2009/11/28 - 2009/12/05
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ねんきん老人さん
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紀伊半島を海岸沿いに回ったとき、ずいぶんいろんな岩を見たような気がします。
言うまでもなく岩なんて、なにも紀伊半島じゃなくたって、全国いたる所にあります。珍しくはありません。
それなのに、岩場というのはどこも旅人の心を躍らせます。今回の旅でも、あちこちで岩を眺めながらずいぶん長い時間を過ごしたような気がします。
そんなときにふと思ったことですが、どこに行っても岩にはやたら名前がついているような気がします。それにまつわる伝説も枚挙にいとまありません。
今回もそんな伝説のあれこれに触れたのですが、その中に「滝の拝太郎」という話があります。
私自身は初めて聞いたものですから、何はともあれ、行ってみました。
- 旅行の満足度
- 4.5
- 観光
- 4.0
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 自家用車
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【 古座川の支流 】
前夜は国道42号線の路肩にある小さな草地で車中泊をしましたが、そこがカーブになっていることを計算に入れなかったのは迂闊でした。
大型トラックがカーブでアクセルを踏み直すので、その度にエンジン音が高くなり、一晩中悩まされたのです。 まあ、勉強にはなりましたが。
串本町の古座で国道を離れ、県道38号線を古座川に沿って北西に走ります。
7?8km先の明神橋を渡って右折すると国道43号線。くねくねと曲がった道を12kmほど進むと、滝の拝と呼ばれる渓流に出ます。古座川の支流、小川(こがわ)です。
道端に車を停めて川岸に下りてみます。 辺り一面、岩ばかりで、岩相は違いますが、秩父の長瀞を小さくしたような感じでしょうか。
覗き込むと川面は写真のように穏やかで、特段伝説が生まれるような雰囲気ではありません。滝の拝 自然・景勝地
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【 ちょっと拍子抜け 】
先へ進んでみますが、やっぱり何の変哲もありません。まあ水が澄みきっているので気持ちの良い場所ではありますが、あまりに澄んでいるせいか魚の影もまったく見えず、いささか退屈でもあります。
事前の調べではここは鮎の密集地だということだったのに、時期外れとはいえ、なんだか拍子抜けです。
岩の窪みに水が溜まっており、山椒魚が1匹、カエルが1匹、じっとしていました。鹿の糞と思われるものがあちこちに落ちています。 -
【 白い岩と甌穴 】
さらに歩いて行くと、ちょっと雰囲気が変わってきました。
洗い晒されたような岩肌と甌穴が、いかにも伝説を生み出しそうな怪しさを漂わせています。 -
【 連なる奇岩 】
甌穴が沢山ある場所に出ました。
今は水面も低く穏やかですが、雨の季節には水嵩も増し、激しく岩を穿つのだろうと想像できます。 -
【 滝だ! 】
岩を洗う流れが見えてきました。 小さく見えますが、落差が8mある渓流滝で、滝の拝という名前がついています。
「滝の拝太郎伝説」の舞台はここに違いありません。
その伝説とは、次のようなものです。
「昔、ここに滝の拝太郎という侍がいた。太郎は滝の周辺の岩床に毎日刀で穴を掘って人々の目を楽しませていた。ところがあと1つで穴が1000個になるというところで、刀を滝壺に落としてしまう。太郎は刀を拾おうと滝壺に潜ったが、そのまま戻ってこない。人々は太郎が滝の主に食われたのだろうと諦めて初七日の法要を行ったが、その最中に太郎がひょっこり帰ってきた。
太郎が言うには、滝壺の底にたいそうな宮殿があり、美しいお姫様が大勢の侍女を従えて住んでいた。飲めや歌えの歓待に酔っていた太郎だが、ふと我に返り、落とした刀と一緒に丸い大きな石を土産にもらって帰ってきたとのことであった。
