晩冬の世田谷美術館を訪ねて

2010/02/12 - 2010/02/12

ぶらりと世田谷美術館を訪ねてみました。ちょうど「内井昭蔵の思想と建築ー自然の秩序と建築に」展が開催中で、偶然にも世田谷美術館を設計した建築家・内井昭蔵に関する展覧会を見ることができました。

内井昭蔵の家系は３代続いた建築家一家で、祖父は北海道函館にあるハリスト正教会を建てた建築家で知られた人物です。父親も東京お茶の水にあるニコライ堂を建てた建築家です。昭蔵自身も全国各地に作品を残しており、学校、教会、公共施設、個人住宅など幅広い仕事振りを見ることができます。この展覧会では、これらの作品を写真や資料、模型等で展示されています。

展覧会では写真は撮れませんので、世田谷美術館の内部と外の様子を撮り、内井昭蔵が設計した、この美術館の建物の素晴らしさを紹介したいと思います。

エリア 三軒茶屋・駒沢(東京)

世田谷美術館は広大な砧公園の一角にありながら、交通の便があまり良くないため訪れる人はそんなに多くありません。

今回の企画展はパンフレットを見てあるのは知っていましたが、特に見たいとは思っていませんでした。しかし、偶然来てみると、地味ながらとてもよい展覧会で、十分堪能することができました。

公園の背の高い木々に埋まるようにして建っている世田谷美術館は、自然環境を十分生かした、すぐれた建築デザインを有しています。

美術館は1985年に竣工し、翌年開館しました。その後優れた建築美を理由に、毎日芸術賞と日本芸術院賞を受賞しました。

これは美術館全体の建物の様子です。右側の建物が入口となっています。左側に渡り廊下のようなものが２つ見えますが、これらは展覧会場へ行くものとレストランへ行くものとの２つあります。

世田谷美術館は環境面だけでなく、ここを訪れる人々に対しても様々なところで行きとどいた配慮をうかがうことができます。例えば、この写真のように外にはベンチが置かれていて、また館内にはいたるところにソフアが置かれています。

館内に入ってみましょう。ここは美術館のエントランス・ホールです。

先ずは、この通路を通って展覧会会場へ向かいます。展覧会はじゅっくり２時間ほど見ました。

一方こちらはレストランへ向かう通路で、右側の壁一面にタピストリーが施され、その前にはソファが置かれて、とても気持ちの良い空間です。

前の写真とは逆の方向から撮ってみました。通路の右側はガラスが一面に張られていて、冬の太陽の光がいっぱに入り、大変気持ちいいです。

「ル・ジャルダン」というフレンチ・ レストランの入口です。今回は利用しませんでしたが、値段の割にはかなり本格的なレストランのようです。

館内通路も設計者のこだわりのようなものを感じます。

1階と2階を結ぶ階段です。自然の採光を存分に取り入れた天井の照明や階段のフォルムが独特で、建築家の意気込みを感じることができます。

本館と展示会場を結ぶ渡り廊下です。

美術館を囲むようにして、「サンクス・ガーデン」というちょっとした空間があります。飲み物を飲んだり、食事をしたりすることもできます。

こちらもサンクス・ガーデンの一部です。

美術館の各所に正三角形の「バーゴラ」を見ることができます。このモチーフが世田谷美術館を特徴づけているのではないでしょうか。

美術館の外には様々な野外アートが置かれていて、これらの作品を見るのも楽しいです、

美術館の背後に大きなビルが見えますが、これは世田谷市場で、また右側に見える大きな煙突は世田谷清掃工場のものです。どちらも美術館の景観を大変損なっているように思えますが、如何でしょうか。

美術館を後にして、しばし砧公園内を散策してみました。大半の木々は冬の間にすっかりその葉を落としてしまいましたが、再び春を迎えるために少しずっ芽吹き始めています。

冬の太陽が降り注ぐ中を散策するのは気持ちがいいものです。特に、美術館で至福の時を過ごした後は、ゆったりとした気分で、今見てきたものを反芻しながら歩きまわりました。

冬の陽だまりのなかを犬を連れて散歩する人々がいました。犬もこんな温かい日差しのなかを歩きまわるのは楽しいでしょうね。

公園の一角では一人の青年がボンゴを夢中で練習しています。しばらく聞いていましたが、彼の叩く音を耳に残しながら、公園を後にし、帰路に就きました。