2007/10/18 - 2007/10/18
88位(同エリア238件中)
唐辛子婆さん
パパスさんが書き込みをしてくださったおかげで
四半世紀以上も前の「インドネシア はじめて住んだ国」編
http://4travel.jp/traveler/tougarashibaba/album/10065957/が
まだ完成してなかったことを思い出しました。
旅行記の最後に掲載したワヤン(影絵芝居の人形)のことを
調べるつもりでそのままになっていたのです。
偶然にもそのワヤンの展覧会が東京で催されると知って
何というご縁かしらとでかけてきました。
ご縁といえば
アンドリュー・ワイエスというアメリカのテンペラ画家の展覧会でも
それを感じたことがあります。
若かりし独身のOL時代に近代美術館かどこかで見てすっかり惹かれてしまいました。
結婚後は夫の仕事の関係で開発途上の国々に住むようになり
もう一度見てみたい、という夢はかなわぬままだったのですが
札幌の義母が倒れて急遽帰国。
お見舞いを終えてでてきた病院の近くでなんと
ワイエス展をやっていたのです。
しかもチャールストン・ヘストンの詳しい解説ビデオつき。
懐かしさと嬉しさでしみじみと堪能しました。
今でもこれは亡くなった義母からのプレゼントだったのではないだろうか
という気がしています。
話がそれました。
このワヤン展はほとんどが「日本ワヤン協会」主宰の松本亮先生の所蔵される
人形類をいちどきに展示した日本でも貴重なものでした。
当日は先生のギャラリー・トークがあり珍しい、また有意義なお話を
うかがうことができました。
写真撮影とブログ掲載を気安く許可してくださり
真摯なお人柄に触れさせていただけて感激です。
写真撮影に便利なようにと腕章を貸してくださった
博物館の学芸員の方々にも感謝申し上げます。
表紙の素晴らしく優美な影絵人形ブトロ・グルは
先生の一番のお気に入りで、本邦初公開。
いたむと困るので日本での公演にも登場させないとか。
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インドネシアに住み、ガムラン音楽に陶酔し
王家に伝わる渋い色彩のバティック(ろうけつ染め)に
目を見張りすっかり伝統文化の美しさに
こころ奪われていた唐辛子婆。
しかし
ワヤンについては観光用のさわりを観ただけで
知識もロクになかったのでした。
帰国して松本亮氏の
「ジャワ夢幻日記」という本を読んでからです
本当に魅了されたのは。 -
ワヤンとは何でしょうか?
「一夜を徹して演じられ
見る者を夢幻世界に誘いこむジャワの影絵芝居は
インドネシアの国民芸能であり、常に今日性を失わぬ
不思議な生命をもつ卓抜な芸術である。」
松本亮著「ジャワ影絵芝居考」より。
先に影絵芝居の人形のことをワヤンと書きましたが
影絵芝居そのものをワヤンといいますし
トッペン(お面)をつけたお芝居も
影絵じゃない人形芝居も
紙に描かれた巻物芝居も
ワヤンという。
ということが今回のギャラリー・トークでわかりました。
ワヤンとは
「ダランがいるインドネシアの芸能の総称」と
いただいた解説書に書かれていました。 -
ではダランとは何でしょうか?
昔得た知識を
脳みその引き出しからひっぱりだしてみました。
・一晩中演じられる影絵芝居の人形遣いであり、語り手。
・語りと一体となって伴奏されるガムラン音楽の指揮者。
・人形の製作者←必ずしもそうではありません。
(松本先生より)
つまり総合プロデューサーってわけで。
その影絵芝居は
スポンサーがチャーターして上演されるので
近隣の人は無料で見物できるのです。
そして夜ふけて見物人が眠りこけても
上演はつづけられるのだそうです。
なぜならこれは神様にささげるものだから。
人間様はお相伴にあずかるだけ。
←バリのオダランの時のワヤンは
神様に捧げるものですが
ジャワのワヤンはそうではありません(松本先生より)
さて、松本亮氏のギャラリー・トークがはじまりました。
邪魔にならないようフラッシュなしで撮影しました。 -
ワヤン・ベベル
1000年前からの巻物のお芝居。
布地に模写してあります。
紙に描かれたホンモノはボロボロだそうです。 -
演目は「パンジ物語」
スカルタジ王女を探す旅にでたパンジ王子が
さまざまな妨害にあいながらも王女をさがしあて
めでたく結婚式をあげる物語(いただいた解説書より)
ですがさまざまなバリエーションがあるそうです。 -
トッペン・チレボン
お面をかぶって演じるお芝居。
ひょっとこみたいなのもいますね。
内なる心によってお面をとりかえて踊るそうです。 -
-
左のふたつはバリのトッペン・パジェガンの一部です。
オダラン(お祭り)に使うそうです。
一人でお面をつけかえて踊ったり語ったりします。
左下のお面は鼻がたれてるのではなくて
ガラスが反射してるだけです。
それにしてもなんて生き生きしてるんでしょう!