太郎が戻ってからは、それまで滝壺でゴロゴロと鳴っていた雷のような音がピタリとしなくなった」 -
【 岩を削る流れ 】
まあ、誰だか分かりませんがよくもこんな話を作り出したものです。
でも、辺りの岩床にある無数の甌穴とかなり深そうな水を見ていると、なんだか話の内容と合っているようにも思えてきます。
甌穴は岩の窪みに落ちた石が波や流れで転がされ、窪みを丸く穿ってできる穴で、その石も転がっているうちにだんだん球形になるものですから、太郎が貰ってきた丸い大きな石というのは、それでしょう。ゴロゴロ鳴っていたというのは、その玉が甌穴の中を転がっていた音に違いありません。
こういう伝説が生まれるということは、岩というものに、人の想像力を刺激する要素があるからではないでしょうか。
そういえば日本中、いたる所の岩に○○岩とか△△峰とかいうような名前がついていますね。
「どこがライオンだよ!」と言いたくなる「ライオン岩」もあります。
ところで私はさきほど岩床の窪みで山椒魚を見つけたと書きました。おそらく増水したときにでも入り込んで、そのまま取り残されたのでしょう。
私は苦労してそれを捕まえ、流れに放してやりました。
山椒魚を助けたお礼とかいって姫か侍女が迎えに来るかも知れぬと、しばらく待ちましたが、とうとう現れませんでした。恩知らずな姫です。 -
【 古座川の一枚岩 】
ちょっとばかり「滝の拝太郎伝説」を信じる気分になったあと、「古座川の一枚岩」に向かいました。
国道43号線を戻り、さっき右折した所をそのまま通り過ぎると、そこから6〜7kmの所にあります。
高さ150m、幅800mという巨大な一枚岩で、国の天然記念物に指定されているとか。(高さ100m、幅500mと書かれたものもあります。私の目測では判りません)
リュウモンガンギョウカイセキとかいう石質だそうですが、あいにくそういう方面の知識がまったくないので、これ以上の説明はご容赦ください。一枚岩 自然・景勝地
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【 一枚岩を見上げる 】
知識はなくても大きさは実感できます。見上げていれば首が痛くなるほどで、圧倒される気分です。
はい、ここにも伝説があります。
「昔、岩が好物だという魔物がおり、古座川流域の岩を下流から順に食い荒らしていったが、この一枚岩に食いついたとき、突然現れた犬に吠えられ、犬が嫌いだった魔物は逃げ去った」
一枚岩の真ん中あたりに縦に走る窪みは、このときの魔物の歯型で、雨が降ったあとに上の池から水が溢れて流れ出る「陰陽の滝」は魔物の悔し涙であるそうな。
巨大な岩を食い荒すほどの怪物が犬に怯えて逃げ出すとは、なんともしまらない話です。
実は私、ここには2年前にやはり一人で来ています。コーヒーを飲みながら岩を眺めました。今回も同じ場所でコーヒーを飲み、岩を眺めました。
・・・2年なんて、あっという間だ。俺が死ぬ日もあっという間に来るんだろう。あたふたあたふたと生きてきたが、このまま何も残さずに死んでしまうんだ・・・。
なんの脈絡もなくそんなことを考えながら、いつまでも岩を眺めていました。 -
【 牡丹岩 】
来た道を8kmほど戻ると、県道38号線のわきに「牡丹岩」と呼ばれる崖があります。
これもまた、あの岩好きの魔物が食い荒らした跡だそうですが、それとは別の伝説もあります。
「あるとき猟師が舟に乗って川を下っていると、この岩の上に白い猿を見つけた。鉄砲で撃って手ごたえがあったので取りに行ったところ、猿の姿はなかった。 その後那智大社詣でに出かけたある男が帰り道で知り合った女と歩いていると、この岩の前で女が、ここに住んでいるのでどうぞお入りくださいと言った。そのとたんに竹藪が立派な屋敷になったので、男は女を怪しみ、別の日に訪れる約束をして別れた。むろん男は行かず、その子孫は毎年その約束の日(霜月8日)はこの前を通らないのだそうな」
なんだかずいぶん雑な話ですね。
猟師がなぜ舟に乗っていたのでしょう?
