2009/07/15 - 2009/07/15
63位(同エリア105件中)
まみさん
2009/07/15水 リヴィブ近郊城めぐり(現地英語ガイド&車付)
・オレスク城(Olesk)
・ピドゴレツク城(Pidgoretsk)(まだ修復中)と付属教会
・ゾロチフ城(Zolochiv)
リヴィブに戻ってガイドと別れた後
・アルメニア教会
【二等寝台泊:リヴィブからコロミーヤまで】
リヴィブ近郊の「黄金の蹄鉄」(Golden Horse She)と呼ばれる古城が残る一帯の城めぐりの一日。
ガイドとドライバーを一日雇ってやって来た2番目のピドゴレツク城(*)は、まさかまだ中が公開できるほど修復が進んでいないとは思いもしませんでした。
私の常識では、城観光といえば、中の見学は必須であって、廃墟を見に行くことではありませんでした。
でも考えてみたら、今まで観光客に公開されていた城の内部は、たいていは長い歴史の中のごく一時の姿です。
一度は廃墟となって復元された城は、乱暴な言い方をしてしまえばレプリカといえますし、往時を偲ばせるために整えられた家具などは、それっぽさを演出するためのもので、城と直接関係ない、ということはよくありました。
また、城の歴史に関わる貴重なコレクションがあるものの、外観の華麗さに比べると、あまりにそっけない展示で、ミーハーな私はひそかにがっかりしたことがないわけでもないです。
もちろん、ずっとオーナーがいて、最盛期の内装のまま保存された幸福な城もありましたが、逆にそのため、その姿は長い城の歴史の当初からのもののはずがありません。
それにオーナーがそろえた城の調度品は、はじめから城のために注文したものでない限り、城と直接関係あると厳密には言えないでしょう。
もっともそうやって集められた調度品も、オーナー自身と共に、城の歴史の一部になっていくわけですけど。
なので、城見学だからといって内部にこだわる必要はないわけです。
───ということで、自分を納得させることにしました。
公開されていないのですもの、仕方がありません。
それに、まだまだ廃墟同然でしたが、往時の姿を取り戻そうと、修復が進んでいる様子は確かに見られました。
資金不足のせいで、決してはかばかしくないようですが。
ここを舞台に映画が作られたり、中世フェスティバルのようなものが開催されたりすることもあるようです。
写真は撮り損ねたのですが、ゲートにフェスティバルの宣伝ポスターが貼ってありました。
それに何より、現地ガイドがついています。
ガイドのダイアナは、この城の修復活動のための財団があり、ウクライナの著名人がたくさん名前を連ねていることを教えてくれました。
そして、ここが往時はいかにすばらしい城であったか、当時のスケッチ画が掲載されたパンフレットで解説してくれました。
17世紀末、ポーランド・リトアニア連合王国の王ヤン・ソビエツキ3世(在位1674〜1696)の息子がオーナーだったとき、息子は両親を城に招待しましたが、そのとき王の従者の一人が豪華な城の内外を詳しくスケッチしたものが残っているのです。
今は草茫々の野っ原が、当時どんなに美しく、手入れが行き届いた庭園であったか、今ではその貴重な証拠資料となっています。
見学が終わってリヴィブに戻った後に、そのパンフレットのスケッチ画の写真を撮らせてもらいました。
第一次大戦中、城はロシア軍に占拠されましたが、あまりに美しい城だったため、破壊は免れたそうです。もっとも中にあるものは略奪していってしまいました。
オーストリア・ハンガリー軍本部に利用されたとき、最前線にあったため撤退するときには破壊されるところでしたが、時の将軍は城を惜しんで破壊をやめたそうです。
───ダイアナが、敵がこの城を標的にしようとしたとき、あまりに美しい城だから破壊してしまうのに惜しいということで取りやめた、というエピソードを話してくれましたが、このあたりのことかな。
説明を聞いていたときは、初めて聞くことばかりでしたので、そういうことがあったという内容だけ漠然と覚えていられたのですが、肝心の具体的な関係者のところは薄れてしまったものですから。
いずれにせよ、城がすっかり荒廃したのは第一次・二次世界大戦中のソ連軍による略奪と、その後のソ連時代での扱いのせいのようです。
でも、ヤン・ソビエツキ3世が滞在した往時の姿は、残されたスケッチと、これまでに訪れることができた、きれいに修復された城見学の記憶をよすがに、目の前の廃墟を眺めながら、私でも華やかなりし城内部や庭園を想像することができました。
これはもう城見学というより、遺跡見学に近いかもしれません。
あれほどの宮殿や庭園が第二次大戦前のごく近代まで確かに存在していたのに、庭はもうその面影は全くありません。
庭園は、かつては美しい彫刻だった、今や遺跡のような石柱がいくつか残っている以外は、何もありません。草茫々で木が散在する自然林か、古戦場跡か何かのようです。
人類による生態系や自然破壊の爪跡は大きいけれど、その反面、文化遺産として残したい貴重な建築物が地上に残せる爪跡は、自然の前になんとはかないことよ、と改めて思い知らされました。
*ピドゴレツクはたぶんロシア語読み。現地旅行会社の担当者による英語スペルにそったカタカナ表記です。
調べてみたところ、ウクライナ語ではPidhirtsi(ピドヒルツィ)で、ポーランド語ではPodhorce(ポドホルス)とありました。
※2009年ウクライナ旅行の旅程一覧はこちら。
簡易版「2009年ウクライナ旅行プロローグ(旅程一覧)地図付」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10359084/
詳細版「2009年ウクライナ旅行の詳細旅程」(もう1つのブログ「まみ’s Travel Diary」より)
http://mami1.cocolog-nifty.com/travel_diary1/2009/07/2009-2271.html
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ピドゴレツク城付属の教会だった、今は村のギリシャ・カトリック教会
