パレルモとモンレアーレ： アラブ・ノルマン様式の大聖堂など

2012/09/18 - 2012/09/22

2012年ですがシチリア島パレルモと8kmほど山の方のモンレアーレに行き，幾つか写真があるので載せることにします．アラブ・ノルマン様式の大聖堂や教会は今では世界遺産であり，イスラム文化もキリスト教ヨーロッパ文化に混じった独特の趣がありました．5泊でしたが仕事もあったので観光はそれ程多くなく，また4-travelを始める前だったので系統的に写真を撮ってはいませんでいた．
--------------------------------
異民族支配が繰り返され，イスラム文化を始め多文化が混じるシチリア島の歴史はなかなか興味あるので，以下に要点を記しておきます．
◆紀元前1500頃からイタリア半島よりシクリア人がやってきて，シニカ人を追い出す．
◆紀元前800-500頃にやってきたのがギリシャ人とカルタゴ人（フェニキア人の末裔で今のレバノン人．今のチュニジアに都市国家カルタゴを建設）．
◆紀元前3世紀よりローマ帝国が進出．
◆440にウァンダル族がシチリアを占領するが，493に東ゴート族に敗れアフリカへ．
◆535に東ローマがシチリアを取り返し，300年間支配．
◆827にビザンチンの総督が皇帝に反旗をひるがえし，イスラム勢力に援助を求めたのがきっかけで，イスラム勢力が北アフリカからシチリアへ渡る．925シチリア全土をイスラム（アラブ人）が支配．アラブ人は農業とともに手工業も興し，交易を盛んにして繁栄をもたらした．当時のヨーロッパの水準を超えるイスラムの医学、薬学，化学の知識ももたらした．このアラブ人は宗教に寛容で，キリスト教徒やユダヤ教徒にも信仰の自由を認めた．
◆アラブ人同士の争いが元で南イタリアを支配していたノルマンが進出し，1061パレルモ奪取，1091シチリア全土を征服．1130ノルマン・シチリア王国が成立（ノルマンは9世紀フランスのノルマンディ地方に定着したバイキングの子孫）．ノルマンは故郷を捨て少数者として異言語，異人種，異文化に飛びこんだので，宗教，異文化に対する偏見がなかった．ノルマン王朝ではイタリア人，ギリシャ人，アラブ人，ユダヤ人など，知識や能力に応じて要職に登用した．ノルマン自身はフランス語を使ったが，ラテン語，イタリア語，ギリシャ語，アラビア語も公用語として認めた．ノルマンが持ち込んだカトリック，ラテン，ゲルマン文化に，ギリシア正教，ビザンチン文化，アラブ・イスラム文化が加わり，多様なノルマンシチリア文化が育った．
◆王の娘がドイツのホーエンシュタウフェン家と結婚していた関係で，1212このドイツの家系がシチリア王となる．
◆1250ローマ法王がホーエンシュタウフェン家の王位継承を否定し，フランス王の弟をシチリア王とする．
◆1442スペインのアラゴン王が南イタリアとシチリアの王となる．この後，支配者は王家から王家へと目まぐるしく変わる．
◆スペイン継承戦争の結果，1713サヴォイア王家がシチリア，ハプスブルグ家が南イタリアとサルディーニャを領有．その7年後に両家はシチリアとサルディーニャを交換．1734ハプスブルグ家はシチリアをスペイン・ブルボン家に譲る．スペインから多数の貴族，役人，軍人が来て，スペイン化が進む．
◆新大陸・新航海発見以来，シチリアはヨーロッパの主要通商路から外れ，農業，商工業も振るわない後進地域に転落．
◆1861イタリア統一の実現．
---------------------------
シチリア人は長く被支配民族だった訳で，普通なら支配民族に対して根深い反感を持つと思う訳です．ところが，パレルモの人から以下の言葉を聞いたことは驚きでした．「外から支配者はやってきて，彼らの文化をシチリアに残して去っていく．これによってシチリアの文化は豊かになっていく．結構なこと．」　
東アジアの状況とは大きく違い，異民族支配のポジティブな捉え方には驚きでした．シチリア人の楽観的でポジティブ思考な性向，そして上記のように異民族支配は他文化，他宗教に対して寛容だったことがあるのだと思います．

エリア パレルモ(イタリア)

• 旅行の満足度: 4.5
• 観光: 5.0
• ホテル: 4.0
• 交通: 4.0

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 高速・路線バス 徒歩
• 航空会社: エールフランス
• 旅行の手配内容: 個別手配

