2013/03/07 - 2013/03/07
2484位(同エリア4227件中)
kojikojiさん
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今年の2月にリニュアルオープンした上野の国立博物館の東洋館には行きたいと思っていましたがそう思っているうちに3月になってしまいました。出来れば平日に行きたいと思っていたからなのですが、ようやく観に行く機会がやってきました。常設展示は600円ですがみずほ銀行のカードがあると100円値引きになるので利用させてもらっています。思い返すと東洋館に最後に行ったのは中学の社会科見学の時だったと思います。それから38年間何故入らなかったのか自分でも不思議です。長い間東洋美術に興味が無かったのは事実ですがここ10年は中国をはじめ東南アジアには足しげく通っていたのですから。新しい東洋館はとても気持ちの良い空間で平日なのでとても空いているのでじっくり見学出来ました。10時に入館して気が付くと午後1時になっていましたから本館は軽く流して展示替えされたものだけ眺めて大満足で博物館を後にしました。
- 旅行の満足度
- 5.0
- 観光
- 5.0
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- JRローカル 私鉄 徒歩
PR
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午前10時の開館に合わせて博物館に向かいます。2月にエル・グレコ展に来た時は雪が降っていましたが、この日は小春日和のポカポカした朝でした。
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本館では無く今日は東洋館を目指します。
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普段は通り過ぎてしまう朝鮮時代の文官像にも目が止まります。
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東洋館の奥にはホテルオークラのレストランがあり、春と秋の季節にはここから奥の庭を見学することが出来ます。
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1階の受付を過ぎると中国の仏像の部屋があります。右手には「宝慶寺石仏群」の展示。
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唐の長安城の光宅寺に祀られ、後に宝慶寺に移されて伝来されたのでこの名前で呼ばれているそうです。
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「如来三尊仏龕」元の光宅寺は則天武后が創建された寺院で、当時の正統的な作風を伝えるこの仏像はとても素晴らしい薄彫りの菩薩です。
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十一面観音像も優雅な姿で蓮座の上に立っています。
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薄衣に瓔珞紋がインドに近いような雰囲気を感じます。
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この菩薩頭部は近いうちに行きたいと思っている龍門石窟にあったものです。寶陽洞にあったこの像は北魏の宣武帝の命により造営された中洞側壁の脇侍像のものだそうです。アーモンド形の目に微笑を浮かべた口元を眺めているだけでこちらも幸せな気分になれます。
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観音菩薩立像の姿は奈良の法隆寺に繋がるような雰囲気を感じました。
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照度を落とした薄暗い中に立つ姿はとても引き立つ展示の仕方です。多分最新のLED照明を使っていることでしょう。
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重要文化財の「如来三尊立像」中国式の重ね着の着衣に、顔が細長く肉づきが平板な点は北魏時代以来の特色だそうです。光背には奏楽飛天の姿が彫られ、側面と裏面には結縁者の名前がぎっしり彫られています。
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弥勒菩薩像は小さい物でガラスケースに収まっていました。
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十一面観音菩薩も小品ながら素晴らしいものです。
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階段を少し登ると2階になり、こちらはインド・ガンダーラの彫刻が並んでいます。この部屋のいくつかの仏像は以前本館や表慶館で観たことがあるものでした。
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足を交差させた弥勒菩薩の姿は日本の仏像では観たことが無いですね。
顔も東洋的というよりも彫りの深い中央アジアから西洋を思わせます。 -
衲衣と呼ばれる布を一枚纏い、右肩を露わにする偏衲右肩の姿の仏陀。
頭部に団子のように盛り上がった「肉髻」という髪形に、ちじれた「螺髪」、眉間の「白毫」と初期の仏像にもかかわらず基本的な姿は完成されていたのだと驚かされます。 -
ガンダーラ辺りで造られたと言われてもギリシャ彫刻に通じる様な印象を受けます。
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2000年近く前に完成しつくされた美しさを感じる釈迦王子像です。
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仏伝「誕生」王妃マーヤーがアショーカ―の花に手を伸ばした瞬間、右わき腹から男の子が生まれた瞬間を表わしています。この子がゴータマ・シッダッタで後の仏陀です。
ゴータマ・シッダッタ王子は生まれるとすぐに七歩歩いて右手を大きく上げ天を指さしながら、「天上天下唯我独尊」と宣言したと言われます。その7日後には生みの親である王妃マーヤ―は亡くなってしまいます。 -
キリストの誕生を思わせるような登場人物と動物たちです。
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「涅槃」
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「アトラス坐像」背中に翼のある天使のような姿です。アトラスはギリシャ神話のタイタン族という巨人の一族です。世界の中心で天球と台地が接触しないように支えている姿が印象に残っていますが。ナポリの考古学博物館に天球を担いだ像があったなと思い出しました。
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同じくアトラス像。カテゴリーとして仏像の括りなのか?
