2005/07 - 2005/07
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kanai jic tokyoさん
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「二槽式洗濯機の脱水槽で洗濯物がからまりつつ強制終了した」かのような音と振動でサハリンに着陸したウラジオストク航空XF371便。機内に大きな拍手とささやかな歓声が響く。2005年7月下旬。サハリン縦断の起点、ユジノサハリンスク空港に到着した。車と排気ガスの町、ウラジオストクから飛んできたせいか夜の町が穏やかで気持ちが好い。
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ユジノサハリンスクは小さい町なのだが結構見る所がある。まず気になるのが「郷土誌博物館」。建物は日本の城のようで、入口の狛犬が「阿」と口をあけ「吽」と閉じる。庭にはソメイヨシノ。北緯50度国境の石が展示されている。狛犬は樺太の時代に神社にいたものだ。ガガーリン公園ではガガーリンが宇宙服を着て両手を広げ、チビっ子がロバに乗り、熊が魚を担ぐ。山の展望台に登って空気を吸い、町を見下ろす。目一杯ユジノサハリンスクを見てまわり、列車の出発時刻に間に合わせる。18時55分。1番列車、北上せよ。
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山、木、道路、草、海。広くて静かな景色が通り過ぎる。コンパートメントの同居人は鉄道会社に勤めるヴィクトル。大陸の線路幅が何ミリでサハリンは何ミリだとか、SLがサハリンに何台あるだとか、うれしそうに説明してくれる。
しばらくして「海の近く」という名の駅に着いた。ここの停車時間は10分。
「この駅にはカニ売りが出ている。ロシア語で『Р』の付く月はカニの身が詰まっているんだよ」
と話してくれるヴィクトルと一緒に、列車を降りて線路の上を歩く。車両ごとにいる車掌がみなヴィクトルに挨拶をする。この人は少しエライ人なのだろうか、、、。発車時刻に間に合うよう走って戻る人の手には、カニが5匹ほど入ったビニール袋や木いちごが盛られたコップ。一匹100〜400ルーブルのカニの山積みは残り2匹というところで発車時刻ギリギリだ。北上を続けよう。
シベリア鉄道に比べて線路幅が狭いのと、曲がったり傾いたりして走るのとで、列車はよく揺れる。深い眠りにつくことができないサハリン鉄道の夜。 -
一晩明けて到着した終点ノグリキ。小さい駅前にオハ行きのバスが待っている。乾いた空気と夏の陽射しと砂埃がシャツ一枚に気持ち好い。新しいノグリキ空港をひとまわりしてから中心部へ向かう。小さな市場、小さな教会、小さな動物園はホテル『クバン』。
町唯一の食堂にて猫と一緒にマカロニや鮭コロッケを食べ終えると、あとは歴史民俗学博物館へ行くくらいしかない。しかし、小さな町にある博物館の割には、船やスキー、服や靴など北方先住民族の生活についての展示が充実していて見応えじゅうぶんだった。館内案内をしてくれた人はその血を引いているのだろうか、とても懐かしい感じのする顔立ちをしていた。 -
町から少しだけ離れて小さな川に行く。釣り人が2人。対岸にも2人見える。手のひら大の魚が1匹だけ釣れていた。川面に反射する太陽と水着姿の子どもたちとの間で遊んでいると、列車の時刻が近づいてきてしまった。
南下する列車は不思議と揺れを感じない。夜はよく眠れた気がした。往きで一度見ているはずなのに、朝の涼しい自然は新鮮に透き通る。
まる2日も離れていないユジノサハリンスクの町だったが、既に懐かしさと安心を感じた。が、すぐに車でホルムスクへ向かう。
いくつもの小高い丘(ホルム)を背にした港町に着くまで1時間以上かかった。小さな港のターミナルで、ヴァニノへ向かうフェリー出航時刻の掲示を見ると胸が躍り、大陸への旅を夢見てしまう。そして突然、海が見たくなっていた。今、港から見ているのは紛れもなく海なのに。サハリンが海に囲まれていることに初めて気付いたような気持ちで。
ドライバーに「海が見たい」と言うとアニワ湾へ連れて行ってくれた。がらんとした砂浜と静かな海。そしてその海のずっと向こうには北海道があるはずだ。海水に足を浸す。泳ぐには少し寒い気がしたのだが、ちらほらと水着で泳ぐ人がいる。サハリンの小さな夏のかけらを拾って、アニワ湾を後にした。 -
帰り道。サハリンの道路はまっすぐ続き、上下にうねるだけで信号が無く、飛ばしたくなる気持ちは分かるのだがスピード違反で捕まった時はさすがにドキドキした。日本人が乗っているためにさらにトラブルが起きるような気がしたからだ。
実際はパスポート提示も求められず、ドライバーが罰金を払って終わったのだが、次の日もスピード違反で捕まり再び20km未満オーバーの50ルーブル。連日で合計100ルーブルの罰金。少額だから懲りないんじゃないのか。 -
動きっぱなし、走りっぱなしのサハリン最終日。「トゥナイチャ湖」という静かな自然に寄った。湖は透き通っていて、たくさんの魚が泳いでいくのが見える。そんな穏やかな水からそれほど遠くない所に「オホーツコエ」という土地はある。そこは、小学校の時から名前だけ頭に入っている「オホーツク」という海を実感させてくれる場所だった。
今、目の前にある波の高い荒い海、強い風が吹いてくる海、これがオホーツク海なのだということ。今、地図でしか知らなかったオホーツク海の向こう側にいるのだということ。そして、日本から見えるそれと同じ海を見ているのに、確実に異国にいるということ。看板の「OXOTCKOE」という文字が鋭く頭に切り込んできて、ほんの少しだけ自分の地図を広くした。
「次はオホーツク海のどちら側へ旅立ってみようか」
その小さくて淡い世界地図を、遠ざかるサハリンの空で再び思い描く。
http://www.jic-web.co.jp/study/jclub/info.html
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