2008/03/21 - 2008/03/21
1288位(同エリア1784件中)
まゆままさん
重要文化財「泉布観」の一般公開があり訪れた。
この日は泉布観の前に近くの天満教会、フジハラビルも見学。
天満教会では外観写真を撮っていた私は偶然、牧師さんの奥様に声を掛けられ、礼拝堂も見せて頂くことに。
そしてこの教会と設計者中村鎮についてのお話を詳しくお聞きすることができた。
さらに、ちょうど同じ時期に行われていた天満屋ビルでの「まちかどの近代建築写真展」へもはしごし、充実の建物巡りな一日となった。
- 同行者
- 一人旅
- 交通手段
- 私鉄 徒歩
PR
-
まずは10時の泉布観の公開まで時間があったので、予定通り天満教会へやってきた。
外観を写真に収めていると、牧師さんの奥様からお声を掛けて頂き、礼拝堂も見せていただけることに。
一見、この教会らしくない地味な造りの建物には実は驚くほど設計者により細かい配慮がなされており造りも頑強であるようだ。 -
この建物は今から80年前にキリスト教徒でもあった中村鎮の設計により建てられた。
中村式コンクリートブロックというL字形ブロックを用いて造りのしっかりとしたいいものを安価に、そして信者の立場に立って細かいところにも神経が行き届いた設計になっているという。 -
教会の入り口。
入り口を入って正面は教会学校になっており、礼拝堂は2階にある。 -
礼拝堂へ入ると、そこには外観からは想像がつかないような思わぬ素敵な空間が広がっている。
アーチの曲線美が素晴らしい〜
教会ではよく見かけるような高さのあるゴシック式の教会とは違って天井は低め、そして緩やかなアーチがほっと落ち着く空間を演出している。 -
-
礼拝堂は聖書が中心であるというプロテスタントの教会のため、説教が一番後ろまでよく聞こえるように音響効果もよく考えられているという。
建物を頑強にするためでもあるアーチは音響効果のために穴がくりぬかれている。 -
シンプルなステンドグラス
-
ほっとするような落ち着くこの礼拝堂に隠されたもう一つの工夫は、全てのもののサイズが25cmの倍数となるような設計がされている。
このドアの窓の四角に、ステンドグラス、そして床板、椅子などあらゆるところに25cmの倍数の長さを繰り返し使うことによって人が不思議と安らげるような空間を作り出している。 -
床板も一辺25cmの正方形。
-
両側の通路に置かれたガスストーブのデザインがレトロで味わい深い。
この蓋の部分で焼き芋を作ると美味しいのだとか・・ -
2階のドアから外へ案内される。
造りを頑強にするためには左右対称が一番よいそうで、もともと両側ともこのような階段になっていて左右対称になっていたところ、途中で左側の方は階段をつぶして事務所を建て増しした為、現在の建物は左右対称にはなっていないという。 -
1階の教会学校は以前は講壇が置かれていたことから緩やかな傾斜がつけられている。
-
椅子も当初からのものがよく残っており、子供から大人用まで大中小三種類の椅子が揃えられている。
背もたれは大きめで使う人の立場に立った細かい配慮がなされている。
お話頂いた牧師さんの奥様は以前、福岡のやはり中村鎮の建てた教会におられたそうだが地震の時、周りの建物がダメージを受ける中、彼の建てた教会は全く痛手を受けることがなかったことから、彼の教会の頑丈さを実感されたのだそう。
又阪神淡路大震災の時に活断層上にあった建物はほとんどが倒壊してしまった中、同じく活断層上の中村鎮設計の須磨教会だけはびくともせずに残っていたという。
その頃からこの建築家中村鎮の建てた建物に急に注目が集まるようになったのだそう。
この天満教会も古くなり建替えを考えられていたそうだが、この建築家の細やかな思いのこもった建物の素晴らしさ、貴重さを知った今はできるだけ今の状態を残しつつ補修することで大切に使っていきたい、と語られていた。 -
天満教会を後にし、フジハラビルへやって来た。
大正12年建築のこのビルは元食品会社の本社だった。
天井は抜け、漆喰は剥がれ落ちた廃屋だったビルを
藤原さん一人で10年がかりで補修し、レトロでアートなビルに改修。
地下1階、地上4階のこのビルは現在はギャラリーやデザイン事務所などとして使われている。 -
-
-
窓際にはこんなオブジェも。
-
オーナー藤原さんのアイディアでビルの内外には人を飽きさせないための仕掛けがあちこちにされている。
