2002/04 - 2002/04
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あるぱかちゃんさん
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マサルは僕に言った。「インド人もびっくりだよ」実はこの男、正真正銘インド人である。マサルという名は日本人につけてもらったそうで、こうしたジャパニーズネームをもつ者に時々出会う。たいてい道端で声をかけてきては土産物を売るためにしつこくつきまとう。ただ、そんな彼らは商売のためだけに日本語を覚えたのではなく、日本人が結構好きな様である。もちろん金持ちの人種からたっぷり巻き上げようという魂胆で言葉を覚える輩も多いのだが。敵か見方か自分の勘に頼るしかない。
サービスのつもりなのか通りすがりにいきなり「ガチョーン」、「コマネチ」、「だっちゅうの」、「カトちゃんペ」と日本の往年のギャグを連発し、こっちの顔を自信たっぷりに覗き込む連中には辟易してしまう。「お前らこれが好きなんだろう、えっ、面白くって仕方ないんだろう」という勢いだから無視するのは酷すぎる。一体誰が教えた込んだのか全く迷惑な話である。旅の情緒もへったくれもない。思わず超最新の流行ギャグを教えてしまいそうになるが危ない、危ない、これがいかんのだ。
卑猥な日本語もたくさん知っている。柄の悪そうなガキが通りすがりにそんな単語をひとつ、ふたつ投げかけてきて、憎たらしい笑みを浮かべて走り去っていく。何を言ったかは書かずとも聡明な皆様のことだからきっと御理解いただけたかと思う。庶民だけでなくミドルクラスの知識人や金持ちも、英語を使って必ずその手の話を持ち出す。彼らは妙に周りを気にしてひっそり陰湿にじめじめと質問攻めを始める。これもお国柄。下品、お下劣、淫度人というなかれ。日本とて、一般市民が知り合ったばかりの外国人にそんな話題を出すことはなくとも、歌舞伎町を考えただけで大きなことは言えない。ヌード姿の女の乳首に☆マークをあしらったビラをいきなり外国人にニヤニヤ突き付けていないことを祈る。
そんな折不覚にも僕も品行性を疑われるヒンドゥー語を強制レクチャーされた。「デリーマギチョド」と「デリーバハンギチョド」だ。意味は「お前のお袋とお前の友達がやった」、「お前の姉さんとお前の友達がやった」というまさに姉妹品のような二点。しばらく使うのをためらっていたが、インド人の喜ぶ顔が目に浮かび、自分も知らず知らず笑いを浮かべていることに気付く。したたかな僕はちょっとした悪戯を思いつく。「こんな言葉を教わったのだが、意味は教えてくれない。一体どういう意味だ?」と素知らぬふりで切り出すと、「お前、そりゃこういうことだ、わっはっはは」と大笑い、そこで僕は熱いチャイ(甘いミルクティー)をこぼしながら恥じらうように顔を赤らめる。ますます相手は嬉しがる。良く考えればたちの悪いかまととだが、スキンシップ効果抜群である。ただし調子にのって乱用すると、インド人もびっくり呆れるので御注意を。
※注 この旅は2002年のため、ギャグは古い。最近では「そんなの関係ねえ」とか「どんだけー」とかもはやっているのではと予想される…
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