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こちらも仏像と言うよりはヒンズー教の神像のようにも見えます。
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「如来坐像」の後光には左にブラフマー(梵天)右にインドラ(帝釈天)が表わされ、古来信仰を集めたインドの神々が釈尊に礼拝しています。
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「仏鉢供養・菩薩交脚像」
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中央の鉢は釈尊が四天王から受け取って重ねた物だそうです。確かに口縁が4つあります。左右の脚を交差させるのは弥勒菩薩。釈尊の鉢は後継者の弥勒菩薩が思惟を続ける兜率天に至ったと言われます。
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大谷探検隊のコーナーがありました。20年以上前の月刊「太陽」で特集されたものを読んで以来とても興味を持っていました。母方の祖母が子供の頃、屋敷に白い馬が牽く真っ白な馬車が迎えに来て西本願寺まで遊びに行ったそうです。大谷さんの娘さんの所へ遊びに行ったと言っていましたが、詳しく尋ねることはもうできません。
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「文官俑」唐時代の古墓からの将来品です。
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「共命鳥」(ぐみょうちょう)これには面白い話が伝わっています。昔、身体は一つ頭が二つの鳥がいました。一方の名前をカルダ、もう一方の名前をウバカルダと言い、一頭が目覚めている時にもう一頭は眠っています。ある時、カルダは眠っているウバカルダに黙って、摩頭迦という果樹の花を食べてしまいます。摩頭迦の花を食べることは双方共に利益があると思ったからですが、ウバカルダは目を覚ました後で黙って食べられた事に対し腹を立てて憎悪の思いを起します。そして飛び回っているときに毒花に遭遇します。憎悪の思いを抱いているウバカルダは「この毒花を食べて共に死んでしまおう」と考えます。そしてウバカルダはカルダを眠らせて毒花を食べてしまいます。眠りから覚めたカルダは瀕死の状態のなか、ウバカルダに「昔、お互いに利益があると思って摩頭迦の花を食べたことに対し、あなたはかえって憎悪の思いを起しました。まことに瞋恚や愚癡というものに利益はありません。」愚かな心は自らを傷つけ他人をも傷つけてしまうと言う法話です。
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大谷探検隊の資料はすべて二楽荘にあったとされますが、一部本願寺に残され、大谷家から京都博物館に寄託されたそうです。が、戦時中博物館の手を離れ転々とした後に国が買い上げて東京国立博物館に収まったそうです。
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旅順に送られた資料類は関東庁博物館に寄託された後に戦後中国に接収され、旅順博物館の収蔵品になっています。そんな旅順は大連に近いにも関わらず軍港があるので最近まで自由に見学できませんでした。解放された2010年に大連から哈爾濱へ列車で旅した際に見学してきたことを思い出しました。
旅順博物館:http://4travel.jp/traveler/koji0714/album/10504974/ -
2階の半分が西アジアやエジプトの美術品が並んでいます。ここにあった一番手前の花瓶が一昨年ブダペストで買ってきた物に酷似していたのでビックリ。
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これによく似たリュトンもパリのプティ・パレ美術館の地下にありました。
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こちらはキプロスの土器。こんなクオリティの高い物は本家のキプロスにもなかなかありません。
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轆轤を引いた半円錐を二つ組み合わせて、首と取っ手を付けた高度な手法が用いられています。奥にはエジプトのミイラなども陳列してありますが、さすがに写真は撮る気にはなりません。
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3階の4室からは古代中国文明が始まります。中国の博物館でもよく見掛ける土器が並びます。一番手前のものは現在でも雲南省の香格裏拉の奥地の納西村で実用品として作られています。
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5室の入り口の「石彫怪獣」殷王朝後期の王墓から出土したとされるものです。紀元前13世紀頃の物とは思えないクオリティです。
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「揺銭樹」青銅製の組み立て式の樹枝に銅銭や龍や鳳凰や仙人を表わし、頂部には玉を咥えた鳳凰がとまっています。
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緑釉陶器の台座は羊に乗った仙人になっています。古代中国の神仙の信仰を感じさせるものです。広州の越秀公園や香港のスタンレーの寺院を思い出します。
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「緑釉犬」緑釉が銀化しています。首輪などに子安貝の飾りがあるので多産の象徴なのでしょうか。
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赤塚不二夫のマンガに出て来そうな感じがします。
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饕餮文の青銅器。古代中国では一番好きなモチーフです。