-
-
-
ふと階段の窓の外を覗くと屋根の上にもずら〜っとオブジェが並べられていたりする。
-
ギャラリーは絵画や写真展だけでなく落語会から演劇、映写会まで幅広く活用されているという。
-
サンルームはビルを訪れた人に最上階まで上がってきてもらう仕掛けの一つ。
プロの建築家が見学にくるほどの出来栄えなのだそう。 -
-
-
駐車場もギャラリーに。
フジハラビルを後にし、泉布観の前に造幣局へ行く予定だった。
・・が造幣局へやってくると建物はちょうど改築工事中とのことで見れず。しばらく工事は続くとのこと。 -
そして泉布観へやって来た。
泉布観は明治4年、造幣局の応接所として、英国人技師ウォートルスによって設計された現存する大阪最古の洋風建築であり、日本の近代建築のスタートとも言える建物なのだそう。 -
完成の翌年、明治5年に天皇が行幸し、泉布観の名称はその際に天皇自身により命名された。
「泉布」は「貨幣」、「観」は「館」を意味する。 -
建物の構造は煉瓦造二階建、建物のまわりにヴェランダを巡らせたヴェランダコロニアル式。
-
当初は2階屋根の庇の出がなく、パラペットが建物のまわりを巡っていたが、雨の多い日本の気候風土に合わせるため、明治中頃に現在の姿に改造された。
-
1階正面扉は上部は扁平なアーチ窓になっているが、建設当初は四角い欄間であった。
-
車寄せの天井
-
高温多湿の気候に合うコロニアル式は、ベランダが付き、床面から立ち上がっている開口部を大きく採り風通しをよくしたフランス窓が特徴。
-
正面扉を入った1階廊下に下がる照明がいい感じ。
-
ガス燈時代のものを、電灯に変わった現在も使用している。
-
1階南室
泉布観で一番広い部屋で、食堂としても使われていた。 -
この部屋の柱は外部の柱と違い、杉材を用い、その上を漆喰塗りで仕上げている。
-
この南室のシャンデリア、男性の人頭装飾が面白い。
これもガス燈時代のもの。 -
-
1階南室の暖炉
-
1階南室の大鏡。
この大鏡は建設当初のもの。
その下の引き出しや扉の中はワインを収納していたと考えられている。 -
1階北東室の暖炉
-
この暖炉の両側にはグリフォンの姿をかたどった装飾が。
-
北西室。
暖炉まわりには輸入品のタイルが使われているが
床の市松模様はタイルに似せて、板にペンキで描いたもの。
タイルが高価であった当時、タイルへの憧れをあわらしたものといわれている -
どの部屋にも優美なデザインの照明が。
-
-
1階北西室の暖炉のタイル
-
-
2階へ上がる階段
-
2階廊下の床模様
-
2階のベランダへ
-
-
-
-
建物の外周に巡らされたトスカナ式の柱は全て瀬戸内産の御影石が使われている。
-
-
-
2階北東室
玉座の間にあてられた部屋。
天皇が訪問した際には金屏風などで飾り立てられていた。 -
-
2階北東室の照明器具
この部屋だけは照明が壁付灯だが、当初は2階は全ての部屋が壁付灯であった。 -
2階北西室の暖炉。
-
-
こちらの暖炉まわりのタイルは花、鳥、魚とちょっと和柄風。
-
泉布観の南隣にあった北異人館の付属建築(作業員室)だったもの。
この煉瓦建造物だけが残されているが修復中?! -
泉布観の西側にある二階建倉庫。
壁は煉瓦蔵、屋根は泉布観と同じ寄棟造桟瓦葺だが、小屋組は木造洋子屋で、明治中期以前に建てられたものと考えられる。 -
同じ敷地内にあった旧桜宮公会堂。
明治4年に落成した造幣局鋳造所の正面玄関を移設し、昭和10年に完成した。
当初は明治天皇記念館として、その後桜宮公会堂などとして使用された。
正面玄関部分が国の重要文化財に指定されている。 -
-
-
-
-
泉布観を後にし、この日最後の目的地、南港の天満屋ビルにて行われている「まちかどの近代建築写真展」へ。
新し目のビルの中、ひときわ目立っていい色合いを放っていた天満屋ビルを発見。 -
-
-
-
-
写真展は2階の雑貨をお茶のお店「ハaハaハa」の奥で行われていた。
-
毎年行われてる恒例の写真展だそうで今回は煉瓦造りの建物を中心に全国の近代建築がたくさん。
まだまだ全国には煉瓦造りだけでもこんなにたくさんの近代建築があるんだなあ〜としみじみ眺め入ってしまった。 -
-
-
写真と共にお店の商品でもある雑貨がかわいくディスプレイされている。
-
日本赤煉瓦建築番付?!
