒か寄りながら、トリアカステーリャの町に着いた。
名前は三つの城に由来されているということだが、何故その名前がついたのかは
わからないそうだ。この地域で一番古いお城は、北北西の山の上にあると言う。(919年)
アルベルゲはあまり綺麗とは言えなかったが、狭い部屋に半分くらいの
顔見知りが揃った。
ここで、フランス人のアンブレラ・マンに再会する。
彼を初めて見たのは、フェルナンドの村に入る少し前。
ボロボロの手作りの古い傘が印象的で、彼そのもの、また
その姿がトータル的にオールド・ファッションで、人目を惹いた。
その傘を、荒野の中は杖にして、風に向かって歩いていた。
彼の姿をみて、私たちは『すごいね』と、顔を見合わせていた。
そして、フェルナンドとバルに行く途中、一緒にくっついてきて、
道がわからなかったので、私たちのあとをついてきたと言った。
その時、わずかな時間会話をしただけだった。
パキは、別のアルベルゲで一度会ったと言う。
ここで会った時は、もうすっかり友達のような気分になっていた。
あの傘は、雨の日に地元の人にプレゼントされたものだった。
おんぼろだが、手作りの上質のものだった。
彼はフランス人で、ストーリー・テラーだと名乗った。
そんな雰囲気のある人だった。 -
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きれいなお水が。
-
村で無人販売していたベリー。
-
アルベルゲの前で、アンヘルがくつろいでいたので、お邪魔する。
日本の世界遺産、熊野古道について話した。
パキも来て、話を続けるが、KUMANOと聞いて、大爆笑をする。
CAMINO(カミーノ)のコピーじゃないかと思っているので、私は必死で
世界遺産という言葉で説明する。遺産という単語を彼女は知らなかったので
そこから始め、あの手この手で話すが、わかってもらうまでに、時間が
かかった。
帰ってから、熊野を少しだけ歩いたので、メールで写真を送ると、やっと
冗談ではないと、わかってくれた。
さて、バルでマリアの誕生会が始まるというので、腰を上げると、あけみさんが
ポストからの帰りということで、ばったり出会った。別のアルベルゲに滞在
しているのだった。
私は今からマリアの誕生会をするから、グリちゃんも誘って一緒に来たら?
と声をかけた。
すでにみんなバルの前に椅子を並べて座っていた。
マリア(マラガ)は、実に早口だ。
英語の先生をしているので、英語もかなり早口だ。(かなりなまっているけど)
パキは、彼女が英語で話していると、時々頭の中は、どこか別のところへ飛び、
内容は頭に入らず、気が付くと、口元だけを見ている・・・ので、彼女の
口の動きは、カミーノの思い出の一つだと言っていた。
そこで私は、今日は彼女の口元だけをクローズアップして、動画を撮ることに
した。
マリアがウェートレスのように、全員の注文を聞いて、メモを取り、ご馳走
してくれた。
こちらの誕生日は、本人がご馳走してくれるらしい。
マリアはプレゼントをされたばかりのカードを使って、全員に占いのような
ことをしてくれた。そのカードには、巡礼にまつわること、草花などの写真
が満載で、見ているだけでも楽しかった。 -
8月14日 BARBADELO ( 22,9km)
今日はパキと今までの思い出について、話しながら歩いた。
私が最初にサンジャンに着いた日のこと、そこで同室だったスペイン四人組の
ことはパキも良く知っている。
その中で、キケは面白かったねという話になり、私が知らなかった、キケの
聞けば涙・・・の、おもしろいけどホロリとくる話も教えてもらった。
それは、キケとアドリア−ノの友情物語で、いわば裏話であった。
パキはいくつもそんなエピソードを覚えていて、大笑いしながら教えてくれる。
アドリア−ノはいつも表の存在で、いい人なんだけど、いつもそこには裏で
彼を支えるキケがいたのだった。
また、ペドロがグッドルキングだという意見は一致し、お互いのペドロの
情報を交換しあった。
私とパキが初めて会った日の話、病院に一緒に付いてきてくれたことなど、
遠い昔の話のようだった。
その時は、まさかこんなに親しくなるとは夢にも思わなかったのである。
