今年のゴールデンウィークはヴァンクーヴァー行きのチケットが取れていたので、行き先に迷うことはなかった。カナダに入国するのは、トロント、モントリオール以来約10年振りである。ヴァンクーヴァーは上記の2大都市に次ぐカナダ第3の210万人の大都市圏を形成しており、ヴァンクーヴァー市のみでは同国内で第8位の64万人である。市内の表示は英語とフランス語が併記されており、店の人などにフランス語も話すのか聞いてみたが、バイリンガルの人はほとんどいなかった。また香港が中国に返還された1997年前後に、共産主義化を恐れた多くの香港系中国人がこの街に移動したことは記憶に新しい。<br /><br />アメリカ同様、カナダは新しい移民の国である。この街は気候が快適であり、近代的な街並みを持つ、世界でも最も住みやすい街のランキングに常時トップに位置している。この地の先住民族は、少なくとも3,000年以上前からこの地に住んでいたらしい。1791年にスペインのナルバエス船長が、翌1792年にイギリス海軍のヴァンクーヴァー提督がこの地を訪れた。1867年に製材所ができ、その中心地ギャスタウンは発展し、1886年に町はヴァンクーヴァーと改名された。林業が同市最大の産業で、観光業、海運業が発達、また映画製作の拠点でもある。2010年には第21回冬季オリンピックが開催されている。<br /><br />到着翌日の日中は、5,000円札に描かれた新渡戸稲造の記念庭園がブリティッシュ・コロンビア大学のキャンパス内にあるというので出かけた。新渡戸稲造（1862 - 1933）についてはほとんど知らなかったが、教育者・思想家、農業経済学・農学の研究者であり、大戦前に日本の軍国化に反対した。1933年に日本が国際連盟脱退を表明した年、カナダのバンフで開かれた太平洋問題調査会会議に出席し、会議終了後港町のヴィクトリアで倒れ、永眠した。彼の名を冠した庭園は1960年に作られ、面積は約1haあり北米でも最も本格的な日本庭園であるそうだ。<br /><br />そしてこの日の夜はコンサートに出掛け、初めてヴァンクーヴァー交響楽団を聴いた。我々には秋山和慶氏が長く活躍したオーケストラとして馴染み深い。この日は、モーツァルトのドン・ジョヴァンニ序曲、バルトークのヴァイオリン協奏曲第2番（ソロはイザベル・ファウスト）、メインがドヴォルザークの交響曲第7番という非常に地味なプログラムだった。実はかなり以前、秋山氏は私が所属するアマチュアオーケストラに客演してくれたこともあり、音楽に対する誠実な取り組みに大いに共感を覚えた。カラヤン、バーンスタイン、ミュンシュに師事し、世界の第一線で派手な活躍を続けてきた小沢征爾とは対照的に、日本以外ではこの地で1972-1985年の間首席指揮者を務めるなど、地道に活動してきた秋山氏には特別な親近感を感ずる。この日の演奏も、地味ではあるが正統的なヨーロッパの響きを聴かせてくれた。<br /><br />このオーケストラの本拠地オルフェウム劇場は素晴らしい内装で知られており、ここを訪れることを楽しみにしていた。1927年に建設された歴史的な建築物で、2009年に改修工事が行われた。素晴らしく装飾された内装はもちろんの事、天井やシャンデリア、優雅なロビーなどは素晴らしい、の一言である。北米でオルフェウムスタイルの劇場は多々あるが、最高の劇場、と評価されるのも当然であると思う。キャパは2,700人程と大きく、2階建てで1階の奥は2階席の下となり、音響的には不利である。2階席は非常に広く音響的にも差がありそうだが、前のステージに近いところでは高音、中低音もバランス良かった。ドヴォルザークのフィナーレなど力強い響きを聴くことができた。

GWのカナダ１：オルフェウム劇場で秋山和慶指揮ヴァンクーヴァー交響楽団を聴く

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2016/05/01 - 2016/05/07

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#エンターテイメント

ハンクさん

今年のゴールデンウィークはヴァンクーヴァー行きのチケットが取れていたので、行き先に迷うことはなかった。カナダに入国するのは、トロント、モントリオール以来約10年振りである。ヴァンクーヴァーは上記の2大都市に次ぐカナダ第3の210万人の大都市圏を形成しており、ヴァンクーヴァー市のみでは同国内で第8位の64万人である。市内の表示は英語とフランス語が併記されており、店の人などにフランス語も話すのか聞いてみたが、バイリンガルの人はほとんどいなかった。また香港が中国に返還された1997年前後に、共産主義化を恐れた多くの香港系中国人がこの街に移動したことは記憶に新しい。

アメリカ同様、カナダは新しい移民の国である。この街は気候が快適であり、近代的な街並みを持つ、世界でも最も住みやすい街のランキングに常時トップに位置している。この地の先住民族は、少なくとも3,000年以上前からこの地に住んでいたらしい。1791年にスペインのナルバエス船長が、翌1792年にイギリス海軍のヴァンクーヴァー提督がこの地を訪れた。1867年に製材所ができ、その中心地ギャスタウンは発展し、1886年に町はヴァンクーヴァーと改名された。林業が同市最大の産業で、観光業、海運業が発達、また映画製作の拠点でもある。2010年には第21回冬季オリンピックが開催されている。

到着翌日の日中は、5,000円札に描かれた新渡戸稲造の記念庭園がブリティッシュ・コロンビア大学のキャンパス内にあるというので出かけた。新渡戸稲造（1862 - 1933）についてはほとんど知らなかったが、教育者・思想家、農業経済学・農学の研究者であり、大戦前に日本の軍国化に反対した。1933年に日本が国際連盟脱退を表明した年、カナダのバンフで開かれた太平洋問題調査会会議に出席し、会議終了後港町のヴィクトリアで倒れ、永眠した。彼の名を冠した庭園は1960年に作られ、面積は約1haあり北米でも最も本格的な日本庭園であるそうだ。

そしてこの日の夜はコンサートに出掛け、初めてヴァンクーヴァー交響楽団を聴いた。我々には秋山和慶氏が長く活躍したオーケストラとして馴染み深い。この日は、モーツァルトのドン・ジョヴァンニ序曲、バルトークのヴァイオリン協奏曲第2番（ソロはイザベル・ファウスト）、メインがドヴォルザークの交響曲第7番という非常に地味なプログラムだった。実はかなり以前、秋山氏は私が所属するアマチュアオーケストラに客演してくれたこともあり、音楽に対する誠実な取り組みに大いに共感を覚えた。カラヤン、バーンスタイン、ミュンシュに師事し、世界の第一線で派手な活躍を続けてきた小沢征爾とは対照的に、日本以外ではこの地で1972-1985年の間首席指揮者を務めるなど、地道に活動してきた秋山氏には特別な親近感を感ずる。この日の演奏も、地味ではあるが正統的なヨーロッパの響きを聴かせてくれた。

このオーケストラの本拠地オルフェウム劇場は素晴らしい内装で知られており、ここを訪れることを楽しみにしていた。1927年に建設された歴史的な建築物で、2009年に改修工事が行われた。素晴らしく装飾された内装はもちろんの事、天井やシャンデリア、優雅なロビーなどは素晴らしい、の一言である。北米でオルフェウムスタイルの劇場は多々あるが、最高の劇場、と評価されるのも当然であると思う。キャパは2,700人程と大きく、2階建てで1階の奥は2階席の下となり、音響的には不利である。2階席は非常に広く音響的にも差がありそうだが、前のステージに近いところでは高音、中低音もバランス良かった。ドヴォルザークのフィナーレなど力強い響きを聴くことができた。