2011/12/04 - 2011/12/10
19位(同エリア87件中)
ナーザさん
大船渡に一週間、出張することになった。出張を命じられたとき、ひとつ心に決めたことがあった。感情を制御することだ。現地へ赴けば、さまざまな感情が喚起され、それによって自分が苦しめられることが予想された。思考を働かせないことが最良だと、自分自身に言い聞かせた。
はたして、目標は順調に遂行された。すぐに日常に溶け込んだ。旅館で食べ、入浴し、寝て、職場で仕事をこなした。考えることは何ひとつなかった。しかし…。
大船渡最後の夜は、すぐに寝つけなかった。さまざまな出来事が思い起こされた。今まで押さえつけてきた感情が、一気に堰を切ったように溢れてきた。
最も記憶を鮮明にしたのは、夜にジョギングをしていたときのことだ。不謹慎とは思いながらも、電灯のほとんどない夜道へ飛び出した。太平洋セメントの工場を越え、奥へ奥へと分け行った。途中で車両通行止めの道があり、そこを走っていた。突然、体ごと横転した。持っていた懐中電灯は投げ出され、手の届かない車道にまで達した。真っ暗闇の中、一瞬何が起きたのか分からなかった。通行止めのロープに足をすくわれたのだと理解するのに、しばらく時間を要した。そして心に刻まれた光景というのは、その時見上げた夜空にあった。
上空に白い筋が何本も浮かんでいる。雲が縦に尾を引くような形だ。どんな自然現象なのか分からなかったし、あるいは幸か不幸かの兆しかもしれなかった。美しくも見えたし、薄気味悪くも思えた。恩寵と怨念をないまぜにしたような不思議な光景だった。
宿に戻ると、右の膝小僧に、小さな擦り傷を負っているのに気付いた。傷口を見た途端、じんじんと痛みが襲ってきた。
- 同行者
- その他
- 交通手段
- 高速・路線バス 新幹線
PR
この旅行記のタグ
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
この旅行で行ったホテル
この旅行で行ったスポット
この旅行で行ったグルメ・レストラン
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
0
11