アリタリア航空を避けるためパリ，ミラノ経由という遠回りでパレルモに行った．しかし，ミラノ-パレルモ間はコードシェアでアリタリア航空運行便だったが，問題はなかったものの，地上職員の応対がもう一つだった．

シチリア島はイタリアの最貧州で，「コーザ・ノストラ」ファミリが建設などの公共事業を牛耳っているということです．コーザ・ノストラは映画Godfather でよく知られていて，アメリカにも進出しています．派手な内部抗争も行ってきました．Palermoの空港はファルコーネ＝ボルセリーノ空港とも呼ばれるが，これは1992にマフィアに殺された二人の判事の名前が付けられたものとのこと．そして最近では，カラブリア地方（靴のつま先に当たる地域）を拠点とする「ンドランゲタ」ファミリがシチリア島に進出してきているという．イタリア各地方にこのようなマフィア・ファミリがいて，イタリアGDPの7％ほどを稼ぎ出しているという．

パレルモ空港はすぐ近くまで岩山が迫っている．

パレルモ国際空港 (PMO) 空港

空港バスからの景色．岩山が迫っている．

岩山が迫っていて耕地が少ないようで，それで貧しいのだろう．しかし，イタリアで最貧という程には貧しいようには見えなかった．

パレルモ鉄道駅．空港バスもここに着く．

ローマから/への列車もあり，靴の先からフェリーで渡って来るのか．

パレルモ中央駅 駅

駅近くの植物園入口．　入らず．

植物園 テーマパーク・動物園・水族館・植物園

４泊した Hotel Porta Felice. それ程高くない３星クラス．

駅から15分程歩いてたどり着いた．

Hotel Porta Felice & Spa ホテル

部屋.

ホテルの最上階の朝食レストラン．　テラス席もあり．

旧市街の中心のクアットロ・カンテ交差点．四隅の円弧状になったビル壁面にいずれも３層の石像がある．

特殊な黒服の警官も多数いて，マフィアが何かしたのかと気になった．

クアットロ カンティ 文化・芸術・歴史

警察車両が２台．

クアットロ・カンテの別の一角．

クアットロ・カンテの別の一角．

これが普通の警察官で，交通監視をしている．

クアットロ・カンテ交差点のすぐ近くのプレトーリア広場．

噴水を囲んで裸体の彫像が30体ほど．

プレトーリア広場 広場・公園

裸体をアップ．　ギリシャを模したものでしょうか．

まあギリシャ風ですが，正確には16世紀ルネッサンス期のものでした．

プレトーリア広場の裸体像．

敬虔なカトリック信者は裸体を嫌い「恥の噴水」と呼んだとのこと．

プレトーリア広場奥の Santa Caterina教会.　　入らず

プレトーリア広場に面する建物にも警察車両が来ていた．

パレルモには南北に走る２本の主要ストリートがあるが，これは東側のローマ通りを北から見たところ．それ程広くはありません．後ろに山が迫っています．

ローマ通り沿いにあるサン・ドメニコ教会．　入らなかった．

サン ドメニコ教会(パレルモ) 寺院・教会

もう一つの南北に走るマクエダ通リ． こちらのが幅が狭い．

路地の露店．

ポリテアーマ劇場．　こちらは北の新市街地区．

ポリテアーマ劇場 劇場・ホール・ショー

ポリテアーマ劇場．

ポリテアーマ劇場近くの公園．

ポリテアーマ劇場近くの公園の銅像．

立派なマッシモ劇場．　見学ツアーがあるが，時間なしだった．

マッシモ劇場 劇場・ホール・ショー

マッシモ劇場正面．　

ゴッドファーザー映画の舞台．実はこの時は知らなかったが，その後にPart I, II, III 全部通して観ました．このマッシモ劇場場面が出るのはPart IIIの最後．

パレルモ市街地の大変大きなカテドラル（大聖堂）の外観．12世紀末に建てられたが，何度も改築，増築されており，イスラム様式も混じっている．8世紀にシチリアを支配した北アフリカのアラブ人がもたらしたイスラム文化は，異文化融合でパレルモ独特の魅力となっている．

2015に世界遺産．

パレルモのカテドラル（大聖堂）の入口部分．　入場無料でした．

パレルモ大聖堂 寺院・教会

カテドラルの内部．後出のモンレアーレのドゥオーモ内部のようには装飾的でない立派な荘厳さ．

マリア像．

カテドラル入口上部の聖母子画．

用務があった高級ホテル Grand Hotel Piazza Borsa.