いかにもいわくありげな「白い猿」は何だったのでしょう?
その猟師と那智大社に出かけた「ある男」とはどんな関係があるのでしょう?
「怪しい女」は何だったのでしょう? -
【 牡丹岩 】
近づいてみるとこんな感じです。
自然の営みというのは人智を超えたもの。恐れ入るばかりです。
もちろん地質学的にはちゃんと説明がつくのでしょうが、私にはちょっと・・・。 -
【 牡丹岩 】
さらに近づいてみると・・・。
「なんということでしょう、牡丹そのものではありませんか!」
と言うにはちょっと無理があって、私には腐った内臓のように見えます。まあ、何を連想するかは人によって違うにしても、岩の形が人の想像を掻き立てるのは確かなようです。 -
【 橋杭岩 】
さて古座川河口まで戻って国道42号線に乗ると、ほんの5kmほどであの有名な「橋杭岩」です。
串本町の海岸から沖合の紀伊大島に向かって、大小約40の岩が一列に並んで800mも続いているという奇景で、これはもう諸人の想像力をいやが上にも掻き立てます。
となれば、当然伝説ができます。 日本には伝説のデパートみたいな人がいますから、もちろん登場願いましょう。 そう、弘法大師です。橋杭岩 自然・景勝地
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【 橋桁に見えなくもないかな? 】
その昔、弘法大師が天邪鬼と賭けをしました。
「えっ? お坊さんも賭けをするの?」
「まあまあ」
その賭けは、串本から大島まで一晩で橋を架けることができるかというものです。
「えっ? あの偉いお方がそんなくだらない賭けを?」
「まあまあ」
弘法大師は次々と橋の杭を並べ、夜明け前にほとんど出来上がりました。天邪鬼は、このままでは賭けに負けると思い、にわとりの鳴きまねをして、弘法大師にもう朝だと勘違いをさせました。
大師は朝までに完成させられなかったと消沈し、その地を去りました。
一列に並んだ岩は、そのときの橋桁です。
「えっ? あの高僧がそんな幼稚な嘘に騙されたの?」
「まあまあ」
(写真は3枚を繋げたものですので、雲が不自然です) -
【 干潮の橋杭岩 】
ここにはたぶん7〜8回来ていると思いますが、干潮時にあたったのは初めてです。
いつも海に浮かぶ岩ばかり見ていたものですから、この景観は新鮮で、写真右に見える弁天島まで歩いて行きました。 -
【 橋杭岩 】
こういう岩を見ると登りたくなります。
我ながら節操のない性分だとは思いながら、一応手はかけました。 結果は1mも登れず、おのれの歳を思い知ることに。
もっとも、もし登れたら遠くで見ている観光バスの人たちが「変なジジイが岩の上にいる」などと消防署に通報し、レスキュー隊が駆けつけるというような騒ぎになったでしょうから、諦めて良かったのかも知れません。 -
【 橋杭岩 】
この岩の向こうから昇る朝日は格別美しいらしく、「日本の朝日百選」に選ばれているそうです。
私はこの「ナントカ百選」というのが嫌いで、「誰が選んだんだ?」「どういう基準で選んだんだ?」「101番目は価値がないのか?」といつも文句を言っています。
百選なんて格付けをすると、必ずそれを全部回ろうという人が出てくるので、観光業者としては都合がいいのだと思います。
私の町のいろんな所にも看板を立てたら、観光客が来るでしょうか。
「日本のボロ寺百選」
「日本のゴミ不法投棄場所百選」
「日本の野良ネコ繁殖地百選」
まだまだあるのですが・・・。 -
【 干潮で海底が露出 】
それにしても、まるで整地されたように平らな海底と、いきなり垂直にそそり立つ岩々との作り出す景観は、造化の神がなんらかの意図をもって出現させたものとしか思えません。
弘法大師のいささか情けない伝説しか生まれていないのが不思議なくらいです。 -
【 露わになった海底 】
足元を見るとこんな感じです。