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饕餮は「竜生九子」(竜には子供が九匹いたとされる)の5番目の
子供です。 -
「饕餮文三犠尊」饕餮は貪欲の意味もあるので食べ物を入れる器にデザインされます。
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饕餮の青銅器は奈良仏像館の青銅器館の坂本コレクションに素晴らしい物がたくさんあります。
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こちらの展示品も素晴らしいですが高透過のガラスケースも素晴らしいです。
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古代の蒸し器。鬲形の下半部の上に、鉢形の甑が合体してつけられ、その連結部内に別作りの簀が設置されていて、鬲部で水を沸かし甑部で食物を蒸す仕掛けになっています。
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「青磁天鶏壺」鶏の頭部が注ぎ口になっていますが、孔は胴に通じていないので実用品ではありません。墳墓に埋葬する明器と呼ばれるものです。
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こちらの青磁も蓮花模様が素晴らしいデザインです。
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明器と言えば「三彩鎮墓獣」鎮墓獣は墓門を守る獣で、肩に翼を持ち足先は偶蹄で台座に座った姿であらわされます。
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全身から怒気を発散させて威嚇しているようです。
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文官の表情も怒気を感じさせます。
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唐時代の三彩は西安の陜西省歴史博物館の収蔵品は素晴らしかったです。
http://4travel.jp/traveler/koji0714/album/10442808/ -
上海の博物館で白い壁面に置かれていているよりはこの博物館の展示手法は素晴らしいと思います。照明器具も狭角のLEDがピンポイントであてられています。
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「三彩貼花龍耳瓶」重要文化財になっています。
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タイトルの通り型で取った花模様を後から胴に貼っています。釉薬の混ざり具合と言い素晴らしいです。
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人物俑も好きなのですが、ここには数体しか陳列されていませんでした。
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唐時代の穏やかな時代に造られたのでしょう。当時の風俗が手に取るように分かります。
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丑年なので牛の置物を集めています。
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京都の陶哉でも誂えた事がありますがこの牛も見事です。人物よりも牛のクオリティが高いのは当時は使用人より牛の方が高価だったと言う事でしょうか?
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そんな当時に思いを馳せられる唐時代の俑は本当に素晴らしいと思います。
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「玳玻釉梅花文碗」梅花文の美しい小振りの茶碗です。
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「青磁輪花鉢」浙江省杭州辺りで造られた南宋官窯の物とされる重要文化財です。
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「青磁鳳凰耳瓶」龍泉窯砧青磁の素晴らしい作品です。槌の形をしているので砧と呼ばれます。
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「五彩獅子文瓶」明時代の初期に景徳鎮の民窯で造られた五彩の美しい瓶です。淡い赤絵が何とも言えません。五代清風与平さんが描きそうな感じがします。
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「青華唐草文水差」宣徳年製の景徳鎮官窯の器でイスラム風のデザインです。昔香港島の巨大な倉庫が陶器店になっている所へ行った事がありますが、倣古品がこれでもかというほど並んだ店でしたが、そこの店にも並んでいたのを思い出しました。
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「豆彩龍文壺」明の成化年製の景徳鎮官窯の五彩陶器です。「甜白」と呼ばれる白磁の上に色が争い競い合うような所から闘彩とも呼ばれます。連弁の赤が印象に残ります。
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「五彩花鳥文方壺」明隆慶年間の官窯製品。三浦竹泉さんの得意とするような四角形の五彩の美しい壺です。
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「法花騎馬人物文壺」あまり見かけない作品と思いました。イッチンのような手法で絵柄が描かれて全体を青い釉薬で覆っています。法花と呼ばれるのは七宝のような意味でしょうか?