パキは、誰からも愛される、いつも楽しい人だが、私たちには何か共通する
笑いのツボがあった。彼女は私の話に興味を持ち、私もパキの話がおもしろ
かった。
いつもばかばかしいことで、大笑いをして、周囲のヒンシュクをかっていた。
そしてこの頃に良く話題に出たのが、サンティアゴに着き、そのあとフェニ
ステーレという最果ての港町に行き、巡礼中に着ていた衣服を燃やす時のこと。
そこで新しく生まれ変わるのだ。
そのことを、いつも私たちは
『オープン ザ ドア』と言い、
そこに何があるかを想像した。
お互いに、そこには『アレハンドロがいる』と言って、大笑いした。
アレハンドロは、レオンから一緒に歩いている人で、フリオの元同僚。
何から何まで私たちを笑わせてくれる。
天然でもあり、おもしろいことを言っている自覚もあるようなのだが、
そのしゃべり方、話の内容、仕草、行動、すべてがおもしろい。
最初は、変な人かと敬遠していたが、彼のユニークな考え、存在が
おもしろいと気がつき、もちろん新しいドアを開けた時、そこに居てほしくない
人ナンバーワンなのだけど、
『ドアを開けて、そこにアレハンドロがいたら、大急ぎでドアを閉めるわ』
と、いうのがここ数日間のネタだった。
私とパキは、昨日彼はこんなことをしていたとか、
こんなことを言っていたと報告し合っては、楽しんでいた。
そのしゃべり方だけでも面白く、パキはアレハンドロの物真似が上手だった。
そんな矢先、パキは今朝あのアンブレラ・マンに洗面所で会って、その時彼が
『雨に唄えば』を口ずさんでいて、それがとてもいい雰囲気だったと真面目な
顔をして言った。
それを今まで大人しく聞いていたアンヘルが、急にニコニコして、パキを
つっつきだした。パキが好きなんだろうという風に。
一昨日のペレッへで出会った女性の時のお返しのようだった。
私も悪ノリして、一緒にからかった。
それ以来、パキのアンブレラ・マンに対しての疑惑が常に私たちの話題となった。
好きな歌手や俳優、映画の話もたくさんした。
パキは、スペインのミゲル・ボセという歌手がものすごくかっこいいと言う。
もう、けっこうな年らしいが、若い時からずっとかっこいいのだと言う。
目を輝かせて、みんなに聞いてみて!と言うので、あちこちの若い女性に
聞いてみたが、みんなの反応は、いま一つだった。 -
今日の目的地BARBADELOまでは4kmあまりのサリアという大きな街の
入り口のバルで休んでいた時、パキがこう提案した。
サリアでスーパーや銀行に行き、今日は公園で昼食を食べ、昼寝しようと
言うのだ。
まだお昼前だから、このまま目的地に行けば、充分ベッドが取れる時間だった。
ここサリアは、サンティアゴまで100km地点の手前にあたり、ここから
歩けば巡礼として認められる地点であるから、またどっと人数が増えること
が予想された。
しかし私も銀行へ行きたかったし、昼寝も魅力的だった。
太陽は、ちょうど真上にあり、サリアの街は暑かった。
スーパーは、とても広く、そこにいるだけで楽しい。
その果物売り場で、パキが私が実るのを心待ちにしている、いちじくをみつけた。
迷わず7個ほど買う。
他にも明日は日曜なので、それに備えて買い物をする。
その重さはリュックの重さの半分以上になってしまった。
さて、インフォメーションでもらった地図を片手に、公園を探す。
それらしいものはなかなか見つからない。
パキは、3年前にここからサンティアゴにすでに歩いて行っているのだ。
だから、ここからのことは、すべて知っているので、私も安心していたら
見つけた公園は、入り口から人間の侵入を拒むような、踏むすきもないほど
の『緑の有刺鉄線』がはりめぐらされていた。
もう何年も誰も足を踏み入れていないような、トゲだらけの野生のラズベリー
に覆われたものだったのだ。
足を出していたパキは傷だらけになる。
これ以上中に入るのを躊躇していると、先を歩いていたアンヘルが、テーブルと
椅子があると言うのでさらに奥地に入る。
ジャングルのような公園だった。
テーブルと椅子というのは、少々誇張した言い方で、実際は元水飲み場と
その横の台という程度だった。
座るところもトゲの枝に覆われているので、それを避けてわずかな隙間に
やっと座る。
野生のラズベリーの生命力はものすごい!
