2016/09/10 - 2016/09/10
862位(同エリア4224件中)
ハンクさん
マレーシアから夜行便で帰国して久し振りに東京に立ち寄った。お目当は上野の東京文化会館で開催された二期会のオペラ「トリスタンとイゾルデ」、指揮ロペス・ヘスス・コボスの読響である。しかし14時の開演には少し時間があるため、今年世界遺産遺産に登録されて祝賀ムードの国立西洋美術館などを訪れた。ワーグナーの超大作の一つの頂点と、日本における西洋建築スタイルの一つの頂点に接した印象を備忘録がわりに記録しておこうと思う。
建築家ル・コルビュジェ(1887 - 1965)については、彼の生地ラ・ショー・ド・フォンを訪れた旅行記に少し書いた。
http://4travel.jp/travelogue/10918495
彼は、フランク・ロイド・ライト、ファン・デル・ローエと共に「近代建築の三大巨匠」と言われる。スイス生まれだが、パリを中心に活躍し、後にフランス国籍を取得している。彼について書き始めたらキリがないので、ポイントを絞って記載しておく。今年世界遺産に登録されたのは「ル・コルビュジェの建築作品ー近代建築運動への顕著な貢献」で、7ヶ国17作品が含まれる。国立西洋美術館(1959年竣工)は、彼が設計した国内唯一の建造物で、ピロティ(柱だけで構成されている壁のない空間)、スロープ、自然光を利用した照明など彼の建築的な特徴を備えた作品で、日本の戦後建築に大きな影響を与えた。「無限に成長する美術館(外側へ展示スペースを増築できる)」構想を実現した美術館の一つでもある。
国立西洋美術館の成り立ちも興味深い。当時川崎造船所の社長であった故・松方幸次郎氏がヨーロッパ各地で集めた絵画、彫刻(松方コレクション)が基となった。作品は戦中一部が散逸するなどし、戦後のサンフランシスコ平和条約によりフランス政府の所有となったが、その後フランス政府の好意により日本に返還(寄贈)されることになった。返還に際しては、フランス政府からそれを受け入れる専用美術館の建設が条件となり、当時フランス一の建築家ル・コルビュジェが派遣された。現在の展示品にはそれぞれ1〜数作ではあるが、ルーベンス、ドラクロワ、ミレー、クールベから多数の印象派画家、マネ、ルノアール、シスレー、ピサロ、モネ、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、さらに近代のピカソやミロなどが含まれている。アメリカでは中小都市にもこの程度の個人収集は珍しくないが、日本では大原美術館とここが双璧であろう。なおこの日は運良く(悪く)無料観覧日であったため、写真の撮影は許されなかった。建物の周囲にはお馴染みのロダン、ブールデルの塑像が展示してあり、これを掲載しておく。
さて、一方の二期会のオペラである。最近、国内でワーグナーが聴ける時代となった。「トリスタンとイゾルデ」、読響は日本のオケでは最もパワフルで、なかなか良かった。指揮は76歳のスペインの名匠ロペス・ヘスス・コボス、小生は彼がシンシナティ交響楽団の首席だった2,000年の初め、楽屋まで出掛けてお話したことがある。スペイン人にしては物静かな、ドイツ物を得意とする貴重なマエストロだ。トリスタンとイゾルデは、最近特に好んで聴いている。DVDではバレンボイム、CDではカラヤン、前奏曲と愛の死だけならフルトヴェングラー、ベーム、クライバー、テンシュテット、、、ほとんど病的とも言える無限旋律に毒されてしまった。実演を聴くのはゲルギエフに次いで2回目となる。もはやこの作品なしで生きることはできない。
二期会の歌手陣であるが、これも予想以上に良かった。トリスタンはアメリカ人のブライアン・レジスター、それ以外は日本人でイゾルデは横山恵子、マルケ王は清水那由太、その他である。日本人歌手も健闘しているが、残念ながら声量とドイツ語の発音が物足りなく、本場の歌手と比較することは難しい。演出はヴィリー・デッカー、舞台装置はライプツィヒ歌劇場のものを使用しており、見ごたえはあった。なおチケットは当日券で8,000円から15,000円、飛び込みでも買えない価格ではない。
この日に配られたチラシによれば、今年のワーグナー公演だけでもウィーンオペラのヴァルキューレ、バイエルンのタンホイザー、ドレスデンがラインの黄金、新国立劇場もヴァルキューレ、とお金と時間があれば選べる時代になった。喜ぶべきことではあるが、6万円〜という値段を見ると本場へ出かけて聴きたい、と思うのは私だけではないと思うが、如何であろうか?