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「五彩獅子図大皿」明末清初に福建省の南部で輸出用に焼かれた磁器です。
この大皿はとても状態が良く赤絵も見込みの獅子の絵も素晴らしいものです。欲しいなーと素直に思いました。 -
「青磁花卉八角有蓋壺」元時代の龍泉窯の酒壺です。どんなお酒を入れていたのでしょうか。釉薬のトロッとした素晴らしい壺です。
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さすがに日本を代表する国立の博物館あけあって素晴らしい作品がぞろぞろ並んでいます。高台の裏側も写真が添えてあったり細かい所に気が配られていると感じました。
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「青華氷梅瓶壺」口辺に釉薬が掛かっていないので蓋があったのか、金物で蓋をするためにそうなっているのか?氷梅と呼ばれる氷のひび割れのデザインはあまり好きでは無いのですがこの壺は素直に良いなと思えました。
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「五彩仙姑図大皿」康熙年製の景徳鎮官窯の作品です。本当なら故宮博物院に収まっているような物に思えます。
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題材は中国の伝説の仙女麻姑が西王母の誕生日を祝って贈り物を運ぶ場面です。細部まで見入ってしまう作品です。
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「粉彩梅樹文皿」雍正年製のヨーロッパの線の無い七宝の技術を使った絵付け方法です。
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生地は景徳鎮で造られ北京の宮廷で絵付けをした俗に言う古月軒と呼ばれるものです。
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「青華唐草文双耳瓶」雍正年間に造られた景徳鎮官窯の作品ですが、本歌は明の永楽年間や宣徳年間に造られたものです。
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中国の陶器は後年に倣古された物が多くよく分かりません。香港の倉庫では現代に造られた物が数千円で売られていました。出来は凄く良くて家で楽しむには見栄えもして良いものです。
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「粉彩透彫唐草文双耳壺」いかにも乾隆年間に造られた官窯の作品です。
隙間無く緻密に描かれた絵付けは夾彩と呼ばれるものです。 -
胴の部分は透かし彫りで二重構造になっています。一体全体粘土で造って削り出したとは言え、それを歪み無く焼き上げて更に完璧な絵付けを施すにはどんな技術が必要なのでしょう。一体幾つの生地を造れば一個の完成品が残るのか疑問です。
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「五彩龍文筆皿」立体になった龍の姿が可愛いらしい感じもします。色絵の発色も良く素晴らしい作品です。明の万歴赤絵の秀品です。川瀬竹春さんか叶松谷さんの好みそうな絵付けです。
大満足の中国陶器コーナーでした。 -
画像石のコーナーはあまり興味を持てなかったので写真も少ないです。老眼鏡を持ってこなかったせいもありますが。
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唯一興味を持ったのはこの画像石で、張芸謀(チャン・イーモウ)のラバーズという映画(原題:十面埋伏)で盲目の芸姑の小妹(チャン・ツィイー)が舞うシーンを思い出しました。
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中国の絵画の部屋も写真には残しませんでした。興味を引いたのは文人の書斎を再現した部屋でした。こんな部屋で絵を描いたり書を嗜むような生活は絶対に来ないだろうなと思います。そんな生活をしていた祖父の事を思い出し、羨ましいと思うような年になりました。
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館内はこんな雰囲気で、平日の午前中で訪問者も少なく一人の時間に浸れます。中国の漆器にも良いものがありましたが写り映えが悪そうなので撮りませんでした。堆朱や堆黒や螺鈿など地味な物が多かったです。
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乾隆年間の紫禁城にあった官営工房である玻璃廠で造られたガラスの瓶と燭台が並びます。乾隆帝はガラスで陶器と見まごうような花瓶を造らせています。不透明なガラスは玉に通じるものがあったのでしょう。
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中国文化の次は韓国の美術品に移ります。
「紋章(胸背)」胸背(きょうはい)はヒュンベと呼ばれる官吏の服に付けられる紋章です。 -
虎(豹)は武官が用いるモチーフだそうです。素晴らしい刺繍の技を感じます。
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書架も素晴らしいですね。ソウルの「踏十里古美術商街」と「長安坪古美術商街」を妻と半日歩いたことを思い出しました。もちろんこんな素晴らしい物は買えませんが、小さな棚(1m角程度)を郵便で送ったり、ハム(函)を幾つかホテルに届けてもらって、担いで帰ったことを思い出しました。
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「官服(団領)」襟(領)が丸いのでダルリョン(団領)と呼ばれるそうです。この服のヒュンベは二羽の鶴なので文官が着用したものだそうです。
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素晴らしいデザインです。
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「毘盧遮那仏立像」銅造鍍金の高麗時代の仏像です。日本とも中国とも違った大らかさを感じる仏様です。
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朝鮮の陶器にも素晴らしい物がたくさんありました。
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一つ一つ時間を掛けてゆきます。
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「青華鶴亀文壺」吉祥文である鶴と亀が交互に描かれています。亀と言っても竜生九子のひとつ贔屓のように見えます。