身を屈めながら、買ってきたものを食べる。
アンギラスの缶詰は、ニンニクが効いておいしかった。
大量に買い過ぎたが、荷物になると重いので頑張って食べた。
いちじくも、二人にも分けてすべて片付けた。
とても昼寝どころではなかったので、食事が終わると、逃げるようにして
退散した。 -
買ってきた缶詰、サラダ、パン・・・。
-
公園での食事中・・・。
-
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-
-
それでもサリアでずいぶんと時間を費やしていた。
パキは、三年前のことを話してくれた。
歩いていると、急に『ここでサンドウィッチを食べたわ』と言い出す。
アンヘルは元気で、今日は私たちより早く歩く。
二人でしゃべっているうち、見えない場所まで行ってしまった。
目的地に着いた時、すぐにアルベルゲに行ったのだが、アンヘルは来て
いないという。
おかしい。どこにもいない。
パキは蒼くなって、顔見知りのグループにアンヘルのことを聞いている。
私は離れたところでそれを見ていたが、すると、その中の一人が急に立ち
上がり、足早に歩きだした。
聞くと、アンヘルらしき人が20分前に通り、先に歩いていったという。
その男の人は、すぐに立って、アンヘルを探しに歩いて行ったという。
パキは、その後を追って自分もいくと言う。私もついて行った。
こんな時のパキは、ものすごく心配症のお姉さんに変わり、他のことは
何も考えられないという緊迫した雰囲気だった。
アンヘルの携帯は、お金を入れていないので使えない。お金も持っていない。
もしお金さえあれば心配はしないのだけど・・・と言う。
パキは夢中でどんどん足が早くなる。
私は途中で少し遅れる。1km歩いた所で、先程のアンヘルを探しに行って
くれた男の人と、アンヘルが二人で戻ってきた。
あ〜良かった!アンヘルはこの先のバルで休んで私たちを待っていたのだった。
今朝、アンヘルとパキに、日本から持ってきた、黒酢のエキスが入った錠剤を
一つづつ分けてあげたのだった。これが効いてアンヘルの足は止まらなく
なってしまったらしい。
この親切な男の人は、22歳のバルセロナ出身。
私はこの日以来彼のことを、『ハートの厚(熱)い男』と呼ぶことにした。
どこまで行ってしまったかわからない、アンヘルのことを、何の躊躇もなく、
探しに行ってくれた。なかなか出来ることではない。
やはりアルベルゲは満室で、今日はキッチンの隣の廊下のような場所で
寝ることになった。
床に敷くマットをベッドを確保したフリオに借りた。
フリオのマットは、空気が入る高級品だった。
そこを『ハートの厚い男』が通りがかった。
おいしそうなアイスクリームを食べていたので、どこに売っているか聞いたら、
アイスを差し出してくれ、食べろという。
さすがに『ハートの厚い男』は違う。
今夜はスーパーで買ったものを目の前の広場で食べることになった。
パキたちの買い物の量は、私よりもすごかった。
ファミリーサイズのチーズの詰め合わせを、ひとり一パックづつ食べている。
食後にビールを飲みにバルへ行くと、中にグリちゃんとあけみさんがいた。
中は満員だったので、外のベンチで集う。
私たち三人の他に、フリオ、フリオの彼女、フリオの友達、そしてアレハンドロ。
私とパキは、アレハンドロに話を振ってみる。
アレハンドロの兄弟のことを聞くと、姉が二人いて、姪が二人いるという。
ポケットにはいるくらい小さいのだそう。
かわいいかと聞くと、外に二人を連れて行くと、あれが欲しい、これが欲しいと
うるさいからイヤだと言う。
その話ぶりが、ゆっくりで独特のマがあって、おもしろいのだ。
そして、彼の姪に対する愛情も感じられた。
そこへ食事が済んだグリちゃんも加わり、アレハンドロはフランケンシュタインに
似ていると言われていたが、怒っている様子もなかった。 -
8月15日 GONZARへ (26,1km)
今朝からアンヘルのご機嫌が悪かった。
私たちがいつも誰かのうわさ話をしているから、『いやだ!』と言うのだ。
確かに私たちは朝から、昨日会った美形のフランス人の話でもちきりだった。
幻想的な朝靄の中、歩く。
朝だけの靄かと思ったら、お昼近くまで続いた。
今日は三人とも疲れていた。
椅子のあるバルまでもたない程、疲れて座り込んでしまう。
最初に座り込んだのはアンヘル。
それに続きパキも私もそこへ座り目を閉じる。
すると突然パキの悲鳴!