流紋岩というらしいのですが、先述のとおりその方面の知識がゼロなので、それ以上のことは分かりません。 -
【 トルコ記念館 】
橋杭岩の先に浮かぶ紀伊大島に渡ります。
この島の東端樫野崎の崖上に写真のトルコ記念館があり、明治時代に起きたトルコ軍艦エルトゥールル号海難事故の資料を展示しています。
トルコ人の親日感情の元になったといわれるその事故は、日本に都合の良いように美化され脚色され、今でもトルコ国中で語り継がれているということですが、私はむしろその悲劇を日本政府と日本人が「しめた!」とばかりに利用した事実に気が咎めてなりません。
今回はそれについて書きませんが、私は別のブログでトルコの人々への申し訳ない気持ちを綴っています。もしお暇がありましたら、ご一読いただけたら幸いです(URLは下にあります)
http://zatsunen4989.web.fc2.com/hitorigoto/033_ertugrul.html樫野埼灯台 名所・史跡
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【 樫野崎の海 】
トルコ記念館の二階テラスから海を見下ろします。
写真は北東の方角、次の写真は南東の方角です。 -
【 樫野崎の海 】
どちらも岩礁の多い、船にとっては危険な海という感じがしますが、よほどの暴風雨でもない限り、沖合を通過することはそう難しいことではないようにも見えます。
トルコ軍艦はこの島には用がなかったのですから、もっと離れて航行できなかったのでしょうか。 -
【 海難事故現場 】
目を崖下に落としてみます。
これはもう、船が近づけるものではありません。エルトゥールル号はここで座礁し、機関の水蒸気爆発を起こして沈没したとのことですから、折りからの台風で岸へ岸へと押し流されてしまったのでしょう。 -
【 海難事故現場 】
乗っていた兵員は656名。うち10人ほどが岸に流れ着き、数十mの崖をよじ登って樫野崎灯台にたどり着いて救助を求めたそうです。
村人たちが総出で救助にあたり、69名の人命が救われたということですが、その後も2週間にわたって捜索を続け、239名の遺体を収容しねんごろに埋葬したものの、残り368名の将兵はいまだ海中にあるといいます。
(その救助活動の様子も先のブログに記してあります) -
【 エルトゥールル号が座礁した岩 】
トルコ記念館の二階テラスには、エルトゥールル号が座礁した岩を絵で示した説明板が設置してあります。
それによると、同号がぶつかったのはどうやらこの3つの岩のどれからしいということです。
これはもう、岩を見て面白おかしい伝説をひねくり出すなどという不謹慎な気持ちは起こりようがありません。
私は、眼下に散らばる岩々の間隔を見て、普段だったら岩から岩にひと泳ぎ、そして次の岩までまたひと泳ぎすれば、泳ぎの得意な水兵たちにとって岸まで着くのは難しいことではなかっただろうと思いました。それを阻む荒波に恨みを残して死んでいったのだろうと思うと、胸が詰まります。
本稿の主題である「岩と伝説」から外れますので、この事故についてこれ以上書き連ねることはやめておきますが、改めて600名近くの犠牲者の冥福をお祈りいたします。
付言したいのは、この記念館がほとんど人々の関心を呼んでいないことです。
私がこの記念館を訪れるのは3回目ですが、館内で出遭った入館者は3回合わせても3人でした。来るたびに建物の傷みが増しているのも気になります。
あの海難事故は、多くの日本人にとって、遠い昔の他人事でしかないのでしょうか。
付記:
今月初め、「海難1890」という映画が封切られました。エルトゥールル号の乗り組み員たちを村人が総出で助ける話です。ドキュメンタリーではありませんから、脚色もありますし、史実ではないエピソードも挿入されていますが、全編感動の連続でした。いい年をして涙が止まらず、隣に座った女房に悟られないようにするのが大変でした。 -