ぼろそうに見えますが、ちゃんと現役の教会です。帰りに見学しました。
中は小さなイコンや信者が寄贈したと思われる刺繍の布などで、アットホームに飾られていました。 -
ピドゴレツク城へ
見学し終えて戻ってくる人たちの中に尼僧がいます@ -
もと庭園の彫刻の一つ
草茫々の林が、かつてはきちんと手入れされた庭園だったことを示す数少ない証拠!? -
ピドゴレツク城
きれいに修復された部分を中心に撮りました。 -
城壁の見張り塔と、かつては堀だった緑のじゅうたん
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往時を偲ばせる美しい門
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往時を偲ばせる美しい門
こちら側は閉ざされているので、城壁をぐるっと回って元・中庭側の城の正面に回ります。
※ちなみに、ここでは他にもこんな写真を撮っています。
かつての堀にたくさんの白い花が咲いているところに注目したので、ウクライナ旅行記ハイライトの植物を集めた旅行記で紹介しています。
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/pict/16649883/
関連の旅行記
「2009年ウクライナ・ハイライトその2:ウクライナでも植物に注目(後編)」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10361800/
また、こんな花の写真も撮りました。とても気になった青い野花です。
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/pict/16649884/
関連の旅行記
「2009年ウクライナ・ハイライトその2:ウクライナでも植物に注目(後編)」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10361800/
帰国後に名前が判明しました。Geranium pratenseではないかと。
英語ではMeadow Crane's-billが通り名だそうです。
参考URL
http://www.floralimages.co.uk/pgeranprate.htm -
最盛期の城と庭園のあるスケッチ画
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中庭に面した城の正面の今の姿
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中庭に面したテラス
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いま、修復中
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こうしてみると、ほとんど廃屋
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兵どもが夢の跡
【7631】
かつてスケッチ画のような豪華な庭園があったなんて、信じられない……。
※ちなみに、ここでは他にもこんな写真を撮っています。
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/pict/16649885/
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/pict/16649886/
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/pict/16649892/
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/pict/16649893/
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/pict/16649894/
関連の旅行記
「2009年ウクライナ・ハイライトその2:ウクライナでも植物に注目(後編)」
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10361800/
城の写真はあまり撮影できなかった代わりに、いつもの花撮影への情熱がよみがえってしまいました。 -
庭園を飾っていた彫刻の一つ
つぼを支えるキューピットらしき面影がかすかに……。 -
教会へ
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教会の鐘
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重厚なバロック・スタイルの教会
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ここからはダイアナが持っている本から写真を撮らせてもらった、往時のピドゴレツク城のスケッチ画の写真で、まずは、絵画がたくさん展示されていたギャラリー・ルーム
城のそばの売店に同じ本が販売されていたのですが、ウクライナ語だけなので、ダイアナがあとで写真を撮らせてくれました。 -
豪華なシャンデリアと天井画と絵画コレクションがすばらしかったホール
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暖炉と天蓋つきのベッドがある近代スタイルのベッドルーム
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鏡の間
窓のように見えるのが鏡だと思います。
昔は大きな姿見の鏡はなかなか作られなくて、このように区切られていました。
奥にはストーブがあります。
また、部屋と部屋は廊下でつながっているのでなく、続いています。 -
かつて内装に豪華に金が使われていたと思われる、黄金の間
手前にストーブがあるから、暖炉は飾りかな。 -
ビリヤード・ルーム
ここにも絵画コレクションがたくさん!