何かと思ったら、岩の割れ目から、ネズミがパキをつっついたと言うのだ。
ネズミを見たわけではないらしかったが、私たちは慌てて逃げた。 -
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足を洗う巡礼者。
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気が付いたら、あと99km。
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馬で巡礼?
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ポルトマリンの街を過ぎ、橋を渡った所で私たちは休むことにした。
その手前で渡った橋からの風景は緑の広い河川敷が印象的だったが、そこに
流れる川は、ミ−ニョ川と言い、わたしにとってはなつかしい名前であった。
ここから西方向のポルトガルとの国境に流れていた川なのだ。
パキとアンヘルはお腹をすかしていたので、お昼にしようということになった。
二人は食べ物を持っていたが、私が持っている食べ物は、インスタントのピラフ。
味はイタリアンのものと、中華風のものと、二つも持っているのに、お湯とお鍋
がないと食べることができないのだ。
重いものは極力背負いたくないから、こういうことになる。
パキはパンとチーズを分けてくれた。アンヘルは瓶詰めのサラダを無理やり
押し付けてくる。
貴重な食料だというのに、自分の分を削っても、分けてくれる友人。
ありがたい。
食事のあとは、アンヘルが眠りだした。
私もパキも目をつぶり、少しのあいだ、まどろんだ。
そこへふと目を開けると、なんとカルメンが立っているではないか!!!
カルメンは噂の彼と一緒で、本当に幸せそう。
カルメンと一緒に歩いたメセタがちょっぴりなつかしい。
彼女はいつも長い休暇がありながら、旅行にでかけたのは今回が初めて
だと言っていた。
そんな彼女が今、とてもとても輝いて見えた。
二人はこの先の村まで遠いことを知ると、今来たポルトマリンの街にひき返して
行った。
これを機に、私たちも歩きだすことにした。 -
ポルトマリンの街に入る。
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-
この頃になると、アンヘルはすっかり英語が上手になっていて、さらに
日本語まで覚えようとしていた。
「日本語で自分のことは何て言うの?」
「ええ〜〜〜と、(覚え易い言葉を選んで)オラだよ。」
「じゃあ『you』は?」
「ええええ〜〜〜っと・・・(あなたじゃなくて、オラにたいしては)アンタだよ。」
このやりとりを聞いていたパキが、ニヤリとしながら、
「変な日本語を教えているでしょう!?」
と、疑いのまなざし。私はそんなことないよと言うと、アンヘルが
「We are・・・は?」
「『オラたち』だよ。」
「じゃあ、『You are・・・』は?」
「『あんたたち』だよ。」
『オラ』とは、ご存知スペインのカジュアルな挨拶である。
この旅行中、何度見知らぬ人と、この挨拶を交わしたことか。
ていねいな人は、『ブエノス ディアス』(おはよう)、『ブエノス タルデス』(こんにちは)
と言う。この、『ブエノス タルデス』と言う時間は、だいたい午後2時頃
からだと言うことだった。
アンヘルは、「オラたち、あんたたち・・・。」
呪文のように繰り返し練習している。
二人を見ていると、パキは頭も良くてしっかリ者だが、記憶力はアンヘルの方
がいい。
ちなみに、私もスパニッシュ・イングリッシュがすっかり板についていた。
