2016/10/20 - 2016/10/20
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motogenさん
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タフィン村は丘を越えた先になると聞き、ゆるやかな坂を登っていく。
聞きしにまさる雄大な風景が、足取りを軽くしてくれる。
視界いっぱいに迫ってくる山々は、雄大であるが、険しくはない。
近くの山、遠くの山、そしてそのまた奥の山と、幾重にも重なる山々は、優しく、美しく、甘い。
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-
丘を登りきり、タフィン村を眺めたい。
気合を入れ直して歩く。
まにまに民家がある。
そのひさしにモロコシが干してあった。
日本の童謡に出てくるような情景だ。 -
急な斜面の上で、人が集まっていた。
村のお祭か・・? -
崖をよじ登っていった。
叱られないかな・・・
しかし好奇心には勝てず、みんなの集まるその上に登ってみる。
赤土を固め、柱を組み立てている。
家を建てているようだ。 -
どこかで解体した古い家の柱や梁の、まだ使える材木が集められている。
それらの木材を削ったり磨いたり、ほぞ穴を刻んだりと、あちこちで作業が進んでいく。
汗を流して働いているのは女たちで、男は煙草なんか吸って休んでいる者が多い。
子どもは女達の足もとで、うろちょろしていて可愛らしい。 -
じっと観察している私の姿を、不審そうに見ているおばさんがいた。
「こんにちは・・」
山岳語は分からないので日本語で挨拶すると、ニコッと微笑んで恥ずかしそうに、縫い物の続きにとりかかった。 -
先に進むとこちらでは、ブロック積みの土木工事をしている人たちがいた。
-
その上では、ブロック積みの家ができかかっている。
お金もちの家と見える。 -
さらに先にも、建設中の家があった。
建設ラッシュだ。
この風景の中に、都会風の家が造られていく。 -
集落とも言えない閑散とした地域にも、豊かな生活が舞い込んできているのだろうか。
道路を歩いているのは、人ではなく、ブタやニワトリやアヒルの方が多い。 -
案内標識が現れた。
Dangdutさんが第二の分岐点と呼んだところかな。
タフィンに行くには左に曲がるのだ。 -
「丘を越えて・・・」と言われてここまで来たけれど、登り坂ばかりで、下るような地形ではない。
道はゆるやかにさらに登っていく。 -
休憩所が現れた。
ペットボトルに入れたガソリンも売られている。
この過疎の地域で、この店、やっていけるの?
私の常識では回答不能。
暇つぶしで店を開いているのかも。 -
オラ、東京さ行くだ・・・
昔、吉 幾三か歌ったが歌詞がぴったし合うような村なのだ。
かろうじて電気は通っているが、ガスや水道はなく、バスも通らず、隣の家は歩くと10分。 -
畑に水をかけている女性がいた。
ホースを使っての水巻きなので、重労働ではなさそうだが、この水はどんな方法で引いてくるんだろう。
山の沢水を溜め、それを利用する装置を、個人個人で設置するのか・・・ -
頭の上でガサッと音がしてびっくりすると、水牛だ。
-
どこまで行っても登り坂。
ゆるやかな坂もあれば、急坂もある。
あっ、向こう側の斜面に、土ぼこりを上げて走るミニバンの姿がある。
車が走れる道があるようだ。 -
前を歩く一団に追いついた。
欧米人の家族だ。
小さな坊やまでトコトコと歩いている。
この人たちもガイドなしだ。
イスラエル人らしい。 -
一番小さな坊やは3歳だという。
こんな小さくても頑張って歩いている。
イスラエル人、なかなか根性あるな・・・
長男らしき男の子は高校生で、日本に興味があるらしく、親しげに話しかけてくる。 -
言っていることの半分も理解できず、話の大部分はすれ違っているが、一人きりの寂しさはすっかり癒されて、しばらく一緒に歩いていく。
だが、いかんせん幼い子どもの足は遅過ぎる。
「シーユー・アゲン」
互いに手を振りながら、それぞれのペースに戻った。 -
歩いてきた道を振り返る。
