スペインの旅 マドリード―光と影のモザイク:marukunさんの旅行ブログ
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閉まるまぎわのプラド美術館に飛び込んだ。
お目当てのマイヨーの「天国の扉」にたどり着く前に、監視員に閉館を告げられ
た。
美術館の旧館を出て、リッツホテルの噴水前のベンチでしばらくボッーとしてから
マロニエ並木の美術館前通りをアトーチャ駅に向かう。
そして、「太陽の門」へ通じる通りに交差する角のセルベッテリイアに引き釣りこ
まれるように入った。
夢から醒める前の朧な感覚を引きずったまま、窓際の席についた。
おもしろいことに、カウンターは「予約席」のプレートが置かれていた。
外は黄昏れるには少し早く、夏の太陽がまだ眩しかった。
恰幅のいい眼鏡の男が注文を取りに来たが、迷うことなく
「セルベッサとトルティーリャ」と注文した。
すぐに泡の浮いた黄金色のグラスは置かれた。
一気に飲み干し、すぐに2杯目をさきほどのボーイに告げた。
黄昏前の少し憂鬱な雰囲気の漂うはかないひととき、窓の外の雲を眺めながら、何
処にもいない私を何処かに誘うように飲み干す、その一瞬、その幸福。
私はこれまで、またこれからも唯一求めてきた。すぐ泡のようにはじけて消える―
―――一瞬のはかない珠玉―――。
と、知っている確信犯でありながら、―この時―を求めて、私は「劇場」を彷徨っ
ている。
ほろ苦く甘い邂逅を夕焼けのなかに溶かし込むのだ。
そして、もう1杯注文するのだ。
セルベッテリアを出てもまだ太陽はビルの谷間からかいま見えた。
アトーチャ駅は近代的な円筒のビルに改装されていた。此の駅からアンダルシア地
方へ繋がっているのだ。
そしてアンダルシアの北の先はアフリカに続く・・・。
地下鉄2号線で太陽の門−コスタ・デル・ソル−に出た。
コスタ・デル・ソルから私はマヨール広場へ向かっている。始めて海外の地を踏
み、身震いして眠ることのできなかった記念すべき夜からもう8年もたっていた。
その夜の青春の場所に再会するため私はスペインへ「還って」きた。
空はいつのまにかオレンジ色を帯びており、道行く人々の表情もどこか穏やかに
感じた。
私はといえば、青春の一刻を刻んだ地にいながらも呆然としていた。
生気は抜き取られたように、ただマヨール広場へ向かっている。
マドリッドの街は18世紀の重厚な石のかたまりのまま、なんら違和感なく、いつ
もと変わらぬたたずまいをして私を迎えてくれたが、何か空間の隅に追いやられた
まま、取り残されたような気がしてならない。
なつかしさより違和感が勝っていたのは何故だろう?
感覚が麻痺したように浮遊した状態にいたのは、決して結局6杯飲んだセルベッサ
のせいだけではなかった。
私は雑踏に揉まれている。
そして、ようやく自分が、あの、光と影が織りなすモザイクの世界へ再び舞い戻る
ことがとうてい不可能だということを認めたとき、目頭が熱くなったきて、あとは
止めようがなかった。
マヨール広場のフェリペ2世像と対峙するようにベンチで腰掛けている。
深い底に澱んでいる澱のようなものがどんどん頭から血として逆行する。
ここは、もうモロッコではない。
まるまぎわのプラド美術館に飛び込んだ。 お目当てのマイヨーの「天国の扉」にたどり着く前に、監視員に閉館を告げられた。 美術館の旧館を出て、リッツホテルの噴水前のベンチでしばらくボッーとしてからマロニエ並木の美術館前通りをアトーチャ駅に向かう。 そして、「太陽の門」へ通じる通りに交差する角のセルベッテリイアに引き釣りこまれるように入った。 夢から醒める前の朧な感覚を引きずったまま、窓際の席についた。
マドリッドの街は18世紀の重厚な石のかたまりのまま、なんら違和感なく、いつもと変わらぬたたずまいをして私を迎えてくれたが、何か空間の隅に追いやられたまま、取り残されたような気がしてならない。
なつかしさより違和感が勝っていたのは何故だろう?
感覚が麻痺したように浮遊した状態にいたのは、決して結局6杯飲んだセルベッサのせいだけではなかった。
私は雑踏に揉まれている。
そして、ようやく自分が、あの、光と影が織りなすモザイクの世界へ再び舞い戻ることがとうてい不可能だということを認めたとき、目頭が熱くなったきて、あとは止めようがなかった。
マヨール広場のフェリペ2世像と対峙するようにベンチで腰掛けている。
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