ニューヨーク旅行記(ブログ) 一覧に戻る
【http://4travel.jp/traveler/marktanaka/album/10265150/からつづく】 <br /><br />2001年9月11日。あなたは、あの日何をしていましたか? <br /><br />そのころ東京に住んでいた僕らは、それまでの人生を100%日本で生きていた希少ドメ種の実家の妹を引き連れて米国旅行に出かける準備を整えていた。 <br /><br />その年は9月に入ってもうだるような暑い日が続き、出発を3日後に控えたその夜も随分蒸していた。ちょうど仕事から帰って玄関に入ろうとしたところで神戸の弟から電話が入った。すぐテレビを見ろ、という。居間でTVをつけると、どの局でも煙を噴いているWTCの映像が流れているではないか。何が起っているのか皆目見当がつかない。アナウンサーもうわずった声で「不幸な航空機事故」と呼んでいたように思う。当時まだみんな混乱状態だったのである。 <br /><br />二機目の旅客機のビル衝突の映像が画面に映し出されたとき、僕らの心は一瞬にして凍りついた。それまでの「事故」が、実は人間の悪魔的行為とわかった瞬間だ。僕の目はTVに釘付けになり、胸にこみ上げてくる激しい感情のうねりを感じていた。非現実的な映像をぶつけられた衝撃よりも、人間に潜む暗闇の深淵を強引に覗かされときの、怒りとも、悲しさともいえない、途方もない無力感だった。そして、僕たちの旅行計画が瓦解したことを直感した。 <br /><br />その3ヶ月後、偶然出張でニューヨークに行くことになった。時間に余裕はあったものの、僕にはまだ燻りつづけるWTC跡に近づく勇気はなかった。なぜ罪のない多くの命がそこで奪われねばならなかったのか。どうして命の尊さを説くべき宗教の名のもとに、教えに全く背く残虐行為が行われたのか。僕の中ではまだ整理がつかない状態ながら、「観光客」として訪れるべき場所ではない、ということだけははっきりしていた。 <br /><br />あれから7年。腑には落ちないにせよ、僕の中でようやく収まり場所が見つかったあの事件の現場をこの機会に訪れようと思った。モニュメントや記念館は見なくていい。ただ、人類史の辛い1ペイジになってしまったあの場所を訪れて、同じ時代を生きた一人として不幸に遭った人々の霊に静かに手向けたかったのである。 <br /><br />地下鉄の最寄り駅から徒歩数分のところに、かつて僕を畏怖させるほど高く大きな建物だったWTCが残した大きな空虚が広がる。現在この一角では高さ1776フィート(≒541m)のフリーダム・タワーの建設が進行中だ。WTCタワーが立っていた足跡には、四辺から高さ9mの滝が落ち込む63メートル四方の二個の池がつくられ、それを中心とする9/11記念碑が2011年に完成する予定である。 <br /><br />命を奪われた人にいつまでも癒えない傷を負った家族がいるように、人を殺める人にも家族がいる。自らの信条とはいえ、自分の行った非行を自分の愛する家族にどう説明するのだろうか。加害者の家族という苦痛から、どうやって自らの家族を救うのだろうか。そして、神と直面したとき、自らをどのように断罪するのだろうか。 <br /><br />【http://4travel.jp/traveler/marktanaka/album/10421415/につづく】

東海岸の旅 その7【マンハッタン・グラウンド・ゼロの巻】

1いいね!

2008/06/13 - 2008/06/20

7440位(同エリア8651件中)

旅行記グループ 東海岸の旅(2008)

0

5

Mark & Risbeau

Mark & Risbeauさん

http://4travel.jp/traveler/marktanaka/album/10265150/からつづく】

2001年9月11日。あなたは、あの日何をしていましたか?

