2011/07/03 - 2011/07/03
18位(同エリア1053件中)
旅猫さん
7月最初の日曜日。天気が良いのでふらりと出かけることにした。あれこれ悩んだ挙句、向かったのは伊豆下田。下田公園の紫陽花が、今年はまだ見頃だと言うので、行ってみることにしたのだ。しかし、着いてみれば夏本番の暑さで、紫陽花もかなりグッタリしていた。それでも、たくさんの紫陽花に出会えたので嬉しかった。
(2022.07.05投稿)
- 旅行の満足度
- 4.0
- 観光
- 4.0
- 交通
- 3.5
- 同行者
- 一人旅
- 一人あたり費用
- 1万円未満
- 交通手段
- 高速・路線バス JR特急 私鉄 徒歩
- 旅行の手配内容
- 個別手配
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東京駅を9時に出る特急『踊り子105号』に乗車。日曜日だと言うのに、車内は乗客も疎らであった。熱海、伊東と過ぎ、伊豆急行線へと入ると、車窓には海が見え始める。波打ち際を走る片瀬白田駅から伊豆稲取駅の間では、車窓一杯に大海原が広がる。晴れていれば伊豆七島を望むことが出来るのだが、天気は良いのに、大島が薄っすらと見えるだけであった。
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そして、終点の伊豆急下田駅には11時43分に到着。今年二度目の伊豆下田駅である。駅前から、12時10分発の東海バスの海中水族館行に乗り換え、下田公園を目指す。このバスに乗るのも、今年二度目である。終点まで乗る予定だったが、思い直して途中の了仙寺バス停で下車した。
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バス停からすぐの了仙寺に立ち寄る。了仙寺は、黒船で有名なペリー提督が、日米和親条約に基づき開港した下田へ入港後、条約に記載のなかった詳細な点を補う日米和親条約附則13ヶ条(日米下田条約)を締結した場所である。宝物館には、幕末の貴重な資料が収められているそうだが、今回は割愛した。
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境内には、アメリカジャスミンがたくさん植えられ、満開の時期はとても綺麗だそうだ。5月下旬が見頃だそうだが、まだちらほら咲いていた。
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了仙寺の脇には平滑川が流れている。ペリーが上陸した場所へと流れる川で、川沿いの道はペリーロードと呼ばれている。古い建物を利用した洒落た店などが軒を連ね、独特な情緒がある。観光客も多い界隈だ。幕末、ペリー艦隊の乗組員たちも歩いたであろうその道を、歴史に思いを馳せながら散策するのは良いものである。
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その道沿いに、重厚な海鼠壁の建物を利用したバーがあった。下田には、海鼠壁の建物が多く建てられていたが、今ではその数もかなり減ってきているそうだ。
SOULBAR TOSAYA グルメ・レストラン
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ペリーロード沿いの紫陽花は見ごろを過ぎていたが、古い建物と緑が織りなす風景は、季節を問わず趣ある風景を見せてくれる。
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のんびり散策しながらペリーロードの終点へと向かう。そこに突然現れたのは大砲であった。1829年製の30ポンドカロネード砲だそうだ。
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平滑川を渡ったところに、立派な海鼠壁の民家があった。大正4年に建てられた旧澤村邸で、現在は無料休憩所として解放されている。敷地内には、蔵ギャラリーも併設されていた。
旧澤村邸 名所・史跡
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すぐ近くに、下田公園へと続く階段があった。少し登ると蓮杖台と呼ばれる場所に出る。そこには、下田出身で、商業写真の草分け的存在であった下岡蓮杖を讃える大きな石碑と像があった。蓮杖とは変わった名だが、これは、彼が好んで使っていた蓮の杖から取った号だそうだ。寝姿山に、下岡蓮杖写真記念館があるのだが、いつか訪れてみようと思っている。
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下岡蓮杖翁乃碑のすぐ裏手が、紫陽花が咲く下田公園である。斜面は紫陽花で埋め尽くされ、見事な景観である。下田公園の紫陽花は、15万株300万輪と言う規模で、北側一帯を覆い尽くすように咲き乱れる。
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登り始めたが、遊歩道がどこにあるのか分からないほどである。どこを向いても、紫陽花だらけである。
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写真を撮りながらゆっくり登って行ったのだが、日曜日だと言うのに、結局、登り切るまでまで誰とも行き会わなかった。前の週まであじさい祭りが開催されていたのでかなり賑わっていたそうだが、1週間ずれただけで嘘のように静かである。
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ただ、さすがに盛りは過ぎていて、瑞々しさに欠ける花が多かったのが少し残念であった。それでも、まだまだ見頃の花も多かった。
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それにしても、これほどの紫陽花の群落は初めてである。かの有名な麻綿原高原ですら2万株20万本なので、この規模は桁違いである。
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遊歩道は整備されているが、紫陽花に囲まれて自然な感じである。鎌倉の長谷寺より、こちらのほうがかなり良い。
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まるで自生しているかのような自然な感じが良い。そもそもは、海岸沿いにガクアジサイが自生していただけであったが、市民や行政の活動に寄り、現在の規模にまで増えたそうである。
