1989/01/24 - 1989/01/24
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みどりのくつしたさん
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1月24日火曜日。
昨日ホテル加宝に一週間分の宿泊費95ドルを支払っているので、とても気楽だ。
少なくとも週の前半は、来週どうしようと考えなくて済むのだから。
ロビーで朝食をとっていると、昨日の英会話教室で一緒だった「バヌアツの森さん」と会う。
森さんは、他の宿泊者と話をしていた。
それを聞いていると、「バヌアツは英仏の共同統治だったので、英語とフランス語が話されているんだよ」とのこと。
おやおや。
森さんは、昨日僕と英会話教室で一緒だった時と、同じ話をしているね。
しかも、話し方まで一緒だ。
このあとも、何度か彼が他の人と話をしているのを聞いたが、すべて同じだった。
「同じだった」というのは、話の内容が同じだというだけではない。
話し方や、話の流れ、話の組み立てが全く一緒なんだ。
最初に「私はバヌアツから来ましてねー」と振る。
普通の人ならば、興味を持って「バヌアツって初めて聞きましたが、どこにあるんですか?」と聞く。
それで森さんは、「南太平洋なんですけどね、ここは英国とフランスの共同統治で」と続けるわけだ。
ところが、バヌアツに興味を持たない人も多い。
普通の日本人ならば、バヌアツに興味がなくても、一応「バヌアツってどこですか」くらいは言うけどね。
でも、もちろん、そんな話を聞きたくない人もいるわけだ。
聞きたくない人は「あーそうですかー」くらいの返事をする。
すると森さんは、「あなたはバヌアツってどこにあるのか、と思ってるでしょ?」と、勝手に決め付けてしまう。
相手の返事がどうであれ、「まあ知らない人が多いと思うんですけどね。南太平洋にある島国でして」と強引に引っ張ってしまう。
そして、決め台詞の「英仏の共同統治で、英語とフランス語が話されているんですよ」まで無理矢理に持ってくるんだ。
僕はこの日のあとも、何度も森さんの話を聞いていて、「これはすごい人だ」と感動した。
だって、いままでこんな話の持っていき方をする人と、会ったことがなかったからね。
これ以降、ロビーに新しい旅行者がいて、そこに森さんがいて、話をしてないとき、僕は旅行者に声をかけてあげることにした。
「新しい方ですか。こちらが森さんとおっしゃって、バヌアツから来られた方なんですよ」と話を振る。
そうすると、森さんは自動的に「あなたはバヌアツがどこにあるかと思ってるでしょ?」と話を始めるわけだ。
森さんの話は、相手が何を返事しようと最初からストーリーが出来ている。
それが長々と続く。
僕は最初しか聞かないが、3時間後にロビーに戻った時、まだ話が続いていたことがあった。
もちろん話し相手は、クターッと疲れて、身動きもしてなかったけどね。
でも森さんにとっては、相手の存在というのは気にならないようだ。
森さんとは、ホテル加宝では何度も出会った。
数年後のホテル加宝のロビーで、森さんは温泉旅館勤務の男性と話をしていた。
僕は面白がって、横で聞いていた。
僕は、それまで何度も経験しているので、森さんの考え方が手に取るようにわかった。
森さんは、温泉旅館勤務の人ならば、当然、「○○温泉へ来られたら、是非来てくださいよ。いいところですよ」という話が出るはずだ、と決め付けている。
でも、温泉旅館勤務の男性は、別にそんなことを言いたくない。
それなのに、森さんは無理矢理にそれを言わせようとしているんだ。
「温泉はいいですねー。私が行ったら、どうかなー」なんて話を振っている。
男性も鈍感なのか意地悪なのか、「別にたいしたところじゃないので、来ても面白くないですよ」と答える。
森さんは「いやー、でも、日本の温泉はいいですよねー。私も日本へ戻ったら行ってみたいなー」と、強引だ。
もちろん森さんは、別にその温泉に行きたいわけじゃない。
ただ話の流れはそうあるべきだと、勝手に思い込んでいるわけだ。
森さんの頭には、
「是非いらしてくださいよ。歓迎しますから」
「それじゃあ、ゼッタイに行きますから、その時はよろしく」
という会話で終える、というストーリーがあるんだ。
その考えは非常に堅固なものなので、相手がどう考えていようと、どう返事しようと、話の流れは変わらない。