【 紀伊大島から昇る太陽 】
さて、この日は「串本ロイヤルホテル」に泊まりました。前夜トラックの騒音に悩まされながら路肩で寝たのとは大違い。ぐっすり眠ったので目覚めは爽やかです。
カーテンを開けるとちょうど紀伊大島の向こうから太陽が顔を出したところ。
冷蔵庫からオロナミンCを出して一気飲みしながら、光の変化を楽しみました。 -
【 ホテルから望む橋杭岩 】
朝食のあと庭に出ると、いい角度であの橋杭岩が遠望できました。
岩がこのように一直線に並んだ理由はネット上で詳しく解説されていますが、それはまあ、なるほどというくらいで、私はそれよりも、その形状が人々の想像を掻き立てて例の弘法大師伝説を生んだことに興味と共感を覚えます。
でも考えてみれば、本物の弘法大師は変なところでちょっと間の抜けた坊さんにされてしまい、心外なことでしょうね。 -
【 円月島と釣り人 】
この日は紀伊半島南西部をあちこち見て回り、御坊市近くまで進みました。
途中、円月島を望む磯に下りると、前方に釣り人が。
何が釣れるのかと思って、見ていました。1時間以上いたでしょうか、その間男性は一度も竿を上げませんでした。
いったい何をやってんだと言いたくなりましたが、その間ずっと見ていた私も、傍から見ればいったい何をやってんだと言われるかも知れません。円月島 自然・景勝地
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【 煙樹が浜の夕日 】
日高郡美浜町の煙樹が浜です。
よくある弓状の浜ですが、その広さは他にあまり例がないのではないでしょうか。6kmもあるという松林が国道の騒音を完全に遮断していますので、静けさもまた格別です。
ここもまたまた「日本の白砂青松100選」というのに入っていますが、「白砂」というのは真っ赤なウソで、浜辺はどこまで行っても完全に砂利で覆われ、砂など見えません。
まあ、静岡県の三保の松原もこの100選に入っていますが、砂は真っ黒ですね。その黒さが美しいのですから、なにも「白砂」なんてウソをつかなくてもいいと思うのですが。
なーんて文句はあるのですが、広さと静かさは一級なので、ちょっと早いけど今日はここで寝ることにしました。
お湯を沸かしてカップラーメンを作っていると、陽が沈んでいきました。
クーラーボックスには氷。氷の中には500mlの缶ビールが2本。これ以上、何を望むことがありましょう。
そもそも家ではいつも1本なのです。
「もう1本」
「ダメ」
「・・・」
私が一人旅を好む大きな理由です。煙樹ヶ浜 自然・景勝地
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【 潜水艦救難母艦「ちよだ」 】
翌朝、紀伊半島西岸の由良町にある白崎海岸を目指します。
国道42号線を外れ、県道24号線に入るとすぐに海上自衛隊由良基地分遣隊にぶつかります。
道端に小さな休憩スペースがあり、そこから基地に停泊中の自衛艦が見えました。艦尾に「ちよだ」の艦名が見えます。帰宅後調べましたら、高性能の潜水艦救難母艦だということでした。
休憩スペースにはトイレもあったので用を足していると、突然ラッパの音が聞こえてきました。一応「気をつけ」の姿勢になっていたとはいえ、既に出始めているものを止めるというわけにもいかず(この辺は女性には分からないと思います)、そのまま聴いていました。艦上の旗を揚げる合図でしょうか。 -
【 白崎海岸 】
海に沿って7〜8km走ったでしょうか、前方に白い岩ばかりが作り出す不思議な景色が見えてきました。白崎海岸です。
約2億5千万年前にできた石灰岩の海岸だそうで、ちょっと他では見られない、なんとも見事な景色です。
それなのに、由良町はここを「日本のエーゲ海」と宣伝しています。
あー、やだ!
