いつか見た映画のような旅〜カンボジア最高峰アオラル。深い森と共生する人々と歩く〜:クロマーさんの旅行ブログ

いつか見た映画のような旅〜カンボジア最高峰アオラル。深い森と共生する人々と歩く〜:クロマーさんの旅行ブログ

いつか見た映画のような旅〜カンボジア最高峰アオラル。深い森と共生する人々と歩く〜

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いつか見た映画のような旅〜カンボジア最高峰アオラル。深い森と共生する人々と歩く〜

内戦が終了してまだ十数年しか経過してないカンボジア。この地に住む人にとっての登山はレクリエーションの一つではなく、食の為に強いられたものである。村人は山菜を探し、野兎や猪を狩る、その為に小さな獣道を切り開いていったのだ。近い将来、この国に楽しみとしての登山文化が入ってきた際に最も注目されるであろうこの山に、カンボジアのレンジャー、村人と共に最高峰を目指す旅へと出発した。


カンボジアに住む登山家から噂話を聞いた。最高峰“アオラル山”、その登頂に成功した。標高1813メートル。コンポンスプー州、ポーサット州、そしてコンポンチュナン州へとまたがるカルダモン山脈の南東部、東南アジア本土最大の原生林地帯であり、アオラル野生動物保護地区に位置している。それがカンボジアの最高峰を誇るアオラル山として、インターネットを含め、数少ない文献から調べられる情報の全てであった。その情報の少なさからか、訪れる登山家は皆無に等しいようだ。


第1日目 午前 プノンペン〜コンポンスプー

いつも使用しているものより大きなザックと、日常あまり使うことのない道具が狭い部屋いっぱいに広がっている。ガムテープ、紐、テントシートに蚊帳付きハンモック。他にも多くの物資を並べ、取りだしやすいように順番に詰め込んでいく。総重量15kg、本物の登山家からすると、それがどうしたと言うくらいの重さだろうが、鈍りきった体の自分には厳しい重さである。
何人もの人々を介し、やっとの思いで探し出した現地のレンジャーステーション。彼らに登頂するために最低限必要な物資と、必要な日数、そしてメンバーを訪ね、彼らの同行も得られることとなった。できるだけの準備は整った。後は登るだけである。もしも登頂出来なければ戻ればいい。登山文化のないカンボジアでは登山というより、ちょいと大変な遠足、そして生活の一つといった認識なのだから…、そうシンプルに考えることにした。
 ザックを背負い、手配していた車へと乗り込む。山麓の村までの行き方すらまともに分かっていない。A1サイズの大きなカンボジア地図を広げ、おおよそのイメージで運転手にルートを伝える。4号線からコンポンスプーの町へと入り44号線へと入るルートか、5号線からウドン市場を経由し136号線へと続くルートと大まかに分けて二つ、そのどちらのルートかすらも不明である。とりあえず地図上に見える温泉マークに心を奪われ、4号線経由で行くことにした。
国道から44号線へと入った瞬間に赤土デコボコ道路へと切り替わる。速度が出ない一本道をまっすぐ進んでいくと、分岐点となる小さな村があり、道路の中央には象の親子と民族の彫像がある。少し昔にはこの近くにも野生の象が多くいたのだそうだ。
シンプルな看板には“HOT WATER”と書かれている。温泉という概念がないからか“SPRING”にはなっていない。ぬるくまとわりついてくる硫黄のにおい。その正面にはぼろぼろに破れた袈裟をまとったネアックター(地元精霊)が棍棒を片手にこの周辺を護っている。温泉はケロケロケロッピのようなデザインにコンクリートが流し込まれている。ケロッピの口からポコポコと沸き上がってくる気泡。さほど水温の高くない場所で足をつける。炎天下にさらされている水はそれでなくても温かいだろうが、やはりそれ以上の温度を保っている。周辺を眺めると季節外れの赤とんぼが空を舞っていた。
さき来た道を少し戻り、象の彫像のある村へと到着した。ここからレンジャー達との待ち合わせしている村までは悪路となりバイクでの移動となるそうだ。近くの屋台で白黒テレビを見ていた男性に商談を持ちかけると小額の謝礼で引き受けてくれることとなった。
 クロマーを頭に巻きつけ、バイクの後部座席に乗り込む。気持ちいい風が頬を流れていく。正面に広がる青空の下には白い雲が重なる。その下にうっすらと浮びあがってくる山脈。これがカルダモンなのだろう。


第1日目 午後 コンポンスプー〜スラエコンバイ村(アオラル山麓)
立派な門構えの寺院がある。どうやらこの寺院がレンジャーの指定した待ち合わせポイント“トロッピアンチャウパゴダ”のようだ。寺院すぐ脇の小さな雑貨屋でレンジャーと思しき男性が手を振っている。簡単な自己紹介と打ち合わせ後、再びバイクに乗り込み、山麓の村スラエコンバイへと向かうことになった。
昨晩、この辺りで雨が降ったのだろう、途中の川には山から流れてきたであろう泥水が流れこみ、村人たちの手作り簡易木橋には子供達の運営する料金所が設置されていた。木橋の下では村の女性たちが泥水を気にせず洗濯にいそしんでいた。
到着した小さな村、その端の東屋が本日の宿泊宿と決まった。
登山がない国にはシェルパのような荷物持ち兼ガイドと言う仕事など当然ない。レンジャーが明日から同行可能な即席荷物持ち(村人)を募り、翌日の説明を始める。それを脇目に5分も歩けば終わる小さな村を散策する。豚やアヒルが我が物顔で道路を歩きまわり、牛の群れが余所者に対してキョトンとした眼を向けている。電気など無い村だ、太陽の出ているうちに水浴びしようとサロン片手に村人に訪ねながら近くの川へと向かう。木製の小さなパゴダを抜け、笹が生い茂る道の先にあった小川には先客があり、多くの牛が冷たい水を楽しんでいた。
 戻った宿にはレンジャーと村人がとれたての椰子酒を買い込んでおり、すでに小宴会モードに突入していた。19時を少し回った頃だろうか、焚火と月明かりのもとカンボジアの蛍が空中を漂っていた。