これは、バヌアツの話だけではなくて、他のすべてのことがそうらしい。
僕は世界一周旅行を終えて日本に戻ってきて、東京都ユースホステル協会での海外旅行講演などをしていた。
その時、森さんから連絡があった。
それで、やはりホテル加宝で知り合った世界旅行者協会の大学生を呼んで、3人で会った。
なんで僕が若い男の子を呼んだかというと、僕1人ではとても話が出来ないと思ったからだ。
新宿のビアホール「ラインゴールド」でピザをつまみにビールを飲んだ。
その多分3時間くらいの間、完全に話を取られて、独演会をやられてしまったよ(涙)。
最後は森さんが「いやーキミたちと会えて楽しかった♪」と言って、わかれた。
僕と若者は2人で疲れ果てて、どちらから言うともなく、「飲みなおしましょう…(涙)」と、焼き鳥屋へ行ったんだけどね。
とにかく強烈な個性の人だった。
海外旅行ではときどきすごい人と出会うので、興味が尽きないんだ。
ただ、それが何かの役に立つかというと、大きな疑問符が付くわけだけどね(笑)。
森さんがすごい人間らしいと、気が付いた後、僕は「センチュリーシティ」へ行くことにした。
センチュリーシティとは、今ではあんまり聞かないが、この時期はロサンジェルスのショッピングモールのひとつとして有名だった。
映画「ダイ・ハード/Die Hard(1988)」の1作目で、日系企業の「ナカトミビル」として使われたのが、このセンチュリーシティの高層ビルだ。
でも、ショッピングモールとしても中途半端な大きさなので、わざわざ行くところではありません。
車で移動するついでにセンチュリーシティが見えたら、軽くウンチクを語るくらいで十分でしょう。
世界旅行者はもちろんこのとき車がないので、バスに乗って行きます。
ダウンタウンのスプリングストリートの南行き、27番に乗る。
1時間ほどでセンチュリーシティへ到着。
モールの中の「Go Sport」という店で、ヒップパック(Hip Pack)を一つ買う(10ドル)。
次にサンタモニカブールバードを北へ歩いて、ウィルシャーへ出る。
21番バスに乗って、UCLAの正門へ行った。
「UCLA STUDENT SHOP」でリーバイス501(20ドル半)を2本、デイパック(38ドル)を買った。
デイパックとヒップパックは中南米旅行のために買った。
リーバイス501は、つい先日も2本買ってたから、これで4本になる。
南米へ下る前に、まだ日本へ送り返す荷物がある。
だから、日本へ送るつもりだ。
「ジーンズは腐らないから」と追加で購入したわけだ。
ところがだね、確かにジーンズは腐らない。
ただ、人間の体型は変化する。
このとき僕が買ったジーンズのサイズは30インチと31インチだった。
ところが世界旅行者のお腹まわりは、年とともに大きくなる。
しかもリーバイスの501は結構、ピタッとフィットしてた。
だから日本に戻った一年半後には、501の30インチを履くこと自体が無理だったよ(涙)。
21番バスに乗って、ウィルシャーブールバードを通り、ダウンタウンへ。
ウィルシャーにあった免税店で日本の大型観光バスが2台停まっているのを見た。
この時期は、日本人観光客がUCLAやダウンタウンに結構いたものなんだよ。
ダウンタウンからホテル加宝へは、ダッシュを使わずに歩いて戻った。
夜の英会話教室へ出て、離婚美女のテレサとまた話が盛り上がった。
そのあと黒人の若者ロバートと、今日買ってきたジーンズについて話をした。
ロバートは「僕は将来貿易商になりたい」という。
僕は「リーバイスジーンズをアメリカで20ドルで買って、日本で7千円で売れば大儲けだ」という情報を教えてあげたよ。
まあ、この日は、森さんの実態がわかったことと、センチュリーシティへ行ったことでいいのでは。
英会話の授業にも出たし、南米旅行のためのディパック、ヒップパックも入手した。
ここで得た教訓を、現在の目で書いておこう。
それは「人間いつまでも30インチのウェストではいられない」ってことかな。
注:ちなみに現在(2008年)の世界旅行者のウェストは33インチで、ジーンズはルースフィットです。
http://homepage3.nifty.com/worldtraveller/carver1989/0124.htm
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