画像をアップロードして分類を選択する際に
「絵画・美術」じゃなく「地元の人々」を
つい選びたくなってしまいます。 -
バリのトッペン・パジェガン
バリの歴史・人生観を語るお芝居
右下の半面で口があいてるのは道化だそうです。 -
ワヤン・クリ
ヒンドゥーの一大叙事詩マハーバーラタに
登場する人形達
クリとは皮のことで
水牛の皮を人形の形に切り抜いて
彫り物をほどこしてあります。 -
マハーバーラタ物語
同じバラタ族の従兄弟同士が大戦争を繰り広げる物語
(ワヤンの物語紹介より)
なにしろ長い長い物語です。
どれくらい長いかと言うと、夜を徹して語られるのが
長い物語のごく一部というんですから・・・。 -
マハーバーラタの主役のひとりアルジュノ苦行中
ウィスヌ神の化身でワヤン随一の美丈夫だそうです。 -
マハーバーラタのビダダリ(美女達)
苦行中のアルジュノを誘惑するが
はじきとばされてしまう。 -
ラーマーヤナ物語
唐辛子婆の遠い記憶によると
「国王の第二夫人の策略によって
森へ追放されたロモ王子(ラーマ)の妻シント(シータ)は
ラウォノに見初められ、さらわれる。
ロモは猿のハヌマン軍の助けを借りて戦いをいどみ
ラウォノをやっつけてシントを取り戻す。」
でした。
左上がラウォノ -
左からシント(シータ)、ロモ(ラーマ)
ひとりおいて猿のアノマン(ハヌマン)
いただいた解説書によると(抜粋)
ロモ:宇宙支配の神からラウォノ成敗の命を受けた
ウィシュヌ神が入魂している。
シント:ロモの妃。
ラウォノが追い求める女性ウィドワティが入魂しているため
ラウォノの執拗な追跡にあう。
ラウォノ:傍若無人なラクササ。
ラクササとは牙と長くとがった爪を持つ怪物たちの総称で
彼らは常に人間になりたいと思っている。
ラウォノはラクササの王で
その乱暴振りには天界の神たちも手を焼いている。
そうだったのですか!!
だったらば
ラウォノはシントを見そめたわけじゃないんですね!
そしてウィドワティを求めては失敗して
腹いせに乱暴狼藉を働く・・。
しかも
常に人間になりたいと思っている(のになれない)・・。
なんだか可哀想になってしまいますね。 -
グヌンガン(山のようなもの)
生命の水の上に生命の木が茂り動物が栄えている。
影絵の舞台では山のほか背景としても使われます。 -
-
これも本邦初公開
約60年前
詩人金子光晴によって松本亮氏に贈られた
ジャワの鬼(ラクササ)。
甥の武将ガトゥコチョに殺されながら
愛するゆえに甥の死期を
「時間待ちの天界」で浮遊しながら待ち続けた
ラクササ、コロブンドノ。
(解説書の中の「ワヤン人形たちの行くえ」より抜粋) -
ブラホロ(巨大なラクササの姿に変身したクレスノ) -
有名なダランの人形には
ネームがはいっているそうです。 -
ほら、牛の背中に。 -
ジンと呼ばれる亡霊たち -
ゲゲゲの鬼太郎のお父さんのご先祖様?? -
動物たち
松本亮氏のコレクションは
千体にもおよぶそうです。 -
ワヤン・ゴレ(木偶人形芝居)
ここから7枚の画像はすべて
ワヤン・ゴレ・チュパの人形たちです。
このようにすばらしく高貴で繊細な人形たち
だけかと思ったら・・・ -
わ〜お
ガルーダもガイコツもいる。 -
どの人形たちもしばらくぶりの娑婆が嬉しくて
わいわいがやがや人間たちを見物中 -
「こないだ貸した金かえせよ。」
「へ?」 -
「立ちっぱなしでくたびれちゃったわ。」
「そろそろお茶にしたいわねえ。」 -
「なによこの婆ちゃん、ことわりもなく写真撮って。」
「まーまー、美女を撮るのが趣味なんだから。」
この垂乳根の美女?は魔女タンバン・ティナンクルかも。
ここにはワヤン・ゴレ・メナクの人形はいませんが
ワヤン・ゴレのなかの
ワヤン・ゴレ・メナク(メナク物語)は
マホメットの叔父の生涯と
イスラム教布教について語られる
人形芝居だそうです。
ペルシャの「アミル・ハムザ物語」が
もとになっているそうですが
マレーシアに伝わり
それがまたジャワと伝わるうちに変容をとげ
中部ジャワの宮廷文学者によって
韻文詩として完成した物語が
ワヤン・ゴレ・メナクとなった。
(ギャラリー・トークでいただいた解説書より抜粋) -
ワヤン・クリティク(板人形芝居) -
ほんとうにさまざまな種類のワヤンがあるんですね。
そして地方によってもさまざまな変化がみられます。
その地方独特の言葉だけで語られるものとか。
バリの影絵人形は
東部ジャワのと似た雰囲気なのだそうです。
それはイスラム化を嫌ったジャワの貴族達が
ワヤンを持ってバリに逃げて定着したからだそうです。
鼻の先があまり尖ってなくて
人間くさいワヤンだと思います。 -
スカスマン製作のワヤン
ワヤンは普通
ダラン側からは色が見えるのですが
観客からは影だけしか見えません。
このスカスマンのワヤンは
観客からも色彩が見えるように
工夫されたものだそうです。
上演時間も2〜3時間と短く現代向き。 -
1924年出版の本です。
オランダ統治時代
政府の賓客にプレゼントしたものもあるようです。
石板画を挿絵に使っています。
一部は神田の古書店で見つけたそうです。
一枚の値段がラーメン一杯分もしなかったとか。
②ではソロの町でみつけたワヤンの原画と
これらの石板画をどうぞ。
☆お忙しいなか
丁寧に加筆修正してくださった松本先生
ありがとうございました!