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贔屓の引き倒しの語源になった贔屓は龍の子供です。中国では背中に石碑を背負っています。贔屓を引くと石碑が倒れることからこの諺が生まれたそうです。
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「青華草花文壺」乳白色のトロリとした釉薬が素晴らしいです。秋草手と呼ばれる抒情的な作品です。迫力のある中国陶器を観た後ではホッとします。
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「鉄砂草花文壺」鉄砂(てっしゃ)の素晴らしい絵付けです。
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迷いの無い筆使いが見事です。青華を描く呉須が手に入らなくなって鉄絵具を使った絵付けが盛んになったそうです。
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「粉青鉄絵魚文瓶」刷毛を用いた白化粧に鉄絵で魚が描かれています。
手法は違いますが日田の小鹿田(おんた)焼の雰囲気を感じました。
九州の窯元を回っていると韓国や朝鮮の陶器を感じることがあります。
この魚の場合は沖縄の陶器も思い起こさせますが。 -
「粉青印花象嵌蓮池文俵壺」俵壺とは良くつけた名前だと思います。
日本だと三島と呼ばれる手法です。縄を用いた島岡達三さんの作品に
通じるものも感じます。 -
「粉青印花文鉢」粉青沙器は暦手と呼ばれ、三島大社の暦に似ていたので三島とも呼ばれます。今回この陶器で知りましたが、彦陽(オニャン)はこの陶器を造った慶尚道の地名で、仁寿府(インスフ)は皇太子の役宅だそうです。陶器の紛失や盗難を防ぐために名前を入れた訳です。
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「青磁鉄絵草葉文瓶」
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「青磁象嵌梅竹蒲柳水禽文瓶」梅瓶と呼ばれるデザインです。象嵌された梅に竹や柳に蒲と水鳥が穏やかな高麗時代を感じさせます。
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韓国の陶器と言うとこのタイプを思い浮かべますね。
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中国の完成された透かし模様とは違いますがこちらも素晴らしい陶呂です。ここで最上階の5階の10室までの見学が終わりです。
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気が付くと午後1時、3時間も経っていました。最後に地下1階までエレベーターで降りると11室から13室まで東南アジアの美術品が並びます。
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今回東洋館に来たのはこの地下のアンコールの石像を観るためと言っても過言ではありません。
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昨年の春にベトナムへの旅と一緒にアンコール遺跡を一週間かけて廻ったからです。今から思えば40度近い炎天下の中を毎日毎日よく歩いたと思います。
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「仏陀三尊像」中央にナーガ(蜷局を巻いた蛇)の上に座るブッダと右手には4本の腕を持つローケーシヴァラ(観音菩薩)と左手にはプラジュニャーパーラミター(般若波羅蜜多菩薩)の三尊。
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非常に状態の良いこれらの仏像はフランス極東学院と交換した物だそうです。第二次世界大戦中の昭和19年に仏領インドシナのハノイに本部を置いていた研究機関で、当時の東京帝室博物館(国立博物館)と美術品の交換をしたものだそうです。
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当時のインドシナはナチス・ドイツの傀儡政権とされるビシー政権下で日本と同盟関係にあったことから、友好を示す文化交流の一環だったと聞くとキナ臭い感じもします。
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「観音菩薩立像」アンコール・トムの東門である死者の門で発見されたそうです。円筒形の頭髪に三角形で囲われた髻(もとどり)に観音菩薩を表わす化仏坐像が見られます。
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残念ながら四肢は失われていますが素晴らしい物です。普段は見られない裏側も眺められる展示です。これはシェムリアップのアンコール国立博物館でも見ることは出来ません。何より館内の展示物は撮影禁止です。
アンコール国立博物館:http://4travel.jp/traveler/koji0714/album/10677276/ -
ここが発見された死者の門です。メインの観光ルートから外れているうえにバイヨンからの直線の道路は雨季の増水で崩れているのでわざわざ見に来る人はほとんどいません。仏像のキャプションを読んでいると心はアンコールへ飛ぶことが出来ます。
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「女神立像」プリア・コーで発見された女神像で、残念ながら頭部と両腕がありません。が、かえって体の曲線が強調されて素晴らしい造形美を感じさせます。
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プリア・コーは聖なる牛と言う意味のアンコール遺跡群では初期に造られたロリュオス遺跡群の一つの寺院です。祠堂の前にはナンディンと呼ばれる牛の石像が並んでいます。
ロリュオス遺跡群:http://4travel.jp/traveler/koji0714/album/10677438/ -
成仏得道の後の仏陀が樹下で禅定を続けていると風雨のひどくなることがありました。そこへ龍王であるナーガラージャが現われ、仏陀を七重に取り巻き、七つの頭で仏陀の頭上に大きな傘を作って仏陀を守ったとされる姿です。
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「ナーガ上の仏陀坐像」はアンコール・トム東南部のテラスで発見されたとありました。この像も非常に良い状態で残っています。