第2日目 午前 アオラル山麓(スラエンコンバイ村)〜アオラル山中腹(チョンノアターアイサイ)

 アオラル山越しに昇る太陽から、まぶしいばかりの光が朝露に注ぎこまれている。ここから山のとりつきまでは約10km、前日に手配していた農耕車に荷物と生きた鶏を載せ出発する。村人のほとんどが時計を持っていないため、待ち合わせ時間は太陽が昇ったら集合といったアバウトである。
 農耕車でも進むことが出来ないポイントまで到着し、ザックを背負う。ふとシェルパを見ると今から最高峰に向かうというのにビーチサンダルを履いている。気負い過ぎている自分が少し大げさに感じ始めた。
 決められた登山ルートなどはない獣道。村人が野生動物や山菜取りに使用している道を登っていく。前を歩くレンジャーはなたを片手に山道に覆い被さってきている草木をなぎ倒し、木の幹に帰りの為の道標を残している。いくつかの沢を越し、倒れた大木を渡りながら黙々と進んでいく。所どころ初めて見る花や植物が芽を出し、野鳥や虫の声が聞こえてくる。
 登頂開始より4時間ほど経過した頃、標高1100メートル地点にあるチョンノアターアイサイに到着した。ここが今夜のビバークポイントだ。レンジャーと村人そして自分達で混合チームを作り、水汲み班、薪集め班、火起こし班、そして料理班がそれぞれの作業を始める。今晩の寝床である蚊帳付きハンモック、ターフの設置はレンジャーの指示の下、各自で行っていく。ヒルや害虫、それに猪や虎など様々な野生動物のことを考え、通常より高くハンモックを吊る必要がある。また、夜間の冷え込みの備え、乾燥した薪を十分に集め、ハンモック周辺でいつでも薪をくべられるようにしておく。
 料理班の号令のもと、後半戦に備え、米と乾麺、そして少しだけピリ辛い缶詰の魚をお腹に詰め込んだ。


第2日目 午後 アオラル山中腹(チョンノアターアイサイ)〜山頂〜中腹

 荷物番として村人一人を残し登山を再開する。ここからピークまで後2時間ほどだそうだ。いつの間にか先頭が村人に変わっている。レンジャーと言ってもこの村の育ちではないため道がはっきり分からないうえ、講習で山でのサバイバル技術は学んでいても体力が伴っていないようだ。機敏に動く村人に較べて息切れが激しく、スピードも落ちてきている。
 ふと小さな違和感がありズボンをめくりあげる。いつの間にか小指の頭ほどもない小さなヒルが太ももにくっついている。痛くも痒くもないが、血を吸ってまん丸に膨らんでいた。
 急なスコールが始まり、大木の下で雨宿りとなった。まだ雨季に入っていないが、山の天気は変わりやすいということだろうか。高い木の葉から落ちてくる大粒の水滴。半時間ほど経過したころ木々の木漏れ日が輝きだした。
 同行していたレンジャーはここで力尽き、村人の案内のみとなった。どこから見つけてきたのだろう、オレンジ色の大きなキノコを大事そうに持っている。食用として家で待つ子供達に持って帰るそうだ。
 何もなく、木々がうっそうと茂っているだけのしんとした静寂な空間。到着した山頂部には小さな仏陀が座っていた。坐像前には「MT.Oral 1813m」と刻まれ、後ろにはカンボジア国旗と仏旗が掲げられている。他には目的は達した。少し休んだのち、日が高いうちにと下山を開始する。途中、休んでいたレンジャーと合流し、やっとの思いで辿り着いたビバークポイントでは村人が焚火を始めていた。連れてきた鶏を食材に交え、今日の宴を楽しんだ。


第3日目 アオラル山中腹〜アオラル山麓

 カンボジアと言えど山間部の夜は肌寒い。念のため厚着をしていたが、それでも少し足りなかったようで、夜中幾度か目覚めることとなった。
 空が白けてきた頃、出発に向けてのそのそと人々が動き出した。ハンモックやターフを片付け、朝食を準備する。朝食と言っても昨晩の残りと乾麺といった簡単なものだ。
 後は下るだけだ。昨日来た道を再び歩く、昨日感じなかった涼しい風と爽快感を体に感じる。
 到着した東屋で村人たちに礼を告げる。記念に写した村人たちの写真。再び登りに来ることがあるかどうかは分からないが、いつの日か渡しに来たいと思う。

エリア: アジア >>カンボジア >>その他の都市
テーマ: ハイキング・登山
時期: 2009年04月〜05月
投稿日: 2010年02月19日
写真: 全5枚
満足度: 評価なし
観光: 評価なし
ホテル: 評価なし
グルメ・レストラン: 評価なし
ショッピング: 評価なし
交通: 評価なし
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  • 誕生日:02月19日
  • 登録:2008年03月15日

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