なんで外国の観光地の名を借りるのでしょう? エーゲ海にはエーゲ海の魅力があり、白崎には白崎の魅力がある。優劣はつけられません。
自分たちの町の景観に自信と誇りを持っていれば、そんな外国の有名観光地の人気にあやかろうなんて姑息な考えは浮かばないと思うのですが。白崎海岸 自然・景勝地
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【 海と陸とを分ける白い屏風 】
ここは全体が自然公園になっています。公園といってもオートキャンプや臨海学校などに利用できる施設が海岸の取り付きにあるだけで、その先は手つかずの海岸が広がっていますから、無節操な観光地化はされておらず、気持ちの良い所です。
もちろん入場料もなく駐車も無料。おまけにこの日はシーズンオフだったせいでしょうか、宿泊所などの建物はすべて閉まっており、この公園にいた1時間ほどの間、人にも犬にもまったく出会いませんでした。 -
【 仏国土の風景はかくあらんか 】
岩は海に沿って恐竜の背中のように連なっており、その尾根を歩いてみます。
私のような無知之介が見ても石灰岩と判りますが、それがずっと続いている様はなにか幻想的でもあります。
見ているうちに、なぜか仏教の世界、それも西方浄土への途中にあるどこかの仏国土にこんな景色があるのではないかという思いが浮かび、いつの日かこんな所を旅するのだな、と勝手な想像をしました。
猛烈な風に煽られながら、岩に手をついて誰もいない岩山をのろのろと進み・・・、なかば本気で浄土への一人旅を考えていました。
私は別のブログで十万億土の彼方への一人旅についての思いを書いています。己の思い込みだけで書いた、無学を晒すものですが、もしお暇があったらご一読いただけますでしょうか。
http://zatsunen4989.web.fc2.com/hitorigoto/055_kyuukyokunohitoritabi.html -
【 言葉に尽くせぬ世界 】
初めて来たこの場所は、なまじ陳腐な言葉で形容しない方がいいと思えるすばらしい所で、おそらく一生忘れないと思います。(もっとも、忘れるほど長い時間が私の人生に残っているわけではありませんが)
もちろんここにも、「日本の渚百選」「平成百景」というお墨付きが。
あー、やだやだ! -
【 いた! 怪獣だっ! 】
これだけ岩があったら、その中にはナントカ岩というのがありそうなものだと思っていると・・・、アッ、やっぱりありました。
ちょっと振り返ってこちらの様子を窺う怪獣の背中です。
えっ、いないって?
いますよ、ホレ、真ん中よりちょっと左に。左ですよ、左。
見えませんか? うーん、やっぱり無理があるかぁ・・・。
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【 見返り怪獣 】
でも、もう一度見てください。
ほら、やっぱりいるでしょう?