http://4travel.jp/traveler/tougarashibaba/album/10196681/へつづきます。
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この旅行記へのコメント (7)
-
- コクリコさん 2007/11/14 20:49:26
- 目玉オヤジの祖先?
- 唐辛子婆さん、こんばんは。
ぼぬかいさんの所で「目玉オヤジ」のご先祖さまの写真をUPしたらしいという情報を得、やってまいりました。
もしかして、このお方がそうですか?
北区といえば、義臣さんのお膝元。
私の家からもわりと近いのです。
東京家政大でこんな展示があったなんて知らなかったわ〜行ってみたかった〜!
今度またこんな感じの催しがあったら、行けるか行けないかは別にしても、コッソリあるいは大々的に教えて下さいね。ワヤン気に入りました!
まだ工事中のようですが、先に投票しますね。
カラチとイスラマバードが離れていて少し安心しました。
- 唐辛子婆さん からの返信 2007/11/15 00:05:23
- RE: 目玉オヤジの祖先?
- コクリコさん、こんばんは。
>もしかして、このお方がそうですか?
そうなんです、「ジン」という亡霊の一人のようです。
>東京家政大でこんな展示があったなんて知らなかったわ〜行ってみたかった>〜!
>今度またこんな感じの催しがあったら、行けるか行けないかは別にしても、>コッソリあるいは大々的に教えて下さいね。ワヤン気に入りました!
「日本ワヤン協会」でググってみてください。
渋谷で毎年徹夜の?ワヤン公演をやってるらしいし
年に何回か催し物があるようですよ。
>まだ工事中のようですが、先に投票しますね。
ありがとうございまっすヽ(^o^)丿ぐぁんばらなくっちゃ。
>カラチとイスラマバードが離れていて少し安心しました。
んでもね、カラチが以前より物騒になってきたらしくて・・・。
日中でも路上でピストル強盗にあった人がいるっていうし。
あまり自由に出歩けなくなりました。
せっかく経済が上向いてきたというのにねえ。
〜唐辛子婆〜
-
- osdさん 2007/11/13 10:00:54
- 「影と色彩」いいですね。
- 唐辛子さん
奇妙で不思議な美しさがある群像ですね。
2回行ったバリ島ではワヤンは見られず残念でした。
やはりヒンドゥーのジャワ島のほうが本場なんですね。
東京家政大学:大昔ですが、できの悪い娘が不合格で
泣いた学校で、その時の恨みがあります(>_<)(笑)(^^♪)。
博物館:いい企画ですね。タイトルの「影と色彩」もいい…。
コメント楽しみにしています。期待をこめて1票…。
※政情不安定のカラチ、唐辛子さんの好奇心もすこし
押さえ気味にして、充分気をつけてください。 osd
- 唐辛子婆さん からの返信 2007/11/14 00:42:01
- RE: 「影と色彩」いいですね。
- osodさん、こんばんは
おひさしぶりですね。
書き込みと投票ありがとうございました。
「日本ワヤン協会」のHPをみたら
このギャラリー・トークでメモしたものだけのコメントを載せていいものかどうか躊躇してしまって・・・。
毎年、渋谷で影絵芝居が上演されているなんて知りませんでした。
http://www.kt.rim.or.jp/~banuwati/content.html
どうぞ気長にお待ちくださいね。
パキスタンの政情、ご心配くださってありがとうございます。
今までのようには気軽にでかけておりませんのでご安心を。
〜唐辛子婆〜
-
- きっちーさん 2007/11/12 23:18:35
- こまかいですね。
- 綺麗なような、怖いような。
不思議なデザインです。
- 唐辛子婆さん からの返信 2007/11/13 02:36:28
- RE: こまかいですね。
- きっちーさん
水牛の皮にノミと金槌で彫っていく透かし彫り芸術。
その人形達を操ってガムランの音の響く中
一晩中影絵芝居が続く中部ジャワの夜。
幻想的でしょ。
たまに停電になっても影絵芝居は続けられる。
なぜならそれは音楽と語りを神様にささげるものだから。
観客はお相伴にあずかってるだけなんですって。
真っ先にきてくれたからコメントのさわりを先にお見せしました。
「ラマザンとイード編」を完成させてからとりかかるので
まだちょっと時間がかかりそうです。
お待ちくださいね。
〜唐辛子婆〜
- きっちーさん からの返信 2007/11/13 11:10:16
- RE: RE: こまかいですね。
- 楽しみにしていまーす!
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