グランド ホテル ピアッツァ ボルサ ホテル

Grand Hotel Piazza Borsaレストランでのビジネスディナー．

豊富な魚介類とシチリア白ワインでよかったです．
左上の皿にはタコあり．ギリシャと共にイタリアでも食べるよう．

ノルマン王宮前のインデペンデンツァ広場バス停から，パレルモの西8kmにある山中腹のモンレアーレへ行った．

1176年に立てられた立派なドゥオーモ（大聖堂）がある．これは外観．

モンレアーレ大聖堂 寺院・教会

モンレアーレのドゥオーモ内部はアラブ風モザイク画で，金色を中心に繊細，華麗で素晴らしい．中央上部には見下ろすように大きなキリスト画．

2015に世界遺産．

モンレアーレ大聖堂 寺院・教会

中央の大きなキリスト画．

ドゥオーモ内部で大変装飾的．アラブ様式も混じっているので，他所にはない繊細，華麗さがある．

パレルモに来て時間があれば，モンレアーレまで足を伸ばすことお勧め．

モンレアーレのドゥオーモの聖母子像．

ドゥオーモの屋上に昇って見下ろした，隣のイスラム風が混じるベネディクト派修道院中庭．ドゥオーモ入場は無料だが，屋上に昇るのは2euro．昇る価値はある．

ドゥオーモ屋上からの修道院中庭．

ドゥオーモ屋上からパレルモを眺望．　海も見え絶景．

こちらもドゥオーモ屋上からの別角度のパレルモ眺望．

ドゥオーモ屋上へ上るのは有料だが価値ありでした．
　

ドゥオーモの前は山ですが，上の方まで建物あり．

ドゥーモ前広場のテラスカフェでピザでランチ．

ピザは上に具がのっているが普通だが，パレルモのピザの半分以上は中間に具が挟まったタイプ．味はというと，本場のはずだがもう一つといったところだった．

ドゥオーモに隣接するベネディクト派修道院．　入場料 6euroだった．

ドゥオーモ隣の修道院回廊の柱は２本がペアで，1本おきに異なるアラブ模様で装飾されている．大変綺麗．柱上部も装飾的．

キオストロ (回廊付き中庭) 建造物

修道院回廊の柱．

修道院回廊から見た先ほど昇ったドゥオーモ（大聖堂）の屋根の歩いた通路ー―小さいですが左側に人が写ってます．右に進むと更に上の屋根部に出ます．

修道院回廊の角部分で噴水がある．

バスでパレルモに戻る．

ヌォーヴァ門．　ルネッサンス・アラブ・ノルマン混合様式．　この左がノルマン王宮．

ヌォーヴァ門 建造物

パレルモ王宮内にあるパラティーナ礼拝堂の入口部分．王宮と合わせて入場料10euro.

王宮にも立派な部屋（ルッジェーロ王の間），現在も使われている議会場があり入ったが，撮影禁止だった．

パラティーナ礼拝堂 城・宮殿

パレルモ王宮内にあるパラティーナ礼拝堂内部．モンレアーレのドゥオーモと似ており，やや小さくした感じで大変装飾的．

2015に世界遺産．

パラティーナ礼拝堂 城・宮殿

パラティーナ礼拝堂の金色が多いモザイク画で装飾的な内部．

気温は日本と同じくらいだったが，亜熱帯になるのか，ノルマン王宮近くの公園にヤシの木があった．

ピラミッド形の山が見えた．

クアットロ・カンティに隣接する教会．　入ってみた（無料）．

クアットロ・カンティに隣接する教会の聖母子画．

旧市街中心のクアットロ・カンティ近くのサン・カタルド教会．12世紀に建てられ，屋根の三つのドームはアラブ風．

入場料を払って入った．

サン カタルド教会 寺院・教会

サン・カタルド教会内部．教会自体も大きくなく，内部は装飾的とは反対の静謐感で，身が引き締まる感じがする．

サン・カタルド教会の聖母子画．

シチリアは紀元前8世紀から紀元前413年まではギリシャの支配下にあった．その影響か，ホテル近くの海岸に面して，ギリシャ神殿風の建物(遺跡？)があった．

ホテル近くの海岸から港を望む．

ホテル近くの海岸から望んだ街の背後の山．かなり高い．

ホテル近くの Santa Maria Della Pieta 教会．　

サンタ マリア デッラ ピエタ教会 寺院・教会

ホテル近くの San Francesco d'Assisi 教会．　

結婚式があり，前に居るのはその参列者．

ホテル近くの公園．

ガリバルディ庭園 広場・公園

ホテル近くの公園には，熱帯雨林のような木があった．

帰路はローマで８時間ほど過ごしバチカンに行き，パリ経由で帰国しました．

おしまいです．