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 03月15日。ダイヤの乱れで超満員の電車を長時間乗り継ぎ、やっとの思いで辿り着いた事務所で俺を待っていたのは訪日旅行キャンセルの嵐。平常心を装いながらメール処理に没頭しようとするが、頭は福島第一原発事故で一杯。水素爆発、放射線被爆、諸外国大使館の東京からの撤退、コンビニから消えていく水、カップ麺、……。震災時、海外ニュースでよく見かける暴動や略奪はなかったものの、「静かなるパニック」は東京を確かに呑み込んでいた。しかし、俺の周りにいた人たちは冷静さを保ち、懸命に仕事をこなし、自分よりも被災者を思いやる。この素晴らしい環境は「大丈夫、すべての問題はきっと解決される。慌てふためく必要はない」とささやいているようであった。そして数日も経たないうちに電車が普通に動き始め、水や日常生活用品がコンビニの棚に舞い戻った。「静かなるパニック」はほんの一瞬で立ち去った。<br /><br />■「ストップ・パニック」グループの誕生<br /><br /> こんな経験は自分だけでなく、日本に住んでいる多くのロシア人も同様にしていた。そしてこの経験を生かして、情報交換の場・助け合いの場として誕生したのが、フェイスブックをベースにした「ストップ・パニック」グループだ。<br /><br /> 震災後、ロシア人に限らず、多くの在日外国人が真っ先に受けたのは、本国の肉親や友達からの強力なプレッシャーだった。ロシアに限っていうと、マスコミの報道は尋常なものではなかった。大衆向けの新聞や雑誌はあることないことを書きたて、キー局ですら事実無根の報道を連発していた。「放射線の雲で東京はゴーストタウンに化す」、「東京で計画的避難が開始」など、目や耳を疑うような「ホットな」ニュースが飛び交っていた。仙台市内の地震発生時の映像に「東京は崩壊寸前」のコメントを乗せた「情報」が連日流されると、実態を知らない肉親や友たちはすかさず電話やメール攻撃を始める。「今すぐ逃げろ」、「帰ってこないと勘当だ」。あるロシア人女性の場合、娘を帰国させるために重い病を装うといった「奥の手」を使った母親までいた。<br /><br /> いくら「大丈夫だ」と言っても「じゃ?、その根拠を示せ。政府はどうせウソの発表しかしないんだ」と跳ね返ってくる。長年に渡って自国の政府に騙されてきたロシア人は「世界中の政府はどこもウソツキだ」と信じ込んでしまっているから、なんともやるせない。

フェイスブックで広がる支援の輪 ?在日ロシア人グループ「ストップ・パニック」の活動

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2011/06/04 - 2011/06/04

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JIC旅行センター

JIC旅行センターさん

 03月15日。ダイヤの乱れで超満員の電車を長時間乗り継ぎ、やっとの思いで辿り着いた事務所で俺を待っていたのは訪日旅行キャンセルの嵐。平常心を装いながらメール処理に没頭しようとするが、頭は福島第一原発事故で一杯。水素爆発、放射線被爆、諸外国大使館の東京からの撤退、コンビニから消えていく水、カップ麺、……。震災時、海外ニュースでよく見かける暴動や略奪はなかったものの、「静かなるパニック」は東京を確かに呑み込んでいた。しかし、俺の周りにいた人たちは冷静さを保ち、懸命に仕事をこなし、自分よりも被災者を思いやる。この素晴らしい環境は「大丈夫、すべての問題はきっと解決される。慌てふためく必要はない」とささやいているようであった。そして数日も経たないうちに電車が普通に動き始め、水や日常生活用品がコンビニの棚に舞い戻った。「静かなるパニック」はほんの一瞬で立ち去った。

■「ストップ・パニック」グループの誕生

 こんな経験は自分だけでなく、日本に住んでいる多くのロシア人も同様にしていた。そしてこの経験を生かして、情報交換の場・助け合いの場として誕生したのが、フェイスブックをベースにした「ストップ・パニック」グループだ。

 震災後、ロシア人に限らず、多くの在日外国人が真っ先に受けたのは、本国の肉親や友達からの強力なプレッシャーだった。ロシアに限っていうと、マスコミの報道は尋常なものではなかった。大衆向けの新聞や雑誌はあることないことを書きたて、キー局ですら事実無根の報道を連発していた。「放射線の雲で東京はゴーストタウンに化す」、「東京で計画的避難が開始」など、目や耳を疑うような「ホットな」ニュースが飛び交っていた。仙台市内の地震発生時の映像に「東京は崩壊寸前」のコメントを乗せた「情報」が連日流されると、実態を知らない肉親や友たちはすかさず電話やメール攻撃を始める。「今すぐ逃げろ」、「帰ってこないと勘当だ」。あるロシア人女性の場合、娘を帰国させるために重い病を装うといった「奥の手」を使った母親までいた。

 いくら「大丈夫だ」と言っても「じゃ?、その根拠を示せ。政府はどうせウソの発表しかしないんだ」と跳ね返ってくる。長年に渡って自国の政府に騙されてきたロシア人は「世界中の政府はどこもウソツキだ」と信じ込んでしまっているから、なんともやるせない。

