春の風物詩、渡良瀬遊水池のヨシ焼き

2016/03/26 - 2016/03/26

栃木、群馬、茨城、埼玉の４県６市町にまたがり、３３平方キロメートルの広大な面積を有する渡良瀬遊水池。遊水地内には、ゴルフ場などのリクレーション施設があり、道路も通じているが、大部分は自然のままのヨシ原が広がっている。遊水池内には野鳥、昆虫、魚類が多く生息し、ここでしか見られない希少な種類も多い。そのため、2012年にはラムサール条約で保護すべき湿地として登録されている。
毎年3月下旬になると、広大なヨシ原に火を放ち、枯れたヨシを焼き払うヨシ焼きが恒例の行事になっている。そんな炎のイベント見学に出かけてきた。

エリア 栃木・壬生・都賀(栃木)

• 旅行の満足度: 4.5

• 同行者: 一人旅
• 交通手段: 自家用車

渡良瀬遊水池には渡良瀬川、巴波川、思川という3本の河川が流入していて、茨城県古河市と埼玉県加須市の境界で利根川に合流する。渡良瀬遊水池は、現在でこそ、この3本の河川の氾濫を防止する調整池の働きをしているが、もともとは渡良瀬川上流にある足尾銅山から流れ出た鉱毒を、ここで沈殿させるために開発された。つまり、日本で最初の公害である足尾銅山鉱毒事件の対策であった。

渡良瀬遊水地のヨシ焼き 祭り・イベント

ヨシ焼きが始まるのは８：３０から。しかし、毎年大勢の見物客、カメラマンが集まるというので７時には現地に到着。
見渡す限り広がる早朝のヨシ原。その先に見えているのは、筑波山。

ヨシ焼きの日は、遊水池内部への立ち入りは禁止。遊水地を取り巻く堤防の上からの見学になる。
当初の予定では３月１９日だったが、雨で３月２６日に延期された。そのため、うまい具合に堤防の法面に植えられている菜の花がちょうど見頃になった。

ヨシ焼きが始まるまで時間があるので、菜の花を入れた風景をカメラに収める。
雪が残る背後の山は日光連山の山々である。

青空に映える菜の花。

ヨシ焼き開始３０分前になると、堤防の上にはズラリと三脚が並ぶ。

定刻どおり、ヨシ焼きがはじまった。まず右手方向のヨシに火が放たれた。

一昨日、少し雨が降ったためか、ちょっと火の勢いが弱いようだ。

炎は見えないが対岸からも黒煙が上がり始めた。

上空にドローンが一機飛んでいる。ヨシ焼きを仕切るヨシ焼き連絡会が記録撮影のための飛ばしているのか、カメラマン個人が撮影のため飛ばしているのか？　

少しづつ炎が近づいてくる。

場所によっては、よく燃えるところもあり、瞬間的に高く炎が舞い上がる。広大なヨシ原なので距離感がつかみにくいが、これで炎の高さは５、６ｍはありそうだ。

動画でも撮影してみた。

https://youtu.be/Eo1sG3BoG2o

炎が通りすぎた跡は、白煙がくすぶっている。風上に立ててよかった。

間近で燃えるヨシ

渡良瀬遊水地のヨシ焼きは昭和３０年代にはじまった。当時は、遊水池のヨシを使ったヨシズが盛んに作られたため、良質な新しいヨシの生育を促すためだった。現在では、枯れたヨシを人為的に焼き払うことで、ヨシが生育する前に発芽するエキサイゼリ、トネハナヤスリなどの絶滅が危惧される貴重な植物の保全、柳などの若芽を焼くことで湿地の樹林化を防止し貴重なヨシ原湿地を守る環境保全という具合に目的が変わってきている。

菜の花と炎

この時期、西からの風が吹くことが多いので、西側の堤防に見学エリアを設けているのは正解だ。

炎を追いかけてしつこく撮影を続ける。

点火して回るヨシ焼き連絡会の人と比べると炎の大きさがよくわかる。

２ｍを越えるヨシの一株はアッというまに燃え尽きる。

この炎の向こう側はゴルフ場になっている。ゴルフコースの芝に火が燃え移ることはないのだろうか？

最初に火がつけられた方は焼け野原になっている。

驚いたことに、ヨシ焼きの最中でもゴルフをやっている人がいる。さぞ、煙たいだろうに・・・・
ヨシ焼きの日は遊水池内は立ち入り禁止だが、ゴルフだけは例外らしい。

この辺りは火の回りが悪く、燃え広がらずに消えてしまっている。

ゴルフコースの向こう側では、勢いよく燃えている。

時刻は１０時半。そろそろ撮影に飽きてきたので撤収することにする。後でヨシ焼き連絡会のＨＰを見たところ、ヨシ焼きが終了したのは午後８時だったという。焼き払ったヨシ原の面積は１５平方キロメートル、渡良瀬遊水地のほぼ半分のエリアである。