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左側から見るとまるで無傷のようです。非常にバランスの良い坐像です。
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アンコール・トム東南のテラスとはこの辺りでしょうか?テラスNO,61と言うのがどこを示すのかは分かりません。
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人物像と書かれたキャプションがありましたが、左の人物は阿修羅か金剛力士のような印象を受けました。
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「浮彫アプサラス像」バイヨンで発掘された柱の上に置かれた物だそうです。アプサラスとはインドラ(帝釈天)の済む天上界の踊り子で水の精でもあります。
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本当はこんな所にあったのでしょう。
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「浮彫人物像」ピミアナカスからの発掘品とありました。
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ピミアナカスと言うよりはライ王のテラスの古いテラスの一連の彫刻に酷似していると思います。
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ピミアナカスはアンコール・トム内のライ王のテラスの西側の寺院です。
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素人考えですがこの辺りにあったほうが自然に思えました。
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「楣」まぐさ。寺院の開口枠の上部にある欄間部分の飾りです。
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中央部で2頭の象に水をかけられるのは美と豊穣の女神ラクシュミー。彼女はヴィシュヌ神の妻でもあります。仏教に取り入れられると吉祥天と呼ばれます。
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花綱を呑みこむ怪魚マカラの姿は魚では無く腕のある獅子のような姿です。
出土されたタ・セルがどこにあるのかは分かりません。 -
「獅子」参道の脇で守護神として寺院を守る姿をよく見掛けました。
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砂岩で造られる獅子は経年による劣化で原形を保っていない事が多いですがこの獅子像は歯並びまでよく残っています。
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展示室はこんな雰囲気です。
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1階からの階段の踊り場には「ナーガ上のガルーダ」ビシュヌ神の乗り物であるガルーダは鷲の頭を持った姿で表わされます。
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パプーオン入口と象のテラスにあったものだそうです。
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彫りの深いナーガの姿が印象に残りました。
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パプーオン入り口のテラスはこんな感じです。巨大なガルーダが延々と並んでいます。
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「ガネーシャ」シヴァとパールヴァティーの子供ですが、シヴァの怒りをかって首を切られて遠くへ投げ捨てられてしまいます。後に自分の子供と知ったシヴァはその首を探しに行きますが見つからなかったので最初に出会った象の首を切り取って取り付けたと言う由来があります。
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「断芯立像」タ・ケオ発掘品。
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当時の風俗がよく分かる姿です。
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タ・ケウはアンコール・トムの東側にある巨大な寺院です。建設途中で建立が中止になっているので彫刻する前の姿がよく分かります。
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「ヴィシュヌ立像」スーリヤヴァルマン2世が統治した12世紀のヴィシュヌ神の造像が流行したそうです。ヴィシュヌは法螺貝と輪宝と宝珠を持ち杖をつくのが定番の姿です。
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こんなにたくさんのアンコールの石像が日本にまとめてあったのはこの日初めて知りました。この地下だけでも上野までやってきた甲斐がありました。
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「楣」リンテルと呼ばれる入口の飾り。
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中央部のカーラト呼ばれる時間を象徴する神の姿が彫られています。バンテアイ・スレイの薄彫りが素晴らしいですが真近で見ることが出来ないのでちょっと興奮します。アンコール国立博物館でもまぐさ石は幾つも無かったと思います。
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プラサット・スララウのまぐさ石。アンコール・トムの北西10キロの所にある寺院だそうです。残念ながら訪問していませんが赤みを帯びた砂岩や精密な浮彫がバンテアイ・スレイに似ているそうです。
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象の上で踊る雷神インドラ。仏教に取り入れられると帝釈天です。通常一面四臂の姿で、二本の槍を手にしています。マハーバーラタで伝えられるモヘンジョダロを滅ぼした超兵器「インドラの矢」。天空の城ラピュタを思い出します。
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バンテアイ・スレイ:http://4travel.jp/traveler/koji0714/album/10677586/