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  • ■正確な情報を求めて1000名以上が集まる<br /><br /> フェイスブックの「ストップ・パニック」グループに集まったのは、外からの圧力をかわしきれず、正確な情報を求めていたロシア人やその他の外国人だった。すぐに帰国すべきなのか、原発事故は今どうなっているのか、放射線は一体どういうものなのか、空気、食材、水は安全なのか。みんなで寄せ集めた情報を日本政府の公式発表や東京電力と原子力安全保安院の記者会見の内容、さらにIAEAのような国際機関の見解に照らし合わせながら、一つ一つの疑問に答えていく。<br /><br />当初、グループの役割はそのようなものだった。正確な情報に基づき、あらゆる懸念事項をできるだけ分かりやすく整理した「ドキュメント」と呼ばれるフェイスブック内のノートを100件以上作成し、それをグループの参加者に公開した。すると数十名の参加者はあっという間に1,000名以上に膨らんだ。<br /><br /> 数は力なり。<br /><br /> 数多くのロシア人はグループの情報を武器に肉親からの「防衛」に努めた。フェイスブックで発信した日本情報を英国BBCのロシア語放送が紹介してくれるなど、ロシア国内への正しい情報発信にも役立った。そして情報戦が収束に向かうと、次は「被災地の支援と募金活動」という大きなキーワードが浮かび上がった。<br /><br />■被災地でロシア料理の炊き出し、ミニコンサートも計画<br /><br /> 「ストップ・パニック」が主催した数回のチャリティー・イベントに沢山の人が集まり、その参加費すべては日本赤十字に振り込まれた。福島第一原発で、過酷な環境で、寝食を忘れ、必死に頑張っている東京電力の復旧作業員宛てに263名の署名を集め、激励の手紙も出した。これをきっかけにNHK首都圏ネットワークがグループの活動を取材し、放映してくれた。<br /><br /> フェイスブック内にある別の支援グループ「Support for victims of Japan Tsunami」の呼びかけに応じ、人道支援が十分に行き渡ってない石巻と南三陸の避難所あての食料品や日常生活品の調達に協力し、ロシア大使館まで動かし、2トン近くの物資を共同で06月04日に届けた。<br /><br /> そして06月末には、この二つのグループの参加者は再び被災地を訪れ、ロシア料理の炊き出しとミニ・コンサートを行う計画を立てている。<br /><br /> 外国人の枠を超え、現時点では日本人の参加者も増えている。グループ内の共通言語はロシア語がもちろんだが、日本語も英語も問題ない。<br /><br /> グループの活動に興味のある方は、フェイスブックに登録の上、「STOP PANIC」と検索してみてください。あなたが出した支援のアイディア、呼びかけが1,000人の参加者を動かすかもしれない!

    ■正確な情報を求めて1000名以上が集まる

     フェイスブックの「ストップ・パニック」グループに集まったのは、外からの圧力をかわしきれず、正確な情報を求めていたロシア人やその他の外国人だった。すぐに帰国すべきなのか、原発事故は今どうなっているのか、放射線は一体どういうものなのか、空気、食材、水は安全なのか。みんなで寄せ集めた情報を日本政府の公式発表や東京電力と原子力安全保安院の記者会見の内容、さらにIAEAのような国際機関の見解に照らし合わせながら、一つ一つの疑問に答えていく。

    当初、グループの役割はそのようなものだった。正確な情報に基づき、あらゆる懸念事項をできるだけ分かりやすく整理した「ドキュメント」と呼ばれるフェイスブック内のノートを100件以上作成し、それをグループの参加者に公開した。すると数十名の参加者はあっという間に1,000名以上に膨らんだ。

     数は力なり。

     数多くのロシア人はグループの情報を武器に肉親からの「防衛」に努めた。フェイスブックで発信した日本情報を英国BBCのロシア語放送が紹介してくれるなど、ロシア国内への正しい情報発信にも役立った。そして情報戦が収束に向かうと、次は「被災地の支援と募金活動」という大きなキーワードが浮かび上がった。

    ■被災地でロシア料理の炊き出し、ミニコンサートも計画

     「ストップ・パニック」が主催した数回のチャリティー・イベントに沢山の人が集まり、その参加費すべては日本赤十字に振り込まれた。福島第一原発で、過酷な環境で、寝食を忘れ、必死に頑張っている東京電力の復旧作業員宛てに263名の署名を集め、激励の手紙も出した。これをきっかけにNHK首都圏ネットワークがグループの活動を取材し、放映してくれた。

     フェイスブック内にある別の支援グループ「Support for victims of Japan Tsunami」の呼びかけに応じ、人道支援が十分に行き渡ってない石巻と南三陸の避難所あての食料品や日常生活品の調達に協力し、ロシア大使館まで動かし、2トン近くの物資を共同で06月04日に届けた。

     そして06月末には、この二つのグループの参加者は再び被災地を訪れ、ロシア料理の炊き出しとミニ・コンサートを行う計画を立てている。

     外国人の枠を超え、現時点では日本人の参加者も増えている。グループ内の共通言語はロシア語がもちろんだが、日本語も英語も問題ない。

     グループの活動に興味のある方は、フェイスブックに登録の上、「STOP PANIC」と検索してみてください。あなたが出した支援のアイディア、呼びかけが1,000人の参加者を動かすかもしれない!

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