そのころ東京に住んでいた僕らは、それまでの人生を100%日本で生きていた希少ドメ種の実家の妹を引き連れて米国旅行に出かける準備を整えていた。

その年は9月に入ってもうだるような暑い日が続き、出発を3日後に控えたその夜も随分蒸していた。ちょうど仕事から帰って玄関に入ろうとしたところで神戸の弟から電話が入った。すぐテレビを見ろ、という。居間でTVをつけると、どの局でも煙を噴いているWTCの映像が流れているではないか。何が起っているのか皆目見当がつかない。アナウンサーもうわずった声で「不幸な航空機事故」と呼んでいたように思う。当時まだみんな混乱状態だったのである。

二機目の旅客機のビル衝突の映像が画面に映し出されたとき、僕らの心は一瞬にして凍りついた。それまでの「事故」が、実は人間の悪魔的行為とわかった瞬間だ。僕の目はTVに釘付けになり、胸にこみ上げてくる激しい感情のうねりを感じていた。非現実的な映像をぶつけられた衝撃よりも、人間に潜む暗闇の深淵を強引に覗かされときの、怒りとも、悲しさともいえない、途方もない無力感だった。そして、僕たちの旅行計画が瓦解したことを直感した。

その3ヶ月後、偶然出張でニューヨークに行くことになった。時間に余裕はあったものの、僕にはまだ燻りつづけるWTC跡に近づく勇気はなかった。なぜ罪のない多くの命がそこで奪われねばならなかったのか。どうして命の尊さを説くべき宗教の名のもとに、教えに全く背く残虐行為が行われたのか。僕の中ではまだ整理がつかない状態ながら、「観光客」として訪れるべき場所ではない、ということだけははっきりしていた。

あれから7年。腑には落ちないにせよ、僕の中でようやく収まり場所が見つかったあの事件の現場をこの機会に訪れようと思った。モニュメントや記念館は見なくていい。ただ、人類史の辛い1ペイジになってしまったあの場所を訪れて、同じ時代を生きた一人として不幸に遭った人々の霊に静かに手向けたかったのである。

地下鉄の最寄り駅から徒歩数分のところに、かつて僕を畏怖させるほど高く大きな建物だったWTCが残した大きな空虚が広がる。現在この一角では高さ1776フィート(≒541m)のフリーダム・タワーの建設が進行中だ。WTCタワーが立っていた足跡には、四辺から高さ9mの滝が落ち込む63メートル四方の二個の池がつくられ、それを中心とする9/11記念碑が2011年に完成する予定である。

命を奪われた人にいつまでも癒えない傷を負った家族がいるように、人を殺める人にも家族がいる。自らの信条とはいえ、自分の行った非行を自分の愛する家族にどう説明するのだろうか。加害者の家族という苦痛から、どうやって自らの家族を救うのだろうか。そして、神と直面したとき、自らをどのように断罪するのだろうか。

http://4travel.jp/traveler/marktanaka/album/10421415/につづく】

同行者
カップル・夫婦
一人あたり費用
10万円 - 15万円

この旅行記のタグ

1いいね!

利用規約に違反している投稿は、報告する事ができます。 問題のある投稿を連絡する

旅行記グループ

東海岸の旅(2008)

コメントを投稿する前に

十分に確認の上、ご投稿ください。 コメントの内容は攻撃的ではなく、相手の気持ちに寄り添ったものになっていますか?

サイト共通ガイドライン(利用上のお願い)

報道機関・マスメディアの方へ 画像提供などに関するお問い合わせは、専用のお問い合わせフォームからお願いいたします。

この旅行で行ったスポット

旅の計画・記録

マイルに交換できるフォートラベルポイントが貯まる
フォートラベルポイントって?

アメリカで使うWi-Fiはレンタルしましたか?

フォートラベル GLOBAL WiFiなら
アメリカ最安 335円/日~

  • 空港で受取・返却可能
  • お得なポイントがたまる

アメリカの料金プランを見る

フォートラベル公式LINE@

おすすめの旅行記や旬な旅行情報、お得なキャンペーン情報をお届けします!
QRコードが読み取れない場合はID「@4travel」で検索してください。

\その他の公式SNSはこちら/

この旅行記の地図

拡大する

PAGE TOP