こつは、カタカナっぽく発音することと、過去形をあまり使わないこと。
(すべての人には、あてはまりません)
パキは、リクエストをすると、何でも歌ってくれた。
何でも歌詞をきちんと覚えていて、上手に歌ってくれるのだ。
それも、歌い出すと、とびきりの笑顔になるのだ。
この頃ブームだった曲は、CM ソングで
♪ I feel good ,I feel fine…♪と繰り返すもの。
この単純な曲と、内容が、気分がいいCaminoの歩きには、ぴったり
なのらしい。そして、必ずとびきりの笑顔で歌ってくれる。
早朝から、♪ I feel good ,I feel fine…♪を歌って!と
リクエストすると、必ず止まって歌ってくれる。とびきりの笑顔と共に。
朝など、私は笑う気もしないのだけど、どんな早朝でも、歌ってくれるのだ。
この曲は、アンヘルも得意で、二人で歌い出す。しつこいけど、
とびきりの笑顔で。
私も何曲か歌ってあげたが、パキが気に入ったのは、『365歩のマーチ』
だった。意味を説明すると、行進にも、Caminoにもぴったりだったらしく
ノートを取り出し、私の発音通り、ローマ字で書き写していた。
そして、けっこう歌えるようになったのであった。
先日、この曲のCDを送ってあげたら、とても喜んでくれ、電話で
『昨日はアンヘルが、朝まで遊んで帰ってきて、まだ寝ていたから、
彼のベッドに行って、この曲を大ボリュームでかけたのよ。』
ということだった。 -
今日の目的地、GONZARに着く。
予想通り、アルベルゲのベッドはいっぱいだった。
このあたりに来ると、巡礼者の数はにわかに増え、もう今までのようなのんびり
したムードではなくなっていた。
開いていたのは、元納屋のようなところ。
パキとアンヘルはここで寝ると言う。
私もそこで寝れないこともないが、昨日も床だったので、今日は柔らかい
ベッドで寝たかった。
そこにグリちゃん登場。
彼女は民家の部屋を借りたという。
連れていってもらうが、Wベッドが並んでいるものの、雰囲気が納屋風なところ
は同じ。
私はWベッドでは寝られないタチなので、躊躇し、いったん退場。
しかし、他にはもうチョイスがなかったので、もう一度グリちゃんが泊まる
ところへ行き、Wではなく小さいベッドでいいからということで、値段も
少し安くしてもらい、そこに決めた。
シャワーを浴びて、バルに行く。グリちゃんは食べ物がないバルは気が進まない
らしく、サンドウィッチを作って食べていたようだった。
あけみさんと二人で村でたった一軒のバルに入ると、そこにパキとアンヘルが
軽いものを食べていた。二人はアルベルゲのキッチンだけを借りて、例の
ライスをクッキングしたらしかったが、量が少なくて、ここにボカディージョ
を食べに来たという。
私たちは、ビールとオリーブ、ポテトチップを買って二人のそばに座る。
店が閉店するまで飲んで外に出ると、フリオがいた。
フリオとはいつも一緒だったが、彼は全く英語を話さないので、長い話を
したことはなかったが、肉刺仲間だったので、黙っていても心は通じていた。
この時はあけみさんもいたので、フリオが『千と千尋・・・』のCDを持って
聴いていることを教えてあげると、フリオが曲をハミングしてくれて、
それはスペインの大自然の中で聴いても似合うスケールの大きいものだった。
そしてアニメの話に花が咲く。次から次へとアニメソングが出てくる。
『アルプスの少女ハイジ』『あられちゃん』・・・。
もう誰もが部屋に戻った、静かな星空の下で一緒に唄った。
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