菱川師宣の「見返り美人」ならぬ「見返り怪獣」と名付けては・・・ダメですかねぇ。 -
【 海にだけ人の気配が 】
そんな馬鹿な話は別として、ここはやっぱり「生」というものを全く感じない空間です。
それでもその沖合には漁をする船が。
まさに生の営みである漁の空間と、どこまでも無機質な白い空間との境はどうなっているのでしょうか。 -
【 羽根を乾かすウミウ 】
さらに乗り出して見ると、思いのほか近くに岩があり、海鵜が休んでいました。
こんなに近くなのに岩の種類が違うようで、ごく普通の色をしています。あるいは波に洗われている岩なので、海藻などが付着して黒ずんでいるのかも知れません。(上の方が白いのは海鵜の糞だと思います)
生き物の姿を見るとホッとします。 -
【 群像? 】
ここはまた違った雰囲気の岩が。
なにやら立ち並んだ磨崖仏のように見えなくもありません。あるいは中国西域の岩山に彫られた西遊記の一場面でもあるような。
いずれにせよ、千万億土の彼方にでも迷い込んだのかと錯覚しそうな光景にどっぷりと浸かり、ある意味、心を洗われたような気分になりました。 -
【 ハマウド 】
駐車場に戻る途中でハマウドを見つけました。
「生」の世界に帰ってきた気分です。 -
【 しおがま神社 】
この日は海岸線を北上し、有田市、海南市、和歌山市などをうろついたあと、名神高速道路に乗って大津SAまで行き、車中泊をしました。
その途中、「今回の旅ではあちこちの岩を見て歩いたのだから、最後にしおがま神社に寄っていこう」と思いました。 (しおがまという字は難しくて書けません)
和歌山市の片男波海水浴場に近い鏡山という岩山の洞窟がそのまま祠になっている所で、岩巡りの締めくくりとしてお参りをしておこうかという思いつきです。
ここには過去に2度来ていますが、2度目に一緒だった義兄がその後亡くなっているということもあって、なんだか素通りできないという気持ちもあります。
最初に来たとき、この神社の御祭神は「海幸彦・山幸彦」の神話に出てくる何とかいう神様で、それゆえここは子授け・安産守護の神として信仰されていると聞きました。 「海幸彦・山幸彦」というのは子供のころ聞いた覚えがあるものの、その筋は全然覚えていません。
そこで家に帰って古事記を引っ張り出してみましたが、改めて読んでみると難しくて歯が立たず・・・。
まあ分かったとしても、子育てもとうに終わっている私が今さら何を願うということもありませんが。
それでも、神話のもととなったらしい岩窟を見て、やっぱり岩というものは人の想像力に働きかける力があるんだなぁと、強く感じました。
この旅のあと、海でも山でも岩を見るとちょっと想像を膨らませる癖がつきました。
天狗に見える岩、猿に見える岩・・・いろいろあるものですね。
どこの岩もごつごつしていて、女性の裸身に見える岩がないのは残念ですが・・・おっと! 本性がバレるので、今回はこれにて終了ということで。
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この旅行記へのコメント (4)
-
- sanaboさん 2016/01/04 16:33:52
- 今年もお健やかな1年でありますように。
- ねんきん老人さん、
新年おめでとうございます。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
岩に纏わる伝説は、日本のみならず世界各地にあり
我々のロマンを掻き立ててくれますね。
旅行記中の数々の伝説も、日本おとぎ話を聞いているようで
そしてそこにねんきん老人さんのツッコミも入り
楽しく拝読させていただきました^^
滝の拝太郎伝説は、浦島太郎が聞いたらひがむのではないかと思いました^^
山椒魚を助けてあげたのに、侍女がお迎えにやってこなかったのは
『無償の愛』の尊さを知らしめるため・・・だったのでしょうか?(笑)
ところで、エルトゥールル号海難事故に関する添付のURLのページを
拝読いたしました。
たしかに史実が美化されているということはあるのでしょうね。
奇しくも、その映画が封切りされ早速ご覧になられたのですね。
全編感動の連続とのこと、私も機会があれば見てみようと思います。
今年は暖冬で助かりますね。 でも今週末から、気温が下がるそうです。
くれぐれもご自愛下さいませ。
今年もお健やかでお幸せな1年となりますよう、
心よりお祈り申し上げます。
sanabo
- ねんきん老人さん からの返信 2016/01/05 10:12:37
- 今年こそ、今年こそまた、今年こそ。
