ここを超えるホテルが、果たしてドバイにあるのだろうか。
それが泊まった率直な感想でした。
ドバイはホテル価格が高いことで知られています。
十万円を超える超高級ホテルはもちろんのこと、単なる中級ホテルでも数万円はかかることから、全体的にどうしても割高感、コストパフォーマンスの悪さが否めません。
私は予算1万円以下の範囲内で宿探ししていたところ、このホテルにたどり着いたのですが、結果的にここを選択して大正解でした。
「heritage(遺産)」という名前のとおり、アラブ世界の様式美をそのまま持ち込んだこのホテルは、非常に魅力的です。
そもそもこのホテルは、ヘリテージ・ハウス(Heritage House)、アル・アハマディア・スクール(Al Ahmadiya School)という、ガイドブックにも載っている観光名所と、同じ敷地内にあります。
これら観光施設は、アラブの伝統的な生活を展示した小さな博物館なのですが、隣接するこのホテルも、その延長線上に建てられています。
要するに、このホテル自体もアラブの世界観を反映させた造りになっているのです。
オイルマネーを用いて、急速に近代化が進んだドバイでは、逆にアラブの伝統的建築物をなかなか目にすることができません。
しかし、やはり中東のイスラム世界に来たからには、その土地固有の異国情緒を味わってみたいもの。
そういう意味でも、非常に貴重なホテルだと思いましたし、こうしたところに泊まる夜こそ「アラビアンナイト」と呼べるのかもしれません。
ちなみにゲストハウスという名前ですが、ドミトリーではなく、ちゃんとした個室(トイレ・バス付き)のホテルです。
部屋の広さも充分なスペースがありました。
場所はゴールドスークなど観光名所が集まるデイラ地区に位置し、最寄りのAl Ras駅から徒歩3分。
空港から地下鉄1回乗り継ぎで、わずか30分で着くなど、立地面でも完璧です。
また同時に、思い出深いのがスタッフの素晴らしさ。
羽田を深夜に出て朝ドバイに到着した私は、荷物を預けるため、10時前にホテルへ寄ったのですが、会話の中で翌日早朝にチェックアウトをしなければならないことを伝えると、じゃあ明日の朝食時間には間に合わないだろうから、代わりに今食べて行きなよと勧めてくれました。
ホテルで朝食を取ることはあきらめていたのですが、まさか前日に食べることができるとは。
朝食自体はビュッフェ形式の簡単なものですが、何よりもそのスタッフの柔軟さに感嘆しました。
また、今度は夜ホテルに戻り、別のスタッフに早朝4時半のタクシー手配をお願いすると、ではその前にモーニングコールをしましょうかと自ら申し出てくれました。
朝起きると、同じスタッフが待っていて、タクシーの場所まで案内してくれました。
とても気配りに長けた、そして気さくで笑顔を絶やさない彼らのおかげで、ドバイでの良い旅の思い出ができました。
お金に糸目を付けない人は別ですが、中途半端に出すくらいなら、こうした個性豊かな特色あるホテルが良いと思います。
ただ、小さなホテルで部屋数はさほど多くないので、早めの予約をオススメします。
施設良し、人良し、値段良し。
三拍子揃ったこのホテルは、本当に最高でした。