どこから、どのようにしてやって来たのか、もう分からなくなっている。
疲れも出てきた。
帰り道のことを考えると、心細くなってくる。 -
岩場の日陰を見つけてランチタイムだ。
三食おこわのおにぎりを取り出して、ちぎりながら食べる。
木の実の味塩が効いて、美味い。
普段食べる3倍の量はあるのに、あっという間に完食した。
栄養バランスなんて度外視し、もりもり食べることが大切な、大自然だ。 -
水牛たちもモリモリと草を食べている。
-
休憩していると、元気な欧米人に追い越された。
ガイドを連れている。
聞いてきた話では、ガイドを雇うと土産物を背負った山岳民族の女性たちが付いてきて、客にしつこく迫ると言う。
しかしそんな姿は、この日はどこにもない。 -
後をついて行くと道端に子ども達が遊んでいた。
シャッターを押す。 -
「マネー!」
そう言って手を差し出す子供が一人、二人・・
カメラを構えると金を要求されるよ・・・とは聞いていたが、味気ない思いになるものだ。
しかしそんな言葉を聞いたのはこの時だけで、以後そんなことはなかった。 -
第3の分岐点。
ここには簡素なレストラン(?)があった。
欧米人たちが休憩している。 -
水牛が目の前を通る。
子牛に近づくと、親の鼻息が荒くなる。
最初は怖かったが、しだいに慣れてきた。 -
おやまあ、欧米人夫婦は袋にどっさりと小さなボールを持っていて、出会う子供たちに配っている。
飴玉と間違えて口に入れようとする子供には、「ノー、ノー!」。
ボールを地面に落とし、ピョ~ン、ピョ~ンと弾む姿を見せる。
面白がる子供に夫婦はにっこり。
この夫婦はオランダ人で、ボールはオランダから持って来たという。
旅慣れしているらしく、準備も万全だ。 -
この女性は足が悪いらしい。
それでも一歩一歩、自分の力で足を運んでいる。
すごいものだ。
サパの観光客は、買物やグルメを求めてやってくる、ヤワな観光客ではない。
大自然と共感し、自分の足で歩き、便利さばかりの生活から少し離れたいと思う人なのだ。 -
サパと言えば、棚田。
その棚田は収穫を終えて、今は刈り取ったあとの稲が10cmほど残っているだけ。 -
タフィン村に近づいているようだ。
子供たちが増えてきた。
手に手に持った民芸品を、目の前に差し出してくる。
見ればどれも綺麗なもので、それをこんな幼い子供に買ってとねだられると、困ってしまう。
子供たちにせがまれる観光客は、みんな複雑な顔をしている。 -
もしかしてここがタフィン村?
家が数軒並んでいるだけの、何もない、ただの路地だ。タフィン村 散歩・街歩き
-
あれっ・・・?
もう終わってしまった。 -
「ここが、タフィン村?」
籠を背負ったおばさんに聞いてみると、「そうだよ・・」との返事に聞こえる。
しかし、言葉がよく分からない。
「ここを真っ直ぐ行けば、バイクがいるよ。」
これは何となく分かった。 -
周囲を見渡せば、様々な色の山々に囲まれ、小川が流れ、ノスタルジーな素晴らしい集落だ。
しばらくここで暮らせば、幸せという概念も変わるに違いない。 -
タフィン村らしい集落を通り過ぎ、歩くこと1km以上・・
案内標識があった。
国道まで6kmとなっている。
先ほどの集落よりもはるかに賑やかな集落がある。
もしかしたらここがタフィン村・・? -
人の姿も多く、店もある。
-
ミニバンも停まっている。
このミニバンはツアー客専用で、私は乗せてくれない。 -
レストランらしきものもあって、その前に民族衣装のおばちゃんたちが座り込み、刺繍作業に余念がない。
-
刺繍は、それはそれは細かな針仕事だ。
見ていると、気の遠くなりそうな根気が必要なことがわかる。
「これは子供、これは花、そしてこれは木だよ・・・」
刺繍を指差して、英語で説明してくれる。
デザインの意味が分かると、作品がますます素晴らしいものに見えてくる。
40cm四方の作品を作るのに、何ヶ月もかかるようだ。 -
「買ってよ」「買ってよ」 と哀願されるが、こんな立派な美術品は私には重荷だ。
この人たちの汗と努力の結晶を、貧乏家屋に持ち帰っても、埃まみれになって放置されるが関の山だ。
この作品の価値の分かる、立派なお屋敷に住む紳士に買ってもらわなくては、価値が台無しになってしまう。