どういうところがリストアップされてるのだろうか?興味津々・・ -
展示室にあったステンドグラス。
-
写真展を鑑賞した後はカフェの方でお昼を食べることに。
-
おすすめのハヤシライスを注文。
普通盛りのはずなのに皿から溢れんばかりの大盛り並み?でお腹いっぱいに! -
天満屋ビルの隣にある昭和8年築の商船三井築港ビル。
こちらも天満屋ビルと同じく埋立てにより1階が地下に埋没している。 -
お昼の後はぶらぶらと海岸通の赤煉瓦の大正12年築、旧住友倉庫を見学し帰途に着いた。
-
久々、一人で思う存分建築を巡る充実した一日となった。
この旅行記のタグ
利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。
この旅行記へのコメント (4)
-
- wiz さん 2008/04/12 18:12:06
- 泉布観!
- まゆままさん、こんにちは!
なにげな〜く見ていたのですが・・・
ココ! 私も行きたかったところだー!っと思い出しました(笑)
泉布観!の一般公開を逃さず・・・さすがまゆままさん!
旧桜宮公会堂も一緒に調べていたところです〜。
貴重な写真と体験日記をいつもありがとうございます♪
この写真を見ていたら米ニューオリンズ郊外で見た
プランテーションハウスを思い出しました!
あの辺りの気候も高温多湿で、建物はコロニアルスタイルだったから
イメージが重なったのかも〜。
wiz (ex.voodoo ・・・名前変えました〜!)
- まゆままさん からの返信 2008/04/12 22:03:37
- RE: 泉布観!
- voodooさん改めwizさん〜!
たくさんのカキコミと投票ありがとうございました〜
名前変えられちゃったんですよねえ〜〜
新たに生まれ変わった?wizさん、よろしくお願いします〜
そうですか!泉布観、wizさんもチェックされてたところだったんですね〜
年に一回の公開なので今年は行くぞ〜と密かに狙ってました・・
これが大阪最古の洋風建築かあ〜としげしげ眺め入りました。
プランテーションハウスっていうのもコロニアルスタイルなんですね。
このフランス窓とベランダが優雅な雰囲気をかもし出していますよね〜
-
- べるつくさん 2008/04/02 12:34:52
- 番付?
- こんにちは。
ほんとに建物三昧の一日でしたね。
やっぱり一人で動くと制約がない分好きに羽根をのばせますね。
私も先日名古屋に行って朝から夕方までひたすら建物めぐりしてました。
(まゆままさんの名古屋の旅行記、大変参考になりました)
赤レンガの番付、気になりますね。ジャックが大関なんだ、ふむふむ。
レンガをテーマに絞ってもけっこうあるものなんですね。
というより、レンガの建物は見栄えもよいので保存されやすいのでしょうか。
それにしてもハヤシライス、えらく大盛りに見えます。
ここも外から見ただけなので食事してみたいなぁ。でもきっと次にこのへんいってもUSJで終日過ごしてしまいそう。
そうそう、ゴミ処理場、でしたっけ、あちらの旅行記も興味深く拝見しました。
ああいうのがあるというのは知っていましたが、詳しく紹介されているのははじめてみました。オリンピックが決まっていれば注目されたかもしれないですけどね。
今度の知事ならこんな建物を建てるの自体却下でしょうね。
- まゆままさん からの返信 2008/04/02 20:59:49
- RE: 番付?
- べるつくさん、こんばんは〜!
書き込み、ありがとうございます!
そうでした〜この日は久々、思う存分一人で建物巡り完全燃焼!してきました。
これでも制限時間、三時までには家に帰りついていたので一人だとほんとにスイスイ回れるものですね〜
天満教会で予想以上に時間を費やしたので途中、走って微調整してみたり・・
同行者がいたらきっと嫌われるに違いないと思いますが・・・;
べるつくさんも名古屋へ行かれたんですね。
朝から夕方まで一人だとさぞ建築巡りに没頭できたことでしょうね。
私の旅行記、参考になりましたならうれしいです。
写真展、赤レンガの建物だけでも全国にはまだこれだけあるのかあ〜と見てないものの方が断然多くて焦って?しまいます。
ハヤシライス、並みでこれなので、大盛りって皿に盛りきれないのでは?
と思ってしまいました。外から見てカーブを描いてる出窓?からぽかぽか日が差し込んで居心地のよいお店でしたよ。
ゴミ処理場は、市の職員の中によっぽどのヴァッサーファンでもいたのかな?と尋ねてみると、裏話では当時の助役さんが、ヴァッサーのことを知っていて、オリンピック誘致のためにも世界的な建築家をということでエコロジストでもあるヴァッサー氏に依頼した言われてました。
コメントを投稿する前に
十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?
サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。
旅の計画・記録
マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?
4
87