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適当に歩いていると、三つ鱗が付いた幟が立っている平坦な場所に出た。何と、ここが下田城の天守曲輪の跡だそうだ。曲輪のすぐ下には、鵜嶋城祉の碑が立っていた。鵜嶋城は、下田城の別称である。下田城が築かれた年代は不明のようだが、戦国時代には、後北条氏の支配下で、海賊衆の拠点であった。豊臣秀吉による小田原征伐に際し、清水康英が城将となり、兵600余りで籠城したが、圧倒的な豊臣軍の前に開城したそうである。
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下田城の痕跡は僅かしか残っていない。その中でも、後北条氏の城であったことを物語る遺構が、微かに残る空堀に見ることができる。畝掘と呼ばれるもので、空堀の中に、敵兵の障害となるような畝を築いたもので、盛り上がっている部分があるのが今でも分かる。
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紫陽花の咲く場所を少し離れると、がらりと様相が変わる。観光客とは無縁の風情が漂うが、志太ヶ浦展望台へと向かう道沿いでは、12月から3月頃まで、161種5000本の椿が見られるそうだ。次は、この季節に訪れてみたいものだ。
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しばらく歩いていくと、志太ヶ浦展望台に出た。下田城が天然の要害であったことが分かる眺めである。腰掛が設けられていたので、海を見ながらしばらく休憩する。海からの風が、暑さを少し和らげてくれた。
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眼下の海岸線に遊歩道が見えた。和歌の浦遊歩道である。地図を見ると、この先から下へと降りられるようだ。その遊歩道の先には、2月に訪れた下田海中水族館がある。次に訪れた時には、歩いてみようと思う。
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展望台の片隅にオカトラノオが咲いていた。もう終わりかけだったが、一株だけ綺麗な姿を見せてくれた。
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来た道を戻り、今度は別の展望台へと向かう。道の両側には、紫陽花がびっしりと咲いていた。
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ヤマアジサイやガクアジサイ系はやはり惹かれる。
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日本らしい繊細な美しさが魅力である。
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それにしても紫陽花の数が多い。見事な景色であるのに、人影が疎らなのが不思議なくらいである。
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遊歩道の途中から、下田の街が望めた。眼下に見える船溜まりは、海ではなく稲生沢川の河口である。下田は、稲生沢川の河口に開けた街である。
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ようやく、展望台に出た。お茶ヶ崎展望台を目指して歩いていたつもりだったが、どこかで道を間違え、馬場ヶ崎展望台へ来てしまった。そこから見えたのは下田港である。三方を陸に囲まれた天然の良港である。北側には、寝姿山が横たわる。山頂まではロープウェイで簡単に登れるのだが、今回はあまりの暑さに断念した。下田の街は、さらに左手になる。
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そろそろ戻ることにする。紫陽花の咲く遊歩道では、園芸品種だが趣のある七段花も観ることが出来た。元々は、神戸の六甲山の谷筋に自生していたものであるが、今ではどこででも観ることが出来る。
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装飾花が特徴的なウズアジサイも咲いている。
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さらに下りて行くと、薄っすら紅色のカシワバアジサイもあった。
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紫陽花は、種類が多いので名前が分からないものも多い。それでも、日本の紫陽花の改良品種が多いようだ。やはり、セイヨウアジサイより、日本の紫陽花のほうがやはり清楚な美しさがある。
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開国記念碑のある広場まで下りて来た。記念碑の前に広がる平坦な場所は、かつて下田城主清水康英の屋敷であった。今は何の痕跡も残っていない。広場では、ハマカンゾウが鮮やかに咲いていた。
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ペリーロードへ戻り、街歩きを始める。平滑川に架かる橋の赤い欄干が水面に映り込んでいる。
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長楽寺へと続く路地裏の階段は花に彩られていた。車の通らない道を歩くと、旅が俄然楽しくなる。特に細い道は、ワクワクしてくる。
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階段の上に出ると、ご当地マンホールがあった。その蓋には、思ったとおり黒船が描かれていた。
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辿り着いた長楽寺の本堂は修繕中であった。安政元年(1854)、ロシア使節プチャーチンと日本全権との交渉の結果、日露和親条約(日露通好条約)が締結された寺である。また、江戸時代、寺の梵鐘は時の鐘と呼ばれていたそうだ。
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長楽寺近くの街並みは、どこか南国の島を思い浮かべる風情がある。海鼠壁の塀が美しかった。幕末、アジアの国々が欧米列強に次々と植民地化されたにもかかわらず、独立国家として存在できたのは、幕府外国奉行の優秀さだけでは無く、日本人の優しさ、街や自然の美しさだったと云われるのは確かなことかもしれない。そんなことを考えさせる風景であった。
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平滑川沿いの道へ戻り、川沿いの道を歩く。川自体に風情は無いのだが、何となく情緒を感じる不思議な川である。