- sanaboさん、明けましておめでとうございます。
新年早々、私の駄文にお付き合いくださり、ありがとうございます。
> 岩に纏わる伝説は、日本のみならず世界各地にあり
> 我々のロマンを掻き立ててくれますね。
仰るとおり世界中いたる所で岩にまつわる言い伝えがあるようですが、私が岩と人々の想像とのつながりを意識したのは、まさしく今回の和歌山が初めてなので、海外でとくに意識したことがありませんでした。
今から思えば勿体ないことだったと思います。
> 旅行記中の数々の伝説も、日本おとぎ話を聞いているようで
> そしてそこにねんきん老人さんのツッコミも入り
> 楽しく拝読させていただきました^^
伝説の多くが「事実にしては間が抜けている」「話のつながりに矛盾がある」等々、つまり作品として不完全なのですが、それが地元の人々のおおらかさによるものなのか、それとも無理にこじつけて作られたせいなのか、あるいはまた語り継がれているうちに伝言ゲームのように話がずれてきたものなのか、調べてみたら面白いかなとも思います。
> 山椒魚を助けてあげたのに、侍女がお迎えにやってこなかったのは
> 『無償の愛』の尊さを知らしめるため・・・だったのでしょうか?(笑)
これは参りました。私が山椒魚に「見返りを期待しての親切」を施したことがバレてしまいましたね。
エルトゥールル号についての別稿を読んでくださって、重ねてありがとうございます。浅い勉強のままに書き綴ったもので恥ずかしい限りですが、日本人がトルコ国民の親日感情を「当たり前」のこととして上から目線で見ていることに申し訳ないという気持ちがあって、あのような文章になりました。
映画では、トルコ人の気高さがひしひしと伝わり、トルコの人々への尊敬の念が膨らみました。sanaboさんにも是非ご覧いただきたいと思っています。
毎年、今年こそ今年こそと思いながら無為徒食のうちに一年が経ってしまい、忸怩たる思いを抱いています。
「何もない毎日」に慣れぬよう、4トラベルの皆さんの旅行記を読ませていただいて、刺激を受け続けていきたいと思います。
sanaboさんの丁寧な旅行記を拝読するたびに、自分も行く先々のことをもっと調べてみようという気持ちになります。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
ねんきん老人
-
- 琉球熱さん 2016/01/01 17:12:36
- やはり面白い
- ねんきん老人さん、こんにちは。
琉球熱です。
こうして改めて見てみると、やはり「岩」というものは面白いですね。
サンショウウオなどという稀少な生物に出会えたのは、まさに僥倖ではないでしょうか? なんだか浦島太郎をもじったような伝説ですが、サンショウウオに免じて許してあげましょう。
それにしても「日本の百○○」というのは胡散臭いですね。まぁ観光客誘致のためだから仕方ないのでしょうけど。
そうそう、沖縄の北部、本部町には「ゴリラチョップ」なる岩があるんです。
ゴリラが空手チョップをしているように見える、という由来です(笑)
もっとも、ダイバー以外は知らないと思いますが、それにしても思いっきり想像力を働かせたネーミングですね。
- ねんきん老人さん からの返信 2016/01/03 18:14:25
- 明けましておめでとうございます。
- 琉球熱さん、明けましておめでとうございます。
「岩」についての思いつきを並べただけの雑な旅行記ですが、最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
伝説の胡散臭さやこじつけ、さらに○○百選といった格付けの裏にある商業主義への思いに共感していただいて、意を強くしています。(実は人々が言い伝えて得意になっている話に「よそ者」が難癖をつけていると思われるのではないかと、不安でしたので)
「ゴリラチョップ」とはまた、名前を聞いただけでかなり無理のあるネーミングだと思いました。
私自身は見たことがないのですが、たぶん見たとしても、もうちょっとマシな想像はできなかったものかな、と思うのではないでしょうか。
それにしても、聞いてみるとやっぱり見てみたい気にもなるのが不思議です。
琉球熱さんには、いつも私の知らないことや思いつかない発想を教えていただいて、ずいぶん刺激を受けます。
今年もいろいろ学ばせていただきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
ねんきん老人
>
>
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