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斜めに見ると彫の深さと素晴らしさがより分かり易いと思います。一体どうやったらこんな物が彫れるのか。
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アンコールの石像の後は東南アジアの陶器が並びます。こちらも興味深い物がたくさん並んでいます。
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クメールの黒釉陶器もたくさん並んでいます。
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「黒褐釉象形容器」クメール陶器の素晴らしさが伝わってきます。10年前にアンコールを訪ねた際はマーケットにも怪しい骨董店が並んでいたのですが、昨年行った時には明るい照明のお土産屋にすべて変わっていました。
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「青華魚藻文大皿」ベトナム青華の素晴らしい作品です。少し灰色がかった生地にくすんだ呉須が重厚な雰囲気を感じさせます。最近のバッチャン陶器にも似たようなものがありますが昔のものは良いですね。
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魚が水の中で体をくねらせる姿が面白いです。
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「鉄絵唐草文瓶」中国からベトナムにかけての陶器のようですがタイで造られた物でした。
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「青華唐草文合子」ベトナムの青華は中国の影響を非常に強く受けていると思います。それは旅をしていても感じることで特にフエ辺りで顕著です。ホイアン辺りの土産物店ではこんな陶器が今でも売られています。海沿いのホイアンでは沖合で沈んだ船の積み荷が漁師網に掛かると言う訳です。
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「青華草花文瓶」
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「青華唐草文ケンディ方水注」これはベトナムのものですが、仏具であるケンディ(水注)はタイなど国が変わっても同じ形をしています。
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昔ハノイの裏町の骨董店に並んでいたような陶器が幾つかありました。
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「白磁印花文鉢」こんな感じの鉢が当時40ドルくらいで売っていました。本物かどうかは分かりませんが。ベトナムは骨董品の持ち出しが禁止されているので注意が必要です。
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「緑釉かつ花文鉢」いくつも重ねて焼成するので高台が当たる部分の釉薬が掛かっていないのが分かります。
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「鉄絵草花文皿」陳王朝時代の皿。白い釉薬のトロッとした感じが何とも言えません。鉄絵の筆さばきも上手ですね。自分でもお遊びで絵付けをするので難しさはよく分かります。同じものを数百と描かないとこんな風にはならないでしょう。
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「五彩草花皿」小さい作品ですが重要美術品です。中国の赤絵とは違う優しい赤と緑の発色です。バッチャン陶器もこれを写したものでしょう。
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「ヴィシュヌとガルーダ像」アンコール時代の青銅製の像です。いくらガルーダがヴィシュヌの乗り物といってもこのバランスでは可愛そうです。
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インドネシアのワヤン・クリ。影絵人形です。今年の旅行はジャワ島とバリ島を考えていた矢先なのでとても興味深く見ました。
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こちらはグヌンガンと呼ばれる開演と終演に使われるものです。とても美しいものです。カンボジアの影絵スパエク・トムにも通じるものを感じました。
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チベット仏教のような色使いも感じます。
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更にインドの細密画が続きます。「岩山に座す蛇使いの女」細密画はラーガマーラと呼ばれるそうです。
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「ラーダの髪を編むクリシュナ」青い肌のクリシュナが恋人ラーダの髪を編む場面です。風景には西洋画の技法が感じられます。他にもアジアの染色が展示されていました。染色はインド風の物が多くあまり興味は持てませんでした。中国の少数民族の刺繍なども展示されないだろうかと思いました。一番奥はミュージアムシアターで「アンコール遺跡バイヨン寺院 −尊顔の記憶−」が上映されていましたが時間が合わなくて断念。
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東洋館だけで3時間以上かかってしまいました。午後からは仕事なので梅の花を少し眺めて博物館を出ます。
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閉鎖中の表慶館の紅梅。
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法隆寺宝物館の方まで廻ってみます。
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満開の梅でしたが、やはり梅は咲初めが美しいですね。
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美しい建物なので早く展示が再開されると良いです。充実した半日が過ごせました。
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