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平滑川沿いを離れて下田駅へと向かう。海鼠壁のお洒落な喫茶の近くで、欠乏所跡と言う石碑を見つけた。欠乏所とは、開港された下田に立ち寄った外国船に、不足しているものを供給するために設けられたものである。貿易が禁止されていた江戸時代だが、瀬戸物や反物なども売られていたため、実質的には貿易になってしまっていたそうだ。
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その欠乏所跡に建つ美しい海鼠壁の建物は、喫茶と食事の店『平野屋』。その建物は、欠乏所として江戸時代に利用されていたもので、下田最古の海鼠壁の建物だそうだ。店内は懐古調で、落ち着いた雰囲気の中で洋食が味わえる。
平野屋 グルメ・レストラン
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稲生沢川沿いの道から一本入った通りを歩く。この界隈には、そこかしこに海鼠壁の民家が建っていた。
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近くの明治20年(1887)から続く酒屋の土藤商店の蔵には、懐かしい琺瑯製の看板などが飾られていた。
土藤商店 名所・史跡
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瓦屋根の建物が多く、とても風情がある。
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海鼠壁と瓦も良く似合っている。
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稲生沢川に架かる新みなと橋からは、下田内港が見渡せた。川の河口を利用した港である。その奥に見えている森は、下田城跡である。その左手奥に下田港がある。穏やかで優しげな風景である。
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駅の近くまで戻って来ると、駐車場から猫がひょっこり現れた。旅先で出会うのは久しぶりである。見かけることは多くても、向き合うことは最近少ない。まだ若そうな風貌だが、目付きが鋭く、野性味がる。よく見ると、右足を怪我しているようだ。
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猫と別れた後、駅近くでかなり年季の入った消火栓を見つけた。函館でよく見かける黄色い消火栓を彷彿とさせる。形は違うが、最初に開港した港町同士の小さな縁か。
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古いものは、よく見ると味がある。時を重ねた風貌が美しさを生むのだ。
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伊豆急下田駅には、予定よりも1時間早くに到着。時間はあるが、暑さでこれ以上歩く気力が無い。そこで、土産物屋を物色。それでも時間が余ったので、結局、指定券を変更し、1時間早い列車で帰ることにした。乗車したのは、15時01分発の特急『踊り子116号』。車内は思いの外空いてたが、伊豆高原駅や伊東駅から多くの客が乗り込み、かなり混み合った。
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帰宅してから、下田駅で購入した富士山サイダーとしずおか茶コーラを飲んでみたが、しずおか茶コーラは、不思議な味わいであった。今回は、暑かったものの、たくさんの紫陽花を見ることができて嬉しかった。そして、いつか椿の咲く季節に、もう一度訪れてみたいものである。
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この旅行記へのコメント (4)
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- rupannさん 2014/07/19 19:49:03
- 伊豆の紫陽花♪
- カラフルでもこもこの紫陽花は気持ちが明るくなりますねぇ♪
旅猫さん、こんばんわぁ〜
ペリーロードの紫陽花と街灯とひし形模様の窓のショット
いい味わいですねぇ)^o^(
今年は紫陽花を見に行かずでしたけど
旅猫さんの旅行記で紫陽花を楽しませて頂きました〜おおきに(*^_^*)
明日は加賀温泉へ母と二人で温泉三昧してきます〜
なんとホテルの宿泊券が当たったんですよ〜
限りなくひたすらクリックしまくってたら〜ついにヽ(^。^)ノ
お天気怪しいけど〜ホテルステイなのでのんびりしてきます〜
by rupann♪
- 旅猫さん からの返信 2014/07/19 20:24:13
- RE: 伊豆の紫陽花♪
- rupannさん、こんばんは〜
いつもありがとうございます!
紫陽花は、大好きな花の一つです。
日本原産の植物と言うところもいいです。
ペリーロード界隈は、なかなか絵になっていいですよ。
特に、紫陽花が咲いている季節はお勧めです。
加賀温泉ですか。
どの温泉でしょうか?
山中と山代温泉は訪れたことがあるのですが。
宿泊券が当たるって羨ましいな〜
そういうのって、当たったことが無いんですよ。。。
天気が怪しいですが、のんびり楽しんできてください!
旅猫
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- shimahukurouさん 2011/07/27 23:15:12
- こんばんは〜
- え〜紫陽花独り占めじゃありませんか
しかもどこまでも続く紫陽花の道…
なんたる贅沢!!
関西の紫陽花の名所は人が多いみたいですが
こんなゆったりと紫陽花を見れたら心の洗濯もできそうですね
羨ましいかぎりです
shimahukurou
- 旅猫さん からの返信 2011/07/30 08:20:23
- RE: こんばんは〜
- shimahukurouさん、こんにちは。
書き込みありがとうございます。
訪れてびっくりしました。
伊豆下田の紫陽花は有名だと聞いていたのですが、
日曜日だというのにガラガラでした。
6月中はあじさい祭りが開催されて混んでいたようですが。
おかげで、ゆっくりと紫陽花を堪能することができました。
日本最大級とあって、見応えも十分でしたよ。
ちょっと盛りは過ぎていましたが、それでも素晴らしかったです。
今年は、有名な箱根の紫陽花もそれほど混雑しなかったそうです。
関西の名所ってどんなところがあるのでしょう?
旅猫
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