扉の両脇のショーケースにはガラスのコレクションがあったように見えます。
ベネチアンガラスとか、ボヘミアンガラスとかかな。 -
オリエンタル・ルーム
きっと、シノワズリ(ヨーロッパ近代に流行した中国趣味)の影響を受けた調度品と、中国風な絵が描かれた壁紙がとても印象的な部屋だったろうと思います。 -
城内の礼拝堂
窓にはステンドグラスが施されていたでしょうか。 -
武器コレクション・ルーム
現地ガイドのダイアナのパンフレットから撮られてもらった写真は以上です。 -
「黄金の蹄鉄」の英語版パンフレットより、ピドゴレツク城のかつての様子が描かれた絵と現在の城門と俯瞰写真が載ったページ
<英語版ウィキペディアフリー百科事典から、城の略歴を抜粋・私訳>
http://en.wikipedia.org/wiki/Pidhirtsi_Castle
1635-1640年にポルトガル人ヘトマン(コサックの長)スタニスラフ・コニェツポルスキの命令により建築。彼はこの城を息抜きできる滞在地にしたかったが、場所柄、ウクライナ・コサックやタタール人の侵攻にさらされやすいところだった。だが、城はどの侵攻からも持ちこたえた。
1682年、城は、ヤコブ・ルドヴィク・ソビエツキに売却された。彼はオスマントルコとの戦いで勝利してポーランドの王に選挙されたヤン・ソビエツキ3世の息子。
1687年、ヤコブ・ルドヴック・ソビエツキは父のヤン・ソビエツキ3世とフランス人の母マリー・カジミール・ルイーズを城に招待する。そのときの王の従者が描いた城内外のスケッチが当時を偲ばせる貴重な資料として今に残る。
1725年、城は大ヘトマンのスタニスラフ・ルゼウスキーに売却される。彼の息子のワスラフ・ルゼウスキーはこの城を定住地とした。3階を増築し、城に教会や劇場も造らせた。
19世紀、ルゼウスキー一家はオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世を城に招待した。また、ここでポーランドの有名なロマンチック詩人ジュリウス・スウォワツキの父親が生まれた。
大戦中、破壊は免れたがソ連軍により略奪された。
第二次大戦後、ソ連のサナトリウムとして利用された。
1956年2月、3週間も続いた火災で焼失した。
1997年、リヴィブ美術館が買取り、博物館となった。
ウクライナ政府がソ連から独立したとき、この城を首相官邸にしようという計画もあったが実現ならず、城はリヴィブ美術館の所管となった。
ルゼウスキー一家が使用した品々の一部は、リヴィブ歴史博物館とリヴィブ美術館に収蔵されている。
「2009年ウクライナ旅行第11日目(3)リヴィブ近郊城めぐり:奇妙な日本風?中国風?庭園のあるゾロチフ城」につづく。
http://4travel.jp/traveler/traveler-mami/album/10419207/
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この旅行記へのコメント (2)
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- 哈桑湖さん 2011/10/09 11:22:36
- ピドゴレツク城というんですね
- まみ様 ピドゴレツク城というんですね。懐かしいです。
あと、このお城の詳しい歴史、有難うございました。またお写真も、素晴らしいですね。
- まみさん からの返信 2011/10/11 20:28:23
- RE: ピドゴレツク城というんですね
- 浦潮斯徳さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
浦潮斯徳さんもリヴィブ近郊の城めぐりをされていましたね。私の方こそ勉強になりました。
ウクライナには豊かな歴史遺産がたくさん眠っていますね。
ミーハーな私は修復が進むといいのに、ともったいなく思ってしまいます。
ウクライナを含む東欧の歴史はあまりに知らずにいたので、初めて知ることばかりでまだまだ混乱しそうになります。
と同時に、東欧を調べれば調べるほど歴史はどの側面をとらえるかによってがらっと変わるものだとしみじみ思うばかりです。
ここはLonely Planetにも紹介されていなくて、中は修復されていなくて見学できないところでしたが、事前の旅行手配をしてくれた現地代理店の人に教わって旅程に組み込んでよかったと思います。
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