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.5
- 交通
- 4.5
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 3万円 - 5万円
- 交通手段
- JALグループ JRローカル 私鉄 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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世界遺産に登録されたル・コルビュジェ設計の国立西洋美術館のファサード
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ル・コルビュジェと無限成長美術館、その理念を知ろう
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斜めから見た国立西洋美術館
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柱のみで壁のないピロティ形式の空間
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カレーの市民
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考える人、ロダンの傑作
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弓をひくヘラクレス、ブールデルの傑作
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地獄門もロダンの傑作
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アダム、ロダン作
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国立西洋美術館の側面
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コンクリート打ちっ放しの上に後から小石が貼り付けられた
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ヴェランダと階段
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中庭
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ピロティだったが後にガラスが貼られた
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ピロティだったが後にガラスが貼られた
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二期会オペラ!トリスタンとイゾルデのポスター
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東京文化会館もル・コルビュジェの弟子の前川國男の設計
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明らかにル・コルビュジェのスタイルを踏襲している
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東京文化会館の石碑
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ル・コルビュジェの弟子、前川國男設計の東京文化会館
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ピロティ形式の名残りが見られる
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東京文化会館のカットモデル
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独特の東京文化会館のステージ
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東京国立博物館の建物群
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西洋クラシックの表慶館は閉館中
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東京国立博物館の本館
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本館の近景
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堂々たる本館の内部
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絵巻物の展示
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仏像の展示
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黒田門
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法隆寺宝物館
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法隆寺宝物館の内部
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法隆寺宝物館の展示
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法隆寺宝物館の展示
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平成館はパス
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東洋館もパス
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国立科学博物館のファサード
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デゴイチの展示
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上野の西郷さん
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寛永寺
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三四郎池の弁天堂
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野口英世の像
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この旅行記へのコメント (2)
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- tadさん 2016/09/14 09:46:37
- トリスタンとイゾルデ
- オペラの国内公演は私もほとんど見ませんね。高すぎるし、それにホールが適切でない等の理由です。読響のオケだけは質的には負けていないと思いますが。。ただ、サントリーホールで彼らを聞きたいですね。
トリスタンはまったくおっしゃる通り、病的なまでのワグナー色強い作品ですが、ウィーン国立とベルリン国立で、どちらも名演でしたので、もうあれで十分です。バレンボイムの指揮でベルリンで見たライブは一生ものでした。
- ハンクさん からの返信 2016/09/18 19:51:13
- RE: トリスタンとイゾルデ
- tadさん、こんばんは。
メッセージをありがとうございました。バレンボイムのベルリンのトリスタンを実演で聴いてしまっては、他の演奏は聴かないほうがいいかもしれませんね。それにしてもこの恐ろしいまでのメロディーと和声、他の作曲家、いやワーグナーの中でもこの作品は特別です。ベートーヴェン、ブルックナー、ブラームス の3Bとともにワーグナーはマレーシア滞在中も手放せません。
今年はウィーン、バイエルン、ドレスデンなどワーグナーゆかりの劇場が来日しますね。しかしご指摘のように日本のホールで数万円も出すのは高過ぎです。3回も行けば、本場へ行くのと同じくらいの金額になってしまいます。ちょっと異常な状況ですね。
それではまた、tadさんのオペラ、コンサート体験を楽しみにしております。ハンク
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