日本で作ったならば、何万円と何十万円という値打ちありそうだ。
『鑑定団』に出したって恥ずかしくないだろう。
それを千円単位で売るというのだから、おばちゃんたちには申し訳ない。 -
このおばちゃんは太股の上で、植物の繊維を撚っている。
植物の皮から糸を作り、それで布を織るんだろう。
これも手間と器用さが必要な仕事だ。
頭がさがってしまう。
この人たちは、どんな暮らしをしているのだろうか。 -
一時間ほどおばちゃんたちに遊んでもらったけど、何も買わずに帰ることになった。
申し訳ない気持ちになる。
おばちゃんがバイクを呼んでくれた。
やって来たバイクはおばちゃんの夫だと言う。
5ドル(100000ドン)を支払って、バイクにまたがると、バイクはガタガタと動き出した。 -
並みの道ではなかった。
大きな石がゴロゴロと転がり、でこぼこだらけで、バイクが跳ね上がる。
それも急な下り坂で、右へ左へのカーブばかりだった。
走り慣れた人しか運転できそうにない悪路だ。
カメラを構える余裕などなく、必死にバイクにしがみついているだけだった。
赤の星印 = タフィン村
水色星印 = バイクに乗った集落
黄色の点々 = 帰りのバイク道
赤の点々 = 行きがけの歩き -
やっとのことで町に着いた。
緊張の連続で身体の節々が痛い。
バイクのメーターを見ると、乗った距離は13kmだった。
人の良さそうなおじさんに感謝、感謝。
500円は高いようで安かった。
行きがけに歩いた距離は、分岐点からは11km。
ホテルからだと15kmだ。
Dangdutさんは、これを往復歩いたという。
超人だ。 -
部屋にはベトナム茶(中国茶?)と急須が用意されている。
フロントには大きな水のボトルがあり、そこから自由に水を運んでこれる。 -
お湯を沸かしてお茶をいれる。
ああ~、極楽、極楽。
疲れが消えていくようだ。
その疲れも、気持ちが良い。
サパにやって来た嬉しさに、満ち満ちていた一日だった。
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この旅行記へのコメント (3)
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- Halonさん 2016/11/16 20:39:03
- タフィン村
- motogenさん
わ〜タフィン村なつかしいです。
Dangdutさんに続いてmotogenさんも歩いて行かれたとは。
第二の分岐点手前ですでにいろいろ観光されてますね。
おこわの色がまた、記憶がよみがえります。
帰りはバイクということで、500円とは安い。
お天気もよくてよかったですね。
- motogenさん からの返信 2016/11/17 16:49:45
- RE: タフィン村
- Halonさんの旅行記を読んでから行ったのですが、ザオ村なんてあったことは忘れていました。
タフィンの教会も、廃墟の教会も、なんにも見ずに帰ってきてしまいした。
タフィン村がどこにあったのかさえ、分からずじまい。
歩いただけでも楽しかったですが、再び挑戦したい気持ちが湧いてきました。
この地域、すごいスピードで変化しているようで、料金所に出会った記憶がありません。
どこに行くにもフリーだったような・・・
セールスレディーもそれほどしつこくなく、嫌な思いもしませんでした。
歩く楽しさを教えてくれたサパでした。
ありがとうございました。
-
- trat baldさん 2016/11/16 18:38:56
- 感無量!
- 更に驚くべきは欧米の連中が既にタフィンへの道筋を観光経済へと地元民を誘ってしまっていた事だ!
殆どは農業に従事して糧を得ているのでしょうが観光客?達が落とす彼らにとって僅かなお金が地元民の貴重な現金収入になっている事は間違いないでしょう。
有り余るお金を持っている人が幸せを探して放浪してるのに文明に程遠くその日暮しの人達が遥かに充実感を持って生きているなんて、、、、
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