ギリシャ内陸部周遊の旅（5）ペロポネソス半島南端の空中遺跡モネンヴァシア。真夜中の雷鳴に浮かぶ姿は幻想的だった。

1998/11/12 - 1998/11/28

一度アテネに戻って今度はペロポネソス半島を南下する旅です。空港のバス停で「素晴らしいから絶対に行った方が良い。」と教えてもらったモネンヴァシアとミストラを２泊３日で廻りました。アテネ出発の朝は物凄い豪雨で、バスターミナルの横の坂は川と言うよりも滝のようでした。普段は感じませんが、表面に見えるよりは下水などのインフラ整備は遅れているようです。トイレも紙は流せないですしね。そのうちバスターミナルは停電になりバスも遅れてやってきました。さあモネンヴァシアまで350キロ、約６時間の長丁場です。コリントスまでは美しい海岸線を左手に眺めながら進みます。ドライブインでもトイレ休憩があり、有名なコリントス運河を見ることも出来ました。残念ながら船は通りませんでした。スパルタでバスを乗り換え更に半島を南下します。車窓の風景は昨日のデルフィのような山々を越えて行きます。谷間には植物が多く、延々と続くオリーブや蜜柑畑が見られます。峠に差し掛かると霧がかかり幻想的な風景です。恐ろしかったのは峠のガケ道を運転しながら教会を見つけるたびに両手放しで正教の十字を胸で切る運転手でした。他の乗客も同じように十字を切ります。万が一ここでバスの事故にあっても自分だけ天国にいけないような脅迫観に囚われ真似をして十字を切ったのは言うまでもありません。

エリア モネンヴァシア(ギリシャ)

• 旅行の満足度: 4.5
• 観光: 4.5
• ホテル: 3.5
• グルメ: 4.0
• ショッピング: 3.0
• 交通: 3.0

• 同行者: 一人旅
• 一人あたり費用: 25万円 - 30万円
• 交通手段: 高速・路線バス
• 航空会社: アエロフロート・ロシア航空
• 旅行の手配内容: 個別手配

モネンヴァシアでのホテルは橋の袂のおじいさんとおばあさんの経営する小さいホテルにしました。ここ数日は誰も泊まっていないようでした。部屋に通されて窓を開けるとビックリ。絶景が現れました。夜半過ぎから物凄い雷鳴が響きます。窓を開けると真っ暗闇が昼間のように明るくなり雷鳴が轟きます。あまりの美しさに時間が過ぎるのも忘れて眺めていました。この時のことを思い出すとこの時に聞いていたヴァンゲリスのエルグレコの曲も思い出します。
この写真は午前2時頃です。ただの夕方の写真のようにしか見えないのが残念です。

翌日は素晴らしい快晴でした。ホテルのおばあさんに荷物を預かってもらい半島へ渡ります。

半島の反対側に小さな集落があります。朝一番だったせいか観光客の姿は全くありません。

そして急な石段を登っていくと信じられない光景が広がります。

石段を登る途中に下を見下ろすと集落が見えます。

登りきった上には古い街の遺跡がありました。そして一面にクロッカスのような花が咲き乱れています。薄い紫と黄色い花で地面が多い尽くされています。

見渡す限りの海と空中に浮いたような草原と遺跡を見ていると今度は「天空の城ラピュタ」を思い出しました。そしてこの広大な台地に人は３人しかいませんでした。上の遺跡で若いカップルに出会いました。男の子の方が「こんにちわ。」と挨拶したので、「こんにちわ。」と返してから気付きました。何で日本語？彼は流暢な大阪弁で続けます。「若乃花の調子はどうですか？相撲が大好きなんです。」大学生の彼は大阪に2年間住んでいたオージーでした。彼らを見掛けたのはここが初めてでは無く、スパルタからのバスでも前の晩のレストランでも見掛けていたのでした。多分彼らも気がついていたのだと思います。

若乃花の最近の成績とこの年の阪神タイガースの成績など覚えている限り伝えました。ほんのひと時でしたが不思議な時間でした。

その後誰にも会わない時間が続きました。
下の町に摸協会があったのでここへは訪れないのでしょうか？形が残っている分無残な感じがします。

1時間半ほど山の上を歩き回りましたが、景色の先には広大な海が広がるという不思議な所でした。

昔はレパントのジブラルタルと呼ばれた時代もあったそうです。地形からも軍事的な要所でもあったのでしょう。天然の要塞も今は物寂しさの残る小さな漁村です。

ペロポネソス半島の最南端、来るかどうか迷っていたけれど来て良かったと思います。今でもこの時の雷鳴に浮かぶ半島の美しさと上の廃墟の町から見た海の景色は忘れられません。